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サーの奇妙な体験 40

毎週水曜日、新作投稿少しずれだらごめんなさい。

0時と共に投稿目指します


熊野神社に再び訪れたサー

心の不安を取り除けるのか?

明日マーとの再会。サー、心の準備は………




熊野神社の鳥居が見えてきたその瞬間、サーは鳥居の脇に立つ巫女の加藤さんの姿を見つけました。加藤さんはサーに気づくと、やわらかい微笑みを浮かべて軽く手を振り、その笑顔がどこか安心感を与えてくれるようでした。サーも小走りで近づき、少し息を整えながらお互いに挨拶を交わしました。


「こんにちは、サーさん。わざわざ来てくれてありがとうございます。」加藤さんは、落ち着いた声で優しく語りかけてくれます。その言葉一つひとつが、サーの緊張を解きほぐしてくれるようで、まるで母親のような包み込むような温かさが感じられました。


「加藤さん、今日はありがとうございます。実は…いろいろ悩んでて…」サーが少し戸惑いながら話し始めると、加藤さんはそっとサーの肩に手を置き、親しみを込めた笑顔を向けました。


「大丈夫ですよ、サーさん。どんな悩みでも一緒に考えましょう。ここにいる限り、私はいつでもあなたの味方ですから。」その言葉には深い信頼と優しさが込められていて、サーの心にまっすぐ届きました。加藤さんの言葉に背中を押されるように、サーは自然と笑顔を浮かべ、心の中の不安が少しずつ和らいでいくのを感じました。


加藤さんと話をするうちに、サーは彼女に対して一層の信頼と感謝を抱きます。神社の静かな空気の中で、二人の間に流れる穏やかな空気がサーを包み込み、「きっと、ここに来て正解だった」と感じました。


この穏やかな時間の中、サーは自然に一歩踏み出せたように感じ、心の重荷を少しだけ下ろせたのでした。


サーはバッグから小さな財布を取り出し、細かいお金を数えて485円を手にしました。この金額には彼女なりの思いが込められていて、元はマーさんからお母さんに、そこからサーに伝えられた事

父マーに伝えたいこと、そしてこれからの決意がその小さな硬貨に詰まっているかのようです。静かに深呼吸をしてから、賽銭箱にそっと硬貨を投げ入れ、目を閉じて心を込めて祈りました。


「どうか…道を示してほしいです。よろしくお願いします…」と、心の中で静かに願いを込め、両手を合わせます。その手のぬくもりを通して、マーとの繋がりや、お母さんと過ごしたかけがえのない時間が心の中で蘇り、サーの中に自然と感謝の気持ちが湧き上がってきました。


お参りを終え、ゆっくりと顔を上げると、すぐそばで加藤さんが見守っていてくれました。加藤さんはサーに優しく微笑みかけ、「高橋さんが待ってますよ」と静かに告げました。その声には、サーの不安を和らげる温かさが感じられます。


サーは頷き、深呼吸を一つして気持ちを落ち着けました。「ありがとうございます、加藤さん。」そう言って、加藤さんの後に続き、境内の奥へと歩を進めました。加藤さんはその間、何も言わずに静かに歩いてくれていて、サーはその背中にそっと支えられているような心強さを感じます。サーは加藤さんの元へ、足を進めていきました。


加藤さんに導かれて静かに部屋の扉を開けると、そこにはすでに高橋さんがテーブルについてサーを待っていました。室内には心地よい静けさが漂い、その空間自体がどこか特別な場のように感じられます。高橋さんは、優しくも鋭い眼差しでサーを見つめ、深い落ち着きと包容力が全身から滲み出ているようでした。


少し緊張しながらもサーは頭を下げ、静かに挨拶をします。けれど、その瞬間に放たれた高橋さんの言葉が、サーの心を大きく揺るがしました。「サーちゃん、随分と考えすぎて、悩んでいるんだね?」その一言はまるでサーの心の内を見透かしたかのようで、彼女は驚きと戸惑いに目を見開きました。言葉はまだ何も口にしていないのに…どれほど迷い、苦しんでいるかを、まるで霊視でもしたかのように高橋さんは理解しているのです。


