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サーの奇妙な体験 41

毎週水曜日、新作投稿少しずれだらごめんなさい。

0時と共に投稿目指します


再会前日、期待と不安、全ては明日…


お楽しみに!


サーは熊野神社を後にして、川越の街並みをゆっくりと歩きながら、今日の出来事を一つずつ心に刻みました。高橋さんと加藤さんの優しい言葉が、まだ胸の奥で温かく響いています。夕暮れに染まる川越の風景も、どこか彼女の心を静かに包み込んでくれているようでした。


川越駅に到着して、池袋に向かう電車に乗り込み、サーは深く息をついて、窓の外に流れる景色を見つめました。その間も、頭の中では明日の計画と、どうお母さんに話すべきかについて考えが巡ります。高橋さんが言っていた「影の存在」のことや、井の頭公園で待ち合わせする段取りをお母さんに伝えたとしても、きっと心配をかけてしまうだろう、という思いがありました。それでも、自分がこの不思議な体験を通じて感じていること、きっと、お母さんもマーさんに会いたいに決まってるし、そのために最高な計画を高橋さんがたててくれたのだから、お母さんも理解してくれると…


いくつか乗り換えをし、電車はやがて中野駅に近づき、サーは少し緊張した面持ちで立ち上がり、ホームに降り立ちました。夕方の冷たい空気に触れると、今日一日の疲れを少し感じますが、すぐにその思いを振り払って家路へと急ぎました。


自宅のドアを開けると、部屋の中から恵美の温かい声が聞こえてきました。


「サー、おかえり。今日は楽しかった?」


と優しく声をかけてくれる母の姿を見て、サーは少しほっとした表情を浮かべました。家に戻り、母に会えたことで、今考えていることをどうやって伝えようか、少しずつ言葉を探し始めます。


サーは少し照れたように微笑みながら声をかけました。


「ただいま〜。お母さん、少しお茶でも飲まない?」


恵美は振り返って優しく微笑み、

「いいわよ。今日はどんな一日だったの?」

と、興味深そうに聞き返しながら、早速お茶の支度を始めました。


サーはキッチンに入り、母の背中を見つめながら問いかけます。


「うーん、コーヒー、紅茶、それとも緑茶?何がいい?」


恵美は優しく微笑みながら、

「じゃあ、コーヒーにしようか。簡単だしね」

と返しました。


「了解!」

と、サーは明るく応え、コーヒーカップを用意してお湯が沸くのを待ちながら、少し考え込むように視線を落としました。そして、意を決したように母に向かって言います。


「お母さん、こっちに座って?明日の予定を話したいんだ。実は、今日高橋さんと相談してね、明日も一緒に来てくれることになったの。」


恵美は少し驚いた表情を見せて

「えっ、そうなの?急にどうしたの?」

と、コーヒーを手にサーの横に座りました。


「じゃあ、最初から話すね」

とサーはゆっくりと話し始めました。


「今朝起きたとき、すごく不安だったんだ。もしマーさんがこっちの世界に来てって言ってきたら、どうすればいいのか…何て答えたらいいのか分からなくて。それで、川越に行って高橋さんに相談してみたくなったんだ。」


恵美は小さく頷きながら、サーを見つめました。

「そうだったのね。朝、急いで出て行ったから、何かあったのかなって少し気になってたのよ。お母さん、あんまり聞けなかったけど…

やっぱり何か心配だったのね。」


サーは母の優しい表情に少し安心し、コーヒーの香りが漂う静かなリビングで、今日あったことを母にゆっくりと伝え始めました。


サー

まだ、マーさんにこっちに来ない?

