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サーの奇妙な体験 42

毎週水曜日、新作投稿少しずれだらごめんなさい。

0時と共に投稿目指します

良かったら、少しでも多くの人に見てもらいたいので拡散良かったらお願い致します。


4月3日 火曜日


春の陽射しが柔らかく街を包むこの日、サーと恵美は長い時を越えて訪れる再会の瞬間を胸に、吉祥寺へと向かっていました。先週から続く数々の出来事――偶然とも思えない不思議な縁と、心を揺さぶる感情の波。それらを乗り越え、ついに辿り着くこの日を迎えた2人には、それぞれに特別な想いがありました。


サーは、マーに伝えたい言葉を胸に抱きながら、どこか心細さを感じつつも、その先に待つ新たな絆の予感に希望を託しています。一方の恵美もまた、数十年の時を経て再び雅と向き合うことに、懐かしさと緊張が入り混じっていました。


どんな言葉を交わすのだろう。どんな表情で迎えてくれるのだろう。


2人の心には、不安と期待が交錯しながらも、どこか温かな未来への確信が芽生えています。この再会が、すべての答えを紡ぎ出す第一歩になる――そんな予感を胸に、彼女たちはゆっくりと吉祥寺の駅へ向かって歩みを進めていくのでした。



4月3日 火曜日


マーさんと再会する朝が、とうとうやってきました。


いつもより少し早く目が覚めたサーは、しばらくベッドの中でぼんやりと天井を見つめていました。昨夜の心地よい疲れと共にぐっすり眠れたせいか、目覚めは驚くほどすっきりしていて、体も心も軽やかです。


「今日は…運命の日、だね」


口に出してみたその言葉に、自分で照れくさくなり、サーはふっと笑みを浮かべました。


「運命の人」


だなんて、少し大げさかもしれない。でも、そう思わずにはいられませんでした。


これまでの出来事、ミユや高橋さん、お母さんとのやり取り、そして自分自身と向き合った時間が、すべてこの日のためにあったような気がしてなりません。サーは布団を整えながら、改めて胸の中に芽生えた決意を噛みしめました。


「大丈夫、きっと良い日になる」


自分にそう言い聞かせるように、小さく呟いてみる。自然と微笑みがこぼれ、胸が弾むような感覚が広がります。

今日はマーさんに会える日。驚きと喜びに満ちた再会が待っていると信じて、サーはベッドからゆっくりと立ち上がりました。


朝の静けさに包まれた部屋の中で、サーの心は静かに、しかし確かな期待で満たされていました。


「さぁ〜て、そろそろ準備をしようかな〜」


その声には、これから始まる新しい物語への期待が込められていました。




起きると、リビングから漂う香ばしい匂いが鼻をくすぐりました。パンを焼く匂い。サーは目をこすりながらキッチンへ向かいます。


サー

「お母さん、おはよう。」


「おはよう、サーちゃん。よく寝れた?」


お母さんはトーストにバターをバターナイフでサクサクと塗りながら、優しく微笑みかけました。その目元にはほんの少しだけ緊張が見え隠れしています。


サーは椅子に腰を下ろし、テーブルに並べられた朝食を見渡しました。焼きたてのトーストに、目玉焼き、それからサラダ、それに牛乳とコーヒー。いつもよりちょっとだけ気合いの入ったラインナップに、思わずくすっと笑みがこぼれます。


サー

「今日だもんね、お母さんもちょっとソワソワしてる?」


「そりゃあ、するわよ〜。」


恵美はバターを塗る手を止めて、少し照れくさそうに笑います。


「雅に会うなんて夢にも思わなかったからね。でも、サーちゃんがいなかったら絶対に叶わなかったことだしね…

夢のようだよ、本当にありがとう。」


サー

「もう、お礼はあとでいいよ。私だって知らなかったし、全ては縁で結ばれてたんだもん。マーさんとお母さんが昔恋人だった事とかも、この1週間の出来事で知った事だし…

まずは私たちが落ち着いて準備するのが先だよ。だからお母さん、平常心ね(笑)」


サーはトーストを頬張りながら肩をすくめますが、お母さんが本当に嬉しそうな感じか伝わってくるのが嬉しすぎるのです。


食事を終えた後、2人はそれぞれ準備に取りかかりました。


恵美は出かける用意をしながら、ふと鏡の前で悩んでいます。


「サーちゃん、これどうかな?このスカーフちょっと派手じゃない?」


サー

「んー、いいんじゃない?逆にそれぐらい派手でもマーさん、驚かないと思う。」


「そっか。じゃあこれにする。」


一方のサーはバッグの中を何度も確認しながら、小声で独り言をつぶやいていました。


サー

「財布、携帯、手鏡…あと何か忘れてないかな?」

そんなサーの様子を見て、恵美が笑いを堪えながら声をかけます。


「サーちゃん、そんなに確認してたらバッグが空っぽになるんじゃない?

