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サーの奇妙な体験 46

中里と雅の意外な関係

少しずつ謎が解けていく、これからの3人の行き先はどうなっていくのか………



雅は中里を池のほとりに誘い、2人は話し始めた。その瞳には、どうしようもない葛藤と決意が入り混じった強い光が宿っていた。


マー

「中里さん、彼女たちは……昔の恋人と、自分の娘なんです。何十年ぶりに、やっと会えたんですよ。それも、娘の存在は今日初めて知りました。驚きと、嬉しさと……何て言えばいいのか分からない感情が溢れていて……」


雅は言葉を詰まらせながらも、中里に真剣な眼差しを向けた。


マー

「今の気持ちは、ただ一緒に生活がしたい。それだけなんです。でも、僕は……異世界から来てる。こんな状況で、彼女たちと一緒にいることなんて、できるんでしょうか?」


いきなり核心に迫る雅の言葉に、中里は一瞬驚きを隠せなかった。普段は穏やかで控えめな雅が見せる真剣な姿勢に、彼も一呼吸置いて返答する。


中里

「それは……今は非常に難しいことですね」


中里の言葉は慎重だったが、どこか冷静さを感じさせる響きがあった。その瞬間、雅の心には一抹の不安がよぎった。やはり無理なのか、と。


中里

「私たちは、この世界の人間ではないのですから」


その一言が、雅の胸に重くのしかかった。しかし、それでも引き下がるわけにはいかない。


マー

「だったら……どうして僕は異世界からこの世界に来ることができたんですか?僕がここにいる理由を、もっと知りたいんです」


雅の問いに、中里は少し表情を硬くした。目を伏せ、短くため息をつく。


中里

「……それは、私がコントロールしているからです」


マー

「コントロール?」


雅は眉をひそめながら、その言葉を噛み締めるように繰り返した。中里が何か大きな力を持っていることは察していたが、それがどれほどのものかは分からなかった。


マー

「中里さん、何故そんな力をあなたが持っているんですか?それに何故私をこの世界にこれる様にしてくれたのですか?」


少し鋭い口調で問い詰めるように聞く雅に、中里は一瞬ためらう素振りを見せたが、やがて淡々とした声で答えた。


中里

「……ある方に認められたからですよ。そのおかげで、コントロールできるようになったんです。

あと、雅さんがこの世界に行きたいと望まれたんですよ。でもきっとその記憶は消えているとおもいます。あと僕は、言い方が失礼かもしれませんが、ここでは雅さんの監視役なんです。」


マー

「認められた?それに記憶が消えた?あと監視役?」


その答えは雅の想像を超えていた。


誰か特別な存在が背後にいるのは理解した。

中里さんは異世界において何か特別な役割を担っているのか。雅の頭の中には無数の疑問が浮かび、それが次々に言葉となって口をついて出た。


マー

「何故、中里さん私の監視役なんですか?

自分は何かいけない事をしたのですか?」


中里

「マーさんは何もしていないので安心してくだい。


マー

「では何故?」


中里

「順を追って話しますね。多分、雅〜、混乱するかもしれないけど……自分は雅さんに返しきれない恩があるんです。決してそれは雅さんに返せる事のできない恩です。

ある時、雅さんの願いを聞いて、お手伝いさせてもらいました。」


中里は、雅に対して優しい口調で接していた。


マー

「中里さん、自分はどんなお願いを?あと

その方に、僕も認められれば……自由に行き来できるようになるんですか?

それと何故記憶が消されたんですか?」


雅は、中里に対して何もかもが疑問で、中里が答えるたびに疑問が広がって行くのを感じています。しかし今は恵美とサーとの未来のために…

彼女達にちゃんと話ができる様に全てを把握しょうと必死になっていた。

中里はその問いに真剣な表情を浮かべて、一呼吸してから答え出した.


