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サーの奇妙な体験 29

毎週水曜日投稿‼️


楽しかった今までから、話は急展開?何が起きた?



サーは、駅のベンチに腰を下ろし、今日の出来事を静かに振り返りました。マーとの時間は、彼女にとって特別な意味を持っていました。買い物やランチ、少し怪しげな居酒屋での食事、そして夜の井の頭公園――それら全てがサーにとって新しい思い出となり、マーの存在の大きさを再認識させるものでした。


サーは、マーに対して感じる感情が、単なる尊敬や感謝だけでなく、もっと深いところから湧き上がるものだと気づきました。彼の言葉や行動から、父親のような温かさや優しさを感じるたびに、サーの心は安らぎと共に満たされていきました。自分の中に欠けていた父親像が、マーとの時間を通じ少しずつ形作られているように感じたのです。


「ありがとう、マーさん」と心の中でつぶやきながら、サーはそっと微笑みました。これからもマーとの時間を大切にしていこう、そしてもっと彼のことを知りたい、そんな思いが胸の中で静かに広がっていきました。


その瞬間、サーは自分が少しずつ前に進んでいることを感じました。過去の喪失感や寂しさを乗り越え、新しい絆を築くことができるのだという希望が、彼女の中で強くなっていったのです。


「また来週、マーさんに会えるのが楽しみだな」と、サーは駅を後にしながら、自分の中にある新しい感情に前向きな気持ちを持って歩き出しました。今日は、サーにとって大切な一歩を踏み出した日でした。


サーは駅を出てからも、心の中に広がる温かい気持ちに包まれていました。歩きながらふと携帯を取り出し、今日撮ったマーとのツーショットを見たくなりました。どんな表情だったかな?マーさん、笑ってくれてたかな?そんなことを考えながら、るんるん気分で歩き続けます。


サーは画面をタップして、写真アプリを開きました。そこには、楽しそうに笑う自分と、優しげな表情のマーの姿が映っていました。サーの胸はさらに高鳴り、思わず顔がほころびます。「やっぱり、マーさんとの時間は最高だな…」と、心の中でつぶやきながら、嬉しさをかみしめました。


歩いていると、いつの間にか家の近くに差し掛かっていました。サーは信号の前で立ち止まり、もう一度携帯の画面を確認しようとします。その時、突然頭上で激しい雷鳴が轟きました。


サーの心臓は一瞬止まったかのように感じ、次の瞬間、全身に冷や汗がにじみました。さっきまでの穏やかな空気が一変し、暗い雲が広がり始め、雷が再び轟きました。サーは恐怖に襲われ、雷鳴のたびに肩を震わせます。


「え、何?突然…!」


サーは慌てて携帯をを握りしめ周りを見渡しました。さっきまで楽しそうだった自分が、まるで別人のように思えます。雨が降り出す前に何とか家に帰らなきゃ、という一心で、サーは信号が変わるのを待ちます


サーは信号が変わるのを待ちながら、雷鳴に震える心を必死に抑えようとしていました。しかし、雷は鳴り止むどころかますます激しくなり、まるで天が怒りをぶつけているかのように感じます。心臓は恐怖で早鐘を打ち、サーは早く家に帰りたい一心で信号を見つめ続けますが、赤信号は一向に変わりません。


「どうして? なんでこんなに長いの…」


サーは焦りでいっぱいです。雷鳴がまた一つ、すぐ近くで轟いたかと思うと、サーの体は反射的に縮こまりました。心の中で


「早く、早く帰りたい…!」


と叫びながら、嵐のような夜の中で一人立ち尽くしていました。


その瞬間、サーは持っていた携帯電話に異変を感じました。まるで誰かに引っ張られるような感覚が手に伝わり、サーは驚いて


「えぇ? 何?」


と声を上げました。次の瞬間、携帯電話はサーの手からすり抜けるように前方に飛んでいきました。


「嘘…!」


サーの目の前で、携帯電話は無情にも道路の中央に転がり落ち、反射的に手を伸ばしましたが、遅すぎました。


ドンッと響く音とともに、ダンプカーが猛スピードで携帯電話を踏みつけました。サーはショックで息を飲みましたが、それだけでは終わりません。その後も次々と車が通り過ぎ、携帯電話はあっという間に跡形もなく粉々に砕かれていきました。


