サーの奇妙な体験 21
とうとう、サーとマーが会う時が来た‼️
3月21日 水曜日
サーが朝目覚めると、母は入院前と同じ様に朝食を作っていました。
サー
お母さん、おはよう。
母
おはよう。
今朝は早いわね〜
どうしたの?
サー
お昼から出かけるんだ。
元々休みだったから
母
そうなんだね。
サー
お母さん、大丈夫?
まだ病み上がりなんだから無理しちゃダメだよ〜
母
目があいちゃうんだよね。
でも、これもリハビリだと思えば、なんて事ないよ。いつもと同じ事をしてるだけだからね
サー
ならいいんだけどね〜!
絶対無理はやめてよね!
母
わかりました。
サーは洗面台で歯を磨きながら、鏡越しに母に話しかけました。すると母が尋ねてきます
母
今日はどこに出かけるの?
サー
昨日、お母さんが寝てる間に食事の人からメールがあってね。今日会うことになったんだよ。昨日会えなかったから、今日でもどうかなって。
母
良かったね。みんなで会うの?
サー
違うよ。私だけ。昨日行けなかったから、ちゃんとお礼言ってくるだけ。食事はしてくると思うけど。
母
そうなんだ。おじさんみたいだけど、いろんな話してきなさいね。きっと、ためになる話をたくさんしてくれるわよ。だてに年取ってるわけじゃないからね。年上の人はいろんな経験をしているからね。
サーは笑いながら、
お母さん、普通はその人大丈夫なの?とか心配しない?
母も笑顔で、
だって、前に聞いた人でしょ?優しい人っぽいんでしょ?サーも大人だし、いちいちお母さんに細かく言われても面倒でしょ。楽しんできなさい。
サーも嬉しそうに
でも、本当に優しくて心遣いがすごいんだよ。マーさんって言うんだよ。
母は少し驚いて、
マーさん?
サーは笑って、
うん、名前なんだっけ?帰ってきたら、いろいろ話すからね。楽しみにしてて。
母も笑顔で、
ハイハイ、楽しみにしてるからね。さあ、早くご飯食べましょ。
サーは母の言葉に笑顔でうなずきながら、洗面台を後にしました。親子の楽しげな会話が続く中、朝の準備が進んでいきました。
食事を終えたサーは、午後1時に中野駅前で待ち合わせるために、そわそわしながら支度をしていました。鏡の前で服を何度も確認し、髪の毛を整えながら、落ち着かない様子です。
母がキッチンから顔を出し、
そんなに気にして〜、デートみたいじゃないの。大丈夫、素敵よ。
サーは照れ笑いを浮かべながら、
お母さん、違うよ。ただの食事だってば。
母はニヤニヤしながら、
でも、マーさんって優しい人なんでしょ?ちょっとドキドキしてるんじゃないの?
サーは真剣な表情で、
いや、本当にお礼を言うだけだから。そんなことないって。
母はさらに楽しそうに、
でも、なんでそんなに服を気にしてるの?普段のサーなら、こんなに時間かけないのに。
サーはため息をつきながら、
お母さん、もういいってば。遅れるといけないから、ちゃんと準備してるだけ。
母はクスクス笑いながら、
わかった、わかった。じゃあ、時間に遅れないようにね。マーさんに悪いから。
サーはうなずきながら、
はいはい、わかってるよ。
最終的に準備を終えたサーは、バッグを肩にかけて玄関に向かいました。母は背後から、
「気をつけてね。楽しい時間を過ごしてきなさい。」
サーは笑顔で、
ありがとう、お母さん。行ってきます!
玄関のドアを閉める直前、母は最後に一言、
デートみたいにならないようにね!
サーは苦笑いしながらドアを閉め、外に出ました。母のからかいを背に受けながら、サーは中野駅前に向かって歩き出しました。
駅までの5分ほどの道のり、サーの頭の中はマーさんとのメールのやり取りでいっぱいでした。歩きながら、まるで妄想の世界に入り込んだかのように、独り言をつぶやき始めます。
マーさん、今日はよろしくお願いします。いや、もうちょっとカジュアルに…マーさん、こんにちは!今日はありがとうございます…これでいいか。うん、いい感じ。
道行く人たちは、サーが何やらブツブツ言っているのを見て、少し驚いた表情を見せていますが、サーは全く気づきません。
マーさん、先日は本当に助かりました。感謝してもしきれません。いや、重すぎるかな?ありがとうだけでいいか…ありがとう、マーさん!
