サーの奇妙な体験 39
毎週水曜日、新作投稿
少しずれだらごめんなさい。
4月1日 日曜日
翌朝、サーはゆっくりと目を覚ましました。昨夜の夢があまりにも鮮明で、目を開けた瞬間から胸の中にマーとの会話がよみがえってきます。「本当にマーさんと会ったのかも…」と思うほどに現実味があり、心地よい余韻が彼女を包んでいました。
起き上がってリビングに向かうと、キッチンで朝食の準備をしている母の姿が目に入ります。穏やかな日差しが窓から差し込み、休日らしいゆったりとした空気が流れています。サーはゆっくりと歩み寄り、母に夢の話をしてみることにしました。
サー
「おはよう、お母さん。あのね、ちょっと聞いてほしいことがあるの。」
恵美
「おはよう、サー。どうしたの?」
サーは昨夜の夢の中で、マーと会って話したこと、火曜日に必ず来てねと言われたことを母に伝えました。マーの言葉やその表情、そして何より自分の中にある不思議な感覚を、できるだけ丁寧に説明します。話しながらも、まるでまた夢の中に戻ったかのような気分に包まれ、サーは自然と穏やかな微笑みを浮かべていました。
すると、母がふと驚いた表情を見せます。
恵美
「…実はね、私も昨夜、雅の夢を見たの。」
サー
「えっ、お母さんも?どういう夢だったの?」
恵美は少し驚いたように目を見開き、けれども懐かしむような穏やかな笑顔で話し始めます。
恵美
「私の夢では、マーはいつもの優しい笑顔で何も言わずに私を見つめてたの。何か話しかけようとしたんだけど、言葉がうまく出てこなくて…ただ、そのまま見守ってくれているような感じがして、すごく温かい気持ちだったのよ。」
サーと恵美は互いに顔を見合わせ、言葉にしがたい驚きと感動を分かち合いました。同じ夜に、二人がそれぞれマーの夢を見ていたことが、何か運命のように感じていました.
サー
「なんだか不思議だね。私たち二人が同じ夜にマーさんの夢を見るなんて…」
恵美
「そうね。きっと雅が、私たちに何か伝えたいことがあって現れてくれたんじゃないかしら。」
サーは頷き、胸の中でマーへの想いがさらに深まるのを感じました。今日という日が始まったばかりだというのに、二人は静かに心を通わせながら、この不思議な出来事に思いを巡らせていました。穏やかな朝の日差しが部屋を包み込み、まるでマーが見守っているかのように感じられます。
そして、サーと恵美は今日一日、ゆっくりと過ごしながらも、火曜日に向けて心の準備をしようと考えていました。
サーと恵美は朝食を終え、リビングのソファに並んで腰掛けました。しばらく静かな時間が流れる中、サーがぽつりと口を開きました。
サー
「ねえ、お母さん。もし…もし火曜日にマーさんに会ったとき、『2人ともこっちの世界においで』って言われたら、どうすればいいんだろう。私は、今ここで生きているけど、マーさんと一緒にいるのも…なんだか捨てがたい気がするの。」
恵美は驚いたようにサーの顔を見つめ、それからふっと優しく微笑みました。
恵美
「そうね…その可能性も、私も考えたことがあるわ。もし、マーがあの世から呼びかけてきたら…私も答えてしまうかもしれないって思う…
でも、サー。私たちが今、こうしてこの世界にいることにも、やっぱり意味があるんじゃないかしら。」
サー
「そうだよね。マーさんと3人でいたい気持ちは強いけど…でも、こっちで友達と一緒にいろんな思い出を作り続けたい気持ちもあるし…」
恵美はそっとサーの肩に手を置き、穏やかな声で続けました。
恵美
「どんな選択をしても、それは私たちの愛情の一つの形だと思うの。だからもし、火曜日に雅がそう言ってきたとしても、私たちは今この世界で生きている者として、彼を大切に想う心だけを届ければいいんじゃないかしら。彼もきっと、それを理解してくれるわ。」
サーは母の言葉に胸がじんわりと温かくなるのを感じました。マーとの再会の不安もあるけれど、同時に、自分の中に生まれている深い愛情が、迷いを少しずつ溶かしていくように思えました。