中里

「まず1つの質問から答えて行きますね。雅さん

認められれば、可能です。ただし……それは決して簡単なことではありませんよ。自分では何も出来ないことも含まれていますから。」



中里の言葉には重みがあった。それがどういう意味なのか、雅にはまだ分からない。だが、その一言に、自分の願いがどれほど困難なものかを改めて思い知らされた。



マー

「じゃあ……その『認められる』ためには、

何をすればいいんですか?」


雅の声には焦りがにじんでいた。この世界でサーと恵美と暮らしたい――ただそれだけが彼の願いだった。しかし、中里の顔には再び迷いの色が浮かび、すぐに答えを返さなかった。


中里

「ごめんなさい。それは……今は言えないんです」


その言葉を聞いた瞬間、雅は言葉を失った。


今は言えない。その一言には何かしらの理由があるのだろうが、それが雅にとってどれほど歯痒いことかは中里も分かっているはずだった。


中里は雅の苦悩を見つめながら、どこか悲しい目をしていた。その視線は、雅には届かない別の場所を見つめているようで、雅を思う気持ちがあった。しかしその気持ちは今の雅には伝わっていない。


そんな中里の様子からも、雅は確信する。彼が何か重要な鍵を握っているのだと。そして、自分の願いを叶えるためには、どうしてもこの男からその「認められる方法」を引き出さなければならない……。


雅は心の中でそう強く感じていた。



中里は一度息を整え、慎重に言葉を選ぶようにしてから口を開いた。


中里る

「それと、雅さん……記憶を消したことについてだが、雅さんはどこまで憶えている?焦らなくていい。いつでも良いから、答えてみてほしい」


中里の言葉には、どこか重い響きがあった。それは単なる確認ではなく、雅に対して何か重要な話をする前触れのようにも感じられた。


雅は中里の顔をじっと見つめ、一瞬考え込んだ。


マー

「学生の頃のことは憶えているよ。それから、恵美との出会いと別れ……独立してお店を出したことも、もちろんね。他にもいろんなことがあったけど、正直、日にちまでは細かく憶えていない」


そう答えながら、雅の頭にはいくつかの記憶がぼんやりと浮かんでいた。しかし、それはどれも普通の人生の断片に過ぎず、「記憶を消した」という中里の言葉が指すものには到底結びつかない。


中里は雅の答えに少しだけ眉をひそめた。その表情には、複雑な感情が入り混じっているようだった。そして、再び静かに問いかけた。


中里

「雅さん、人生においてもっと重要なことは?何か特別な記憶が抜け落ちているとは思わないか?」


マー

「もっと重要なこと……?」


雅は少し首をかしげながら、過去を思い出そうとした。自分の人生において「重要」と思える出来事を必死に探る。しかし、思い当たるものはなかった。


マー

「そんなに大切なことなんてあったかな……いや、特に思い浮かばないな……」


雅の口から出た言葉に、中里の表情は一瞬険しくなった。彼は目を伏せ、低い声で言った。


中里

「雅さん……

自分はあなたのことを本当に親友だと思っている。雅さんの事尊敬してるし、大好きな人だから、この話は本当はしたくなかった。今まで通りにこれからもずうっと楽しくしていたかった…

これで終わりかどうかは雅さん次第なんだけどね…

でも、もう言わなければいけない時が来たみたいだね」


その言葉を聞いた瞬間、雅の胸に不安が広がった。中里の重々しい態度が、これから聞かされる話が自分にとって重大なものであることを告げていた。


中里

「雅さん……結婚していたことを、思い出せるかい?」


マー

「え?」


雅はその言葉に息を呑んだ。一瞬、耳を疑った。


マー

「待ってくれ……結婚……?自分が?」


そう繰り返しながら、雅は頭を抱えるようにして必死に過去を辿ろうとした。中里が何を言っているのか、理解はできる。しかし、その記憶がどこにもない。


マー

「ちょっと待って、今思い出すから……」


雅は焦燥感に駆られながら、過去の記憶を掘り起こそうとする。しかし、何度試みても、その記憶は欠片すら浮かび上がらなかった。ただ、頭の中にぽっかりと空いた空白があるのを感じるだけだった。


