サーの奇妙な体験 23
高速道路を走っていると、夜景がすごく綺麗で、横浜の街がキラキラと輝き、まるで幻想的な風景が広がっています。サーは窓の外の美しい夜景を眺めながら、心が少しずつ解きほぐされていくのを感じました。
サー
マーさん、本当に綺麗ですね…。まるで夢の中みたい
マー
本当だね。横浜の夜景はいつ見ても感動するよ
サーはふと、マーさんの優しげな横顔を見つめました。マーさんがまるでお父さんのように頼もしく感じられて、今まで抱えていた寂しさや不安が少しずつ和らいでいくのを感じました。これまで誰にも話せなかったことを、マーさんになら話せる気がしてきました。
サー
「マーさん、私…今までずっと寂しかったんです。でも、今日はなんだかすごく安心しました。マーさんがいてくれて、本当に良かったです」
マー
「サーちゃん、そんなこと言ってくれて嬉しいよ。何でも話していいんだよ」
サーは心の中で温かい何かが広がっていくのを感じながら、マーさんに微笑みました。夜景が一層輝きを増し、その美しさが二人の心を包み込んでいきました。横浜の街の光が、サーの心の奥底にある寂しさを少しずつ溶かしてくれるようでした。
サー
私、前にも言いましたが、お父さん知らないんです。でもお母さんがその分いつも頑張っていたの知ってたから、お父さんの事を聞いてはいけないんだとずうっと思ってたんです。
ありがちですが、お休みの日公園に行くとお父さんと遊んでるお友達がすごく羨ましかったんです。
お母さんは遊んでくれてましたし、幸せなんだと本当に思ってます。
でも、なんか足りなかったんですよね
マーは運転をしながら、サーの話を静かにうなずいて聞いています。
サー
こんな事、母には言えませんが、お父さんに出来る事なら会いたかったです。
どんな人なのか、顔も知らなくて…
マーさんの事がきっかけで、この前、初めて母に、父の事を聞いてみたんです。
うちの母は、初めて聞いてきたね。
気を使わせてごめんねって言ってくれました。これからお父さんの事、いろいろ話そうねとも言ってくれました。
入院した時、初めてちゃんとした花束を買ったんです。喜んでもらおうと思って…
かすみ草の花束を用意したんです。
母は、好きな花だったみたいで、良かったと思ったんです。でもそこに母は付け加えたんです。
お父さんからもらった初めてのお花がかすみ草だった。サーもお父さんと同じなんだね。
やっぱり血なのかな〜って言われた時、すごく嬉しかったんです。
マーさんと初めてLINEが繋がった時、すごく嬉しかったんです。でもそれがなんなのか?自分はなんでこんなにうかれてるのか、
自分自身何日も考えても全くわからなくて、でも母が、サーわからないの?って聞き返したんです。
マーさんが理想のお父さん像なんじゃない?
って母は、普通に簡単に答えを教えてくれました。
だから今日、マーさんと食事をしたり散歩できた事、小さい時からの夢だったんです。
サーは今まで誰にも言えなかった事を、マーに心の中の言葉を伝えました。
マー
そっか。今まで本当に良く頑張ったね。でも、もうそこまで頑張らなくていいよ。今のサーちゃんの素直な気持ち、お母さんに伝えてごらん。お母さんはそんなことで悲しまないよ。親は子供が我慢している方が一番つらいんだよ
マーの優しい声に、サーは胸が締め付けられるような気持ちになりました。
マー
サーちゃんは優しすぎて、人に気を遣いすぎなんだね。たまには、心のうちを全部曝け出してごらん。みんなわかってくれるし、サーちゃんの後輩たちも、きっとサーちゃんの心遣いがしっかり伝わってるから、昨日の晩、あれだけサーちゃんのことを考えて、気を遣ってたんだと思うよ
サーは言葉を飲み込み、ただ黙って聞いていました。
マー
サーちゃんには確かにお父さんはいないかもしれないけど、たくさんの仲間がいるんだよ。たまには自分の心を解放してあげないと、自分が辛くなるからね。サーちゃんのお父さんは幸せだと思うよ。きっと今、近くでサーちゃんのこと見守ってるはずだよ。だから安心して。私もいつでも力になるからね
その言葉に、サーの目から涙がぽろぽろとこぼれました。涙を拭うこともできず、サーはただ外の景色に目を向け続けました。マーに気づかれないように、夜景の輝きに目をやりながら、サーは自分の感情を抑え込もうと必死でした。
サー
「ありがとう、マーさん…」
サーの声は震えていましたが、マーの言葉が心に深く響いていました。マーの優しさと温かさに触れて、サーの心の中の寂しさが少しずつ和らいでいくのを感じました。夜の高速道路を走りながら、サーは今まで感じたことのない安心感に包まれていました。マーの言葉が、サーの心に希望の光を灯してくれたのです。
しばらく、沈黙が続きましたが、車が、銀座のあたりに近づくとまた、綺麗な銀座の夜景
サー
銀座の夜景はまた、横浜と全然違いますね
マー
そうだね。
銀座は大都会東京
横浜は異国な世界
そんな街を眺めてきて最高な環境でしょ?
