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蘇我入鹿になっていた。

新作連載開始です。よろしくお願いします。ノリと勢いで書いてますので続けられるように応援お願いします!(前のみたいに最後までの筋は作ってないのです。)

…頭が痛い。


 俺が目を覚ますとそこは古めかしいベッド…というか寝台の上だった。厚いクッションや布団はひいておらず、ゴザというか筵のようなものが何枚も重ねて布団の代わりになっていて、掛け布団も綿が入っていないようなペラッペラのモノが重ねてあるようなものだ。


「ん、ん…林太郎りんたろう、起きたのか?」


 と隣で声がするので振り返るとそこには裸の女が寝ていた。…歳は多分30代はいってそうな熟女だが、なかなかの美人だ。


 見知らぬ天井、隣には美女…となると俺はどうやらVRゲームの中に入り込んだようだ。

第一俺の名前は林太郎ではない。


 昨晩、俺は仕事から帰ると自慢のゲーミングPCで最新のVRゲーム、「歴史王」をプレイすることにした。このゲームは「歴史上の人物になって歴史のifを楽しんじゃおう!」というコンセプトでものすごく作り込まれた世界が好評で、偉人からそのへんの庶民まで誰にでもなれ、自由に生活できるというのが売りなのである。例えば坂本龍馬になって暗殺を生き延びて明治時代の商売をして財閥を作る、とか織田信長になって本能寺を生き延びて…などのプレーが人気があった。


 俺はその「歴史王」をついに手に入れ、専用のグローブとVRゴーグル…といっても『より没入感を高めるため』に頭をすっぽり覆うヘルメットになっていたが…を装着し、気合を入れてさあやるぞ!と画面を開いた。そこで『行きたい時代と人物、ゲームモードを選択してください』という文字がフヨフヨと眼前に浮かんでいる。


 なになに、場所はまだ日本編しか実装されていないので日本限定。ジャンヌ・ダルクやハロルド王、ルイ16世をやりたいなら後日実装を待ってくれ、と。時代は…古墳時代から昭和までだと…これ聖徳太子になるとかできるのか。と俺はニヤニヤした。


 難易度はベリーイージーからヘルモードまであり、難しい方から甲乙丙丁…ってどこの艦○れだ。甲勲章で人権装備とかないだろうから最初はベリーイージーの丁でハーレムとか作りたい。ぐへへ。


 などと選択肢を見ながらニマニマしているところで激しい頭痛に襲われた。あまりに痛いのでこりゃゲームは一旦やめて薬でも飲んで落ち着いてから再開しよう、と思ったのだが、あまりの痛みに気が遠くなってきて…気がついたら知らない天井だった。


 というわけで俺はどうやら『歴史王』のVR世界にいるようなのだが、時代とか人物とか選択した覚えがない。無意識のうちに選択していたのだろうか。まずい。ここはどこ俺は誰?


「林太郎、どうしたのじゃボーッとして。」


 うん、やっぱりゲームの世界だな。だってどこの時代かわからなくても美女の言っている言葉がわかるもの。


「すまない、頭が痛くて…ところで頭痛で頭がぐるぐるしているからお尋ねしますが、俺は誰であなたは?」

「わらわの事を忘れたというか、何という戯れじゃ。」


 と美女は薄暗がりで呆れたような顔をしている。


「わらわは宝女王たからのひめみこ、そなたは蘇我鞍作そがのくらつくりであろう。別名の『林太郎』でわらわには呼んでくれ、と言っていたではないか。何を言い出すのだ。」


 と言ってカラカラと笑う。なかなか笑顔が可愛い。


 俺は頭の中をフル回転で思い出すことにした…幸い日本史は好きでそこそこ詳しいのだ。


 …しばらく考えて思い出した。蘇我鞍作…蘇我入鹿そがのいるかじゃないか!