サーは、内側の深い部分をまるごと見通されたかのような気がして、胸の鼓動が少しずつ高鳴っていくのを感じました。最近ずっと心に抱えてきた不安や迷いが一瞬で言い当てられ、自分の中でずっと見えなかったものが白日の下に晒されるような感覚に、思わず立ち尽くしてしまいます。


「さあ、どうぞ座って。」高橋さんは柔らかな笑顔を浮かべながら席を勧めました。その声に促されてサーはようやく一息つき、ゆっくりと椅子に腰を下ろします。椅子に座ると、心の中に渦巻く悩みや不安が一気に溢れ出しそうな気持ちがして、言葉を探しながら深呼吸しました。


その視線や佇まいから、高橋さんの包容力と優しさがじんわりと伝わってきます。まるで長い間待っていてくれたかのように、穏やかに見守りながらもサーの言葉を待つ高橋さんに、サーは今まで誰にも言えなかった本当の気持ちを語り始める覚悟を決めるのでした。



サーは一瞬、視線を落とし、それから顔を上げ、ゆっくりと口を開き、サーは悩みの本質を言葉に変えていきました。


「高橋さん…実は、マーさんがもしも…こっちの世界で一緒に暮らそうって言ってきたら、私、なんて答えたらいいんでしょうか?」


その問いを口にした瞬間、自分の中でどれほどそのことが重くのしかかっていたか、サーは改めて痛感しました。声や、言葉が途切れがちになりますが、彼女は一生懸命に続けます。


「マーさんとはこれからも一緒にいたいです。できるなら母と三人で暮らして、ずっとそばにいたい…でも、現実のこの世界も、私にとって大切なんです。友達や知り合いもいて、これまでの生活も全て捨てたくない。」


サーは目を伏せ、言葉にできないほどの複雑な思いが心の中で渦巻いているのを感じました。どちらか一方を選ぶことが、本当に正しいのかもわからない。どうしてもどちらも手放したくないその気持ちが、胸の奥で痛みを伴って彼女を締め付けているようでした。


「マーさんに…

どうしたらいいのか、なんて答えたらいいのか…自分ではどうしても分からなくて…だから、高橋さんに教えてもらいたいんです」


高橋さんにこの迷いを打ち明けることができたことで、少しだけ心が軽くなった気がしましたが、同時に、彼女の瞳には未解決の悩みが色濃く映っていました。高橋さんの表情を見つめながら、サーはその答えを待つように小さな期待と不安が入り混じった目を向けました。


高橋さんはサーの不安そうな表情をじっと見つめながら、穏やかに口を開きました。その視線には深い思慮と優しさが込められていて、サーを包み込むように言葉を選んでいる様子でした。


「サーちゃん、まずは落ち着いてね。実際にはまだ、マーさんから『こちらにおいで』なんて言われてはいないんだよね?あくまで、今のところはサーちゃんが想像している可能性の一つにすぎないんだよ」と、彼女は、冷静に答えました。その声には、サーの不安を少しでも和らげようとする優しい響きが含まれていました。


その一言で、サーは少し肩の力が抜けるのを感じました。確かに、マーさんがそう言ってきたわけではないのに、彼女はずっと悩んでしまっていたことに気づきます。高橋さんは続けて、サーの目をしっかりと見つめながら言葉を紡ぎました。


「サーちゃんが今いるこの次元と、マーさんが生活している次元は、別の空間なんだよ。私たちが毎日見ているこの世界とは異なる場所で、時間の流れも感じ方もきっと違う。それが理由で、サーちゃんが思うように会えないこともあるのかもしれない。」


