サーの奇妙な体験 38
2人はこれから…
どんな運命が…
川越から無事に中野の駅へ戻ってきたサーと恵美。駅を出ると、すっかり夜の帳が降りており、静かな街に灯りがぽつぽつと浮かび上がっています。二人は少し疲れながらも、心には安堵感が広がっていました。
母
「サー、せっかくだから買い物してから帰りましょうか?」
サー
「うん、いいね。もう夜だし、家に帰ったらすぐにご飯作ろう。」
母
「今夜は何が食べたい?」
サーは少し考えた後、ふと思いついたように微笑みながら答えます。
サー
「そうだな〜。マーさんって何が好きだったの?お母さんが昔よく作ってた料理とか…
それ、私食べたいかも(笑)」
母は懐かしそうに小さく笑いながら、昔のことを思い出します。
母
「そういえば、全然作ってなかったわね。大したものじゃないんだけど、チキンのハーブ焼き。簡単な料理だけど、雅はこれが好きだったの。」
サー
「いいね!それにしようよ。私、それ食べたい!」
母
「じゃあ決まりね。サーはキャベツの千切りをお願いできる?」
サーは楽しそうに頷きます。
サー
「ハイ、わかりました!私、がんばって切るね!」
母も笑いながら、サーの顔を見ます。二人の間には、今日の出来事を通して生まれた新たな絆が感じられます。
そのまま帰り道にあるスーパーへ足を運び、チキンとキャベツをはじめとする材料を探しながら、二人は自然な会話が続いています。
母
「キャベツもちゃんと選んでね、シャキシャキしたのがいいわよ。」
サー
「もちろん!今日は張り切って手伝うから、お母さんも楽しみにしてて。」
買い物カゴが徐々に満たされ、二人は笑顔でスーパーを後にします。夜風が少し冷たくなってきたのを感じながら、夕食の準備を楽しみに、家路へと向かうのでした。
帰宅すると、二人はほっとしたように肩の力を抜きました。家の玄関を開けた瞬間、いつもの穏やかな空気が二人を包みます。
母
「やっと着いたわね。今日はほんとに長かった…」
サーも少し笑いながら頷きます。
サー
「本当に。なんか、今日一日でいろんなことがありすぎて、ちょっと頭がいっぱいかも。」
母は疲れた様子のサーを見て、軽く肩を叩きながら言います。
母
「それなら、先にお風呂の準備お願いしてもいい?私も疲れたけど、まずは夕飯作っちゃうから…」
サー
「わかった!お風呂ね、任せて。」
サーはすぐに立ち上がり、お風呂の準備を始めました。湯気が立ち上るのを確認して、キッチンに戻ってくると、母がすでにチキンを下ごしらえをしていました。
母
「川越、色々あったわね。正直、まだ少し混乱してるところもあるけど…」
サーはキャベツを取り出し、慣れた手つきで千切りを始めながら答えます。
サー
「うん、私も。なんか、不思議な一日だったよ…、でも、高橋さんや加藤さん、みんな良い人たちだったから、なんだか安心した。」
母も笑顔でチキンにハーブをふりかけながら続けます。
母
「本当ね。高橋さんが言ってたこと、全部がすぐには理解できないけど…でも、何か大きな力で私たちを支えてくれている感じがするわね。あの人たちのおかげで、少しだけ怖さが薄れた気がするわ。」
サーは、キャベツを切る手を止めて少し考え込みます。
サー
「うん、私も同じ。最初、お墓参り行ってマーさんのこと信じられなかったけど…川越で感じたのは、ただの不思議だけじゃなくて、何かもっと深い繋がりっていうか、温かいものだった。」
母はその言葉に頷きながら、フライパンにチキンを並べ始めました。ジュワッと音を立て、ハーブの香りがキッチンに広がります。
母
「私も、あの瞬間にそう感じたわ。雅にずっと会いたいって思っていたけど、今日みたいに実際に繋がってるんだって感じたのは初めてだった。」
サーは少し微笑みながら、キャベツを器に盛り付けます。
サー
「なんだか、やっと自分の家族のことが少しわかった気がするよ。マーさんが私の父親だったって聞いたときは驚いたけど、今は何だか納得できてる。お母さん、私たちこれから先、どうなるかわからないけどマーさんのこと、ちゃんと考えていけるよね。」
母は微笑みながら、チキンをひっくり返します。
母
「もちろんよ。雅のこと、もっと知りたいし、これからは2人で一緒に向き合っていけたらいいわね。サーがそばにいてくれるから、私も心強いわよ…」
サーはその言葉に安心し、少し照れくさそうに笑います。