サー
「ありがとう、お母さん。私、火曜日には素直な気持ちを伝えるよ。マーさんへの想いも、ここで生きることの大切さも、全部含めて…
それからの展開はその時考えればいいよね…」
恵美は優しく頷き、二人はしばらく静かに寄り添い合いながら、マーへの想いを胸に抱き続けました。その穏やかな日曜の朝、二人は同じ気持ちでマーに会う準備を整えつつ、次元を超えた不思議な縁を受け入れる覚悟が少しずつ生まれていくのでした。
その日は、サーと恵美にとって本当に穏やかな日曜日となりました。特に予定もなく、二人は家の中でゆったりと過ごすことに決めていました。朝食を片付けた後、恵美はキッチンのテーブルに座って静かに本を読み始め、サーはソファに横たわりながら、時々スマートフォンを眺めたりして、気ままな時間を過ごしました。部屋の中には、ゆっくりとした空気が流れ、まるでこの先の出来事を静かに待っているような、穏やかで満たされたひとときでした。
午後になると、サーはふと恵美に問いかけました。
サー
「ねえ、お母さん。マーさんって、どんな人だったの?私、優しい人とはわかるんだけどね…」
恵美は少し微笑み、昔の思い出を静かに辿りながら語り始めました。
母
「そうね、雅は…とても優しくて、穏やかな人だったわね。彼はどんなに忙しくても、いつも人の話をちゃんと聞いてくれる人だったのよ。仕事の後に疲れていても、私のために時間を作ってくれたし、私がどんな小さなことでも話すと、真剣に耳を傾けてくれたわ。」
サーはその話を聞きながら、ぼんやりと浮かび上がってくるマーさんの姿を思い描きました。あの時の彼は、確かに優しい表情をしていて、サーの寂しかった気持ちを優しく自然に包み込んでくれた気がします。
サー
「そっか…やっぱりそんな人だったんだね。まだ最後に会ってからそんなにたってないのに、すごい時間が経過したみたいで…
いろんなことがありすぎて、吉祥寺に行ったのが遠い昔のような感じ…
でも、会ったらすぐにあの時の事とか時間がそんなにたってないとか、感じる気もするよ。」
母
「きっと、サーも感じるところがあるのよ。血の繋がりもあるし、それに何より、私たちが彼に対して持っている気持ちが…ね。」
二人はそんな風に会話を続けながら、恵美は雅についての思い出を一つひとつ話していきました。サーがまだ生まれる前のエピソード、マーが見せたささやかな優しさ、2人にとって温かな瞬間が次々と思い出されました。笑い話もあれば、少し切なくなるような話もあり、話しているうちに時間がゆっくりと流れていくのが感じられました。
やがて、気がつくと外はすっかり暗くなり、夜の静けさが家の中を包んでいました。窓の外には夜の街灯がぽつりぽつりと灯り、二人の会話も穏やかに終わりを迎えようとしていました。
サー
「今日はのんびりとした一日だったね。なんだか、ずっとこうやってお母さんと話していたいね…」
恵美は静かに頷きながら、サーの言葉に優しい笑みを浮かべました。
母
「そうね、私も。こんな風にゆっくりと、昔を振り返りながら話す時間って、本当に貴重だと思うわ。雅のことをサーと語り合える日が来るなんて、少し前までは思ってもみなかった。」
サー
「うん、私も同じ。火曜日にマーさんに会えるのが、不安は全くなく
楽しみになってきたかも。」
二人はお互いの顔を見合わせ、優しい微笑みを交わしました。長い一日の終わりに、静かな心のつながりを感じることができたことは、これからの出会いへの準備のようにも思えました。
4月2日 月曜日
翌朝、サーはいつも通りに目を覚ましたが、昨日までの穏やかな気持ちとは違い、何か胸の奥に重いものがずしりと重い感覚に襲われました。静かな朝の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋の中は穏やかなのに、なぜか彼女の心は落ち着きません。布団に横たわりながら、サーは昨夜のことを振り返りました。母とマーの思い出を語り合い、少しずつ彼との再会を楽しみに思えるようになっていたはずなのに、今はそれが違う形で彼女の心を締め付けていることに気が付きました。
