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サーの奇妙な体験 16


職場に戻ったサーは、仕事を難なくこなし、気づけば、あっという間に就業時間が訪れました。会社を出ると、ふと母に何かプレゼントでも買っていこうかなと思います。


「何を渡せば喜ぶかな…」と悩んでいると、いつも通る道にある小さなお花屋さんが目に入りました。そう言えば、母に花を贈ったのは随分昔のこと。高校生の頃、母の日にカーネーションをあげたくらいで、それ以来全然送っていないな〜と思い出します。


「部屋の雰囲気を変えるために花を贈るのもいいかもな…」と考え、持ち帰るのが大変なので、家の近くのお花屋さんに寄ることにしました。


サーは、明日のこともうまくいっているし、母と過ごす時間も楽しくて、何かしたいという気持ちが湧いてきます。母への感謝と愛情が溢れ、素直に喜ばせたいと思うサーの心は、温かい感情でいっぱいでした。


電車の中で、何の花が良いか全く分からず、サーは携帯で検索をしてみましたが、どうしてもピンとくるものが見つかりません。やっぱりプロに任せた方が間違いないと結論を出したサーは、電車の車窓から夜の景色を見つめながら、心を落ち着けていました。


駅に着くと、駅からすぐのところにお花屋さんがありました。そこでは、自分と同じくらいの年齢の店員さんがお花のお手入れをしていて、店内は色とりどりの花でいっぱいでした。温かい雰囲気に包まれたお花屋さんの前で、サーは微笑みながら店員さんに声をかける決心をしました。


サー

すみません、お花が欲しいんですけど…


店員

ハイ、いらっしゃいませ。

どのような、お花をお探しですか?


サー

全然わからなくて

母が今上京してて、何かプレゼントしたいな〜と思ったので…


店員

そうなんですね

色とりどりの花がたくさんありますから、よく見てみて、可愛いアレンジとかいろいろあるから


サー

こんなにあると本当に悩んじゃいますね


店員

そうでしょう

どのお花もみんな、一生懸命なんですよ

人を喜ばそうとね

私を見てと、言ってるかもしれませんよ(笑)


サー

なぜか、納得してしまいますね。

あまりお花買ったことないので


店員

色が沢山あった方がお母さんは好みですか?


サー

本当にわからないんですが、結構シンプルなのが好きかも


店員

そうしたら、シンプルだけど豪華になるお花にしてみませんか?


サー

そんなお花あるんですか?


店員

「感謝」「幸福」「無邪気」「親切」

1束だと寂しいし、どちらかというと脇役なんだけとね。でも、私は1番大好きなお花さんなんだよね(笑)

いつも、他のお花を輝かしてくれる名脇役!この子がいるから他のお花が引き立っちゃう

でも、周りはそれに気がついてないんだよね、この子はシンデレラなのに(笑)

あなたが1番綺麗な事にね

6束ぐらいでまとめると

全然見違えちゃいますよ(笑)


サー

どのお花ですか?


店員

こちらの花


サー

かすみ草


店員

シンプルで花言葉も、お母さんに感謝を込めてで、当てはまるんじゃないかな〜ぁ(笑)


サー

ハイ

これに決めます(笑)


店員

よろしいですか?

私の提案だけで?


サー

お姉さんの、言葉がなんか、ググッと来ました(笑)


店員

本当ですか?

ありがとうございます。

そうしたら、店長に内緒で少しおまけしちゃうね(笑)


サー

ありがとうございます


店員さんは手際良く、かすみ草の束をまとめていきます。

お家は近くですか?


サー

ハイ

すぐ近くです


店員

そうしたら、特別ね(笑)

10束にしてあげる(笑)


サー

え〜

本当にいいんですか?


店員

なんか、嬉しくて!

お母さんのプレゼントにお花を選んでくれて!

だから、この子達を輝かせてあげたくなっちゃった(笑)


サーはどんどん豪華になっていくかすみ草に少し感動していました。

これきっと、お母さん喜んでくれる(笑)

間違い無い!


店員

ハーイ、出来ました〜ぁ(笑)

どうですか〜ぁ?


サー

おっき〜い(笑)

すご〜い!

綺麗!

感動です。

ありがとうございます。

絶対、母喜ぶと思います。

お姉さんで良かったです(笑)


店員

ありがとうございます♪

良かったらまた来てくださいね。


サー

今までお花を買うことがあまり無かったのですが、これからは、お花にも目を向けてみようと本当に思いました

買う時はここでしか買いませんから

絶対また、来ますね


店員

良かった〜

そんなに喜んでくれて絶対また来てね


お会計を済ませ、お姉さんから花束を渡され

思った以上に大きいのに、ビックリ!


でも最高に気分が良く、お店を出て行きました。

振り返るとお姉さんが手を振ってくれていて

サーも振り返したいのですが、頭を下げてお礼をするのが精一杯

本当に嬉しい気持ちでいっぱいなサーでした。


早くお母さんに渡したい。

ビックリするだろうな〜

お母さん、なんて言うかな〜


サーは急いで自宅えと向かうのでした。


下から自分の部屋を見ると電気がついています。

母がいるのがわかります。

ビックリするだろうな〜

泣いちゃったりして

いろいろ想像を膨らませて、部屋に向かいます♪


ピンポ〜ン


インターホンを鳴らしても何も反応がありません。

ドワを開けたらビックリさせようと思ったのに、全然反応がありません

もう一度押しても、また反応がありません。


サーは買い物に行ったのかなと思いながら、仕方なく自分で鍵を開けて中に入りました。


「お母さ〜ん、居る〜?」

と呼びかけましたが、反応がありません。


「全く、どこ行ったのかな?せっかくのプレゼントでビックリさせようと思ったのに…」


靴を脱いで部屋に入ると、ソファーの前で母が横になっているのが見えました。


「お母さん、いるんなら返事してよ〜」

と近寄ると、母は反応がありません。


サーの心臓が一瞬止まりそうになり、急いで母のそばに駆け寄ると、頭から血を流しているのが目に入りました。


「お母さん!お母さん!」

サーは母を抱き起こし、必死に反応を確かめますが、母は動きません。


「そうだ、救急車!」

サーは震える手で携帯を取り出し、119番に通報しました。部屋に緊張感が張り詰め、サーの心は恐怖と焦りでいっぱいでした。



その後、救急車はすぐに到着し、救急隊員が迅速に母の容態を調べ始めました。隊員たちは落ち着いた声で手早く指示を出し、現場は緊張感に包まれていました。


その時、母が微かに目を開けました。救急隊員が優しく声をかけながら、母の意識を確かめます。「どうされましたか?」と尋ねると、母は弱々しい声で「転んで頭を打ったみたい…」と答えました。


「お母さん、大丈夫?」とサーは涙目で問いかけましたが、母は微笑んで「大丈夫よ、サー」と答えました。それでも、救急隊員は「念のために病院で詳しく調べましょう」と言って、母をタンカに移しました。隊員たちは慎重に母を運び出し、サーもその様子を見守っていました。


救急車の中で、サーは母の手を握りしめ、「すぐに良くなるよ」と自分に言い聞かせるように繰り返しました。母は「ありがとう」と弱々しく言いながらも、安心した表情を浮かべました。救急車のサイレンが響く中、サーは母の手をしっかりと握り続けました。


病院に到着すると、医師と看護師がすぐに母を受け入れ、緊急処置室へと運びました。サーは待合室で不安な時間を過ごしながら、母の無事を祈り続けました。



続く


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