って言われてないんだけどね。

でももし言われたらって考えたら、どうして良いかわからなくて、それで高橋さんにも【こっちにおいで】とはまだ言われて無いでしょ。

ってそう言われてね

その件は落ち着いたの。

でも、話していくうちに、なんとか3人で生活出来ないかを聞いてみたの。


「雅と3人で?」


サー

「そう。せっかく3人が再会出来て事情も理解して、だからなんとかならないかな〜と思って」


「高橋さんなんて?」


サー

「難しいって、すごく悩ませちゃった…」


「やっぱりそうだよね。雅はもう亡くなってるんだもんね。

お母さんは明日、一目会うだけでも幸せだよ。

サーに心配かけてごめんね。」


サー

「違うの、まだ続きがあるの。」


「えぇ?」


サー

「昨日も高橋さん言っていたんだけど

マーさんを陰で支えてる人がいると思うとね。

それでその人の力を借りれば、何かが変わるかもって言ってたの。」


「でも、その影の存在の人誰だか分からないし…

どうするの?」


サー

「それで、高橋さんもう来てくれる事になったの…

私ではやっぱり陰の存在の人分からないだろうから、高橋さんが、私とマーさんが会っている時、少し離れたところで、様子をうかがってるって事になったんだよね。」


母は、無言のまま頷いています。


サー

「それでね

お母さんも最初少し離れたところから見ていてもらいたいの。

高橋さんが、私とマーさんが会うのは想定内だけどそこに、お母さんが来るのは想定外だからきっと陰の存在の人も、ビックリして何か行動に出るのでは、って言ってたの

だからお母さんがマーさんと再会するときがチャンスらしいんだよね

そのとき、高橋さんが誰かを見極めるって計画なんだよね。

お母さん、理解出来た?」


「わかるけど、大丈夫かしら?」


サー

「でも、これしか無いし

やるだけやってみようよ…」


「私はどのタイミングで出ていけば良いの?」


サー

「それは、まだ分からない

でも、マーさんに会って、すぐお母さんの事話してみる…話終わった時、お母さんを呼ぼうと思ってる。

お母さんは、ゆっくり歩いて来てね。

その時、高橋さんが周りの人達をチェックする流れになってる。」


「わかった…

そのようにやってみるね。」


サー

「再会出来たら、自分たちの気持ち伝えようね

上手くいってもいかなくても…

これが、最後かも知れないから

後悔だけはしないようにしょ…」


母はサーを静かに抱きしめます。

サーの耳元に


「サーちゃんありがとう。

雅にはもう2度と会えないと思っていたのに

こんなサプライズ、本当にありがと…」


サー

「やっぱりマーさんの娘なのかな〜…

サプライズって楽しいね〜」


サーは軽く冗談混じりにつぶやきます。


「サーがいてくれて本当にお母さん、幸せだね」


サー

「これからも、ずぅ〜と一緒だよ

だから心配しないでね、お母さん…」


母とサーは静かに抱き合ったまま、少しの間お互いの温もりを感じていました。その時間は、これまでの不安や心配を和らげ、希望へと心を導いてくれるような、特別なひとときでした。



やがて、恵美がそっと口を開きました。


「サー、明日、雅と会ったら、何を話したい?」


サーは少し考え込んだあと、ゆっくりと答えます。


「うーん、やっぱりまずはこの1週間の出来事かなぁ〜

いろんなことあったから。

その時お母さんの事を話そうと思ってるよ。

マーさんがそれを聞いてどんな気持ちなのか?私たちのことをどう思ってくれるのか?それが知りたいかなぁ〜」


恵美は深く頷きながら、優しい声で言いました。


「そうね。私も、雅に伝えたいことがたくさんあるの。まずは、感謝の気持ち。そして、もう一度、昔の頃のことを思い出してもらいたい。どんなに彼が離れていっても、私の心の中にはずっと一緒だったって。」


サーはその言葉を聞きながら、小さく微笑みます。


サー

「そうだね。マーさんにちゃんと伝えたいね。私たちがどんな風に暮らしてきたか、あとお母さんがどんなにマーさんを大切に思っているかを。

これが最後のチャンスになるかもしれないから…ちゃんと話して、伝えようね」


恵美はふと窓の外に目をやりながら、優しく続けました。


「サー、明日は希望を持っていこうね。悲しい気持ちや不安じゃなくて、私たちが会いたかった理由を、雅にしっかり伝えるためにね…」


サーは頷き、目を輝かせて言います。


サー

「うん、そうだね。きっとマーさんも、私たちの話を聞いて、何か感じてくれるはずだよ。高橋さんも手伝ってくれるし、明日はきっと何かが変わる…そんな気がするんだよね…」