マー

「……思い出せない」


その言葉が、自分の口から出るのが信じられなかった。雅は額に手を当てながら、言いようのない喪失感と恐怖を感じていた。


中里は、そんな雅の様子を静かに見つめていた。そして、深く息を吐くと、低い声で言った。


中里

「前に、サナさんの会社の友達とお食事の約束をした時の事覚えてる?。」


マー

「覚えてる。その時はサーちゃんは来れなかったけどね。しっかり覚えてるよ。」


中里

「何故、お店に集合になったか覚えてる?」


マー

「そこは細かく憶えていないけど、待ち合わせで待たせてはいけないからではないかな?」


中里

「違うよ……

雅さんは妻子持ちで、万が一この食事会が発覚して雅に迷惑かけてはいけないからって、彼女達の気遣いだったんだよ。彼女達は雅さんが結婚している事知っていたんだよ。

雅さん、ごめんね。

その都度、記憶を書き換えていたんだ。

あとに引かない様にね」


マー 

「自分の今の記憶は、全部仮想なの?

恵美とサーちゃんと会えたのもこれも中里さんが作り出した仮想空間の出来事なの?」


中里

「違う。

今起きているとのは、現実だよ。

彼女達は、本物の人たちだよ。

そこは心配しないで……

2人の事は、想定外だったんだよ。

なので、結婚の記憶消させてもらったんだよ。

雅が細かい蟠りがない様にね。

娘さんの本心を私が知るために、雅さんの痕跡全部消されてもらったのも自分がした事なんだ。

携帯壊したのもね…

彼女達を陰で様子を伺っていたけど

彼女は、すごく頑張ってたよ。

今日の為に、雅さんに会う為にね。

想定外の事も知らされたけど、よく頑張ってたよ」


「想定外の事を?

サーちゃんにどんな事をしたんだ?」


中里

「携帯の事以外はしてないから安心して

決して危害とか加えたのではないから…

すべて、雅のことを調べていてたどり着いた答えだったんだよ。」


中里は雅を見て、決心します。


中里

「雅さん、わかったよ……

今、記憶を呼び起こしてみるよ

その方が雅さん、信じてくれるかもね……」


そう言うと、中里は目を閉じた。その姿はどこか神秘的で、雅は言葉を失ったまま、ただその動きを見守るしかなかった。


すると、次の瞬間、中里の体が一瞬だけ光を放ったように見えた。まるでその光が、雅の心に忘れ去られた何かを照らし出すようだった。


雅は驚きながらも目を凝らして中里を見つめた。光が消えた後、中里がゆっくりと目を開け、再び雅を見据えた。その瞳には、何かを見通すような強い意志が宿っているようだった。


中里

「さあ……これで何か思い出せるはずだよ」


中里のその言葉を聞いた瞬間、雅の頭の奥底に、何かが引きずり出されるような感覚が走った…


雅はその場で膝から崩れ落ちるように座り込んだ。

頭の奥で何かが強く引きずり出されるような感覚とともに、目の前の景色が歪んでいく。


ほんの一瞬のことだったが、雅は自分が闇の中を何度もぐるぐると回り続けているような錯覚に囚われた。足元がふらつき、体の中心が急に重くなり、どこにも掴まるものがない恐怖が全身を襲う。


その闇の中には、うっすらとした映像のようなものが現れては消え、雅の記憶を無理やり繋ぎ合わせるように乱雑に再生されていた。しかし、それらはどれもぼやけていてはっきりと見えない。断片的な映像の中で、人々の声や自分の声が聞こえてくるような気がするが、それもすぐに霧の中に溶けてしまう。


マー

「なんだ……これは……」


雅は額に手を当て、息を荒げながら呟いた。頭の中で渦巻く混乱が収まらず、立ち上がろうとしても力が入らない。


目を閉じても、その暗闇の感覚は消えない。それどころか、さらに深く飲み込まれそうな気がして、雅は思わず目を見開いた。視界に映ったのは、中里が冷静な表情で自分を見下ろしている姿だった。


中里

「雅さん、大丈夫ですか?」


中里の声が遠くから聞こえてくるように感じたが、雅にはそれに答える余裕がなかった。ただ、胸の奥から押し寄せる未知の感情と闇の残像に、息を整えることすらままならなかった。




高橋は木陰の陰からじっとその場の様子を見つめていた。サーたちのいるベンチから少し離れた池のほとりで男の体が微かに光を放つのを捉えたその瞬間、目を見開き、息を呑んだ。