高橋さんは優しく微笑みながら、サーがその言葉をしっかりと受け止められるよう、少し間を置きました。そして、さらに続けます。


「まずは、そのことをマーさんに伝えてみるのがいいかもしれないね。サーちゃんが大切に思っているこの世界のこと、そして自分がその世界でどんな生活をしているかを、マーさんにしっかり伝えることが大事だと思うんだ。もしかしたら、マーさんはその事実に気づいていない可能性もあるし、彼がサーちゃんの状況を理解してくれたら、また違う見方ができるかもしれないよ。」


サーはその言葉に、少しずつ自分の心の中に落ち着きが戻ってくるのを感じました。高橋さんの言葉は、ただ答えを与えるだけでなく、彼女に気づきを促し、マーさんとの関係をより深く理解するための道筋を示してくれているように思えました。


「そうですね…まず、伝えてみることが大切ですよね」と、サーは小さく頷きました。


サーはふと、心に浮かんだ小さな希望を口にしてみようかと考えました。マーと自分と、そしてこの場所で出会った人たち。特に今こうして話をしてくれている高橋さんのような存在をも含めて、皆で一緒に生活できる方法はないだろうか、と。


サーは少し躊躇いながらも、ゆっくりと口を開きました。「あの…高橋さん。もし、できることなら、マーさんと私が、この世界で…たとえば、3人で生活をするようなことって、できないんでしょうか?」


その言葉は自分自身でも少し驚くものでした。彼女の声にはほんの少しの不安と同時に、心の底からの願いが滲み出ていました。サーは、高橋さんがどのように受け止めてくれるのか少し不安でしたが、真剣な表情で高橋さんの反応を待ちました。


高橋さんは、その言葉を聞くと一瞬考え込むような表情を浮かべましたが、すぐに優しい微笑みを浮かべてサーを見つめ直しました。


「サーちゃんが、マーさんと一緒に過ごすことをこんなに大切に考えているんだね。きっと、マーさんもその気持ちを嬉しく思うと思うよ。」と、彼女は温かい声で答えました。


サーはその答えに、少し安堵しながらも、やはり現実的に考えると難しいのかもしれない、とも感じ始めていまし


高橋さんは静かにサーの表情を見つめ、彼女が抱える複雑な思いを感じ取っているようでした。


「でも…」


サーは言葉を探しながら続けます。


「マーさんは、この次元ではもう亡くなっているんですよね。それでも、あの異次元では普通に生きているように感じるんです。私には、そちらで暮らしている父が本当に存在しているように思えて…だからどうしても、3人で生活する道を探せないかって、考えてしまって…」


彼女の言葉には、切実な願いが滲んでいました。父への愛と、二度と失いたくないという切迫感が、彼女をその考えに導いたのかもしれません。しかしその思いは現実的な壁に阻まれ、サーの心は迷いに満ちていました。


高橋さんは腕を組み、少し考え込むような表情を浮かべました。その真剣な眼差しが、サーの抱える複雑な状況をしっかりと受け止め、何か答えを見つけようとしていることを示しているようでした。


「異次元で普通に生活するマーさんと、こちらで生きるサーちゃんと恵美さん…確かに、特別な何かが起これば、その道が開けるかもしれない。」


高橋さんは、少し視線を下げてつぶやくように話しましたが、それは明確な答えには至らないものでした。


その姿を見つめるサーは、今の自分の思いがどれほど難しいものなのかを改めて感じ、また、少しばかりの希望が揺らいでいくような感覚を覚えます。サーは自分の願いがあまりにも無謀で、実現が難しいことを理解しつつも、やはり諦められない気持ちに心を引き裂かれるような思いでした。


このままでは結論が出るはずもなく、高橋さんもまた、どう応えるべきか思案し続けます。それでも、どこかに突破口があるのではないかと、サーの思いに応えられる方法を見つけようと、しばらく考え込むのでした。



