笹の葉ガサガサ
間に合った‥!
今日は七夕!今日は学校の七夕祭りです。幼稚園も、小学校も、高校も大学も一緒になってみんなでお祭りを楽しむ日だ。保護者も参加することが出来る。
今日は七夕ということで、登校時間は四時から八時まで。制服ではなく浴衣を着ていくことが決まりになっている。
浴衣を持っていない人も、前日に学校に言えば貸し出してくれるのだ。もちろん、洗って返さなきゃだけどね。
むふふ、つ、ま、り!誠ちゃんと鷹司くんの浴衣姿が見れちゃうのだ!私はこの日のためにおばあちゃんから浴衣を送って貰ってきていたのだ、鷹司くんは藍染の甚平だけど、誠ちゃんは可愛い浴衣!白地に青い朝顔、水色の帯。‥着ているのを想像するだけで顔がにやけてくる。
私のは去年、彩乃ちゃんに選んで貰った黒地に白い蝶々の舞っている大人っぽい浴衣
なのだが、毎回人妻っぽいと言われるので少しこまっている。彩乃ちゃんはそれを、狙ってるのよ!と言っているが何故狙ったのかわからない。
「‥これ、すーすーするよぅ‥僕、鷹司みたいのが良い。」
「だめだよ、せっかくなんだから、かわいくしなきゃ。ね?」
「んー‥」
KAWAII☆もじもじしてる誠ちゃん超可愛い。嗚呼、誠ちゃん。アナタは何でそんなに可愛いの?それが世界の正義だからです!
「鷹司くんもかっこいいな、どう?どこか変じゃない?」
「大丈夫。‥これ、かっこいい。」
そっけなく鷹司くんが言ったかと思うと、袖を掴んでにんまりしている。甚平が気に入ったようでなによりです。はぁー可愛い。鷹司くんはちゃんと反抗とかしてくれるもんね。たまに誠ちゃん見てるといい子すぎて心配になってくるんだよなぁ。
そろそろ、行かないと。私の用意も終わったし、仲良くおててつないで行きましょうねー
「子供じゃないから、一人で歩ける!」
「僕は手、つなぐ!」
鷹司くんは私達の一歩先を歩く。‥おねぇちゃん寂しいよう。という視線を送っても鷹司くんは振り向かない。‥いいよぅ、誠ちゃんがかまってくれるから。
少し寂しい思いをしながらついた学校。結構早く来たはずなのに、かなりの人がはもう綺麗に着飾った姿で校門をくぐっていく。
みんなきれいだなぁ。わあ、あの人ふわふわつけてる。暑くないのかなー‥普通振り袖にふわふわつけるんじゃないのかな‥まぁ、個人の自由か。
「お花ちゃん、みっけ。可愛い‥ってより色っぽい。狙ってるの?」
校門前に立っていたのは松田君だ。松田君は灰色の着物に真っ赤な帯を巻いている。‥その帯、女性用じゃないのかなぁ‥似合ってるから、問題ないんだろうけど。
なんでいるんですか、と言いたくなったが学校に職場体験に行かせるぐらい仲のいい学校のことだ。一緒になって七夕祭りをやることになったんだろう。
「別に狙ったんじゃないですよ。彩乃ちゃんが選んだんです。」
「んー‥後で彩乃ちゃんにお礼言わなきゃ。」
松田君はにっこり笑って、私達をスマホで写真におさめてからふんふんと鼻歌を歌って機嫌がいい。しばらく話した後、他の役員さんに呼ばれて行ってしまった。鷹司くんと誠ちゃんがやけにおとなしいなぁと思ったら、わたあめを松田君に貰っていたようだ。もう‥口の周りベタベタにして、ウエットティッシュ持っててよかった。
「よぉ。」
いつも派手な格好をしているのに、今日は黒い着物で灰色の帯。柚希ちゃんは手に林檎飴を持って歩いていた。‥何本も林檎飴をさしたダンボールを首から下げているということは、売り子さんでもやってるのかな。
