表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定眼の社畜、今日もブラック魔王軍でなんとかがんばります!  作者: 鳶丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/39

第016話 社畜、盛大にやらかしてしまう


「これ、あかんやつ!」


 そう思ったとき、メルとモアナが膝から崩れおちた。

 おい、と声をかけようとした瞬間だ。

 

 ヴェラが二人を抱え、オレを細い尻尾で捕まえて飛び立った。

 

「ぐぬぬ……なんて威力ですの」


 ヴェラの飛行能力がなかったら危なかったかもしれん。

 引っ張られながらも、なんとか逃げ切れたからだ。


「バカ! ハルト、なんてことをしていますの!」


 実験をした荒野から少し離れた場所でお説教を受けている。

 オレは正座だ。


 メルとモアナはまだ寝ている。

 魔力切れってやつらしい。

 

「いや、あそこまで規模が大きくなるとか思ってなかったんです」


 これは本当のこと。

 あんなに大規模な火災旋風が起こるとは思ってなかった。


 今はもう消えてしまっている。

 恐らく、メルとモアナが気絶したからだろうとは思う。

 

 まぁ岩場だから燃えるものもないしね。

 これが燃えるものがある場所だったら、魔力が切れてもまだ続いていたかもしれん。

 

「まったく! 正直、わたくしでも怖かったですわ。あれは禁呪に指定されてもおかしくありません」


 なんですと?

 き、禁呪。

 

 なんて素晴らしい響きの言葉なんだ。

 ついドキがムネムネしちゃうじゃないか。


「ハルト! 聞いてますの!」


「はい! 聞いてます!」


 おっと。

 今はトリップしている場合じゃない。

 

 禁呪ね。

 これはまた後で聞かないといけないな。

 魔王様にでも。

 

「まったく! ですが、これでハルトが言っていた意味がわかりましたわ」


 だろう?

 一足す一が十にでもなっただろう?

 

「ま、今回はメルとモアナが協力してくれたお陰だな。まぁあれだけの規模の魔法を使う必要はないんだよ。それこそ戦争……」


 戦争中だったわ。

 あ、これ。

 

 ひょっとして、ニンゲン軍めっちゃ不利になるんじゃない?

 うーん。

 なんか悪いことをしたような。

 

「ハルトの言いたいことはわかりますわ。小規模にあの魔法を使って火力を二倍にということですわね」


「そうそう! たぶんいけると思うんだよね」


「ギーガ親方とも相談しないといけませんが、わたくしも問題ないかと思いますわ」


 う、うーんと声が聞こえた。

 メルとモアナが目を覚ましたのだ。

 

「二人とも大丈夫ですか?」


 ヴェラの声に上半身を起こすモアナとメルだ。

 

「ああ、悪い。魔力切れなんて久しぶりだよ」


「私もです。あの魔法、どんどん規模が大きくなって際限なく魔力を吸っていきました」


 ごめんな。

 そこまではわからんかったよ。

 オレ、魔法使ったことないし。

 

 はう!

 そう言えば、オレも魔法って使えるのかな?

 魔法少女ならぬ、魔法おじさんになるチャンスじゃん。

 

『ヴェラ! ヴェラ!』


『なんですの、わざわざ念話なんて使って』


『オレも魔法使えるの? ねえねえ! 使える?』


『んーまぁ使えないことはないと思いますが……』


『なんだよ歯切れ悪いな』


『まぁお休みのときに練習してみましょう!』


『マジか! ありがとな、ヴェラ! 愛している!』


 まったく、とヴェラが呆れている。

 オレたちが他愛のない話をしている間、モアナとメルは考えていたのだろう。

 

 おもむろに口を開く。

 

「ただ……スゴいと思いましたわ」


 モアナが自分の手をじっと見つめている。

 

「オレもそう思った。あんな魔法が使えるなんてな」


 メルも同じように手を見つめていた。

 

 二人とも実感したのだろう。

 魔法を合わせるという意味を。

 

「うん。メルとモアナが力を合わせたらスゴいことができるだろ? それがオレの言いたかったことなんだよ」


 ここで話をまとめにかかる。

 やっぱり成功体験があると説得しやすい。

 

「でな、二人にはさっきの魔法を自在に使えるようになってほしいんだよ。もっと小規模で安定して使えるようになってみ? 鍛冶場での火力問題も解決するだろ?」


 敢えて戦争のことには触れない。

 触れたくない。

 火災旋風の被害は知っているから。

 

 確かにオレは古き神に召喚された魔王軍のニンゲンだ。

 でもだからと言って、なんでもかんでも協力はできない。

 

 だって、多くの人の命を奪うことになるかもしれないから。

 さすがにちょっとそこまでは背負いきれない。

 

 もっと言えば、だ。

 集団転移した連中だっている。

 

 顔も名前も知らない連中だけどな。

 オレにとっちゃ数少ない同胞なんだよ。

 

 こっちの世界であっちの世界を知っているニンゲンなんて他にいない。

 だから――無差別に殺すような方法は広めたくないんだ。

 

 へたれと笑うなら笑ってくれ。

 

「……笑いませんわよ」


 ぼそりとヴェラが呟いたのが聞こえた。

 ありがとな。

 ちょっと心が軽くなる。

 

「……わかった! オレは協力してもいい!」


 メルがオレの目を見て言う。

 

「私も協力しましょう。私たちの可能性が広がるのですから」


 モアナもオレを見た。

 

「ありがとう。二人が協力してくれるのはオレも嬉しいよ。まぁ仕事だからという話じゃなくてね。素直にそう思うんだ」


 ニカッと笑ってみせる。

 そして、モアナとメルの手をとった。

 オレの手と合わせて重ねる。

 

「ヴェラ! ヴェラも重ねて!」


 苦笑いのヴェラが手を伸ばして、四人の手が重なった。

 

「オレたち、ズッ友だからね!」


 なにを言ってるんだ、こいつは。

 オレ以外の三人はそんな目で見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