第030話 社畜、大地を使った料理を作る
アヴィタさんと煙草を吸いながら談笑する。
なかなか楽しい時間であった。
業務連絡的な話よりは、こっちのが好きだ。
どうでもいい話。
そんなことをしているとヴェラが戻ってきた。
手にはウサギを五匹持っている。
「いいカタのウサギだな」
「これでよろしいです?」
「十分じゃろう。さて、ハルトよ」
アヴィタさんがオレを見た。
「先ほど言っていた料理を作ってくれるか?」
「あいあーい」
安請け合いするオレだ。
そのための準備はちゃんとしておいたのだ。
ヴェラが帰ってくる前にな。
アヴィタさんが、だけど。
とりあえずウサギの解体をしてもらう。
アヴィタさんは手際がいい。
「ハルト、ハルト」
犬みたいに近寄ってくるヴェラだ。
なんかちょっとかわいいな。
「料理ってなんですの?」
「ああ、さっきアヴィタさんと少し話しててな。基本的に龍人族って獲物をとってきて丸焼きにしてるらしいんだ。でな、まぁオレがちょっと目先を変えた料理を作ろうかって」
まぁ少人数だからできるんだろうな。
狩猟採取の生活って。
確実に獲物とってくるし。
「ほおん……それはどんな料理なのです!」
目を輝かせるヴェラだ。
まったく。
食い意地が張ってやがる。
「それはできあがってからのお楽しみってな」
「そうですか……それにしても」
と、オレを見てくるヴェラさん。
「ハルト、臭いますわね」
「気にしてんの! ちゃんと後でお風呂入るから!」
「はいはい」
と、笑うヴェラだ。
ちょっとなんか雰囲気がちがうような気もするが……。
よくわからんな。
「ハルト、できたぞ」
うむ。
いいタイミングだ。
アヴィタさんの手元の調理台って魔法で作ったんかな。
まぁいいや。
こっちの指示通りにしっかりお肉になっているウサギさん。
なんまんだぶ、と手を合わせておく。
さて、このお肉にしっかりと塩をすりこみます。
思っている倍くらいの量でいい。
そんでもって龍人の里にある香草もわけてもらった。
いい香りがするんだ。
行者ニンニクみたいな。
見た目もそれに近い。
醤油漬けにすると美味いんだけど、諦めよう。
「ヴェラ、この香草を細かく刻んで。根っこのところも葉っぱもぜんぶな」
「いいでしょう。任せてくださいまし!」
その間にオレはせっせと五羽分のお肉に塩をすりこんでいく。
途中でヴェラから声がかかった。
見ると、しっかりとみじん切りができている。
これをお肉の中にと。
「アヴィタさん、さっきのお芋もきれいに洗っておいてもらえるかな?」
うむ、とソフトボールみたいな芋を洗ってくれる。
これもきっと美味いと思うんだよな。
「はい。これで食材の準備は整ったな!」
ヴェラと声をかける。
「そこの地面を三十センチくらい掘り返しておくれ」
「ん? そのくらいなら」
トンと足を踏むヴェラだ。
一瞬で穴ができる。
んーまぁいいか。
その中にさっき集めた石をぽいぽい入れる。
「その石を火の魔法であっつあつにして」
魔法が使えるって便利だな。
本当は石を焼くのにも、けっこうな時間がかかるのに。
「で、アヴィタさんは水をだして、こっちの葉っぱを濡らして」
大ぶりの葉っぱだ。
繊維がしっかりしているものを選んできたから大丈夫だろう。
本当はバナナの葉っぱで作るんだけどな。
濡らした葉っぱでお肉をひとつずつ包んでいく。
ついでにお芋も包む。
「ヴェラ、石を半分くらい外にだせる?」
これも指先ひとつ。
魔法なんだろう。
ふわりと半分くらいの石が浮かんだ。
オレは残った石の上に葉っぱで包んだお肉と芋を設置する。
じゅわっと音を立てて水が蒸発していく。
とってもいい感じだ。
お肉たちの上に石を戻してもらって、土をかぶせる。
これでいい。
「あとは待つだけだな。だいたい二時間くらいってところか」
「えー!」
アヴィタさんとヴェラが抗議の声をあげた。
「待つのも料理の醍醐味ってね。これで美味くなるんだから」
まだ、ぶーぶーと文句を言っている二人だ。
丸焼きにしても、焼けたところから食ってくんだもの。
そりゃあ、我慢できないかもしれんな。
でも、ここは我慢だ。
「料理ができるまでの間、風呂に行こうよ。アヴィタさん、さっきの湯がでるって言ってた場所ね」
「むぅ……ただ待つよりはよいか」
「ですわね。わたくしも湯に浸かりたいですし」
ってことで。
オレはヴェラに抱っこされる。
そして、アヴィタさんの先導で湯のある場所に行く。
龍人の里から、二十分くらいかな。
空を飛んで行くと、川縁の場所にでた。
ここにお湯が沸いているらしい。
まぁ温泉郷によくあるタイプだな。
河原を歩いて、ちょっと手をつけてみる。
うん、なかなかいい感じだ。
ちょっと熱いくらいだな。
「ヴェラ! ちょっとここをさっきみたいに掘って」
指示を出していく。
熱いお湯のところから、少し離れた場所に穴を掘ってもらう。
そこに水路をつなげて、お湯を導く。
ついでに川からも水路を作って水が混ざるようにする。
川からの水路はせき止められるように作ってもらった。
これでいい。
「うむ。こっちの熱い湯の方が好きじゃ」
アヴィタさんがすっぽんぽんになっていた。
で、熱い方のお湯に浸かっている。
おおう!
ナイスバディ!
グラビアアイドルよりもグラビアしてる。
「んーわたくしもこっちのお湯はちょっとぬるいですわ」
オーケー。
オーケー。
分かれて入ろう。
一緒の湯船に入ったら、出られなくなりそうだからな!
ヴェラもすっぽんぽんになる。
魔法で服を作ってるとか言ってたもんな。
アヴィタさんも同じだろう。
なんかエロいってよりもきれいだ。
二人とも。
で、ぜんぜん恥ずかしがってない。
たぶん、男として見られてないんだろうな。
そんなことを考えるオレであった。