サーちゃんこそ、落ち着いてね!

全ての流れはサーなんだからね(笑)」



サー

「だって、今日は絶対忘れ物できないんだもん!」

そう言い返しながらも、サーの顔には緊張と期待が入り混じった表情が浮かんでいました。


やっと2人は出かける準備が整い、時計を見るとまだ約束の時間には余裕があります。


「普通に行こうね。今日は…

かしこまらないでね…」


サー

「いろんな事があった1週間、台無しにしたく無いし、この縁、絶対大切にしたいからね…

お母さん、今日1日

悔いの無いように、思いっきりやれる事やろうね(笑)」


「さぁ、そろそろ行こっか。希望のためにね。」


母が声をかけると、サーは深呼吸を一つしてから小さく頷きました。


サー

「うん、行こう。」


玄関を出る直前、恵美がポケットから何かを取り出しました。


「サーちゃん、これ。」


それは小さなハンカチ。サーが子供の頃に母と一緒に選んだお気に入りのものでした。


サー

「ありがとう、お母さん。これ、わざわざ持ってきてくれたの?大阪から…

これ、持ってるといい事あるっていつも思ってたんだ…」


その言葉に、恵美は静かに微笑むと、手を差し出しました。


「じゃ、行こうか?雅が待ってるしね」


サー

「うん、今日は楽しく行こうね。」


こうして2人は、吉祥寺へと向かう再会の一歩を踏み出しました。緊張と期待の入り混じった空気が、春の柔らかな風と共に2人を包み込んでいました。


中野駅から電車に乗り込むと、ちょうど座席が空いていて、サーと恵美は並んで腰を下ろしました。車内は朝の通勤ラッシュが一段落した時間帯で、比較的静かでした。


恵美が窓の外を眺めながらぽつりとつぶやきます。


「吉祥寺まで、こんな風にサーと電車に乗るの、初めてかもね…」


サー

「お母さん、昔はよく吉祥寺に行ってたんだよね?」



サーが興味深そうに聞くと、恵美は小さく笑いながら頷きました。


「そうね、近くに住んでたからね。若い頃は雅とよく買い物したり、喫茶店でおしゃべりしたりしてたのよ。あの頃と、駅前の雰囲気も今とはちょっと違ったけど…今日はそんなことより、雅に会えるなんてね〜。吉祥寺が全く違う景色になるかもね(笑)」


その言葉に、サーも頷きながら小さく笑いました。


サー

「本当にそうかもね(笑)

お母さん、マーさんに会ったら最初、どんな風に声をかけるの?」


「それを私が聞きたいくらいよ。サーちゃんは?」


サー

「うーん、やっぱり『久しぶり!』かなぁ。でも、それだと普通すぎるかな?」

サーは腕を組みながら考え込みます。


「いいんじゃない?普通で。それが一番自然で、マーも喜ぶんじゃない?