「りんごあめ!‥変態のりんごあめか‥でもりんごあめ欲しい。」
「‥俺が持ってたって味はかわらねぇよ。‥ほれ、やるよ。」
柚希ちゃんはひめりんごで作ったと思われる小さい林檎飴を鷹司くんと誠ちゃんに渡した。二人とも嬉しそうで、食べきっていないわたあめをはぐはぐと早く食べ出した。早く林檎飴食べたいんだろうな。
「‥なにもなし、てのもわりぃからな。やるよ。」
そういって柚希ちゃんは大きい林檎飴を私に渡したら、売り切らないとノルマ達成出来ないからとすたすた歩いて行った。
林檎飴を舐めながら誠ちゃんと鷹司くんを見失わないように歩いていると、屋台の方から名前を呼ばれた気がして、そちらの方向に振り向く。
「祝咲!‥お前、一人‥じゃねぇか。」
私達を呼び止めたのは、チョコバナナの売り子さんをしている皐月くんだった。
皐月くんは私を顔を見てから、下を見て、少しがっかりしたような顔をした。
「皐月くんも売り子さんなんだね。チョコバナナ、三つください。」
「俺、青い奴がいい!」
「僕は白色!」
はいよ、と返事をして皐月くんは三つのチョコバナナをくれた。
そういえば、チョコバナナってアレなんだよね。こう‥攻略対象者がヒロインにチョコバナナ食べさせては卑猥な妄想するっていうの、あるんだよねぇ‥チョコバナナってそんなに卑猥かな?そんなことはないと思うんだけどねぇ。
チラリ、と皐月くんの方を見るとこちらをガン見していた。な、なんだよ、チョコバナナ欲しいのかい?
「‥‥ま、お前にそんな色っぽいの期待してもな‥‥」
一体何を期待していたんだというのだね、確かに私はチョコバナナはたてからじゃなくて横から行っちゃうからね。私でそんな妄想するのは無理だと思うなぁ‥‥
「はなちゃあん!見つけた!可愛いぃー!今日も可愛い!」
「わ、彩乃ちゃん。‥彩乃ちゃんも可愛いね、よく似合ってる。」
やだ、ここ人前なのに‥とくねくねさせる彩乃ちゃんはやけに艶っぽい。私がやってもタコ見たいとしかいわれないだろうに。彩乃ちゃん可愛いから仕方ないね。
それから、彩乃ちゃんとお祭りを回って、とても楽しく過ごした。もっと楽しみたかったけど、誠ちゃんと鷹司くんが眠そうなので帰ることにした。彩乃ちゃんも帰ると言っていたけど、織り姫コンテストなるものに参加する事が決まっていたらしく、私と涙の別れをした。
「楽しかったねぇ‥‥」
「うん!たこ焼きも美味しかったし、焼きそばも美味しかった!」
誠ちゃんの主な思いでは食べ物の事のようだ。鷹司くんはこっくり、こっくり首を動かしてて、起きてるのかわからないぐらいだ。
「‥‥なにしてんの。危ないよ。」
鷹司くんを心配で見つめていたら、後ろに私服を着た賢くんが立っていた。
「お久しぶりー、学校のお祭りだったの。今日は七夕だからねえ。」
「あっそう。」
自分から聞いといてなんですかそれは。賢くんは興味なさげに相づちをうつと鷹司くんを抱き上げた。
鷹司くんは抵抗しようとしてたけど、力尽きて寝ちゃったみたい。
「困ってるんでしょ、このまま送ってく。」
「‥‥そうしてもらえるとありがたいなぁ。」
鷹司くんが寝てしまったらどうしようと困っていたところだし、ほんとに丁度良い。お礼はまた何かご飯を作ってあげようかな?
私は、雲一つない星が綺麗な夜、下駄をならしながら家に帰って行った。
‥‥誠ちゃんはずっと賢くんを睨んでて、嫌いなのかなぁとなやみながら。




