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第13話 情報に出る男

《登場人物》


 長宗我部 博貴 警部   (長さん)

 入船  宗次郎 警部補  (ボウラー)

 河瀬 憲仁   巡査部長 (和尚)

 古村 俊    巡査部長 (シルバーマン)

 夏目 真彦   巡査長  (先生)

 田中 悠    巡査長  (アンジェリーナ)

 佐藤 蒼太   巡査長  (ブラッド)


 坂本 遼馬   爆弾魔  (ペイン)

 



 - 同日 同時刻 松谷大学 -



 和尚とシルバーマンの2名は、坂本遼馬の足取りを追うべく、再び松谷大学に来ていた。

 大学構内にある学生の成績や個人情報管理をしている情報管理課の職場へと電子警察職員の2人は歩いて向かっていく。

 今日は、2人にとってついていない1日と言えるぐらい大変な目に遭った。

 突入した犯人のアジトは、爆破され、間一髪で脱出したが、危うく自分の体も5体満足で帰ってくる事はできなかっただろう。

 今、2人で歩いて、お互いがそれなりに怒りとともに生きている実感を感じていた。

「ペインの奴め。絶対に捕まえてやる」

 和尚はアパートの爆破に遭ってから、ペインに対する憎悪で脳内は破裂しそうなくらいであり、憤怒という言葉にふさわしい状態でもあった。

 2人は静かな風を浴びながら情報管理課へと向かう。

「ブラッドから連絡は?」

 シルバーマンはスマフォを取り出して、通信履歴や着信履歴でかかっていないかを確かめるが、表示は0件。

 こちら側が掛けたぐらいの履歴だった。

 和尚の質問に対して、シルバーマンは確認の証拠と共に自らの首も軽く横に振る。

「そうか」

 シルバーマンの素振りに和尚自身も理解して、2人はそれぞれの歩調で情報管理課の職場に向かって歩いた。

 本館1階入口前まで辿り着き、すぐ隣の方に小さく看板がある。




《情報管理課》




 2人は情報管理課のドアを開いて中へと入った。

「失礼します」

「あ、はい。何のご用件でしょうか?」

 和尚は、すぐさま職員に自分たちが何者なのかを証明する為の行動を行う。

 胸ポケットから電子警察手帳を取り出し、表示した。

「こういう者ですが、ちょっと学生の情報について調べさせていただきたいのですが? ああ、ご安心を礼状はあります」

 シルバーマンが、礼状を職員に手渡した。職員は、手渡された礼状を見て、本物だと確信し、和尚の言葉に対しての返答をする。

「どの学生でしょうか?」

  


 どの学生? 


 

 ここの大学の学生在籍の数は、数千の世界。この大学出身だった2人にとっては無意識だった為、数秒の沈黙が大学職員を含めて3人の間に流れている。沈黙を破ったのは和尚の行動だった。

 彼は、一枚の紙を職員に手渡し、渡された紙について、和尚のカウンターを挟んで立つ男が目を通す。

 


《名前:坂本遼馬》



「しょ、少々、お待ちください」

 職員は奥の部屋へと向かっていった。

「どうしたんだろうな?」

「さぁな」

 シルバーマンはポケットから1つ、横長のイエローミントガムレモン味を1枚取り出し、和尚に見せる。

「いるか?」

「もらうわ」

 和尚は先ほど彼が持っていたガムをもらい、ポケットに入れた。

 そうしていると奥から職員が戻ってきて、和尚が渡した紙とは別にもう1枚の紙左手に持って戻って来る。

「こちらになりますね」

 職員は2人の刑事に分かる様にその紙を見せる。

 その紙に対して、刑事達は鋭い視点をぶつけた。

「おい、これ……」

「これは本当の奴ですか?」

 シルバーマンの言葉に、職員は特に不思議そうな顔もせず、それなりの営業スマイルで返す。

「え、ええ。ここの情報は本人による変更と更新の関係にもよりますが本人が申請していますので、本当です」

 その紙には坂本遼馬の大学の学籍情報が載っていた。



 《坂本遼馬 電子学部4回生在学中 指導教授:八嶋 寛人》



 写真もくっきりと写っている。ブラッドが送ってきた前情報の写真とは違い、姿、形も全く違っていた。

「これは……」

 刑事2人の声のトーンがどんどん職員にはわからないようになってくる大きさで話していく。

「それにあのゼミ出身か」

「なんとなく理解できてきたぞ。シルバーマンよ」

「もう1回、あの人に会う必要が出てきたな」

「ああ、そうらしい」

 2人の小声による会話は、この2人の相手をしている大学職員にとっては、とても気になってしょうがなかったり、仕事の話だから余計に口を突っ込むのも行けないと思ったりと、何とも板挟みにあっている状態である。