高橋さんは少しの沈黙の中、眉間にしわを寄せながら深く考え込んでいました。サーの真剣な願いと悩みがどれほど強いものか、その重みをしっかり受け止めた上で、どうにかして彼女の望む方向へと導いてやりたいという思いが高橋さんの頭に広がっていました。しかし、実際に3人で暮らす方法を見つけるには、現実と異次元との壁が大きすぎるのも事実です。普通であれば、夢物語のように思えるその願いに対して、現実的な解決策はそう簡単に見つからないはずでした。


しかし、思案を重ねるうちに、ふと、ある考えが彼女の頭をよぎりました。


「待って…」


と小さくつぶやきながら顔を上げ、サーの方を見ました。その視線には新たなひらめきが灯っていました。彼女は、向こうの次元でマーを支援してくれている存在たちのことを思い出していたのです。以前、異次元でマーは1人では無く、マーの後ろに誰かが存在していると伝えた事を思い出しました。もし、その異次元でサポートしてくれている人の力を借りられれば、今の状況に一筋の光が差し込むかもしれないと、高橋さんは考え始めたのです。


「サーちゃん、少し考えてみたんだけどね…」


高橋さんはゆっくりと語り始めました。


「もし、向こうの次元でマーさんを支えている人たちが協力してくれたら、今のこの流れが少し変わるかもしれない。彼らの力を借りることで、何かしらの助けが得られるんじゃないかって…」


その提案に、サーの目が少しずつ明るくなっていきました。彼女は、高橋さんの言葉を噛み締めるように聞きながら、その考えが自分の胸に希望をもたらすのを感じました。


「向こうの次元の人たち…」


彼女はそっとつぶやき、その存在を思い浮かべます。どこか遠いけれど、確かにマーを支えている仲間たちがいるということを、サーは高橋さんから聞いていました。



「もちろん、異次元の人たちがどう動いてくれるか、こちらからは完全にコントロールできない部分もあるだろう。でもね、サーちゃん、彼らが何かしらの形でマーさんをこちらの次元に引き寄せてくれたり、私たちが求めるような状況を手助けしてくれたら…少しずつでも流れが変わってくる様な感じがするんだよね。」


高橋さんの提案を聞いたサーは、心の中に小さな希望が灯るのを感じました。まだ確信が持てるわけではないものの、どうにかして父と共に過ごす道があるかもしれないという気持ちが、彼女の不安を少しずつ和らげていきます。彼女の言葉に耳を傾け、これからの可能性を信じようと、サーは心を落ち着かせました。


サーは高橋さんの提案を聞き終え、小さく息をつきながら少しほっとした表情を浮かべましたが、次に浮かんだのは

どうやってそれを実行すればいいのかという現実的な疑問でした。


「でも、高橋さん…どうやって向こうの次元の人たちにお願いしたら良いんでしょうか?」


サーは不安そうに目を伏せ、静かに問いかけました。その小さな声には、未知の世界への戸惑いや恐れがにじんでいて、自分ひとりの力では到底届かない場所に思いを届けることへの不安が伝わってきました。


高橋さんはその質問を聞くと、一瞬黙り込み、目を閉じて深く考え込みました。やはり、彼女が抱えている不安も当然であると理解し、なんとかして具体的な手段を示したいと思いました。しかし、異次元の存在との連絡手段など簡単に思いつくはずもありません。


「うーん、これは難しいね…」


高橋さんはゆっくりと呟き、目を開けるとサーを見つめました。その視線には、自分でも答えがはっきり見つからない焦りや葛藤が感じられました。


「向こうの次元と直接連絡を取る方法なんて、普通の人間には到底できないことだからね。頼るとしたら、やっぱり神社の神々や守り神様の力を借りることになるかもしれないけれど…」


彼女は言葉を止め、少しばかり困惑した表情で何かを探るように周りを見回しました。これまで神社で実際に異次元の存在に働きかける方法については未知の領域であり、彼女自身も確信を持って言えるわけではありませんでした。


