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鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


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第023話 社畜、メテナ廃神殿にたどり着かない


「じゃあ、さっさと天幕を張るか」


 ヴェラとのやりとりが照れくさい。

 中学生みたいなことやってんじゃないよ、まったく。


 天幕な。

 さっさと張るか。


 いや、その前に灯りがいるかな。

 月のお陰で真っ暗ではないけど、なにせ初めての天幕だ。

 

「ハルト、天幕はわたくしがやりましょう」


「いいのか?」


 ほおん。

 ちょっと意外な発言だな。


「ええ。この天幕は魔法を扱えないと張れませんので。その代わりに料理でも作ってくださいな」


 そういうこと。

 なら、料理はおまかせあれ。


「了解! って火がねえけど?」


「問題ありませんわ!」


 ヴェラが指を鳴らすと、火の球がでてきた。

 うーんまぁ、いいか。

 

 調理器具と携行食糧をだす。

 ここは鍋物だな。

 

 調理器具から金属製の鍋をだす。

 こいつが重かったのか。

 ちょっとした帽子くらいの大きさの鍋だ。

 

 そこに水をドボドボ。

 出汁の代わりに干し肉をちぎって入れる。

 これで塩味もつくはずだ。

 

 エグいほどしょっぱかったからな。


 で、携帯食料をあさると豆を乾燥させたものがあった。

 これもドボドボっと入れてしまう。

 

 あとは……かっちかちのパン。

 それとドライフルーツかな。

 

 ドライフルーツは食後のお楽しみ。

 かっちかちのパンはどうするか。

 

 火であぶっても柔らかくなりそうにない。

 ってか、残しておいて明日の朝食にするか。

 

 岩を組んで火の上に即席の調理台を作って。

 鍋を置く。

 

 しばらく煮こんで……ってかめっちゃ水吸うじゃねえか。

 追加で水を入れて、また煮こんでいく。

 

 うん。

 見た目は美味そうだ。

 

「ハルト、ちょっとそこを退いてくださいな」


 ヴェラだ。

 天幕を張るんだろうか。

 振り返ると、でかい布が地面に敷かれていた。

 

「見ててくださいまし」


 ヴェラが布に手を置いた。

 同時にモコモコっと布が盛り上がっていく。

 

 あら不思議。

 なんだっけか。

 

 あれだ。

 モンゴルのゲルだったかな。

 

 円柱状のテントで屋根の部分が円錐になってるの。

 見た目はそっくりかな。

 

 思わず、拍手をしていた。

 シンプルにすげー。

 

「ふふん! どうです!」


 どや顔をするな。

 でも、美人はどや顔も美人なんだな。

 

「さ、メシでも食うか」


 背負ってきたリュックから深めの皿と匙をだす。

 もちろん、オレとヴェラの分だ。

 

「匂いは合格ですわね!」


 皿によそってやった肉と豆のスープを渡してやる。

 たぶん腹が減ったんだろう。

 魔力がどうのこうの言ってたからな。

 

「さて、お味の方は」


 ヴェラがスープを口に運んだ。

 オレも食べる。

 

「んーまぁこんなもんか」


 オレからしたら十点中五点くらい。

 いつも朝食で食べているものよりは美味い。


 けど、味が単純だ。 

 まぁ食材がないから仕方ないか。 


「んむ。美味しいですわ」


 がっつくヴェラだ。

 

「お豆とお肉がいい感じですの」


 嬉しいもんだな。

 こうやって一緒に食べるのは。

 

「なぁ食べながらでいいから聞いてくれよ。明日はメテナ廃神殿ってところに向かうんだよな?」


「もぐもぐ……」


 こくんと首を縦に振るヴェラ。

 なんか頬張っているのがかわいい。

 

 ごっくんと音が鳴る勢いで飲みこむ。

 それから口を開くヴェラだ。

 

「そうですわ。ここからですと、だいたい五・六時間ってところですわ」


 え? もうそんなに進んだの?

 往路で一日とか言ってたのに。

 

「ものすごく、がんばりましたわ!」


 クッ。

 かわいいな、ヴェラ。

 

「んー、じゃあ明日の朝にでれば昼くらいには着くか」


 そんな感じだ。

 社畜たるもの、多少の早起きくらいで動じない。

 眠れるだけマシだもの。

 

「あ、ヴェラ。明日の朝はかっちかちのパンだからな。スープは残しておいてくれよ」


「あえ?」


 ヴェラが変な声をだした。

 見れば、もうスープがなくなっている。

 具もなにもかも。

 

 鍋底しか見えない。

 オレの明日も見えない。

 

 腹の虫がぎゅるぎゅると音を立てる。

 もう、皿にある分だけ。

 

 いかに社畜といえど、メシだけは。

 メシだけは食わせておくんなせえよ。

 

「お、おほ、おほほほほ」


 笑って誤魔化すヴェラだ。

 いいさ、どのみちヴェラがいなけりゃどうにもならないんだからな。

 

 オレにはとっておきのドライフルーツがある。

 しかし、このパンどうするかな。

 

 水でふやかしてくうか。

 いや、蒸気にあてたらちょっとはマシになるかな。

 

「ヴェラ、悪いけどさ、魔法で水だして」


「いいですわよ」


 革袋の水筒に水を入れてもらう。

 これで朝の水は確保できた。

 

 松の葉っぱでもあれば、お茶にできるんだけど。

 ここは岩の上だからな。

 なーんもない。

 

 朝は白湯だな。

 

「ところでハルト、もうスープの追加はできませんの?」

 

「入ってた携帯食料全部いれたからな」


「ほおん……全部(・・)ですわね?」


「そうだけど?」


「ふふーん。わたくし、まるっとお見通しですわよ」


 ドキッとしちゃう。

 だって、虎の子のドライフルーツ。

 あ……まずい。

 

「にゅふふ。あるようですわね。半分でいいですわ。だしなさい」


 仕方ない。

 ドライフルーツを半分渡す。

 でも、これ以上はダメだからな!

 絶対に!

 

「わかってますわよ。もう、ハルトは食いしん坊さんですわね!」


 おほほほ、と笑うヴェラ。

 どの口が言うんだよ。

 まったく。

 

 腹ぺこポンコツお嬢様が。

 

「誰が腹ぺこポンコツお嬢様ですか!」


「お前だよ!」


 さっき褒めて損したぜ。


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