サーは、ふと立ち止まり、通行人に笑顔を向けますが、相手はただ困惑しているだけです。
マーさん、今日は何を食べようか?私、お肉好きなんですけど…って、それは関係ないか。
自分の言葉にハッと気づき、サーは少し赤面しながら歩き続けます。しかし、すぐにまた独り言が始まります。
マーさん、いつもお忙しい中、ありがとうございます。今日はリラックスして楽しんでください。うん、これも悪くない。
サーは自分の考えに満足し、ニヤリと笑います。通行人が再び彼女を不思議そうに見ていますが、サーは全く気にせず、さらに妄想を広げていきます。
もしマーさんが、今日は特別な日だからって言ったらどうしよう。え、本当に?そんなことある?でも、サーちゃんは特別な人だからって…ないない、さすがに妄想しすぎ。
笑いをこらえながら、サーは駅前に到着しました。頭の中では、さまざまなシナリオが繰り広げられていますが、現実に戻った彼女は、少し恥ずかしそうに周りを見渡します。
さて、落ち着いて。マーさんに会うんだから、しっかりしなきゃ。
サーは深呼吸をして、自分を落ち着かせながら…
マイワールドから抜け出したサーの顔には、少し緊張と期待が混じった表情が浮かんでいました。
サーは駅前の待ち合わせ場所で立っていると、突然、車のクラクションが2回、軽やかに響き渡りました。驚いて振り向くと、一台の白い車がゆっくりと近づいてきました。
車の運転席に目を凝らすと、そこには見覚えのある笑顔がありました。マーさんだと確信し、サーは心を弾ませながらその車に向かって歩き出しました。
車が完全に停車すると、マーさんが窓を開けて手を振り、にこやかに
サーちゃん、お待たせと声をかけました。サーは笑顔で「こんにちは、マーさん。今来たとこです」と応え、さらに足早に車へと近づいていきました。
マー
どうぞ!
サー
ありがとうございます。
サーが助手席に乗り込み、少し緊張した手つきでシートベルトを締めました。
マー
では、出発しようか!
サー
はい!マーさん、よろしくお願いします。
マーはサーの緊張を感じ取り、優しく微笑んで「大丈夫だよ、サーちゃん。今日は楽しもう」と励ましました。車は滑らかにスタートし、街の風景が次々と流れていきます。どこに向かうのか、サーはまだ何も聞いていません。ワクワクしながらも少し落ち着かない様子で、窓の外の景色を見つめています。
さっき考えていたシナリオの妄想はその時すでに頭から消えていました。
マー
サーちゃん、お母さんが大したことなくて本当に良かったね。
サー
はい、一時はどうなるかと本当に怖かったです。でも、ただの貧血だったみたいで、本当に安心しました。
マーは優しい声で「それは本当に良かった。健康が一番だからね」と言いながら、ゆっくりとアクセルを踏みます。サーはマーの言葉に少しずつ緊張がほぐれていくのを感じ、車内に流れる穏やかな雰囲気に包まれていきました。
サー
あと、新宿の時は本当にありがとうございました。
あの時マーさんに助けてもらわなかったらどなってたか?
考えると怖いですね、でも本当にありがとうございました。
マー
ミユちゃんが言ってたよ
サーちゃんがすごく気にしてくれてたって
こちらこそ、ありがとね。
そのお陰で、今こうして再開できて楽しい時間過ごせるんだもん
サーちゃんに感謝だよ
サー
やっぱり、会ってみて、イメージ通りの人で良かったです。
マー
そうかな?
ただのおじさんだよ
マーは笑いながら答えます。
サーも少しずつ緊張はほぐれていきました。
サー
そんな事無いですよ
今日の事、朝、母に話したら、めちゃくちゃからかわれちゃいました。
そうだ、母も美容師なんですよ。
マーさんに言いましたっけ?
マー
聞いてないかな?
大阪だもんね
サー
ハイ
でも、美容学校は東京だったみたいです。
マー
もしかして代々木とか?
サー
高田馬場って言ってた様な?
マー
わかった!
