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菓子パンより総菜パン

「これは完全に忘れたなぁ‥‥」


私が忘れたもの、それはお弁当である。可愛い弟たちの分はもちろん作って持たせたのだが、私の分をバックに入れるのを忘れてしまったようだ。


だがしかーし、こんな時のために私は小銭入れを持ったきている。これで食堂や購買に行けば問題なしだ!売りきれることはないし、今からいってもまだパンが残っている時間だ。食堂にも人が流れるし。


でも、かなりの競争率のパンがあるのだ。それを狙うために皆さんは必死になってパンを取り合う。順番なんてしっちゃかめっちゃかだ。

今はまさにその時間帯で、菓子パンしか残らないだろう。‥お昼ご飯に菓子パンを食べるのは‥私は焼きそばパンやホットドックが食べたい。


でも、行かないわけには行かないので、はぁ、と溜め息をついて重い腰を上げた。これから私は戦場に向かう‥骨は誰かが拾ってくれないかなぁ。


小銭入れを片手に、購買のある一階までたどり着く。だが、今日はやけに静かで、いつも聞こえるおばちゃんへの注文が全く聞こえない。不思議に思いながらも購買にある方に顔を向けると‥私は信じられない物をみた。


人、人が綺麗に一列に並んでいるのだ、こんなに綺麗な列見たことがない、朝会でもこんなに綺麗な列は作らないだろう。‥女子にはありがたいが、男子はムズムズしてそうだ。


私にとってはありがたい。にこにこと顔が締まりなくなっているのはわかっているが、そのままの顔で列に並んだ。前を見ると結構長いが、それでもこれからちらほらやってくるだろう。


一人、二人、三人、四人‥‥どんどん抜けていって、やっとおばちゃんの元へたどり着いた。並べられているパンを見て、あんパンと大きめのホットドックを取りおばちゃんにお金を渡そうと顔を上げた。


「‥‥‥よぉ、ひさしぶりだな?」


‥おばちゃんじゃなかったよ、なぜ柚希ちゃんが、ここにいる?まさか柚希ちゃんもあの二人と同じタイプか‥‥!職業体験が購買の店員?何か間違ってここに入れられたの?


私が困惑した表情で柚希ちゃんを見つめていると、手を差し伸べてきたので、とりあえず手をグーにしてお手のように置いてみた。だが、それじゃないと怒られた。どうやら柚希ちゃんはお金を請求してたらしい。それはそうだ。


あんパンとホットドックのお金を払って立ち去ろうとする。そうしたら柚希ちゃんに呼び止められて、一緒に購買の店の中に入れられたのだ。ここは、意外と広いのか‥駅のホームにある購買よりは結構広いかな?


私は柚希ちゃんが学生達の相手をしている間、その後ろで柚希ちゃんの背中に寄りかかりながらもそもそとホットドックを食べていた。飲み物は柚希ちゃんが買ってくれた、かとーん茶という烏龍茶みたいなのだ。


横にある時計をちらりと見ると、まだかなりあるのでのんびりしていても大丈夫だ。ホットドックをお茶で飲み込んだ後、あんパンに手を出した。その時には、もう学生達は居なくなったらしい。


「おい、暖かいお茶あるぜ、飲むか?」


「んーじゃあ頂こうかな。」


柚希ちゃんから貰った、かとーん茶ではない、湯呑みに入れた苦めのお茶をズズッとすする。甘いあんパンを食べていた私にはちょうどいい。


「柚希ちゃんさ、何でこんなに人が綺麗に並んでたか知ってる?」


不思議に思ってたことを、近くにいたであろう柚希ちゃんに聞いてみる。


「あー‥俺が脅したからじゃねぇかな。ギャーギャーるせぇし、いっぺんに注文されても聖徳太子じゃねぇからわかるわけねぇし‥ちょっとキレただけだぜ?」


いや、キレるの度合いがさ、こう‥柚希ちゃんの中ではちょっとでも私たちみたいなぼへーっとしてる一般ピーポーにはキツかったんだよ‥‥。


「柚希ちゃん、ご飯はどうするの?」


「忘れたんだよな、今日。金もってくんの忘れたし、だからいえ帰ったら適当に食うわ。」


そう言って売れ残りのパン達を見つめる。そこにはやっぱり菓子パンばかりで、菓子パン食っても腹が膨れる気がしねぇしなぁと柚希ちゃんはぼやいていた。


そういえば、柚希ちゃんはパンツを洗ってくれと私に言っていたなぁ‥‥あのときのパンツの柄はなかなかエキセントリックな柄だった。どこで売ってるんだろう‥あ、柚希ちゃん結局あれってはいてたのかな、はいてなかったのかな。


なんとなくじぃっと柚希ちゃんの股間を見てしまう。柚希ちゃんはその視線気付いているようだが止めも隠しもしない。これは存分に見てくれアピールかな。


そういえば、柚希ちゃん今日どんなパンツはいてるんだろう、やっぱりエキセントリックな柄なのかな?


「‥やらしー、なに見てるんだよ?」


「いや、柚希ちゃん今日何のパンツはいてんのかなって。」


「セクハラだろうが‥ま、まぁおめぇになら見せてやっても‥‥」


もじもじ、腰の当たりをつつっと撫でてアピールする。あ、赤いの見えた。

いや、興味はあるけど別に見せなくていいよ?教えてくれるだけでいいんだけども。


赤い、チラットミエテル布から目を離せないでいると、ぷるるると電話が鳴った。柚希ちゃんにちょっと失礼と断りを入れて、電話にでる。


「もしもし?」


「花ちゃあん!なんで私がいないうちにどっか行っちゃうの?夫婦はどこでも一緒なの!妻は三歩後ろを歩くんだよ?」


それはいつの時代のことなんですかねぇ‥‥それ以前に私達結婚してたっけ?いやしてないわ。最近、彩乃ちゃんの声が当たり前に聞こえてくるから危うく信じてしまうところだった。


「彩乃ちゃん、ごめんね?今戻るよー。」


「もう‥寂しかったんだから。」


私、教室に帰ったら彩乃ちゃんと結婚するんだ‥。


あ、これ死亡フラグだよ‥かなり前からやられてたわ。彩乃ちゃんという天使にハートばっきゅんと撃ち抜かれてしまったな!


「おい、帰んのか?」


「うん、そろそろ昼休み終わっちゃうし。」


「‥‥また来いよな。」


そう言って、私は柚希ちゃんに見送られた。うーん、今日は何もない素晴らしい一日だったなぁ。

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