第020話 社畜、やっぱり鑑定先生には頭が上がらない
魔王様に怒られた後だ。
オレたちは鍛冶場に顔をだしていた。
モアナとメルの姿は見えない。
今、彼女たちがいてもどうにもならないからな。
必要になったら呼べばいいだろう。
「おはよう、親方」
「おはようさん」
かかっと笑うギーガ親方。
ニンゲンのオレを見ても差別しないいい人だ。
「ハルトよぉ、昨日言っとったやろ? ほれ」
ぽん、とオレに包みを投げ渡してくる親方だ。
それをキャッチして、中を見る。
おお。
煙草セットだ。
葉っぱとキセルと灰皿まで。
「暇やで、キセルと灰皿は作っといたったわ」
好き!
親方、だいしゅき!
なんて、心が温まる贈り物なんでしょう。
「ありがとう! ずっと吸いたかったんだ!」
「ええよ、ハルトは頑張っとるでね。気にせんで受け取ってちょうよ」
「親方、マジまんじ!」
「ハルト……その訳の分からない言葉はなんですの?」
「いや、なんとなく雰囲気で」
「……まったく。いいから仕事をしましょう」
オレとヴェラのやりとりをみて、豪快に笑う親方。
顔は怖いけど、マジでいい人だ。
「さて、今回は炉の問題ってことなんだけど……親方」
オレは親方を見る。
相変わらず、筋骨隆々で素晴らしい肉体だ。
シュワちゃんよりもシュワちゃんじゃねえか。
「魔王城で使っとる炉は魔導炉ってやつなんだわ」
ほう。
魔導炉とな。
さっぱりわからん。
「炎晶石っちゅう魔石の一種を使っとってな。炎の力を吸い取って、炉の耐久度を上げてくれるんだわ」
まぁなんとなくイメージはできる。
が、仕組みはさっぱりだ。
こういうときは鑑定先生の出番だな。
「出でよ! ザ・鑑定!」
氏名:なし
種族:魔導炉
性別:なし
状態:故障中
備考:炎晶石が使われた上質な炉。過度な火力により損傷が激しい。交換がおすすめ
なんだか時間は経ってないのに、久しぶりな気がするぞ。
鑑定先生! 今日もお願いします!
「親方、オレの鑑定先生によると、交換した方がいいって」
「それはオラもおんなじこと思っとったがね。もうこの炉は使いもんになりゃせんわ。今のままやとさ」
「直す方法があるってこと?」
こくんと大きく首を縦に振る親方。
「割れたガワを直すことはできるけどさ、炎晶石は無理なんだわ」
「……なるほど。じゃあ炎晶石をなんとかしたら使えるようになるってことか」
せやな、と親方は笑った。
ついでにオレも笑ってみせる。
「親方、悪いけど炎晶石をとりだしてくれるかな」
ええよ、と二つ返事だ。
デカい身体を窮屈そうにして炉の中へ。
そこでしばらくして、親方がでてきた。
手には三十センチくらいの結晶がある。
うっすらと小豆色をした水晶みたいな形だ。
六角柱状で先端が尖っている。
ただ、手渡された物を見てみるとヒビが入っている。
今にも割れてしまいそうだ。
ここは鑑定先生にお願いするか。
「オレに取り憑いた悪霊! 鑑定!」
氏名:なし
種族:炎晶石
性別:なし
状態:損傷(中程度)
備考:誰が悪霊やねん!
おっと。
ちょっと言葉を選びまちがえました。
申し訳ない。
お願いします! 鑑定先生!
出番です!
氏名:なし
種族:炎晶石
性別:なし
状態:損傷(中程度)
備考:過度の火力によって損傷してしまった炎晶石
ありがたや、ありがたや。
やっぱり鑑定先生には敵いませんな。
しかし! だが、しかし、ですぞ。
鑑定先生のお力はまだまだこんなものではない!
そうでございましょう?
そのお力をこの下僕めにお与えください!
氏名:なし
種族:炎晶石
性別:なし
状態:損傷(中程度)
備考:炎の魔力を注ぐと吉。純度の高い炎の魔力を注ぐと大吉。
おお!
さすが!
鑑定先生は頼りになりますな!
ちなみにその純度の高い炎の魔力の持ち主とか……いかがですか?
氏名:なし
種族:炎晶石
性別:なし
状態:損傷(中程度)
備考:続きが知りたければ課金しましょう
ぐっ……。
この悪辣さ。
引っ張っておいて、最後ではしごを外しにかかるとは。
……沼。
まさに鑑定沼製造機!
この下僕、本来なら課金したい所存。
ですが、魔王軍は、いやさ魔族はお金がないんですう。
比喩じゃなくて、本当の意味でないんですよう。
氏名:なし
種族:炎晶石
性別:なし
状態:損傷(中程度)
備考:知らんがな。出すもんだしてもらわんと怒るでしかし!
浪速の漫才師みたいなことを言いだした。
仕方ない。
今回は諦めよう。
「ハルト……さっきから気持ち悪い動きをしてましたわよ」
「だまらっしゃい! オレは鑑定先生と語らっておったのです!」
「で、わかりましたの?」
もちろんだ! ニヤリと笑ってみせる。
「鑑定先生に隙はない!」
ぬわははは!
高笑いだ。
「炎晶石には炎の魔力を注ぐといいらしい」
「……炎の魔力ですか」
ふむ、とヴェラが顎に手をあてて考えこむ。
「もっと言えば、純度の高い炎の魔力がいいらしいぞ!」
「魔力ねぇ」
ヴェラが意味深な目をオレにむけた。




