蘇我鞍作、大海人皇子と鎌倉武士を作り出す。
俺、蘇我鞍作、よく知られている通称だと入鹿になんか妙にリアルなVRゲームにダイブ中。妙にリアルというのはステータスウィンドウとか全然出てこないし、時間経過がめっさ長い。体感時間で始めてからすでに3年ぐらいたっているのだが。
大化の改新(乙巳の変)で殺されるのはゴメン、と犯人の中臣鎌子(藤原鎌足)と中大兄皇子とサッカーを広めて仲良くしていたら、一族で推している古人大兄皇子はどうなった、と父の毛人や従兄弟の石川麻呂から吊るし上げられている。
ついでに密偵として来日していた新羅の英傑金春秋とも仲良くしていたら蘇我氏は百済推しだ!とこちらも吊るし上げられているのだ。
…だって古人大兄皇子は悪い人じゃないけど地味なのだ。だから父は操りやすい、と踏んだのだろうけどこの周りが狼ばかりですぐ殺されるような時代ではいい人だけでは生き残るのは難しいのだ。しかも目が悪い。平和な時代ならいい大王になれそうだけどな。個人的には山背大兄王を助けたようになんとか助けたい。後その山背大兄王はいい加減金遣いを抑えてくれ。なんだその各国に一つずつ寺を建てたいとかいう100年ほど早い国分寺計画は。泣く泣く金は調達しているから妙になつかれているけど。
後百済の王子扶余豊璋も今ひとつしゃっきりしないんだよなぁ。正直言って堅実な弟の方がいいと思うのだが、『兄より優れた弟はいねぇ。』な国なんで我が国は兄優先なんだよな。でもそうはいっても6男なわけで、史実のように唐が3男持ち出してくると求心力が崩壊するというのがまたつらい。だから俺はむしろ最初から勝者の新羅&唐にノリたいのだが…しがらみが辛いぜ。
と言いつつも今後に備えてせっかくだから俺はチートに取り掛かることにした。そこで俺は巨勢徳多や大伴長徳等を引き連れて宝女王の宮殿…ではなく私邸に向かった。
宝女王の私邸では次男の大海人皇子が出迎えてくれた。
「あらあら鞍作殿、こんな昼間に来ても母はいませんよ。」
…そりゃいつも夜に懇ろになりに来ているからって明け透けすぎるぜ王子様。
「いやそれはいつも申し訳ない。」
と思わず頭を下げて続ける
「今日は大王(=宝女王)ではなく、皇子様に用が。」
「私にですか?」
「大海人皇子様の舎人(=家来)には村国男依や朴井雄君をはじめ多くの勇者が仕えていると聴きます。また尾張氏など武勇に優れた諸族とも親しいと。海北(朝鮮半島や中国)に対抗するため、我が国も軍制や装備を新たにする必要があると思うのですが、ぜひそのような優れた方々に協力してもらえたら、と。」
「それは面白そうですね。いいでしょう。」
と俺の検証に大海人皇子の舎人も付き合ってもらうことにした。
「まずはこの弓矢を使ってもらいたく。」
「これは木を曲げただけではないのですね。」
と大海人皇子。
「そうです。曲げた木の前後に竹を張り合わせて藤で巻いて漆で固めてあります。」
それを朴井雄君が借り受けて引いてみる。
「これは…随分としっかり張ってありますな。」
と感心する雄君。矢をつがえてスッと狙いを定めると、ハッと矢を放つ。
矢は鋭く飛んで木に突き立った。
「おお、この弓矢なら旧来のものの2倍、いや3倍は飛びますな。威力も段違いです。」
ぐふふ。弓を複合弓の三枚打弓にしたのだ。単純な木を曲げた弓とは段違いに強力だぜ。流石に戦国時代じゃないから鉄砲とかは無理と判断した俺は、この飛鳥時代にざっくり鎌倉時代ぐらいの装備を持ち込む作戦に出ることにしたのだ。
「この鎧も矢を射やすくて良いですな!」
と嬉々とした様子の村国男依。
「鎧兜は鉄の小札は正面にとどめて革の小札を主体に、正面で合わせるのではなく背後で合わせるように。それから…」
と鎧を説明する。見かけは源平の大鎧に近いがあれだと重すぎて(元々馬上特化している)降りたときに動きにくいので裾周りなどは軽量化して後年の腹巻きに近い作りにし、ついでに古い鎧の弱点を補うために面頬などは足してある…うん多分コレ戦国期の田舎の方で使われていた様式に近いな。律令・古墳時代の埴輪の戦士チックな格好から一気に侍軍団の登場だぜ。
「それと一般の兵もですな…」
と胴丸的な鎧に、鉄兜…はこの時代の鉄の生産だとキツイから革を塗り固めた傘帽的なもの、それに弓もしくは投石機、槍をもたせたモデルを見せた。
「これは雑兵に持たせるには随分贅沢な感じだねぇ。」
と大海人皇子。
「普通は先の尖った木の棒持たせるだけだろ。」
「コレぐらいの装備があれば戦力としても期待できるかと。」
と実際に模擬戦的に行った上で、皆でああではない、こうではない、と議論をし、大海人皇子のところにはいくつか装備を『参考に』と残して俺は帰ったのだった。
帰りに巨勢徳多が
「あのような装備をもたせる兵はどうするのですか?」
と訪ねてきた。
「そこは大伴氏の様な元々武門の家が一つの中核となろう。それと俺は新たなる常備軍を備えるのが良いと思っているのだ。」
「その人手はどうやって?」
「ムラで仕事にあぶれている次男、三男を雇い入れて武門の専属とするのだ。」
要は兵農分離作戦だな。まぁ現実専門兵食べさせないといけないから数は限られると思うけど。
…こうやって俺は親しい関係を中心に三千程の鎌倉武士集団(郎党込み)を作り上げた。当然宝女王の許可は得ているが…世の中では『鞍作が私兵を集めて世を支配しようとしている。』と悪評が更にたってしまった。
ちなみに転移・転生モノで毎度おなじみチートの硝石丘は屋敷を臭くしたくないの一心でトイレを作らせたので実は準備中なんだよね。多分後三年ぐらい熟成にかかるけど。後ペニシリンは諦めて、手洗い消毒の徹底だけで押し通すことにした。
さあ、今後を考えると今度は船造りだぜ、と俺は燃えるのであった。