恵美は微笑み、サーの手をそっと握りました。


「そうね。きっと上手くいくね。サーがいてくれるから、私も勇気が湧いてくる。明日は一緒に、最高の再会にしようね。」


サーも母の手を握り返しながら、力強く頷きます。


サー

「うん、絶対にそうしよう。どんな結果になっても、私たちがやれることをやったって思えるようにね」


こうして2人は、明日への希望を胸に、互いの思いを話し合いました。その夜、リビングには静かで温かな空気が流れ、静かに時間が過ぎていきました。


サーは頭の中を整理しようと思い、外の空気を吸いたくなりました。


サー

お母さん、ちょっと散歩してくるね

ちょっと、明日のこと、一旦整理したくて外の空気にあたってくるね。


大丈夫?

1人で?

あんまり遅くならないでね

心配だからね


サー

大丈夫だよ

ついでにコンビニ寄るけどなんかある?


別に大丈夫

あんまり遅くならないでね。


サー

はい、わかりました。

じゃぁ、行ってくるね



玄関を出たサーは、近くの公園へ向かうことを決めていました。幼い頃、辛いことや寂しい時に公園のブランコは、彼女にとって心を落ち着ける特別な場所でした。歩きながら、その頃のことを思い出します。


「昔は、嫌なことがあるたびにブランコに乗って、気を紛らわせていたっけ…」


ふわりと夜風が頬を撫で、サーは自然と笑みを浮かべます。そして自分にそっと語りかけるように、言葉を紡ぎました。


「でも、今夜は違う。新しいスタートの夜だもんね。楽しい気持ちでブランコに乗るなんて、初めてかもしれない。これからは、いいことがあった時や楽しい気持ちでいっぱいの時にブランコに乗りに来よう。」


サーの胸には、明日への期待が膨らんでいました。マーに会えるという喜びと、どんな会話が生まれるのかというワクワク感が、心を穏やかにしてくれます。


公園に着くと、懐かしいブランコが目に入りました。月明かりの中で静かに揺れるそれを見て、サーはそっと腰を下ろします。優しく足を動かすと、ブランコがふわりと空を舞い、風を切る音が耳に心地よく響きました。


「明日が楽しみだな…。マーさん今何してるかな〜ぁ…」


サーは夜空を見上げ、星々にそっと願いを込めました。悲しみを癒すための場所だったブランコが、これからは希望や喜びの象徴になる――そんな期待が彼女の心を温めていました。



ブランコに揺られながら、サーは心地よい夜風に身を任せていました。ゆったりとしたリズムに心が落ち着いていく中、ポケットの中でスマートフォンが振動します。ふと手を伸ばして画面を確認すると、ミユからのメールでした。


「サーさん、今大丈夫ですか?急にごめんなさい…何となく話したくなっちゃって…。」


サーは画面を見つめて自然と笑みを浮かべました。ミユからの連絡に、なんだか心が温かくなります。彼女のさりげない気遣いと優しさが、遠くからでもしっかり伝わってきました。


サーは揺れるブランコを静かに止め、丁寧に返信を打ち始めます。


「ミユちゃん、メールありがとう!今ちょうど1人で公園に来てたの。なんだか懐かしくて、ブランコに乗りながら明日のことを考えてたんだよ。」


少し間を置き、さらにメッセージを続けます。


「ミユちゃんとこうやって話せるの、うれしいな。何かあったの?それとも、ただ話したかっただけ?どちらにしても、連絡くれてありがとうね。」


送信ボタンを押した後、サーはスマートフォンを手のひらに握りしめながら、ミユの返信を待ちます。ミユとのやり取りはいつも心が和らぐ特別なひとときで、特に今夜のような日にその存在がありがたく感じられました。