サー
「うん。なんか、こうして話してると、不安が和らいでくね。」
母も笑いながら、チキンを焼き上げてお皿に盛り付けます。
母
「料理しながらだと、自然にいろんなことが話せるわね。さ、これで準備完了。食べようか?」
サー
「うん、お腹ペコペコだよ!」
2人は笑顔で食卓に向かい、家族の大切な時間を共有しながら、これからも続く未来への小さな希望を胸に、温かい食事を始めました。夜の静けさの中で、2人の心は次第に軽くなり、父と再び向き合う準備が整ったように感じられるのでした。
サーは食事を終え、お風呂にも入った後、川越での出来事をミユに報告しようと携帯を手に取りました。LINEを開くと、さっそくミユにメッセージを送り始めます。
サー
「お疲れ様、ミユ、あれから大丈夫?
今日は川越に行ってきたんだよ!母と一緒にね、いろいろ回ってきたよ。」
ミユ
「お疲れ様です。私は大丈夫ですよ。
でも、いいなぁ、川越かぁ。何しに行ったのですか?」
サー
「マーさんの奥様のあすかさんから聞いて、マーさんのお墓参りに行ったんだよ。ついでに川越の探索もね。」
ミユ
「あすかさんに電話したのですね。すごくいい人ですよね。
お墓参り、どうでした?
本当にありましたか?
サー
「あったよ…お母さんと、墓前で泣いちゃった…
ミユ
「そうなんですね。辛かったでしょうね〜
サーさん、大丈夫ですか?
サー
「私は大丈夫!
いろいろ考えたけどね…」
ミユ
「川越はどうでしたか?」
サー
「すごく楽しかったよ
まずは氷川神社!御神木とかすごく立派で、なんか力をもらえる気がしたの。あとね、人形流しもやったんだよ。小さな紙の人形に名前を書いて、川に流してお願いするんだけど、それがすごく不思議な体験だった。母と一緒にやったんだけど、2人で『これで何かいいことあるかな?』って(笑)。」
ミユ
「それは良いね!なんか神聖な感じがする。で、その後は?」
サー
「その後ね、熊野神社ってところに行ったの。そこでは…信じられないんだけど、すごい出会いがあったんだよ!」
ミユ
「えっ、何それ!?すごい出会いって、どんなの?」
サー:
「神社でね、巫女さんに声かけられてさ、なんか相談したくなっちゃって。でね、高橋さんって人が手相見てくれて…!」
ミユ:
「えー!手相?サーさんがそんなの見るなんて信じられない(笑)。何か言われた?」
サー
「実はね、神社でお参りしようと母と一緒に行ったら、巫女さんに声をかけられてね、なんかすごく私たちの事気になったみたいで、それで手相の話になったんだよね。高橋さんっていう手相の先生に見てもらったんだけど、でもそれだけじゃなくて…
高橋さん、霊視まで出来ちゃうの、マーさんのことが浮かんできたんだって。最初はちょっと怖かったけど、なんだか穏やかで安心する話だったんだ。」
ミユ
「えっ、マーさんのこと?」
サー
「それと、まず最初の縁というか、不思議な事は、巫女さん、マーさんのお客さんだったんだって…
それも高橋さんが伝えてくれたの。
巫女さんもビックリしてた…」
ミユ
「そんな事あるんだ〜
不思議!」
サー
あとね、マーさんが今も私たちを見守ってくれてるって。次元が違うところにいるかもしれないけど、決して幽霊とかじゃなくて、生きてる人として存在してるって。しかも、私たち家族3人が一つのチームみたいに繋がっていて、それがすごく強い力になるんだって言われたんだよ。」
ミユ
「それって…すごく素敵な話じゃん!そんな風に言ってもらえたら、安心するね。」
サー
「本当にね。最初はびっくりしたけど、どんどん気持ちが軽くなっていって、今では不思議と前向きになれる気がしてる。なんだか、これからもマーさんに会える気がするし、そうしたらもっと話してみたいなって。」
ミユ
「サーさんらしいね(笑)。でもそれだけ深いつながりがあるってことは、本当に大事な人なんだね。」
ミユ
「良かったですね。マーさんにまた会うんですよね?どうするの?」
サー
「うん、火曜日にまた会う予定!母ともいろいろ話して、ちゃんと気持ちを伝えようって決めたの。」
ミユ
「それ大事ですよ。サーさんなら絶対うまくいきますよ!」
サー
「そう思う。だから、次に会う時は正直な気持ちを伝えようって思ってる。怖くないって、今日の出来事で確信できたから。」
ミユ
「それならきっと大丈夫ですよ…
サーさん、応援してます!
