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対決

「だから、イケシテ最後の1人は前原くんなんだよね」


 あ、あっしですかい?

 本人が知らぬ所で四天王に任命されてたってこと?しかもファンクラブ会員数が4人の中で1番少ないし、これ四天王最弱だろ。なんか凄く嫌なんだけど。


「い、いつから僕が四天王に?」


 しかも最弱とは言うものの、それでもファンクラブ400万人超えか……。前世の某超有名アイドルグループよりも圧倒的に多い。嬉しいんだけど現実味がね。400万って言ったら……なんだ?1つの県の人口くらいはありそうだな。なんてこったい。森山さんのお姉さんはファンクラブの運営の方は問題なく出来ているんだろうか?


「何で本人が知らないんだろ……」


 いや、仰る通りで。

 無知な私めを許して下さい。


「実はちょっと前までは、イケメン三天(さんてん)だったんだよね」


 足立さんがビシっと小さな指を3本立てる。

 イケメン三天か。王がついてないからか少しカッコイイな。なんで俺入れて四天王にしちゃったんだよ。イケメン四天で良かっただろ。


「そこに怒涛の勢いで知名度とファンクラブ会員数を増やしていく前原くんが現れて、これは加えるしかないっていう民意が働いたってこと!」


 そうか、民意ね。そら俺も気付かんわ。だって誰も言ってくれないんだもん。

 こう、四天王称号授与式とかないの?誰が授けるのかは知らんけども。


「他の3人は昔っから超有名人だったからね〜。ファンクラブ会員数のここ半年間の伸び率だけでいえば前原くんがぶっちぎりだね!」


 『やったね!』と言わんばかりに足立さんが親指を立てる。

 そんなに有名なのか?いや、間違いなく有名だな。イケシテ全員合わせたら、会員数3000万人近くくらいか。ナニソレ。


 ここに来て事態の壮大さに頭がクラクラする。そんなに居たら、中には凛海みたいなヤバいやつも混じってるわけだ。


 あ〜なんかもう頭痛い。頭痛が痛いわ。


「……それでイケシテのファン同士の小競り合いというのは?」


 いきなりのビックリ情報に処理が追いつかないので、取り敢えずさっき足立さんが言っていた本題の方に話を戻す。


「そうそう!それね!端的に言ってしまうと、イケシテの中で誰が1番素敵かっていう争いなんだよね」


 ……まぁ四天王なんて銘打ってるわけだし、そういう争いは避けられないとは思う。要するに、数人組アイドルグループの中で、ファン達がどのメンバーが一番カッコイイか言い争ってるってことでしょ?可愛いもんじゃないのか?


「はぁ……。それで、それがどうしたんですか?」


 部活を抜け出してまで聞くような話何だろうか……。小競り合いって、例えばネット上でレスバトルしてるとかかな。


「これが、大問題なんだよね!報道とかはされてないんだけど、ファン同士の口論からヒートアップして殴り合いの大喧嘩に発展!なんていうケースが何件か起きてるの」


 足立さんがシャドーボクシングのように宙に拳を何度も繰り出す。可愛らしい行動とは裏腹に、その口から出す情報はえげつない。


「殴り合い……ですか?」


「うんうん。学校で友達同士が仲睦まじく自分のイケシテ推しについて語ってたのに、気付いたら喧嘩になってて……みたいな」


 えぇ。

 そんなの、『何とか君もカッコイイけど、何々君もかっこいいよね』とそれだけで終わるような話じゃないのか?何でわざわざ殴り合いを……。


「実は……とっても言い難いんだけど、イケメン三天時代にはこんな争いはあんまりなかったんだよねー」


「……そうなんですか?」


「そら喧嘩はあっただろうけど、今くらいの数はなかったし、殴り合いなんて滅多に起こらなかったと思うよ」


 イケメン三天時代にはなかった。

 イケメン四天王時代に突入したことによって起こり始めた、と。

 三天にはなくて四天王にはある。

 その原因とは?


「……。僕ですか?」


「……あはは」


 いや笑ってないで。


 はぁ。俺かー。俺のせいなのかー?