でも1週間しかたってないのにね。」


恵美が優しくそう言うと、サーはちょっとだけ照れくさそうに笑います。


サー

「確かに1週間だよね…

でも、やっぱり緊張するなぁ。」


「緊張してるようには見えないけどね。」


サー

「お母さんだって、ちょっとソワソワしてるじゃん!」


2人は顔を見合わせて笑い合いました。


電車はゆっくりと揺れながら進み、車内には穏やかな雰囲気が流れていました。サーがふと思い出したように言います。


サー

「お母さん、今日は絶対に泣かないでね。」


「え、もうそんなこと言わないでよ!泣くかどうかはその時の気持ち次第でしょ?」


サー

「でも、マーさんがびっくりしちゃうかもよ。」


「じゃあ、雅が泣き出したらどうする?」


サー

「そしたら…私も泣くかも。」


そのやりとりに、また2人は軽い微笑みをうかべました。


電車は吉祥寺に近づいてきました。窓の外には街のざわめきが少しずつ見え始めています。サーはその景色を見ながら、静かに息を吸い込みました。


サー

「お母さん、もうすぐだね。」


「そうだね。もう少しで会えるんだね…

サーは心の準備はできた?」


サー

「もちろん!」


サーは自分に言い聞かせるように頷き、恵美もそれを見守るように穏やかに微笑みました。


吉祥寺に到着する直前、電車のアナウンスが流れ始めました。2人は立ち上がり、互いに目を合わせて一言ずつつぶやきます。

「さて、雅に会いに行こうか〜ぁ」


サー

「うん。」


心の奥に秘めた期待と少しの不安を抱えながら、彼女たちは駅のホームへと降り立ちました。



駅の改札を出ると、吉祥寺の街の活気が2人を迎えました。平日とはいえ、カフェや雑貨店が立ち並ぶエリアには観光客や買い物客がちらほら。少しひんやりとした朝の空気の中、サーと恵美は井の頭公園へ向かって歩き出しました。



サー

「吉祥寺、いつ来ても賑やかだね。」


サーが周りを見渡しながら感想を漏らすと、恵美が懐かしそうに答えます。


「本当ね。昔から変わらないお店もあるし、新しいお店も増えてる。でも、井の頭公園だけはいつ来てもあのままって感じがするのよ。」


サー

「ふふ、そんなに昔から変わらないの?」


「そうね、私が初めて来た時から、あの池も木々もそのままよ。やっぱり自然は特別ね。」


会話を楽しみながら歩いていると、公園の入り口が見えてきました。小道を進むと木々がだんだんと増えてきて、心地よい緑の香りが漂ってきます。サーは軽く深呼吸をして言いました。


サー

「空気が全然違うね。なんか、こう…気持ちが落ち着く。」


「でしょ?私も昔、よくここで雅と2人でリフレッシュしてたのよ。サーも今日は少しリラックスしておきなさい。」


サー

「うん、ありがとう。でも、緊張するなぁ。」


恵美は微笑みながらサーの肩を軽く叩きます。


「大丈夫よ、サーならきっと上手くやれるわ。雅もきっと喜んでくれる。」


その言葉に、サーは少しだけほっとした表情を見せました。


やがて井の頭公園の野外音楽堂が見えてきました。陽光が木漏れ日となって地面に模様を描き、池の水面が朝の光を受けてキラキラと輝いています。


サー

「ねぇ、お母さん。」


サーが急に立ち止まり、恵美の方を向きました。


サー

「やっぱり今日、特別な日だよね。こうして歩いてるだけで、なんだか…運命って感じがする。」


母 

「そうね。こんな日が来るなんて思ってもみなかったもの。でも、これもサーが頑張ったおかげよ。」


2人はしばらくその場で景色を眺めながら、静かにその瞬間を噛みしめました。そして、また歩き始めると、サーが小さな声で言いました。


サー

「お母さん、もう近くだからそろそろ別れようか」


「そうね。ここでバレたら計画が台無しだからね。そうしたら私はそこを右に曲がって、音楽堂が見える池のベンチで見てるからね。」


サー

「うん、わかった。

お母さん、マーさんに会っても泣かないでね(笑)」


「大丈夫!、しっかりね」


そんな軽口を交わしながら、2人はそれぞれ井の頭公園の池と、音楽堂に向かって進んでいきました。周りの風景と相まって、どこか穏やかで、けれど確かに胸を高鳴らせる瞬間がそこに広がっていました。



