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南の島の当たり前な煩悩

「あれれ、男子みんな集まって何してんだろ?」


「さぁ?私たちには関係のない事ね、ほら、花ちゃんも待ってるし、海行くわよ。」



男子たちは、大きな木の日陰に丸くなって座っていた。まるで、これから会議でもするかのように。そろいもそろって、深刻な表情をしていた。唯一していないのは、鷹司のみである。


まず、口を開いたのはチャラ男こと皐月だった。


「女子の水着さぁ‥どう思う?」


その言葉に男どもは海の方へ視線を向ける。そこには波打ち際で戯れる女子の姿があった。女子全員が自分を美しく見せるために選んだ水着なのだろう、それぞれ個人にとてもよく似合っていた。


その中で一番に異彩を放っていたのが、祝咲花の着ている紺色の水着であった。

ご丁寧に名前まで書かれたゼッケンが胸についていて、生地が横に伸びている事で、胸の大きさが容易に想像できる。


それは、小さい頃よく目にしたスクール水着と呼ばれる代物だった。


本来は小学生や中学生が身につけるであろうものを身につけている高校三年生。そのアンバランスさがどうも男どもの胸を打つ。


「はっきり言えよ、女子の、じゃなくて祝咲の、だろ?」


皐月の頭を掴んで不良担当こと柚希が諭す。そう思ったのは柚希だけではないようだ。


「‥正直、不意をつかれちゃったよねぇ‥」


頭をかきながら、純黒こと松田が間近で祝咲花のスクール水着を見たことを思い出す。


パーカーを脱がないのを不思議に思って、聞いてみると彼女は気まずそうに視線を逸らしながら、困ったように途切れ途切れに言葉を発した。

多分、パーカーを脱がないつもりだったのだろうが、誠が手を引いているのを見て脱がなければいけないと思ったのだろう。渋っていたわりには、ぱぱっと恥ずかしげもなく脱いだ。


恥ずかしげにパーカーを脱ぐ姿を想像していた松田は少し残念に思ったが、そのパーカーの中から現れた爆弾に思わず身体が思うように動かなく、何か言おうとした口も動かなくなってしまった。


白くて日に焼けてない腕に、むちむちの太もも。何よりも驚いたのは現れた紺色の水着にであった。


身体にそった形の水着が、祝咲花の体を包み込んでいる。来ている女子の誰よりも露出が少なかったが、ビキニを着ている彩乃より、露出が一番多い美鈴より、スクール水着を着た祝咲花の姿は何よりもいやらしく、一番興奮する姿に松田の目には映った。


後ろに回り、その乳房を両手で包んだら、祝咲花はどんな反応をするのだろうか。

今の松田の頭には、その事でたくさんだった。


皐月と松田と柚希が言い争っている中、今までに一度も喋っていない無口こと‥倫太郎は、隣の席にいた女子のことを思い出す。


黒い髪の女子で、頬が柔らかそうな女子だなぁと。それが第一印象だった。

目が合うとどちらかともなくお辞儀をし、何回か繰り返した時には彼女はおかしそうに笑いながらどうも、と返してきていた。


その女子はやけに慕われていて、好く要素があるのは何となくわかったような気がした。


荷物を運んでいるときに話しかけられた。まともに会話をしなかったが、荷物を確認するために荷物を地面に置き、しゃがんで少し前屈みになったときに見えたあの谷間。あまり見ていては不謹慎だと思うのだが、目をそらすのももったいない気がしてやめた。


服が透けることを期待して提案してみたのだが、さすがに受け入れてもらえなかった。‥まぁ、わかってはいたが。


今日荷物を運ぶときも、恥ずかしい水着、と最初に言われて妄想が止まらなかった。想像していた水着がきわどいものばかりだったので、まさかこんな変化球でくるとは思わなかった。


これはこれで、十分に興奮する。



「そういえば皐月よぉ、祝咲見た途端しばらく海で固まってたよな?‥なんか出られない理由でもあったんでちゅかー?」


「るせぇなっ、関係ないだろ!」



顔を赤くしながら怒鳴る人達に賢は気付かれないようにため息をつく。


最初は乗り気でなかったこの旅行も、祝咲花に起こされてからは楽しみになっていて、これをきっかけにもっとお近づきになれればいいなと思っていた。のだが、


周りに座る整った顔の男たちを見て、いくらなんでも、これはライバルが多すぎるのではないか。


皐月の祝咲花に対しての好意は明らかだし、柚希は一見からかうのに全力を注いでいるのかと思えばそうでなく、海の方へ視線をチラリとよこしている時がある。

松田はさっきからにこにこしながら海の方に目を向けていて、手がなんか変な風にうごめいてる気がする。

倫太郎はぼーっとしているように見えるが、絶対に何か考えていると思う。‥これは、ただの勘だが。


周りの男たちは、異彩を放っている祝咲花に視線を一度は向けるが、それからはずっと姉や他の女性たちに視線を向けている。が、この男たちだけはほかに目もくれずに祝咲花だけを見つめている。


ライバルは誠と素っ気なさそうに見えて実は姉を慕っている鷹司だけだと思っていた賢には、大きすぎる誤算だった。


海から上がってきた祝咲花を見つけた松田が立ち上がり、祝咲花の方に行ったのを見て、男たちも腰を上げる。


そうして、男たちの煩悩会議は幕を閉じた。

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