第15話 記者会見
《登場人物》
長宗我部 博貴 警部 (長さん)
入船 宗次郎 警部補 (ボウラー)
河瀬 憲仁 巡査部長 (和尚)
古村 俊 巡査部長 (シルバーマン)
夏目 真彦 巡査長 (先生)
田中 悠 巡査長 (アンジェリーナ)
佐藤 蒼太 巡査長 (ブラッド)
ペイン 爆弾犯
― 午後4時過ぎ 愛媛県警 ―
愛媛県警の記者会見場では、カメラマンと記者達、そしてカメラマンが持つカメラのレンズは、数人の警察幹部達を写す為に向けている。
愛媛県警捜査本部長が事件概要説明を発表した。
「今日の午後2時25分、愛媛県警本部の外第一駐車場に停めてあるパトカー1台が何者かによって爆破されました」
カメラマンによるカメラのフラッシュが警察幹部の目を襲う。
その間にも説明は続いていく。
「犯人は現在、《ペイン》と言う名で称して、犯行声明を現在、捜査責任者の長宗我部 博貴警部に向けて発表しました。現在は電子警察職員と共に県警捜査一課の職員を総動員させてペインの捜索にあたっています」
警察幹部達が会見の異様な空気を感じ取っている。幹部席の左側に座る入船にとって、記者会見は最も嫌なイベント。
その理由は簡単。記者会見というイベントは、カメラのフラッシュと性格の悪い記者が一点に集中する場所となるからである。
その間にも事件概要説明が続いている。
「また、先日起きました新型車両でありますクラウドの爆破について、今回のパトカーの爆破は因果関係があるとし、現在捜査中であります。概要は以上です」
幹部の1人が報道陣に向けて、一言告げる。この一言がいわゆる答える側の地獄の時間帯の始まり。
「では、質問のある方からどうぞ」
この言葉で、手を上げない記者などいない。
「では、そちらの方から」
「潮日新聞の桝屋です。今回の事件で狙われたのはパトカーだそうですが、これは警察への挑戦状だという噂が流れていますが警察の見解をお願いします」
県警本部長の顔は厳しくなっている。ゆっくりとマイクに声を発した。
「相手がどうあれ、愛媛県民の皆様に対しての脅威から守るのは我々、警察の仕事であります。挑戦状? そんな生半可なもんじゃない。我々が、犯人を確保する事に最善を尽くします」
本部長の言葉に、入船は、やれやれと感じている。
「ご立派な事で……」
と内心、入船は感じていた。
質問は続く。司会役の警官が手を挙げている記者を指名する。
「では、そこの方」
「失礼します。東城新聞の真木です。事件で浮上しているペインというのは、一体何者なのでしょうか?」
真木の質問に対して、入船が答えていく。
「それにつきましては我々から。犯人について、ペインと名乗る男は、爆破の知識に長けており、パソコンの処理能力及び、ハッキングの能力につきましては相当の実力の人物だと思われます。また、ペインの犯行声明の中で、ゲームのようにスリルを楽しむ為だと述べております」
入船の説明に対して数人が声を出して反応し、さらに質問してくる。
「つまり、この犯行は自分の快楽による犯行という事ですか?」
「ええ、そうなるでしょうね」
記者の質問に入船は淡々と答えていった。しかし、記者の質問の中にある程度、棘が増しているのが分かる。
「四国テレビの佐々木です。パトカーの爆破について、これは厳重だった愛媛県警本部の警備をかいくぐって、パトカーを爆破したわけですが、これは失態ではありませんか?」
鋭い毒のこもった質問。
これに対して、県警本部長は声を荒げて答えた。
「何を言っとるんだ! 君は、言葉を……」
「待ってくださいや」
県警本部長および他の警察幹部は、先ほどの声をする方に顔を軽く向ける。眉間にしわを寄せた顔が、声を出した方向に注目。声を発したのは左端に座っている電子警察の説明役になっている入船警部補の姿で、机に置かれた一本のマイクに口を近づける。
「佐々木さんですっけ? これが失態。なるほど。捉え方とすればそうかもしれませんが、逆に犯人から尻尾を出してくれたわけです。我々はそう思っています。こんなチャンスは絶対にない好都合だと思っています。あなたがたがどう書こうが勝手ですが、行き過ぎた言葉を使うのはよしたほうがいいですよ」
訊いた記者は黙った。
記者達は何かを感じたのかずっと黙っている。カメラマン達の指がカメラの撮影ボタンの音と同時にカメラの光が会見場にいらない光を与えている。
県警本部長が一言、記者達に告げて、席を立つ。
「会見は以上です。失礼」
他の警察幹部も立ち上がり、記者会見場を後にする。
「待ってください」
「まだ終わってないですよ。本部長!」
記者たちの質問の言葉はやまない。同時にフラッシュも。それも気にせず警察幹部全員は会見場を出て行く。
入船も会見場から出た。
「やれやれやな」
会見場を出て入船はゆっくりと背伸びをしながら、他の警察幹部達を置いて、電子警察の現場へと向かおうとしている時に本部長が入船を呼んだ。
「警部補!」
呼ばれた方に入船は体を後ろに向ける。
「どうしましたか? 本部長」
本部長は、厳し目の声で一言告げた。
「何があっても愛媛県警の名のもとに奴を捕まえろ」
厳しい口調は、入船の心に染み渡る。
「もちろんです。なんとしてでも捕まえますよ」
入船は、対応したあとで軽い営業スマイルで返し、踵を返してエレベーターへ向かう途中で足を止めて、本部長に向けて一言返す。
「あっと。本部長」
「何だ?」
「一応、この事件終わったら電子警察責任者引き継ぎ手続きと有給休暇もらいますからね」
入船はそのまま歩き始め、エレベーターへと向かう。
「やれやれ」
本部長は、入船の背中を見つめている。
彼ら、電子警察の動きを期待しているのは勿論だが、不安な要素もある事は否めなかった。
第15話です。 お久しぶりに入船警部補の登場回でございます。
今回も状況説明回です。どんな展開になるのか。お楽しみに!
話は続きます!