「そんな…」


サーは呆然としながら、かつてそこにあったはずの携帯電話の残骸を見つめました。雨がぽつりぽつりと降り始め、サーの頬を伝いますが、それが雨のせいなのか、涙のせいなのか、自分でもわからなくなっていました。


サーは震える手で、道路の端に散らばった携帯電話の残骸をかき集めました。小さな破片を拾い上げるたびに、サーの心はさらに沈んでいきます。マーとの楽しい思い出が詰まった写真や、これまでのメッセージ、そして大切な約束もすべてが、この小さなガラスとプラスチックの破片に変わってしまったかのように思えました。


「なんで、こんなことに…」サーは呟きながら、かすかな希望を抱いて残骸を手のひらに包み込むと、そのまま家に向かって歩き出しました。しかし、一歩一歩が重く感じられ、サーの心は痛みでいっぱいでした。雷鳴はまだ遠くで鳴り続け、雨が徐々に強くなっていきます。だんだんと冷たい雨が体に染み込んできても、サーは気にせずに歩き続けました。


ようやく家の前にたどり着くと、サーは息を整え、震える手でドアを開けました。家の中の暖かい空気が、冷え切った体に触れると、サーは少しだけ安心感を覚えましたが、その直後に襲ってきたのは、自分がどれだけ憔悴しているかという現実でした。


「ただいま…」と力なく声をかけると、母がリビングから顔を出しました。母の優しい目がサーの濡れた髪と、握りしめた携帯電話の破片に気付き、すぐに心配そうに声をかけました。


「サー、どうしたの? こんなに濡れて…

雨にでも濡れたみたいに

それに、手に何を持っているの?」


サーは母の顔を見ると、急に堰を切ったように涙が溢れ出しました。震える声で「携帯…壊れちゃったのそれにマーさんの写真もメッセージも全部無くなっちゃった」と言いながら、手の中の破片を母に見せました。


「どういうこと? 何があったの?」と母は優しく問いかけ、サーを抱き寄せました。


サーは母の胸に顔をうずめ、途切れ途切れに、雷に怯えて信号で立ち止まっていたこと、突然携帯が手から飛び出して車に轢かれたこと、そしてその後の恐怖と絶望について話しました。母はサーの背中をそっと撫でながら、ずっと優しく耳を傾けていました。


「大丈夫、大丈夫よ、サー」と母は落ち着いた声で言いました。「大変な目に遭ったわね。でも、あなたが無事で何よりよ。携帯はまた買えばいいけど、あなたは替えがきかないんだから」


サーは母の温かい言葉に少しだけ安心し、頷きました。「うん…ありがとう、お母さん」と言うと、母の腕の中で少しずつ気持ちが落ち着いていくのを感じました。



サーが涙をぬぐい、少しだけ落ち着きを取り戻したそのとき、母がふと首をかしげました。「でも、おかしいわね?」と、疑問を感じたように言いながら、部屋の窓を開けて外を見ました。


「雷なんか全然聞こえなかったわよ」と母は窓の外を見渡しながら続けました。外は静かで、道路には雨が降った形跡もありません。舗装されたアスファルトは乾いたまま、まるで雨なんて最初からなかったかのようです。


サーは信じられない思いで母の言葉を聞きました。さっきまで雷が鳴り響いていたし、雨も確かに感じていたのに。サーの体はまだ冷たく湿った感触が残っているのに、外の様子はまるで別世界のようです。


母は静かに窓を閉めて、サーの方に目を戻しました。「本当に雷が鳴ってたの?雨も降っていたって言ってたけど、道は全然濡れていないわね…」


サーも窓の外を見てみることにしました.

サーは困惑した顔で、母の言葉に答えることができませんでした。雷の轟音や雨に打たれる感覚は、はっきりと覚えているのに、その痕跡はどこにも見当たらないのです。まるで、自分だけが別の世界を体験していたかのような、得体の知れない不安がサーの胸に広がっていきました。


サーの心には、不可解な出来事への恐れと不思議な体験が現実なのか夢なのか、境目があいまいになっていくような感覚が芽生え始めました。今夜の出来事は、ただの偶然ではなく、何かもっと深い意味があるのではないか…そんな考えが、サーの心に静かに入り込んでくるのを感じました。


「お母さん…やっぱり、私が変なのかな…?」サーは不安そうに尋ねましたが、母は優しく首を振って「そんなことないわよ。でも、何か特別なことが起こっているのかもしれないわね」と、穏やかに答えました。