「やっぱりミユちゃんは優しいな…」


小さくつぶやいたサーは、少しだけブランコを揺らしながら、次のメッセージを楽しみに夜空を見上げます。


ミユ

「サーさん、明日ですね。なんか、この1週間いろんなことがあり過ぎて、サーさんどうしてるかな〜って思って連絡しちゃいました。不安はないですか?」


相変わらず、心配してくれるミユの優しさに、サーは画面越しでもその温かさを感じました。彼女の存在が、どれほど自分を支えてくれているのか、改めて実感します。


サー

「ミユちゃん、ありがとう。でもね、大丈夫だよ。実は今日も川越に行って相談してきちゃったの。朝はすごく不安だったけど、今はすごく心穏やかなんだよね。それで、なんとなく公園に来てブランコ乗ってるの。(笑)」


メッセージを送りながら、サーは一瞬、ふっと笑みを漏らしました。こうやって気軽に話せる相手がいることのありがたさが胸に沁みます。少し肩の力が抜けて、揺れるブランコのリズムも軽やかに感じられました。


ミユ

「なら、よかった〜。(笑) サーさん、マーさんと会うの1週間ぶりですよね。私もすごく

長〜い1週間に感じました。」


サーはミユの返信を見て、思わず深く頷きました。本当に、たった1週間なのにずっと時間が止まったような感覚が続いていました。


サー

「本当だね。こんなに長く感じた1週間は、初めてかも。ミユちゃんにはいっぱい心配かけたよね。吉祥寺から始まって、雷事件、それにマーさんが亡くなったってこととか、本当に普通じゃないことばかりだったね…。」


送信ボタンを押した後、サーはふと空を見上げました。夜空に浮かぶ月を見ながら、いろんな出来事が走馬灯のように頭をよぎります。でも、今こうしてミユと話していると、それが少しずつ過去の出来事に変わっていくような気がしました。


ミユ

「本当ですね。なんだか、サーさんの周りにいると、不思議な体験に巻き込まれちゃう気がします。でも、そんなサーさんを支えられてうれしいです!」


そのメッセージに、サーは思わず笑ってしまいました。


サー

「ミユちゃん、それ褒めてる?(笑) でも、ありがとう。本当にミユちゃんがいてくれてよかった。私、明日もがんばるね!」


その言葉には自然と力が込められ、サー自身も明日絶対に良い再会、サプライズでマーさんを驚かそう。そして全てが上手くいくようにと願いました。

ミユとの軽快で優しいやり取りが、夜の空気をいっそう心地よくしてくれました。


サーはスマホをポケットにしまい、ブランコからそっと降りました。軽く夜空を見上げると、星がいくつか瞬いています。


「よし、帰ろう。明日に備えなくちゃ。」


自分にそう言い聞かせ、公園の小道を歩き始めます。ほんの少し冷たくなった夜風が頬を撫でていきましたが、サーの心は明日の再会を思うとポカポカと温かくなっていきます。


「明日、どんな風にマーさんに会えるんだろう。どんな顔するかな?驚くかな?それとも、笑ってくれるかな…」


そんなことを一人でつぶやきながら、自然と顔がほころびます。暗闇に灯る街灯の光が道を照らし、足元をしっかりと導いてくれるように感じられました。


「あと、お母さんも喜んでくれるといいな。マーさんに会えるなんて、本当に夢みたいだもんな〜ぁ。高橋さんも協力してくれるし、これは絶対うまくいくはず!」


サーは拳を軽く握りしめて、自分に気合いを入れました。思い返せば、この1週間は驚きと発見の連続で、まるで夢の中にいるような日々でした。それでも、こうしてミユや高橋さん、お母さんに支えられながら、明日という一つの大きな節目に向かって進んでいるのだと改めて感じます。


「よし、帰ったら早めに寝よう。明日、寝不足なんてダメだもんね。」


街のざわめきが耳に届いてきました。少しだけ早歩きになりながら、サーは自分の部屋でのんびりする姿を思い浮かべます。


家が見える頃には、再び夜空を見上げ、明日のことを心の中でそっと祈ります。


「マーさん、明日はきっと会えるよね。どうか、みんなが笑顔でいられる一日になりますように。」


玄関のドアを開けると、家の中からお母さんが「おかえり」って

なんか、ほっとした気持ちになったサーは気持ちを切り替えるように深呼吸を一つして、笑顔で「ただいま〜」と言いながら家に入りました。


続く


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