マー
今度いつ頃会えるかね?
サー
マーさんが都合の良い日に合わせます。
有給はしっかり取れと言われてますから安心して下さいね
マー
良かったら今度の火曜日でもどうかな?
サー
大丈夫ですよ。
マー
では、決定ね。また、メールで細かいこと決めよう
サー
はい、わかりました。また楽しみができました。本当にありがとうございます
サーの顔には喜びが溢れていました。目が輝き、声も一段と明るくなりました。
マー
次はどこに行きたい?
サー
そうですね、まだ行ったことのないところがいっぱいありますから…
サーは楽しそうに考えを巡らせ、笑顔を浮かべました。
サー
マーさんと一緒なら、どこでも素敵な時間になりそうです!
マー
そう言ってくれると嬉しいよ。じゃあ、次回も素晴らしい場所を見つけておくね
サー
楽しみにしています!どんな場所でも、マーさんとなら絶対に楽しいですから
2人は次回の計画について話しながら、サーは次の冒険が待ち遠しくて仕方ありませんでした。マーとの新たな思い出がどんなものになるのか、期待に胸を膨らませていました。
そうこう話をしていると、気がついたらもう家の前
あっという間に自宅に車は到着した。
マー
サーちゃん着いたよ
サー
もう着いちゃったんですね…
もっと話したかったです…
でも、ありがとうございました。
本当に楽しかったし今日のことは絶対忘れません!
マー
僕もだよ…
サー
マーさんとまた、どこか行きたいし、いろんなこと教えて欲しいです。私からもまた、お願いします。
マー
良かった。すごく嬉しいよ。また連絡するね。お互い仕事頑張ろうね。サーちゃんに会うのを励みに、明日からまた仕事頑張るよ!だからサーちゃんも頑張ってね!
サー
ハイ!マーさんも帰り気をつけてくださいね。連絡待ってますね。それでは、おやすみなさい。
サーは車を降りると、マーは軽くクラクションを2回鳴らし、車は静かに走り出していきました。サーは車のテールランプが見えなくなるまで、ずっと見送り続けていました。
夜の静けさの中、サーはマーと過ごした素敵な一日を思い返しながら、心が温かくなるのを感じていました。「次はどこに行くのかな…」と、既に次のデートを楽しみにしている自分に気付き、自然と微笑みがこぼれました。
サーは「マーさんとの次の約束が楽しみだな」と心の中で呟き、期待に胸を膨らませながら部屋の扉に着きました。彼との再会が次第に現実のものとして形を帯びていく予感が、サーの心を躍らせました。
ドアを開けて
お母さんただいま〜ぁ
母
おかえり
楽しかったかい?
サー
すごく楽しかった!
お母さん、これお土産!
マーさんから。
肉まんだよ、中華街のやつ
ここの美味しいんだって
母
横浜行ったんだ?
どうだった?
サー
テレビで見たことあるとこだった。
なんか感動
母
サー横浜行った事なかったの?
サー
無いよ
一度もね…
母
私も昔はよく行ったな〜
もう、何十年も行ってないねぇ〜
昔とはもう変わったんだろうね
今度2人で行こうか?
サー
いいね!
また行ってみたい。
サー
肉まん食べる?フカヒレのもあるよ
マーさんのおすすめのお店だよ
母
食べてみようかな〜ぁ
サー
そうしたら、今チンするからね
母
お茶でも飲もうか?
サー
うん
母
その前に手を洗いなさいね
サー
はーい、わかってますって!
母
サー、他はどこ行ったの?
サー
時間がなくて山下公園だけ
帰り道、高速だったけど夜景が綺麗なところを回ってくれたんだ。
本当に綺麗だった。
あんな夜景、それもまとめて、今まで見たことないくらいだったよ
お台場とか、銀座もすごく綺麗だった
母
それは良かったね〜
なんか聞いてると、懐かしいね。
サー
そうなんだ?