[もし、マーさんが「こっちにおいで」と言ったらなんて答えれば良いのだろう…?】
ふと浮かんだその思いが、サーの中で次第に大きくなり、動悸が速くなるのを感じました。もしマーが私に選択を迫ってきたら、どう答えればいいのか、自分でもわからなかったのです。「お父さん」という存在として、マーは彼女にとって特別な意味を持つ人であり、それは自分が知らず知らずのうちに求めていたものでもありました。幼い頃から感じていた「空白」が、彼の存在によって少しずつ埋められ、ようやく自分の中で「父親」としての形が見えてきた気がしていたのです。
しかし、その一方で、サーは現実の生活やこれからの未来を思い描くと、簡単に決断できることではないと感じていました。自分の周りには支えてくれる人たちがいて、母との生活や仕事、友人との時間もとても大切に思っている。そんな中で、「こっちにおいで」と言われたら、果たして自分はどちらを選ぶべきなのか——それが正しい選択なのかもわからず、彼女の心は揺れ続けていました。
「でも、私は…どうすればいいの?」
サーは小さな声で自分に問いかけました。自分の答えが見つからず、ただその思いだけが胸の中をぐるぐると巡り、彼女を悩ませます。マーさんと出会うことで、彼女の人生には新たな選択肢が生まれているのだということが、嬉しい反面、これほどの不安をもたらしていることに気づき、少し自分が無力に感じられました。それでも、サーは心のどこかで、マーと会うことが自分にとって今は1番大切な意味を持つと信じていたのです。
サーは布団の中でじっと天井を見つめ、心の中で問いかけ続けました。「マーさんがあちらから手を差し伸べたら、私はどうするべきなんだろう…」その考えが頭を離れず、不安が重くのしかかってくるばかり。起き上がり、部屋の静寂の中でため息をつきました。
これまでの人生で、サーは自分の気持ちに迷ったり、揺れ動いたりすることがあっても、こんなにどうすればいいのかわからないと思ったことはほとんどありませんでした。母とマーの関係、自分にとってのお父さんの存在、それらすべてが自分の心の中でようやくつながり始めているのに、今度は自分の心がその重みに耐えきれず揺れているのです。
サーは机の上に置いてあった川越のパンフレットを手に取り、ふと高橋さんと加藤さんのことを思い出しました。熊野神社で出会ったあの巫女さん。あの日、彼女と話したときに感じた安らぎと、不思議な縁を感じさせる高橋さんの存在が、サーの心を少しだけ軽くしてくれたことを思い出しました。
「…また、高橋さんに相談してみたらどうだろう?」
その考えが浮かんだ瞬間、サーの胸の中でふわりと小さな光がともるような気がしました。熊野神社での加藤さんとの出会いは、偶然ではなく何かの導きのように思えたし、あの時の高橋さん会話が彼女を救ってくれたように感じていたのです。今また、高橋さんの穏やかな言葉で背中を押してもらえたら、この迷いも少しは解消されるのではないか——そんな気がしました。
それでも、こんな相談をするのは迷惑ではないか、また新たな不安が頭をよぎります。しかし、どうしてもこの胸の重みを一人で抱えきれないと思うと、高橋さんならきっと、何か答えを見つける手助けをしてくれるかもしれない。
サーは思いを巡らせながら、心に湧いた「熊野神社に行こう」という決意が次第に大きくなっていくのを感じました。明日までまだ時間がある。高橋さんと話をして、今抱えているこの迷いや不安を打ち明けてみよう——そんな強い気持ちが彼女を突き動かしました。
サーはすぐに立ち上がり、足早に母のもとへ向かいました。ソファーでのんびりとコーヒーを飲んでいた母は、サーの少し慌ただしい様子に少し驚きます。さ
