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南の島のお屋敷

なぜかスクール水着を着ることになった。‥彩乃ちゃん、気が利くよね。


私はお屋敷の中のリビングでパイナップルジュースを誠ちゃんと飲んでいる。鷹司くんは、松田君と一緒に虫取りに出かけていったようだ。誠ちゃんはニコニコとパイナップルジュースをちゅーちゅー吸っている。


「お姉ちゃん、ジュース美味しいね!」


「美味しいねー‥でも今日は、モデルさん達が来て、撮影するから海に行けないなんて、残念だねぇ。」


ここはプライベートビーチなのだが、たまに貸し出しをしているらしい。ここは景色も綺麗で撮影に打ってつけなのだそうだ。

本当は違う場所でやる予定だったのが、天候が崩れてしまい間に合わず、雑誌の〆切に間に合わない!と慌てていたところに松田君のお父さんが助けてくれた。


松田君も一日だけならまぁいっか、となったようで、今日は海に行けないんだそうだ。

確かに、私達がいっても気が散っちゃうかもしれないしね。


コンコン、と音がして窓を見ると水着姿の美鈴さんが立っていた。‥な、艶めかしい、程良く焼けた美鈴さんの肌に、髪から滴る雫が落ちる。それだけでもう、絵になり過ぎます。なんだ、外国のシャレオツ写真集か。


いろんなポーズをしている美鈴さんを想像しながら窓を開ける。ここの窓は大きくて、人が出入り出来るようになっている。目の前が湖だからかもしれない。


「ありがと。花ちゃんは入らないの?」


濡れた髪をかきあげながら美鈴さんは私に問う。‥はわわ、せくすぃ‥


「いや、入っても良いかなって思ったんだけど‥彩乃ちゃん寝ちゃってて。かって水着出すのもなぁとおもって‥‥」


あと彩乃ちゃんのバック漁ったら何か見てはいけないものが出てきそうで怖い。私は全力でそれを拒否するよ。


「ふぅん‥誠ちゃんは入んなくていいの?」


「うん、お姉ちゃんと入るから!」


やだ、可愛い。


誠ちゃん本当に天使だな。あ、私のスクール水着姿見られるのか。引かれないかな‥引かれないことを祈ろう。でも誠ちゃん天使だから大丈夫だよ!


天使な誠ちゃんを撫でていると美鈴さんが思い出したように手をポン、と叩いた。


「あ、そうだ花ちゃん。そういえば弟起こしてきてくれない?アイツに手伝ってもらわなきゃいけないことあんのよ。」


「うん、いいよー‥どこの部屋?」


「ちゃんと名前書いてあるからわかるわよ。」


誠ちゃんは美鈴さんがお話ししてくれるというので美鈴さんに任せて、私は美鈴さんの弟を起こしに行くことにする。


とんとんとん、と階段を上がって、ドアにつけられているネームプレートを確認して行く。‥確か、美鈴さんの苗字は佐原、だったよね。


。SAHARA SUGURU。


たぶんこれだ。下が美鈴さんの名前じゃないし。

とんとん、とドアをノックすると、眠たげで、不機嫌そうな声がはい。と返事をした。

あれ、どっかで聞いたことがあるような、生意気な声だなぁ。


がちゃりと開けられた部屋の中に立っていたのは、寝癖が凄い賢くんだった。‥マジか、弟だったのか賢くん。


「‥は?お姉さん、え?何で?」


目をぱちぱちとせわしなく瞬かせる賢くんは今の状況を理解しきれていないようだ。大丈夫?落ち着けもちつけ。


「おそよー賢くん、もうすぐお昼になっちゃうよ、後、お姉ちゃんが呼んでるよ。」


「あー‥うん。わかった。着替えていくって言っといて。」


混乱していたような賢くんだったが美鈴さんの事を話すと嫌なことを思い出した、と顔に思い切り出しながら、めんどくさそうに部屋の中に入っていった。


「美鈴さん、賢くん、着替えてからくるって。」


「あ、花ちゃん。びっくりしたでしょ?知ってる奴がいて。」


くすくすといたずらに笑う美鈴さんは、もうTシャツと短パンに着替えていて、長い美脚をこれでもかっと見せびらかしている。


でも、なんで美鈴さん私と賢くんが顔見知りだってわかったんだろう、もしかして賢くんから聞いていたとか?


「全く、愚弟には感謝して欲しいわ。出会いの場を作ってあげたんだから。」


なるほど、賢くんは彼女募集中だったのか。あれだけ顔がいいなら、どこでも出会いの場ではないのだろうか。


美鈴さんと話していると賢くんが降りてきた。誠ちゃんは警戒態勢にはいる、あれ?誠ちゃんなにかされたの?


美鈴さんは誠ちゃんの様子を見て、いやー、誠ちゃんは優秀ねぇとむすっとしている賢くんに向かって、挑発するように投げかける。こ、こんなところで喧嘩いくない。


「ま、いいわ。賢、いつものよろしく。」


「はいよ。」


賢くんが持っていたバックから何か取り出した。これは、髪をさらさらにする奴?あとはドライヤーとか、ゴムとか、髪留めとか、いろいろ出した。

まるで美容師さんみたいだ。


「なに、ポニーテール?」


「んー、暑いからそれで良いわ。」


まるで、女王様とその下僕の光景を見ているようだった。下僕なんていったら賢くんは怒ってしまうから言わないけど、美鈴さんに女王様といったら怒るんじゃなくてむしろ高笑いしてくれそうだ。‥あ、凄い。いともたやすく想像できる。


すいすいと手際よく髪をケアして束ねて、あっという間に綺麗な、さらりと流れるポニーテールが完成した。ふぉ、すごい。

美鈴さんはさすがね、と鏡を片手にご機嫌だ。賢くんはやれやれ、と道具をしまっていく。それを見ていたら、どうやら勘違いされてしまったようで。


「‥なに、あんたもやってほしいの?」


「いやいや、違うよ。賢くん凄いなーと思ってただけ。」


「‥あんたがやってくれっていうなら、やっても良いけど。」


ぼそり、とつぶやかれた声は小さかったが確かに聞き取れた。うぅん、私はそんなに物欲しそうに見ていたのだろうか。


終始誠ちゃんは賢くんを親の敵のように見ていたが、賢くんに可愛い髪型にしてもらうと少し仲良くなったようだ。


うん、仲良くしてくれてお姉ちゃんは嬉しいよ。

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