「それでも、サーちゃん、ひとつ方法があるかもしれない」


高橋さんは、ふと何かに気づいたように顔を上げました。


「祈りというものは、とても強い意志や思いによって少しずつ形を持つことがあるんだよ。サーちゃんのように、心からの願いを持つことで、もしかしたらその思いが向こう側に届く可能性がある。けれど、それにはサーちゃんの思いが相当に強く、はっきりとしたものでないといけない。」


サーはその言葉にじっと耳を傾けましたが、次第に表情が曇りがちになりました。彼女の心には、確かにマーに対する強い思いがあるものの、それをどのように「祈り」として届けるのか具体的なイメージが湧かないでいる様子でした。彼女が視線を伏せるのを見た高橋さんは、さらに言葉を続けました。


「それでもね、サーちゃん。たとえば君が毎晩祈りを捧げて、その祈りにマーさんへの強い思いを乗せることができれば…少しずつ、君の気持ちは向こう側に届いていくはずだよ。神社での祈りだけでなく、日々の生活の中でも、彼への感謝や思いを忘れずに伝え続けてみることが大事かもしれない。もしかしたら、君の思いが形となって、向こうの次元の人たちに伝わる日が来るかもしれないから。」


高橋さんは、その言葉に確かな信念を込めて語りました。彼女自身も、この方法が確実とは言えないことは分かっているものの、サーのために少しでも可能性のある道筋を見つけてあげたかったのです。その様子を見たサーは、うなずきながら「私、やってみます」と静かに決意を固めました。


高橋さんは優しい微笑みを浮かべながら、サーが理解しやすいようにゆっくりと説明を始めました。


「サーちゃん、明日、マーさんに会う予定があるんだよね?そのとき、もしかしたらマーさんは一人じゃないかもしれないって、私は感じているの。多分、少し離れたところで様子を見ている誰かがいるんじゃないかと思うんだ。…サーちゃんが話してくれた、あの雷の出来事も覚えている?あのときも、きっとその『別の存在』が近くにいたんじゃないかなって、私はそう感じているの。」


高橋さんは、サーが少し驚いた表情を浮かべているのを見て、さらに優しく続けました。


「その人が何者で、どんな役割を持っているのかはまだ分からないわ。マーさんにとっての『見張り役』かもしれないし、逆にマーさんやサーちゃんを助けるためにいる人かもしれない。でもね、サーちゃん。もし明日、その人と話せる機会があれば、今の状況が変わるかもしれないと思うの。」


サーは驚きと期待が入り混じった表情で、高橋さんの話に聞き入っていました。


高橋さんは、サーの表情を確認しながらさらに優しく語りかけました。「つまり、その見守っているかもしれない人と接点を持つことが、サーちゃんにとって新しい道を開くきっかけになるんじゃないかなって思うのよ。サーちゃんが抱えている不安や疑問に、その人が答えをくれるかもしれないし、マーさんとの関係にも新しい展開が生まれるかもしれないわ。」


高橋さんの言葉が、サーの心に新たな希望の光を灯しました。しかし、ふと不安が胸をよぎり、サーは思わず問いかけました。


「高橋さん…その、どう言えばいいのか…。その『影の存在』の人って、どうやって見つければいいんでしょうか?」


高橋さんはサーの質問に真剣な表情で考え込みました。しばらくの間、さまざまな思いが頭を巡り、やがて結論を見つけ出したように、穏やかに口を開きました。


「サーちゃん、ここで私と出会ったことも、巫女の加藤さんとマーさんに関わることも…なんだか全てが、不思議な縁で結ばれている気がするの。まるで、生まれる前から決まっていたかのように、一本の道筋として導かれているように感じるのよ。