「お母さん、私、今から川越の熊野神社に行ってくる!」と、サーは息を切らしながら伝えました。
「え?急にどうしたの?川越まで?」母は驚きと心配の入り混じった表情で問い返します。
サーは少し落ち着きを取り戻しながら、「うん、高橋さんに話を聞いてもらいたいの。マーさんのことで、やっぱりどうしても心が落ち着かなくて…どうしていいのか分からないの。だから…相談したいんだ」と、気持ちを正直に伝えました。その目には、母にも理解できるような真剣な思いが込められています。
母はしばらくサーを見つめていましたが、やがて優しく頷きました。「分かったわ。でも、気をつけて行ってらっしゃいね。」
「ありがとう、お母さん!」サーはそう言って玄関に向かい、さっと靴を履くと、勢いよくドアを開け外へ出ました。春なのに冷たい風が彼女の頬を撫でますが、その冷たさがかえって彼女の心を奮い立たせるようでした。
家の前で少し深呼吸をしてから、サーはまっすぐ駅へ向かって駆け出しました。熊野神社に行って、高橋さんに会って話を聞いてもらう。そうすることで、この胸の重みが少しでも軽くなることを期待して…
サーの足取りは力強く、そして迷いのないものになっていました。
駅まで走り抜けてきたサーは、息を整える間もなくスマートフォンを取り出し、熊野神社の番号を検索しました。緊張感が高まりながらも、指先で震えるように電話をかけます。数回の呼び出し音の後、相手が応答しました。
「はい、熊野神社でございます。」
電話越しに聞こえる柔らかな声に、サーはほっと胸をなでおろしました。「あの…土曜日にお世話になったサーです。覚えていらっしゃいますか?」少し不安げに尋ねると、相手の声がぱっと明るくなりました。
「ああ、サーさんですね!もちろん覚えていますよ。あの日、いろいろお話ししましたもんね。どうしました?またお困りごとですか?」加藤さんは、まるで昔からの知り合いであるかのような親しみを感じさせ、サーの心を優しく包み込んでくれました。
サーは少し戸惑いながらも、「はい、実は…あの日のこともあって、また高橋さんに相談させていただけないかと思って…」と伝えました。思いがけず声が震えてしまい、自分の不安が思った以上に大きいことを痛感しました。しかし、加藤さんはその揺らぎを敏感に察知したかのように、すぐさま優しい言葉で応えてくれました。
「そうですか、それは心配ですね。高橋さんに繋げるので、どうぞ安心してくださいね。サーさんが今どんな思いでいらっしゃるのか、少しでもお力になれればと思っていますよ。」加藤さんの声には優しい暖かさが込められていました。
「ありがとうございます、本当に…」サーは胸に込み上げる感謝の気持ちを抑えながら、小さくお辞儀をしていました。加藤さんのその優しさと気遣いに、少しずつ心が軽くなっていくようでした。
加藤さんは、「では、少しお待ちくださいね。高橋さんにこのまま繋ぎますので」と言い、すぐに段取りを進めてくれました。
しばらくすると、電話の向こうから高橋さんの落ち着いた声が聞こえてきました。
高橋
「もしもし、サーちゃん?加藤さんから聞いたよ。今日は何だか時間がぽっかり空いててね、全部サーちゃんのために使える日みたいだよ。」
そう言って、まるで何でもない日常のように、さらりと笑いながら高橋さんは話してくれました。その穏やかな声に、サーは驚きと安堵の気持ちが入り混じります。
サー
「ありがとうございます、高橋さん…本当に、急なお願いなのに」
と、サーは心から感謝の言葉を口にします。すると高橋さんは、
「いいんだよ、サーちゃん。必要なときに頼ってくれること、私はとても嬉しいよ。ゆっくりおいで、焦らなくていいからね」と、さらに優しい言葉を重ねてくれました。