 なんかむっちゃショックだわ。


「なぜ僕がいると争いが起きるんですか?」


「ん〜これはただの予想なんだけどね、前原くんのファンは……何というか。良く言えば一途、悪く言えば狂信的というか」


「何故そう思うんですか?」


「えっとね、まず、ファンクラブ会員は『掛け持ち』が出来ることは知ってるかな?」


 『掛け持ち』ね。

 要するに1人で何人かのファンクラブに加入するって事でしょ?今の話の流れからするとイケシテの4人のうち何人かのファンクラブを掛け持ちしてる人も居るのか。


「分かります」


「それでね、イケシテのファンクラブを掛け持ちしてる人がいるんだけど……というか結構な人数、5割弱くらいかな?半分くらいの人が掛け持ちをしてるんだよね」


 半分?それが多いのか少ないのかよく分からんけど、イケシテ全員合わせた会員数3000万はまやかしで、実体としてはそれよりも少ないってことか。まぁ3000万は多すぎだよね、冷静に考えて。


「はい」


「……ここからがさっきの話に繋がるんだけど、実は前原くんのファンクラブに入ってる人達って1人たりとも掛け持ちをしてないっていうデータをうちの社で入手したの」


 ……何ですと?

 『ゴクリ』と唾を飲み込み、神妙な顔付きで足立さんが静かに語る。


「イケシテ他の3人のファンクラブを掛け持ちしてる子はいっぱいいるんだけど、前原くんのファンクラブに入りながら他のファンクラブに入ってるような子は存在しないの」


 ……ナニソレ。

 本当に実在した怖い話ですか?

 イケシテ他の3人と、俺のファン層は完全に分断されてるってこと?

 ……故に一途、故に狂信的ってわけですかい?何とまぁ……。


「それで、えっと、喧嘩沙汰を起こしてるのって大体が、その、前原くんのファン、ってことなの」


「……はい。なんかすみません」


 何やってんの?俺のファンは。自分の子供がおいたした気分だ。全員整列させて1人1人懇切丁寧にお尻ペンペンお仕置きしたい。


「あ、いや前原くんは悪くないからね?そこは勘違いしないで!」


 分かってはいるものの、どこか責任を感じてしまう。


「……コホン。気を取り直しまして、やっと!本題の方に移りたいと思います」


「あ、はい」


 そう言えばまだ足立さんが訪ねてきた肝心の要件を聞いてなかった。俺が無知すぎて事前情報が、ね。すみません。


 突如勢いよく足立さんが立ち上がる。

 そして小ぶりな体を大袈裟に振り、奇怪なポージングを決めながら言い放つ。


「うちの社、『月刊スポーツ男子』はこの事態をチャンス……じゃなくて、早急に解決しなければならない重い問題だと考えた!どうすれば解決するだろう?ファン同士の争いを治めるには……。その答えはズバリ、『イケシテ同士の直接対決で決着をつけてしまえばいい』だ。前原くん、君には我社が主催する『イケメン四天王の頂点を決するスポーツ大会』に参加してもらうよ!」


 ……。

 四天王最強をスポーツで決めるってことか?


「……へぇ」


 おもしろそうじゃん。


「まだ開催日時は不明だけど、観客も集めて大々的に行うよ!我社がお金儲けできるし、ファン同士の争いも直接対決で終わらせることが出来る、我社の知名度も上がる!我社が利益も得る!ウィンウィンだと思うでしょ!?」


 『グイッ』と顔を近づけてきて、輝かんばかりの笑顔を浴びる。煌めく瞳は無垢な子供のようだ。


 ……まぁファン同士の争いを止めたいというのは建前で、腹の中はこの波に乗ってパッとお金儲けしようってことね。


「他のイケシテからの了承はもう得てるよ!後は前原くんだけ。どう?どう?」


 あとは俺の了承を得られれば、開催決定か。考えるまでもないな。


「勿論僕は構いません。それでファン達の争いを止められるなら」


 というのも理由にはあるけど。

 あー直接対決でイケメンボッコボコにしたら嘸かし気持ちいいんだろうなぁ。完膚無きまでに叩き潰してぇ〜。ハーレムを作るにあたって俺以外のイケメンなど邪魔でしかない。この際上と下をはっきりさせてやる。


「前原くんならそう来ると思ったよ!じゃあ細かなことが決まり次第連絡するね!」


 上機嫌な足立さんを傍目に俺は黒い笑顔を浮かべる。


 俺以外のイケメンか。

 一体どんなヤツらなんだろうな。


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