これは、運命なのかもしれませんね。」


高橋さんは優しい目でサーを見つめながら続けました。


「でも、今のサーちゃんには、その『影の存在』を見つけるのは少し難しいかもしれない。きっと、まだ見えるべき時が来ていないのかもしれないの。だから、私が一緒にその人を探すわ。明日、井の頭公園に一緒に行ってみない?サーちゃんと一緒なら、きっと見つけられる方法があると思うの。」


高橋さんのその言葉には、サーの力になりたいという強い思いが込められていました。彼女はその『影の存在』を見つけるために全力を尽くす決意をしており、サーにもそれが伝わるように、しっかりとした口調で約束を交わしました。



サーは、明日の予定について高橋さんに伝えました。


「マーさんとの約束が明日、11時に井の頭公園の野外ステージで待ち合わせなんですが、一緒にどうでしょう?」サーは、できるだけ簡単な言葉を選びながら提案しました。


高橋さんは、その案をじっくりと聞き、うなずきました。

「そうね、でも、サーちゃん。私は少し離れたところから様子を見守るわ。万が一、例の『影の存在』が現れたときに、周囲の状況を冷静に把握できるようにするためよ。」


「つまり、行動は別々にするってことですね?」


サーが確認すると、高橋さんは優しく微笑みながら頷きました。


「ええ、サーちゃんが1人でその場にいることが、影の存在を引き出すための鍵になるかもしれないわ。だから私は少し距離を置いて見守るけれど、何かあればすぐに駆けつけるから安心してね。」


その後、サーは少し悩んだ様子で、「母は、どこで来てもらうべきか…」とつぶやきました。高橋さんは、その提案にもう一度うなずきました。


「そうね、お母さんも別の場所で待機してもらうといいかもしれないわ。そして、タイミングを見て、ここと思ったときにサーちゃんが呼び出せば、きっと良い結果になるわよ。きっと、マーさんも驚くと思うの。その時、影の存在が動くのではないかなと思うの…」


二人は明日の計画を詳細に話し合い、サーが野外ステージで待機し、高橋さんが少し離れた場所から見守り、さらにサーの母も別の場所で待機する、という段取りで進めることにしました。それぞれが役割を持ちながら、互いに助け合えるような慎重な準備が進められたのです。


この話し合いを終えたとき、サーは少し不安を感じながらも、高橋さんの力強いサポートと母が念願のマーさんとの再会…

明日への心構えを固めていました。


高橋さんとの相談が一区切りつき、サーは少しほっとした表情で顔を上げました。「高橋さん、今日はここまでで大丈夫です。色々とありがとうございました。明日も、どうぞよろしくお願いします。」そう言って、しっかりとお辞儀をし、高橋さんに感謝の気持ちを伝えました。


高橋さんも、サーのその姿に柔らかな笑みを浮かべ、「こちらこそ。明日はしっかりとサポートするから、安心してね。何があっても私はサーちゃんのそばにいるから」と力強く答えました。その言葉にサーはさらに安心し、心の中に新たな決意が宿るのを感じました。


そのとき、巫女の加藤さんが軽やかな足取りでこちらに歩み寄ってきました。彼女も今日の話し合いが終わりに差し掛かるのを感じ取っていたのか、サーと高橋さんに笑顔を向け、「お疲れ様でした。サーさん、明日は頑張ってくださいね。きっといい結果が待っていますから。」と励ましてくれました。その明るい声と優しい眼差しが、サーの不安をさらに和らげてくれました。


サーは加藤さんにも感謝の気持ちを込めて丁寧にお辞儀をし、「加藤さん、ありがとうございます。明日もがんばります」と小さく微笑みました。加藤さんも頷きながら、「何かあったら、いつでも声をかけてくださいね」と優しく言い残し、神社の境内へと戻っていきました。


こうして、サーは熊野神社を後にすることにしました。空は徐々に夕暮れ色に染まり、柔らかな光が境内を包んでいました。サーは改めて明日への決意を胸に抱き、境内を一歩ずつ後にしながら、加藤さんと高橋さんからもらった温かい言葉を大切に家路に向かいました。


続く



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