「何だ……今の?……」


疑念が胸をよぎると同時に、男の体から一瞬、鋭い閃光が走った。光は一瞬で消えたが、その異様な光景に高橋の心臓は跳ね上がるように鼓動を打った。次の瞬間、雅が膝をつき、崩れるようにその場に座り込むのが目に入る。


「まずい……!」


高橋の声はほとんど無意識に漏れたものだった。頭の中で冷静さを保とうとする声が響いていたが、その声はすぐに緊張と焦燥にかき消された。雅の肩が上下し、何かに耐えるように見える姿が目に入ると、次の行動を迷う余地はなかった。


「今行くしかない……このままだと本当にどうなるかわからない」


そう呟くや否や、高橋の体はすでに木陰を飛び出し、雅のもとへ向かって全力で駆け出していた。足音が鋭く地面を叩き、その音が静かな池のほとりに響き渡る。


「マーさーん、大丈夫ですか!?」


高橋の少し高い声が切迫した響きを帯びて池の周囲に響いた。その声がサーと恵美の耳に届いた瞬間、二人は同時にマーの方を見た


サー

「マーさんが……!?」


サーの胸は一気にざわめき、全身の血が逆流するような感覚に襲われた。恵美もまた、信じられないものを見るような目つきで雅の方向を凝視した。二人は顔を見合わせることなく、慌てて雅のもとへ駆け寄り始める。


駆け寄る間も、二人の心の中は不安と恐れでいっぱいだった。雅が普段とは違う様子で動かない姿を想像すればするほど、胸が締め付けられるような感覚が強くなった。


サー

「マーさん、大丈夫なの……?」


サーは走りながら自分の中で繰り返す言葉を必死に押し殺そうとしたが、その震えた声が自然と唇から漏れ出た。一方、恵美も何度も心の中で「雅、何があったの!?」と問いかけながら、足を速めていく。


高橋が最初に雅の近くへたどり着き、その表情を覗き込む。膝をついている雅の顔には明らかに苦痛の色が浮かび、汗が額を伝って落ちていた。


高橋

「マーさん!何があったんですか!? 聞こえますか!?」


高橋は焦りながらも、できるだけ落ち着いた声で問いかけた。しかし雅は返事をするどころか、荒い息を繰り返すばかりだった。その様子を見て、高橋はさらに強い不安を覚える。


その場にたどり着いたサーと恵美も、雅の異様な様子に息を呑み、ただ見つめるしかなかった。サーは胸が締め付けられる思いで、雅の顔を必死に覗き込み、震える声で言葉を絞り出す。


サー

「マーさん……大丈夫……?」


3人の視線が雅に集中する中、場の空気は凍りついたように静まり返り、時間が止まったかのような緊張感が漂っていた。




「マーさん!?」

サーは思わず声を上げ、恵美と一緒に急ぎ足で雅のもとへ駆け寄った。近づくほどに雅の顔が青ざめ、目元が暗く沈んでいるのが見えてくる。その姿にサーは胸がざわつき、心臓が痛いほどに速く鳴り始めた。一方で、恵美も普段とは違う雅の弱々しい様子に動揺しながら、自分にできることを考えようと必死だった。


サーは一旦足を止めると、近くに立つ中里に振り返り、焦った声で問いかけた。

「中里さん、何があったんですか?」


サーの真剣な問いかけに、中里は一瞬だけ視線を外し、少し躊躇したような表情を見せた。


そして、雅を気遣うようにゆっくりと口を開いた。


「サーちゃん、大丈夫だよ。何でもないから、そんなに心配しなくていい」


その言葉はどこか優しく聞こえたが、かすかに震えているようにも感じられた。サーはその曖昧な答えに不安を拭いきれず、さらに問い詰めたかったが、目の前で動かない雅の姿に気を取られ、言葉が喉の奥で詰まってしまった。


一方、高橋は雅の異変を目の当たりにし、全身に緊張が走っていた。


「マーさん、大丈夫ですか?聞こえますか?」

高橋の声には明らかに動揺が滲んでいた。彼女の目には、ただならぬ状況を前に冷静さを保とうとする意志が見えるものの、雅の状態を見ているうちにその冷静さが次第に揺らいでいくのがわかる。