母
お母さんも、横浜好きだったんだ
山下公園はなんとも言えないところだね。
ベンチに、時間を気にしないでずーっといられる様なところだったよ
サー
すごくわかる!
今日、そんな感じがしてた。
風がすごく気持ちよかったんだ
チーン
サー
お母さん出来たよ〜
サーは肉まんとフカヒレまんを1つづつ温めました。母と半分づつ分けるつもりで
母
いい香りだね〜
なんか懐かしい香りみたい
母が一口食べてみると、これ昔から食べたやつ。同じ味がするとサーに話しています
サー
お母さんこれ食べたことあるの?
母
有名かどうかは知らないけど、横浜に行くといつも、ここの肉まん食べてたよ。
懐かしいな〜ぁ
メイン通り沿いに小さなお店だった様な気がする
サー
あたり!
お母さん、すごい!
今度絶対行こうね
いろいろ教えてね
母
もう変わったと思うけど、歩く事は出来るから、元町とか行ってみようか。
赤煉瓦、外人墓地、港の見える丘公園
たくさんありすぎるのよ
観光するところ
サー
そうなんだ〜
全然知らなかった
約束ね
マーからもらったお土産の肉まんとフカヒレまんを手に、サーと母は横浜の話で大盛り上がり。話に夢中になっているうちに、気がつけば二人は肉まんとフカヒレまんをペロリと平らげてしまいました。
サー
「お母さん、この肉まん、本当に美味しいよね!」
母
「フカヒレまんも最高!もう一つ欲しいくらいだわ。」
サー
「次回はもっとたくさん買ってこなくちゃね。」
母
「マーさんに感謝しなくちゃね、こんな美味しいお土産を買ってくれるなんて。」
サー
「うん、本当にマーさん、素敵な人なんだよ
いつか、お母さんにも合わせたいよ
二人はお互いに笑いながら、残りのまんじゅうを見て、もう少し味わいたい気持ちを抑えつつも、次回の横浜旅行を楽しみにしながら話を続けました。
横浜に行ったことを、サーは少し経ってからミユにも知らせたくなり、さっそく携帯を取り出してメッセージを打ち始めました。
サー
「ミユ、お疲れ様!
仕事は終わった?
今日ね、マーさんと会えたよ〜
楽しかった!
報告で〜す」
送信ボタンを押して、しばらく待ってみるものの、時間が経ってもミユからは既読がつきません。サーは携帯をテーブルに置いて、母と一緒にテレビを見始めました。
しかし、サーの心はソワソワ。1時間くらいしてもう一度携帯を確認してみますが、やはりまだ既読になりません。サーは誰かに今日の楽しかったことを伝えたくて、ついに我慢できなくなりました。
サー
「お母さん、マーさんと横浜でね、こんなことがあってね…」
母
「さっきも聞いたけど、もう一度?」
サー
「うん、もう一度!今日は本当に楽しかったんだから!」
母は笑いながらうなずき、サーの話を再び聞き始めました。サーは子供のような笑顔で、今日の出来事をまたつけたしなから話し始めていました。
それからしばらくして、サーはまた携帯を確認しましたが、ミユはまだLINEを読んでいない様子。サーは考え込み、もしかしたらミユは携帯を忘れたのかもしれないと推測し、今夜は諦めることにしました。
でも、諦めたとはいえ、サーの心は落ち着きません。今日のマーさんとの横浜デートを思い出すたびに、つい顔がほころんでしまいます。
サーはソファに座りながら、母にもう一度話しかけました。
サー
「お母さん、さっき話したけど、今日の横浜、本当に楽しかったんだよ!」
母
「もう何度も聞いたよ、サー。でもそんなに楽しかったのね。」
サーはにんまりしながらうなずき、母に向かって大きな笑顔を見せました。どうしても伝えたい気持ちが収まらず、サーは家の中をうろうろしながら、鏡に向かって今日の出来事を再現してみたり、クッションに向かってマーさんの話をしたりと、まるで子供のように一人で楽しそうにしていました。
サー
「ねえ、お母さん、やっぱりもう一回だけ話してもいい?」
母
「はいはい、もう一回だけね。でもその後は本当に寝る準備をしなさいよ。」
サー
「わかった!今日は本当に最高の日だったんだから!」
母は笑いながらうなずき、サーは満面の笑みで自分の楽しい気持ちを爆発させていました。
3月22日 木曜日
今日からまた仕事。サーはいつも通りに起きて、母と朝食をとり、いつも通りの朝が始まりました。
サー
お母さん、じゃ〜、行ってくるね!