その言葉に、サーは少しだけ安心しましたが、同時に、この夜が単なる出来事ではなく、自分にとって大きな何かの始まりであることを、無意識のうちに感じていました。



サーは母との不思議な会話を終えた後、自分は、少し休もうとお風呂にはいり湯船に浸かりました。暖かな湯気が体を包み込み、心の疲れを癒してくれるようでしたが、頭の中は依然として混乱したままでした。今夜の出来事が、まるで現実とは思えない不安な記憶となって、心に重くのしかかります。


「なんであんなことが起きたんだろう…雷も雨も、私の記憶だけの出来事だったの?」サーは湯船に体を沈めながら、自分の中で答えの出ない疑問を繰り返していました。


ふと、サーの頭にある出来事がよぎります。それは、親友のミユの携帯が壊れた時のことでした。


それは、親友のミユが経験した不思議な出来事です。少し前、ミユも同じように突然の雷鳴を聞いたと言っていたことがありました。その時、雷鳴に驚いたミユの携帯が手から飛び、まるで導かれるように道に落ちてしまったのです。そして、不運にもその携帯は車に轢かれて、跡形もなく壊れてしまいました。


「全く同じだ…」


サーは呟きました。あの時、ミユも突然の事故で携帯を失い、どうしようもない不安に駆られていました。「携帯がないと、本当に不便で不安になる…」と、ミユがその時に言った言葉が、まさに今のサーの気持ちそのものでした。


ミユもあの時、こんなに不安で、どうしようもない気持ちだったんだ。サーはその時のミユのことを思い浮かべ、彼女に相談したいという強い気持ちが湧き上がってきました。この不思議な出来事が、ミユの経験と何か関係があるのかもしれない。ミユなら、きっと自分の話を理解してくれるはずだ、とサーは思いました。


しかし、今のサーにはミユと連絡を取る手段がありません。携帯が壊れてしまった今、連絡手段が失われた孤独感が、一層サーの不安を募らせます。こんな時、誰かに相談したいのに、その手段がないというのは、思った以上に心細いものです。


「やっぱり、明日ミユに会って話を聞いてもらおう…」サーは湯船の中でそう決心しました。ミユなら、きっと親身になって話を聞いてくれるはずです。サーは少しずつ落ち着きを取り戻し、少なくとも明日になれば、この不安を誰かと共有できるという希望を持つことができるから。


湯船から上がり、柔らかいタオルで体を拭きながら、サーは心を静めようと努めました。今日の夜の出来事は不安でいっぱいでしたが、明日は少しでも解決の糸口が見つかるかもしれない、そんな期待を胸に抱きながら、サーは寝室へと向かいました。


ベッドに横になり、ふわふわとした布団に包まれると、体の疲れが一気に押し寄せてきました。サーはゆっくりと目を閉じ、明日のことを考えながら眠りに落ちていきました。今日の出来事は天国と地獄、夢の中の出来事のように思えますが、明日ミユと話すことで、少しでも真実に近づけるかもしれない。サーはその思いを胸に、静かに眠りにつきました。



3月28日  水曜日


翌朝、サーはいつもより少し早めに出社し、店頭に立つ前にミユとわかなのいる事務所に向かいました。まだ店は開店前の準備段階だったので、事務所には落ち着いた雰囲気が漂っています。


サーは足早に事務所に入ると、ミユのデスクの前で立ち止まりました。ミユはデスクで何やら書類を整理している様子です。サーは少し緊張しながら声をかけました。


「ミユ!」


「おはようございます。サーさん、どうしたんですか?」


ミユはサーの様子に少し驚いたようでした。


「ミユ、ちょっと話したいことがあるんだけど、今いいかな?」


ミユは顔を上げてサーに微笑みかけ

「もちろん、大丈夫ですよ。どうしたんですか?」

と優しく応じます。


サーの声には焦りと緊張が混ざっていて、ミユは彼女の異常な様子に気づきました。


ミユは心配そうにサーの手を握りました。


「何かあったんですか?」


「うん、昨日…昨夜のことなんだけど、本当に変なことがあったの。」


サーは一呼吸置いてから、昨夜の出来事をどう切り出そうかと考えました。


「突然、雷が鳴って…それで…」


ミユの表情が一瞬強張りました。

「雷?それって…もしかして…」


「そう、ミユが前に言ってたことと同じ感じだったの!」

サーは声を少し低くしながら続けました。


「頭上で突然雷が鳴って、それで…その後、携帯が手から飛んでいって、車に轢かれて壊れちゃったの。」


ミユは驚いた顔をして、サーの言葉に耳を傾けていました。


「それ、本当に私と同じじゃないですか…!