恵美はその場に立ち尽くし、胸の中がざわざわと騒ぐのを感じていた。「雅がこんなふうになるなんて……」という思いが頭を巡りながらも、言葉を見つけられず、ただそっと雅の肩に手を置いた。その手は微かに震えている。


サーもまた、普段どこか安心感を与えてくれる雅の姿とはまるで別人のような彼の弱々しい姿に、どうしていいかわからず、ただその顔を覗き込んだ。

「マーさん、大丈夫なの……?」


サーの声は震え、小さな響きとなって静まり返った空気を切り裂いた。しかし雅は答えず、ただ重い息をつくだけだった。


3人の視線が雅に集中し、場の緊張感は一層深まっていく。誰も言葉を発することができず、ただ時間が重苦しく過ぎていくように感じられた。


少しすると雅が意識を戻します。


マー

「ごめん、大丈夫軽い貧血だよ。

心配いらないよ…」


高橋が雅の肩を抱いています。


高橋

「雅さん、大丈夫?気分は?」


その問いに、雅は


「大丈夫です。もう今ははっきりしてるから大丈夫。」


恵美とサーは、雅に話しかけます


恵美

雅、しっかりして、これからなんだからね。雅がいないとダメなんだからね。あなたがいての未来なんだから、しっかりして……


サー

マーさん、大丈夫!

ちゃんとマーさんの事しっかり見てるから

だから、さっきの話の続き3人でしよ……


2人は涙ながらに雅に声をかけています。


雅は必死に力を振り絞り、膝に手をついて何とか立ち上がりました。恵美とサーの顔を見て、小さく「ごめん、本当に心配かけたね」と謝ります。その声には、少し震えながらも彼女たちを安心させたいという強い気持ちが込められていました。


「ちょっと、あそこのベンチに座ってもいいかな?」と、弱々しいながらも穏やかな声で問いかける雅に、サーと恵美はすぐに「もちろん、ゆっくり歩いてね。あっちに座りましょう」と応じました。

恵美がうでをかかえるとサーが逆の腕

をかかえて

3人がベンチに腰を下ろすと、雅は大きく深呼吸をしてから2人を見つめました。


マー

「本当にもう大丈夫だよ。さっきは少しびっくりしただけなんだ。心配してくれてありがとう。恵美、サー、君たちがいてくれるから、こうして立ち直れるんだよ」

と、優しい笑みを浮かべて語ります。その言葉に、恵美とサーはほっとしたように頷き、そっと涙を拭いました。


一息ついた雅は、正面に立つ中里を見上げ、小さく頷きました。

「中里さん、さっきの話の続き、聞かせてもらえますか?この2人の前でも……

それから、こちらの方は?」


とサーと恵美に尋ねた時、雅の記憶の中から、彼女が蘇るのを感じました.


マー

「もしかして、熊野神社の方ですか?」


高橋

「憶えてますか?

マーさん?お久しぶりですね……

不思議な縁で私もここに来ているんです。

マーさん、あの時とお変わりないですね。」


その会話を聞いて、中里は少し驚いている様子です。


高橋

「憶えてますか?中里さん?

私のことを?

私は今、しっかり思い出しました.

最初は、記憶の中からあなたは消えていたのですが、あなたを最初に見たとき、何かを感じていました。今この場に来てマーさんを抱き抱えた時、記憶が一気に蘇りました。」


中里

「高橋さん、何故ここに?」


高橋

先ほども言いましたが、不思議な縁でね……

きっと私もここに呼ばれたんですよ。

中里さん……


サーと恵美は中里と高橋が知り合いだった事に驚きます。



穏やかでありながら真剣な眼差しを向けました。その姿に、サーと恵美も静かに耳を傾けます。


中里

「雅さん、今はどうですか?

少しは落ち着きましたか?

記憶の方はどうですか?」


マー

「今、何と無く漠然といろんな事が思い浮かんでいます。中里さんが言う通り記憶があいまいなのが、今感じています。」


中里

「これだけは信じて下さいね。

自分は雅さんのおかげで今があるんです」


雅は中里の話を聞いている途中ある事を思い出した.確か、中里は死んでいるはず。もうだいぶ前に……


中里

「雅さん、いろいろ思い出して来ましたか?