サーは携帯を取り出し開いてLINEをチェックしてみます。


サー

「やっぱり、雷事件の後、LINEも消えてしたってる。

これも復元できなかった〜

マーさんからメールあったりしてなかったかな〜

もしメール来てたらどうしょう…

あの時、写真だけと思っていたけど、マーさんの痕跡全部消えてるんだな〜

唯一あの1枚の写真だけだもんな〜」


そうだ

お母さんにLINEしてみよう


サー

「ベンチに着いた?」


「大丈夫よ、音楽堂から見て右の方のベンチに居るからね。売店の近く」


サーはそちらを見てみると、母が手を振ってるのがわかりました。


サー

「見えたよ。そうしたら時間まで少しあるけど、お互い頑張ろうね。」


「了解、サーも落ち着いてね。」


待ち合わせの時間まで後、15分あります。

音楽家のベンチに座ると、携帯が鳴り出しました。高橋さんからです


高橋

「サーちゃん、もうサーちゃんの事見えてるからね。ここからお母さんも見えてるからね。安心してね。

場所伝えると意識するから、今はまだ伝えないからね。」


サー

「はい

高橋さん、今日は本当にありがとうございます。」


高橋

「きっとうまくいくからね

だから、ちゃんと伝えるんだよ。

サーちゃんなら大丈夫だからね」


サー

「はい、頑張ります。」


高橋

「では切るね。

また、後でね」


そこで電話は切れました。


サーは小さくつぶやきます。


みんながいてくれる。みんなが気にかけてくれてる。

この不思議な縁を大切にする為に、今日は全てマーさんにぶつけよう、お母さんの為にも自分の為にも…


サーは、マーに何を話すべきかをゆっくり考え始めました。


まずは、吉祥寺の帰り道で起きた雷事件。

あの時、携帯が壊れてしまったことがどれほど不安を大きくしたか。


マーさんに連絡を取れないまま過ごした日々は、本当に心細かった。


誰にも相談できないと思っていたけれど、ミユがそばにいてくれたこと。それがどれだけ自分を支えてくれたか――


夜の公園で2人して泣いたことも、今となっては不思議と温かい記憶に感じる。


そして川越での出来事。

まるで導かれるように訪れたあの場所で、思いもよらない縁が繋がっていったこと。不安の中にあった希望の光を、あの地で確かに見つけられた気がする。


思い返せば、この1週間は本当にたくさんのことがあった。辛いこともあったけれど、その分、誰かの優しさに触れることができた。自分一人では乗り越えられなかったかもしれない。それでも、どんな時も立ち止まらずに進んできた自分を、少しだけ褒めてあげたい気持ちが湧いてきた。


「よく頑張ったよね、私。」

心の中でそっとつぶやくと、不思議と胸が軽くなる。あの怒涛の1週間を、こうして前向きに振り返ることができる今があるのは、きっとこれまでの不思議な縁があったからだと…


そもそも、マーさんと知り合った事事態が不思議な縁だった。

あの新宿の事が無かったら、きっと今まで通りの普通の生活だったんだろうな〜

こんな1週間なんて考えられない事だったんだな〜

横浜も楽しかったしね

1人でいろいろ呟いています



「今日は大丈夫、きっと伝わる。マーさんに絶対伝える!」


そう自分に言い聞かせ、サーは湧き上がる自信を胸に深呼吸を一つしました。その瞬間、背後から聞こえてきた声が彼女を現実に引き戻しました。


「サーちゃーん!」


耳に馴染みのある、でもどこか懐かしい響き。サーはベンチで思考を巡らせていた体をゆっくりと後ろに向けました。すると、そこには間違いなくマーさんの姿が――

笑顔を浮かべて立っていました。


「マー…さん?」


その瞬間、堰を切ったようにサーの目から涙が溢れ出しました。嬉しさのあまり、胸の奥に抑えていた感情が一気に押し寄せます。けれど、その涙で目の前が滲んでしまい、せっかく再会できたはずのマーさんの顔がはっきりと見えません。


サー

「よかった…本当に…会えた…」


言葉にしようとしても、声が震えてうまく続かない。ただ涙が次から次へと溢れ、止めどなく頬を伝います。マーさんがそこに立っている。ずっと願っていた瞬間が、現実として目の前にある。それが嬉しくて、信じられなくて、胸がいっぱいになりすぎて、サーはただ涙をこぼすことしかできませんでした。


マーさんはそんなサーの様子を見て、一歩近づき、優しい声で語りかけます。


マー

「サーちゃんどうした?泣かないで。ほら、ちゃんと顔を見せて?」


その言葉にサーは頷きながら、袖で涙を拭おうとしますが、涙はまだ止まりそうにありません。それでも、マーさんの温かな声に励まされ、サーは少しずつ顔を上げました。


マー

「どうした?

サーちゃん?

いつもの笑顔は?


続く

  


あとがき



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