私もその時、すごく怖かったし、何が起きたのかわからなかったんですよ」


サーはミユの共感に少し安心しつつも、その出来事が普通ではないことを改めて実感しました。


サー

「やっぱり、あの時ミユも同じように感じたんだね…。どうしてこんなことが起こるのか、全然わからないけど…」


ミユは真剣な顔つきで頷きました。


ミユ

「そうですね。何か原因があるのか、それともただの偶然なのか…でも、これが二回も起きるっていうのは、やっぱりただの偶然とは思えないですよね。」


サーはミユの言葉を聞きながら、昨夜の恐怖が再び胸に込み上げてくるのを感じました。


「ミユ、どうしよう…このままじゃ不安で仕方がない。何か、この出来事の意味があるのかもしれないって思うと、気が気じゃないんだ。」


ミユは優しくサーの手を握りながら言いました。

「サーさん、まずは落ち着きましょうか。今日の仕事が終わったら、一緒に何が起きてるのか話し合いましょう。それで、どう対処すればいいのか考えましょうね。」


サーはその提案に心から感謝し、少し落ち着きを取り戻しました。


「ありがとう、ミユ。やっぱりあなたに話せてよかった。仕事が終わったら、また相談に乗ってもらえる?」


「もちろんですよ、今日はゆっくり話しましょう、それまで、頑張って仕事に集中しましょう。私もそうでしたから、あの時サーはさんが信じてくれたおかげですごく助かりましたから…」


ミユはにっこりと笑い、サーに力を与えてくれるような笑顔を見せました。


サーはその笑顔に励まされ、ようやく心の中に安定感が戻ってきました。ミユと一緒なら、何が起きてもきっと乗り越えられる。そう信じて、サーは自分の店頭に戻り、今日一日の仕事に集中しようと決意しました。



サーは事務所を後にし、店頭に立って仕事を始めました。いつものように笑顔でお客様を迎えながら、新しいコーディネートを提案し、商品を丁寧に案内していきます。しかし、頭の片隅には常に昨夜の出来事が渦巻いていました。雷が鳴り響いた瞬間と、携帯が壊れてしまった光景がフラッシュバックのように繰り返し思い出され、心が落ち着かないまま接客を続けていました。


「これ、本当に似合いそうですね!」とお客様に声をかける時も、心のどこかで「何かおかしい…」と感じてしまうサー。お客様が満足そうに商品を手に取ってくれるたびに、普段なら嬉しさを感じるはずなのに、今はその感情が薄れている自分に気づいてしまいます。


お昼休憩に入っても、サーは軽く食事を取りながら、昨夜の出来事について考え続けました。そして、その出来事が自分だけの問題ではなく、ミユも同じ体験をしていることが気にかかり、「もしかしたら、他にも何かあるんじゃないか…」という不安が胸を締め付けます。


さらに、頭の中にはもう一つの疑問が浮かんできました。マーさんにこのことを相談したい、という気持ちです。マーさんなら、冷静に話を聞いてくれて、何かアドバイスをしてくれるかもしれないという期待が、サーの心に芽生えていました。しかし、どのタイミングで話すべきか、どこまで話すべきかを悩んでしまい、その思いは仕事中も消えませんでした。


午後も接客に追われながら、サーは時間が過ぎるのをただただ待っていました。時折、ミユの方を見て、仕事が終わったら一緒に相談しようと思うものの、なぜか心は落ち着かず、早く時間が過ぎて欲しいと感じてしまいます。


夕方になり、やっと仕事が終わると、サーはほっとしたように息をつきました。今日の仕事は一応無事に終わったものの、心は昨日の出来事と、これからどうするべきかという悩みでいっぱいでした。店を閉める準備をしながら、サーはミユに声をかけて、「これから、ちょっと話せる?」と尋ねます。


仕事が終わった後の静かな店内で、サーはついにミユと共に、昨日の出来事についての本格的な話し合いを始める準備を整えました。そして、心のどこかで、マーさんにもこの不思議な出来事を話して、アドバイスをもらいたいという思いがますます強くなっていくのを感じていました。


続く



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