「ご協力、どうもありがとうございました」

 気づけば、板挟み状態は終わったようで、職員に向けて和尚が捜査協力のお礼を告げた事を、職員の男性自身、左から右へと受け流してしまった。

「い、いえ」

「あの? 写真を頂いてもいいですかね?」

 職員は和尚の言葉を聞いて若干、戸惑っている。

「あ、流石にそれは……ちょっと、個人情報保護法にも関わる可能性が……」

「ああ。ご心配なく。もう1つ忘れていたんだった。ああ。あったあった」

 和尚のポケットからもう1つの書類を見せる。

 その書類の用紙1枚1枚めくって見た職員は、さっきまでの戸惑っていた態度から一変していく。

「これは、失礼しました。どうぞ持って行って構いませんよ」

「そう。ありがとう」

 シルバーマンは、職員から写真が載った紙を1枚もらう。

 刑事2人は職員に軽く1礼して、情報管理課の職場を後にした。

「お前、あの紙なんだったんだ?」

「個人情報開示命令書。裁判所で申請済み」

 和尚は勝ち誇ったように、隣を歩くシルバーマンに言う。

 隣でシルバーマンは歩きながら顔写真について、脳をフル回転させて記憶の本棚から情報を引き出そうとしている。

「それより、この顔。どこかで見たことあるな……」

 和尚は歩きながら考えようとしているシルバーマンの隣で先ほどもらったガムを口に入れ、奥歯と前歯、交互に噛み始めて長方形のガムからどんどん丸まっていく。自身の口に入れたガムの味が神経を辿って、脳に軽い衝撃を与えようとしている時に隣の刑事の思い出しの頭に衝撃が入る。

「あっ! あん時だ。最初、教授に話聞きに行った時だよ!」

「八嶋教授に話を聞きに……あっ!! 廊下ですれ違った奴か!」

 刑事2人の衝撃は半端なかった。

 なんせ以前に犯人の姿、顔と形が鮮明にしかも軽く挨拶した出来事があったのだから。

 シルバーマンは急いで、スマートフォンを取り出して、電話をかける。

「長警部はこの事を知らない。連絡しよう。写真を送ったほうがいいだろう?」

「ああ」

 スマートフォンの通話キャッチが《通話中》と表示されている。

「かからない」

 このタイミングで警部との通信できないこと、会話中であることを考えると、犯人とコンタクトを取ったかのどっちかである。

「もしかしたらペインとコンタクト中かも」

 2人の刑事が駐車場へ向かう為に歩き始めようとしたら、後ろから先ほどの情報管理課の職員の人が走って声を掛けてきた。

「すいません!」

「愛媛県警の方ですよね?」

「ええ。そうですが? どうかされましたか?」

「何者からか攻撃を受けまして、サーバーがダウンしてしまって……」

 2人はその言葉を受け、不安を感じ、急いで情報管理課の職場へと向かった。

 中に入るとさっきまでの穏やかな状況から、恐怖に煽られ、焦燥に駆られている。

 職員のリーダーと思える人間が1台のパソコンで尋常じゃない速さのタイピングで作業をしている。

 怒鳴り声が聞こえた。

「なんでこんな事になったんだ!? 早く何とかできないのか!?」

 パソコンの画面を見ると《警告》と表示されている。

 2人の刑事にとっては、最高のタイミングだった。ネットの脚跡が残るからだ。

 しかし、情報管理課にとって、《最悪》と《失態》と《流出》のこの3つのキーワードが脳内を超特急で1周している。

「今やっています! くそっ! 止められません!」

「早く! 流出を防げ!」

 職員が急いで復旧や防衛行動をしている中で、緊迫した状況に呆然とし眺めている2人の刑事。

「まずいことになったな。和尚」

「ああ、そうらしい」

 情報管理課の緊急事態に、和尚とシルバーマンの脳裏にはペインの仕業だと言う事、そしてその相手の脅威を感じていた。




  タイムリミット19:00まで ―3:00―

第13話です。 色々あって投稿がのらりくらい状態です。すいません。


今回は和尚とシルバーマンが動く回です。


というわけで話はまだ続いていきます!!

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