その瞬間、サーの胸の奥にあった不安がふっと軽くなっていくのが分かりました。まるで高橋さんの言葉が、温かな手のひらのように心を包み込んでくれるかのようでした。サーは電話を切ると、深く息をついて電車の窓の外を見つめます。駅を離れていく景色の中で、自分が一歩一歩、高橋さんや加藤さんが待つ川越へと近づいていることを感じると、少しずつ心が落ち着いていくのを覚えました。
「大丈夫、きっと話せる」そう自分に言い聞かせながら、サーは電車の振動に揺られ、川越へと向かっていきました。
電車のシートに座り、窓の外を眺めながら、サーの心は自然とさまざまな思いに包まれていきました。静かに、でも深く…
一番の悩みが頭をよぎります。もし、マーさんが「こちらの次元に来ないか」と誘ってきたら、自分は何と答えればいいのか。その問いは、どんなに考えても答えが見つからず、心に重くのしかかっていました。
目の前の生活も大切で、家族や友人、仕事、そして日常の小さな喜びが詰まったこの世界を、簡単には手放せない。でも同時に、マーさんとの再会が、父と娘のつながりがどれほどかけがえのないものであるかも痛感していました。二つの世界が重なり合って心を引き裂くような感覚が、頭の中でぐるぐると回り始めます。
もし、こちらの世界に残れば、母と共にこの日常を守ることができる。でも、父と再び一緒に過ごせる機会を断ってしまうことになる――それは本当に後悔のない選択なのか。そんな疑問が浮かんでは消え、まるで果てしない妄想の渦の中に引き込まれていくような気持ちでした。
「もしかして、私の答えで、全てが変わってしまうんじゃないか…」サーは、心の中で誰にともなく問いかけました。マーさんと過ごす未来の自分の姿を想像したり、逆にこちらの世界で母と過ごし続ける自分を思い描いたり、いくつもの可能性が入り混じり、頭の中はまるでモノクロームの夢のように次々と場面が変わっていきました。
ふと、電車が減速しはじめ、アナウンスが流れます。サーはハッと我に返り、「川越に着いたんだ!」と気づきます。急いで荷物をまとめ、慌てて立ち上がりながらドアの方へ向かいます。夢から覚めたように心臓が少し早く鼓動し、ドキドキとした感覚を抱きながら、サーは電車を降り、川越のホームに足を踏み入れました。
駅を出たサーは、熊野神社までの道のりを歩き始めました。お昼過ぎの明るい日差しが降り注ぎ、ほんのり温かな空気が心を和らげてくれるようです。周りには観光客や家族連れが楽しげに談笑し、平和な日常が広がっていますが、サーの頭の中には、ふと浮かんだ新しい考えがぐるぐると回り始めていました。
「もし、マーさんに『こちらの次元に来ないか』と言われたら、私はなんて答えればいいんだろう?」そんな悩みに向き合ってきたサーの胸に、*3人で一緒に暮らす方法はないのかな?
という小さな希望がふと湧き上がったのです。もしそれが叶うのなら、自分の大切な世界も守りながら、マーさんとお母さんと過ごす時間が手に入るのではないか…
そんな思いが、サーの胸に温かな光をともしました。
歩きながら、サーは自分の気持ちを確かめるように、マーさんとお母さんと3人で過ごす未来を思い描きます。もし一緒に暮らせるのなら、どれほど心が安らぐだろう。まるで長い旅を終えてやっと辿り着いた「家」という場所に包まれるような安堵と、家族との絆が心を満たしてくれるはずです。現実的には難しいかもしれないけれど、その希望はサーの胸の中でどんどん広がっていきました。
道すがら、お昼の穏やかな光がサーの進む道をやさしく照らし、心に少しずつ安心感をもたらしてくれているようでした。たとえ見えない世界にいたとしても、マーさんはサーにとっていつまでも大切な家族です。その存在を失うことなく、いつまでも共にいたい。その願いがサーの胸を温かく包み込んでいました。
静かに自分の想いを抱えながら、サーは神社に近づいていきます。少し緊張した気持ちと同時に、彼らと共にいる未来への希望が強くなり、胸が高鳴るのを感じていました。
続く
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