表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/39

第019話 社畜、ささやかな楽しみを奪われて瞋恚(しんい)を覚える


 悲報! 魔族はノーお賃金で働いていた!

 衝撃の事実があったとしても、だ。

 

 身体は疲れる。

 心も疲れる。

 異世界は刺激がいっぱいだ。

 

 魔王様の部屋を後にしたオレは個室に案内された。

 なんちゅうかあれだ。

 

 ビジネスホテルみたいな感じのワンルーム。

 って言っても部屋風呂もないし、トイレもない。

 

 草じゃないベッドがある。

 あと質素な机と椅子が二脚だけの部屋だ。

 

 せめて水くらいは欲しい。

 そうヴェラに言ったら、魔法で作ればいいじゃないときたもんだ。


 ふざけんな!

 こっちは魔法童貞なんだよ!

 

 ってことで丁重にお願いして、ヴェラに水をだしてもらった。

 水を入れる小さな樽は部屋にあったから。

 

 で、寝た。

 ちなみにおトイレは共同の物を使うか。

 あるいは部屋におまる的なアレを置いて使うかするらしい。

 

 必ず改善したいところだ。

 なんか魔王城での生活を快適にすることが目標になってくるな。

 

 そういうことばっかりしてる訳にはいかないんだけど。

 古き神がどうたらと言ってるからな。

 

 でもな、クオリティ・オブ・ライフは重要だ。

 生活が快適でなければ、そりゃもう人生詰んでいるのと同じだから。

 

 そんなことをつらつらと考えているうちに眠っていたようだ。

 チクチクしないベッドはいい。

 でも、ちょっとチクチクも恋しい。

 

 ニンゲンとはおかしなもんだな。

 

「ハルト、おはよう!」


 ヴェラだ。

 まぁべつにいいけど、ノックくらいはしてほしい。

 

「おはよう。いつもすまないねぇ」


 ヴェラが今日も食事を持ってきてくれる。

 だって、オレが食堂とかに顔だしたらおかしな空気になるからな。

 この点はヴェラに感謝だ。

 

 どれどれ。

 今日のメニューは、と。

 

 いつもの硬くてしょっぱくて酸っぱいパンがひとつ。

 水の如き澄んだスープが一皿。

 お水。

 

 今日はアピの実はついてない。

 その代わりにスターバのコロッケがひとつ。

 

 ひとつ?

 

 ん? と思ってヴェラの顔を見た。

 オレと目を合わせない。

 

 だが、オレの鑑定眼は見逃さないぜ!

 そのぬらぬらと光った唇。

 

 こいつ、やりやがったな。

 

「なぁヴェラ。スターバのコロッケってひとつだけ?」


「そ、そうですわよ」


「そっかぁ。二つあったらヴェラにもおすそ分けしようと思ったんだけどな。ひとつじゃ仕方ないか」


「…………」


 黙ってオレを見るヴェラだ。

 コロッケを半分に割って、口の中に入れる。

 

 うん。

 かぼちゃコロッケだ。

 じんわりと甘みが口の中に広がっていく。

 

「ところでさ、今日は親方のところに行って、炉の問題を解決するんだよな?」


「そ、そうですわね。その予定ですわ」


 ずずっとスープの皿に口をつけて飲む。

 なんて言うかな、塩のスープ?

 

 まぁあっためた海水みたいなもんか。

 せめて出汁とれよ、出汁をよう。


 パンをちぎってスープの中に。

 残ったコロッケの半分を指でつまむ。


「ああ!」


 ヴェラが声をあげた。


「ん? どうした?」


「い、いえ、なんでもありませんわ!」


「そう。じゃあいただきます」


 残る半分を口へ。

 ヴェラの喉がごくりと鳴ったのをオレは聞き逃さない。

 この食いしん坊め。

 

「いや、でもスターバのコロッケが魔族に受け入れられて、オレは嬉しいよ。ヴェラなんて最初は断固拒否しますわ! なんて言ってたのにな」


「あ、あれは! 仕方ないでしょうに。初めての食べ物だったのですから」


「だね。で、ヴェラは今日いくつ食べたんだ?」


「そうですわね。四つ、いただきましたわ」


 バカめ。

 まんまと引っかかりおったな。

 これぞ孔明の罠!


「ふぅん……それってオレの皿からだよね?」


 ギクッとした表情になるヴェラだ。

 鳴らない口笛を吹いて誤魔化そうとしている。


「大事なことだから、もう一度言うぞ。オレの皿から盗み食いしたよね?」


「ぬ、盗み食いなんて人聞きの悪い! そんなことするはずがありませんわ! わたくしはただ毒味をしただけです」


「へぇ……食べたのは認めるんだ?」


「あ……」


 ヴェラが逃げた。

 待てこらぁあああ!

 

 オレのささやかな楽しみを!

 奪いやがって!

 

「で、お前らは朝からケンカをしていたということか」


 オレとヴェラは正座していた。

 魔王様の前で。

 

 あんまりにもギャアギャア騒ぐもんだからこうなった。

 魔王様直々に怒られたのだ。

 

「まったく! スターバのコロッケで揉めるとはな、もぐもぐ」


 クッ。

 ちびっ子魔王め。

 オレの前でコロッケを食べながら説教するとは!

 

「ま、では今回の仕事がうまくいけば、大量のスターバコロッケを食わせてやろうではないか! 魔王権限で!」


 どどーんと宣言されてしまった。

 どうやらオレの報酬はかぼちゃコロッケ食べ放題に決まったらしい。

 

 ブラックだけど魔王軍で社畜としてがんばりますか。

 鼻先ににんじん釣られたみたいなもんだ。

 

 でも、まぁ美味い飯と引き換えってのは悪くないな。

 

『ハルトのせいですわよ』


『そこはお陰って言えよ!』


 まったく。

 だいたい盗み食いしたヴェラが悪いんじゃないか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