多分T美容学校だと思う。
自分は代々木にあるY美容学校だったから
サー
それで東京で、何年か仕事をして大阪に帰ってきたと言ってましたね
マー
そうなんだ。
その当時、他県からたくさん生徒がきてたからな〜
そうだ、もう少しで初台だからそこから高速に乗るからね
サー
マーさん、どこに向かってるんですか?
マー
それはお楽しみにね
すぐわかると思うけどね
自分の好きな場所なんだ
だから、なんかサーちゃんにも見せたくてね
サー
楽しみです。
何か思い出があるんですか?
マー
たくさん詰まってるところだよ…
なんかキモイかな?
サー
そんな事無いです。
すごく興味があります。
マー
こう見えても、東京生まれでね
若い頃、横浜に憧れてね
学生の頃から、横浜はよく遊びに行ってたんだよね
サー
マーさん、横浜に向かってるんですね!
マー
ヤバ!
自分で言ってしまった…
サー
マーさん面白すぎ!
マー
内緒で連れて行こうと思ってたのに
情けない
サー
私、大阪から出てきて、東京といってもあまり出かけてないんですよね。とりあえず、東京の王道ばかりで、横浜、行った事無いんですよ。
全然わからなくて、だからすごく楽しみです。
マー
そうなんだ
なら良かった。
でも、本当情けない
ボロって出ちゃったもんね
サー
でも、マーさんぽくって癒されますよ。
なんか、一気に緊張なくなりました。
もしかして、マーさんの演出だったりして?
マー
それは無いよ
ただの事故です
この事から、2人の緊張は一気にほぐれてお互い自然体になっていきました、
サーとマーの会話が弾む中、車は高速道路を走り抜け、窓からは東京の風景が次々と流れていきます。ビルの合間に見える東京タワ
ーや、遠くに霞む山々。二人の緊張は完全にほぐれ、笑い声が車内に響きます。横浜へ向かうワクワク感が二人を包み込み、自然体の会話がさらに盛り上がっていきました。
マー
サーちゃんは今彼氏さんはいるの?
サー
いないんです…
もう何年も
マー
え〜ぇ!
そんなふうに見えないんだけど
彼氏がいて当然って感じに見えるよ
サー
それが全然なんです
東京に出てきて、仕事中心だったので、出会うきっかけ全然無くて
マー
今、本当にそうらしいね。
昔は職場恋愛とか普通にあったけど今はそれが無いらしいね
お客さんも同じ事言ってるよ
だから、今アプリとかで出会ってるとか言ってるね
時代は変わったね…
サー
本当にそうみたいですね
だから私、後輩なんかと遊んでるのがすごく楽しくて
だから今は彼氏はそんなに欲しいと思ってないんです。
だから、マーさんと出かけるなんて私にとって、すごい事なんですよ
マー
自分も娘みたいな子と2人で出かけるなんて考えた事も無かったよ。
仕事柄、若い子とは話したりしてるけど、こうして出かけたことなんて、全く無かったからね。だから、自分自身すごく新鮮で異次元にいるみたいだよ。
サー
マーさん大げさなんだから〜
マー
本当!
嘘偽りないよ!
サー
でも、マーさんで出会えて良かったです。
ここ、すごく綺麗
景色がすごく良いですね
マー
レインボーブリッジだよ
今日は天気が良いから最高の眺めだよね。
これから、湾岸に乗って横浜ベイブリッジも渡るからね。
サー
飛行機があんな近く飛んでる
すごい!
マー
羽田空港が近いからね
だから飛行機、頻繁に頭の上を飛ぶよ
サーは子供のようにはしゃいで、窓の外を指差してはしゃぎます。マーはその姿を見て、「まるで遠足みたいだな」と思わず笑ってしまいました。ドライブを選んで正解だったと確信し、心の中でガッツポーズを決めていました。
マー
サーちゃん、はしゃぎすぎて窓から飛び出さないでね。
サー
大丈夫ですよ、マーさん!でも、本当にこんな景色が見られるなんて思わなかったから、めっちゃテンション上がります!
マーさん、もしかしてあれ海ですか?
すごい!綺麗!
マー
そうだよ
よかったよかった。じゃあ、次のサプライズも楽しみにしててね!
サー
次のサプライズ?もう楽しみで仕方ないです!
マーはにやりと笑いながら、さらにスピードを上げて走り続けました。サーの無邪気な反応に、二人の距離がぐっと縮まった瞬間でもありました。
続く