またその後の話、聞かせてくださいね。
それにしても、川越でそんな縁があったなんて…
なんかミユも行きたくなっちゃっいました…!」
サー
今度一緒に行こ!お守りとかも可愛かったし、ミユなら絶対好きだと思う!
今夜はなんか、いい夢見れそうな気がする(笑)。」
サーはミユとの軽快なやり取りに少し笑いながら、少しずつ肩の力が抜けていくのを感じました。友達と笑い合う時間が、彼女にとって大切なひと時となっていました。
川越での不思議な体験と、マーさんとの繋がりを実感しながら、サーは少しずつ未来に向けて前進する勇気を得たようでした。LINEの画面を閉じた後、サーは心地よい疲れを感じながら、ベッドに入る準備を始めました。
サーはベッドに入り、心地よい疲れと共に目を閉じました。川越での出来事やミユとの会話が心を温め、自然と眠りに誘われていきます。
やがて、ふわりと意識が漂い、気づくと彼女は静かな光に包まれた場所に立っていました。周りを見回すと、目の前にマーが静かに立っていたのです。サーは驚きと喜びで胸がいっぱいになり、まるで夢のように感じながらも、不思議とその場がとてもリアルに思えました。
サー
「マーさん…!会えたんだね。本当にここにいるの?」
マーは柔らかい笑顔を浮かべ、サーを見つめて頷きました。彼の姿は穏やかで、まるで温かな光が包み込んでいるかのようです。
マー
「サーちゃん、こうして君と会えて嬉しいよ。
火曜日、必ず来てくれるのかな?」
サー
「もちろん!必ず行くよ。なんだか、マーさんに直接伝えたいことがたくさんあって…。」
マーはそっとサーの肩に手を置き、彼女の目をまっすぐに見つめます。その瞳には、言葉にはできない温かな思いが込められているようでした。
マー
「君の気持ち、ちゃんと届いてるよ。
お互い直接、もっといろいろ話そう。」
サーは思わず微笑み、マーのその言葉に心がじんわりと温まるのを感じました。まるで父親に初めて甘えるような感覚で、彼に伝えたいことが次々と溢れ出します。
サー
「マーさん…実はね、ずっと気になってたんだ。初めて会った時から、なんでだろうって思ってたけど、今なら分かる気がする。マーさんとこうして繋がっているのが自然で、当たり前だったんだって。」
マー
「サーちゃん、君がそう思ってくれるのが何より嬉しいよ。僕もね、君に会えるのをずっと楽しみにしてるんだよ。」
2人は視線を交わし、言葉だけでなく心の奥深くで繋がり合っているのを感じました。サーは再び火曜日にマーと会える期待で胸が高鳴り、思わず「早く会いたい」と声に出してしまいました。
マー
「ありがとう、サーちゃん。僕も早く君に会いたい。」
その瞬間、ふと現実に引き戻されるようにサーの意識が薄れていき、気づけば彼女はベッドの中に戻っていました。目を開けると、夢だったのか現実だったのか分からないほどのリアルな感覚に包まれており、マーとの温かなやり取りが心に深く刻まれていました。彼と再会する火曜日への思いが、サーの胸を熱くさせたのでした。
続く
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