母
はい、気をつけてね。いってらっしゃい!
サーは今日は足取りも軽く、昨日の出来事をどうやって話そうか考えながら駅に向かっています。途中、ふとミユのことを思い出しました。
サー
そういえばミユ、携帯、会社に忘れたのかな?まだ既読になってないもんな〜。ミユも、おっちょこちょいなとこあるからな〜
サーはホームに立ちながら、昨日の楽しい出来事をどうやってミユに伝えようかと妄想が止まりません。
サー
ミユがマーさんの話聞いたら、きっと『キャー、すごい!』って騒ぐだろうな。いや、もっと驚くかも?…うん、そうだな、まずは横浜の景色の話からして…いや、やっぱり最初に中華街の話をして…」
電車が到着し、サーは乗り込みます。車内でも妄想は続きます。
サー
そしてミユが【サーちゃん、まさかマーさんと観覧車に乗ったの?】って言ったら、どうしよう。いや、そんなことないけどさ。えっと…
電車の揺れに合わせて、サーの心も揺れ動きます。
サー
仕事中もミユに会ったら、なんて話そうか…朝礼の後かな?いや、お昼休みがいいかな…
そして、サーは駅に到着。改札を出て、会社に向かう途中も、妄想は止まりません。
サー
やっぱり、まずはマーさんがどれだけ優しかったかを伝えなきゃね。でも、ミユが羨ましがるかな?いや、でもそんなの気にしない!
会社のビルが見えてくると、サーは気持ちを引き締めて深呼吸。
サー
よし、今日も頑張るぞ!ミユに伝えるのも楽しみだけど、仕事もしっかりしなきゃね。
サーは笑顔で会社のドアを開け、中に入っていきました。頭の中では、まだ昨日の楽しい思い出とミユに伝えるべき言葉がぐるぐると巡っています。
向こうからミユが走ってきます。
ミユ
サー先輩、おはようございます。
サー
おはよう。
昨日…
ミユ
聞いて下さいよ〜サー先輩!
携帯壊れちゃいました…
悲しすぎる
サー
どうしたの?
ミユ
昨日、帰る時、突然雷が頭の上ですごい音したんですょ
ビックリして、携帯飛ばしちゃったんです(涙)
そうしたら、携帯、車にひかれちゃって、粉々になっちゃったんです(涙)
でも、不思議なんですけど、誰も雷の音聞いてないんです。
わかなもいたんですが、わかなも何も聞こえてないと言ってて、私だけが聞こえたみたいなんですよ。
そんな事ってあると思います?
サー
なんか勘違いしたんじゃない?
みんなに聞こえなくて、ミユだけなんてなんか変だし?
ミユ
サー先輩も信じてくれないんですか?
サー
そんな事ないよ。
信じるよ。
でも、不思議だね?
本当に雷だったの?
昨日、夜すごく天気良かったし
ミユ
サー先輩疑ってるでしょ?
サー
信じてるから
でも、なんだろう?
どの辺で、携帯壊れたの?
ミユ
すぐそこの交差点です。
もう携帯屋さんやってないから、今日早退させてもらって、携帯買いに行ってきます。
サー
だから昨日、LINEしても既読にならなかったんだ。
私、てっきり携帯忘れたのかな〜と思ってた。
ミユ
昨日の夜はもう落ち込んで何もできなかったです。こんなに携帯が大切なのかとつくづく思いました。
サー
本当だね!
携帯がないの想像できないもんね
ミユ
サーさんランチ一緒にお願いします。
社食でも良いですか?
いろいろ報告したい事あるんで(笑)!
サー
私も報告したい事あるんだ(笑)
じゃあ、あとでね
バイバイ
ミユ
はい、では、またあとで(笑)
2人はそこで別れ、サーはミユと携帯が繋がらなかった理由がわかって、ほっとしていました。
でもミユの事件の方が大きかったので、昨日のマーさんと出かけたことは、いいだせませんでした。
サー
ランチの時にミユに言えばいいや(笑)
そう思い、サーは自分の部署にむかいました。
午前中の仕事は、お客様はあまり来られず、商品の整理とか、片付けが中心であっという間に昼食時間、今日は社食と言っていたので
先に行って席でもおさえておこうとサーは社食に向かいました。
食堂に着くと、ミユもわかなももう来ていました。
続く