今、すごく不思議そうな顔をしてますもんね

今、思っている通りですよ。

自分はすでに亡くなっています。

でも、雅さんが強く願ってくれたよね。

幽霊でも良いから俺の前に現れてくれって…

自分はこの世界では幽霊と同じ状態なんだとおもいます。ただ、幽霊と違う事はこの時空の人と食事をしたり、映画を見たり誰にでも自分の存在が見える。ただの人と同じだからです。」


高橋

「中里さん、あなたは、私に相談しに来た事おぼえてますか?」


中里

「はい

高橋さんのおかげであのあと穏やかになれました。あの時は高橋さんをすごく困らせたかもしれませんね……

でもそのおかげで、真の友情に知り合えたんです。」


高橋

「そんな困らせた事ないですよ。死を宣告されて戸惑うのは当たり前ですよ

死ぬのは皆一緒、早いか遅いかだけで、みんな確実に決まっている事ですからね。

その残りの時間を大切にしたからこそ、今の中里さんがあるのだと思いますよ。」


中里

「それから、サーさん、携帯壊したのも私です。

ごめんね。」


サーはビックリして中里を見つめます。


中里

「あまりにも深くなりすぎると後がお互いに辛くなると思って、雅さんの痕跡全て消したんだよね。サーちゃん達は雅さんに対して一時的のものかなとおもってね。それでテストみたいな事をしたんです。

でも違っていたね。サーちゃんとお友達、すごく頑張っていたね。2人の信頼関係は素晴らしかった.

まさか、サーちゃんと雅さんが親子だったとは知らなかった…

雅さんとサーちゃんの絆が強いわけだね。」



高橋

「縁あって、皆さんと不思議な因果か、繋がった私からのお願い。

中里さん、あなたの力で何とかこの3人に新しいスタートを作ってもらえませんか?

あなたならきっと叶えてくれると思うの。

だからお願いします。」


中里

「私の一存では何とも….…

高橋さんのお願いでも、自分はハイと言えない立場なんです。

雅さんのためにそうしてあげたのですが…」


中里は恵美とサーとに向かって


中里

「そうしたらヒントだけ伝えます。

恵美さん、サー、何があっても雅さんの事忘れないで下さい。

それだけしか今は言えないので……」



中里の言葉はあいまいで、サーと恵美は不思議な顔をします


恵美

「中里さん、今まで雅の事忘れた事は一度もありません。だからヒントと言っても意味がよくわからないのですが……?」


サー

「忘れるってどう言う事ですか?

忘れるわけないじゃないですか?」



中里は少しだけ目を伏せ、静かに微笑みました。その微笑みにはどこか寂しさが滲んでおり、サーと恵美の胸に小さな不安を灯します。


中里

「その気持ちを、どうか大切にしてください。何があっても。」そう言い残し、中里は再び何も語ることなく目を閉じました。その姿に、サーと恵美はどうしても言葉の意味を深く考えずにはいられませんでした。」


一方で、雅は中里の言葉を静かに噛み締めていました。自分自身にも向けられているようなその言葉に、胸の奥に何かが引っかかる感覚を覚えます。


周囲が静寂に包まれる中、井の頭公園の池の方からかすかな風の音が聞こえました。いつもなら心を穏やかにしてくれるはずのその音が、今はどこかざわついて感じられるのです。


木々がざわめく音が微かに強まり、まるで何かが始まろうとしているかのような気配が漂い始めました。サーと恵美は無意識のうちにお互いの顔を見つめ、言葉にならない不安を共有します。


雅もまた、何かを察するように池の方をじっと見つめました。穏やかだった井の頭公園に、確かに何かが起ころうとしている——その気配だけが、じわりと3人の心に影を落としていました。


続く



読んで頂きありがとうございます。

作品どうでしたか?

初心者ですが、読者が少しでもいてくれる事がこんなに嬉しいとは思いませんでした。皆様のおかげで何とかここまで書くことが出来ました。本当にありがとうございます。あと、もう少しお付き合いよろしくお願い致します。


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