「イルカじゃないか!なんで?俺?」


 と思わず叫んで上半身起き上がって布団をはだけてしまった。


「イルカ…?そちのここはまるでイルカのようにピンピンしているの。」


 とちょっと頬を赤らめた宝女王が俺の下半身を指差す。


「え、えっとそこは朝の自然現象…」


 と言い訳するも、『ま、ゲームのイベントだろうから美味しく頂いておこうか。』


 と気を取り直した俺は宝女王を抱きしめてキスをすると


「ではその『イルカ』を遊ばせてみましょう。」

「…もぅ。」


 と顔を赤らめた彼女と一戦を楽しんでしまったのだ。


「…いつもにもまして激しかったの…」


 と息を切らしてぐったりしている宝女王を横に、俺は考えていた。どうやら俺は飛鳥時代の蘇我入鹿にダイブしているらしい。蘇我入鹿は別名蘇我鞍作、もしくは林太郎と名乗っていて、入鹿は後の時代に付けられた別称、という説があるのだ。とりあえず皆鞍作と呼んでいるから鞍作と名乗ろう。


宝女王…もどっか引っかかっているけどおそらく愛人なのだろう。なにせ入鹿はこの時代権勢を誇っていたから多分熟女だろうと好みなら口説いていたのだろう。日が差してきたので俺は宝女王に接吻すると名残惜しくも身繕いをして部屋を出た。


 …なんだか建物でかいんですけど。飛鳥時代なんだろうな、という感じで木造の建物は素朴な感じだけど、やたらに建物が多い。部屋を出て回廊のようなところを歩くと、後ろから鋭い視線を感じた。


 ふと振り返ると素人目にも高級そうな赤い服を来た貴公子、という感じの青年がこっちを睨んでいる。


「鞍作!権勢を傘に来て母上を弄びおって!」


 …う。宝女王さん、子持ちだったのか。これは没落貴族の未亡人を権力者の鞍作が『面倒見てやるから俺の言うことを聞け、グヘヘ。』と思いっきり悪代官ムーブをかましていたのかもしれない。俺は思わず謝ろうと思って近づこうとすると、


葛城かつらぎの兄上、鞍作殿は年を経て父上がお渡りにならない母上を気遣って相手をしてくださっているのですよ。」


 と今度は先の青年よりは地味な感じだけど、こちらもやんごとなきという感じの、兄よりは柔和な顔をした緑の服を来た少年が先の青年に声をかけた。


大海人おおあま、お前はそういうけどな!」

「まぁまぁ兄上。鞍作様、いつも母を慰めてくださりありがとうございます。しかしもう少し人目につかないようにしていただけますと助かります。この兄のように気にするものもおりますので。」


 と大海人おおあまと呼ばれた少年が俺に声をかけてくる。俺は思わず頭を下げて


「気遣いが足りず本当に申し訳ない、今後は気をつけて身を慎もう。」


 と謝った。


 それをみて葛城、大海人の兄弟は驚いているようだ。慌てた様子で兄、葛城の方は


「鞍作殿にそこまでいっていただけますとは。どうか頭をお上げください。」


 と声をかけてくれた。俺はそれに感謝しつつそのバカでかい屋敷の門から去ることにした。その後ろから大海人の


「僕らに見つからないようにしてまた来てくださいねー。母上が寂しがるから。」


 と声をかけてくる。俺は盛大に冷や汗を流しながら門の外で待っていた舎人とねり…要は部下に連れられて自分の屋敷に戻ることした。


 …道中、色々思い出してみると…葛城の方はすぐ思い浮かばなかったが…大海人…って大海人皇子おおあまのみこ、後の天武天皇じゃないか!やばい。


 ということは兄は葛城…って葛城皇子かつらぎのみこ、よく知られている名前だと中大兄皇子なかのおおえのみこやん。ということは彼らの母…皇極天皇じゃないですか…しかも父上が生きているって旦那さんの舒明天皇まだご健在…思いっきり不倫なんですが。


 …ということはこのゲーム、『蘇我鞍作が皇極天皇の愛人だった』説採用なのね。まぁゲームだからプレイヤーが楽しめるようにしてくれているのだろう、と納得することにした。


 しかし直後の葛城・大海人兄弟とのイベントとは結構性格悪いぜ、運営。





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