14、王子の婚約発表
終業式の後に、王子から婚約について発表があると掲示板に貼り出されていた。女生徒たちからは、きゃーっと歓声が上がる。
「いよいよ、決まったのね!」
「楽しみだわ。誰かしら」
終業式が終わり、少し間があったが席を立つ者はいなかった。王子とベンが壇上に上がった。
「婚約について決まったので発表する」
ざわっ
王子の言葉に会場はざわめく。カロリーナも見届けようと、端の席に座っていた。なんとも言えない気分だった。
(結局いたのね、そういう人が。副会長のセレナが最有力候補だったけど)
「カロリーナ・アルファイン公爵令嬢と、再度婚約することにした。以後、彼女に非礼を働く者は退学とする」
(なんだとぉぉぉ!!)
カロリーナは頭が真っ白になる。王子は壇上から降りると、状況が追いついてないカロリーナのもとへ歩いて行き、跪いて手を差し出した。
「私ともう一度、婚約してください」拒否権はないという目。
「!」(この、○ソが!)「分かりました……」
カロリーナはあきらめて、手を置いた。王子は、カロリーナの指にキスをする。
「では、失礼する」
王子は講堂を後にして、呆然としたカロリーナを置いて行った。
「きゃー、やはりカロリーナ様しかおりませんわよね」
「おめでとうございます!」
他の令嬢たちからお祝いの言葉や、拍手をもらう。
「ははは、ありがとう……」
カロリーナは、弱々しく答えた。それを3人のライバル、ヒロイン、セレナ、アグネスは、悔しい思いで見ていた。
アリスやユフィア、レオン、シュタインは、喜んで拍手をしていた。ヘイゼンは驚いて、ひゅーっと、口笛を吹いた。
(やるね)
カロリーナは家に帰ると、玄関で先に帰っていた公爵から話を聞いた。
「実は、書面上は婚約破棄してなかったんだよ」
(no! ぎゃ)
「王子がお見えです」
メイドが知らせに来た。
応接室で、向かい合う二人。カロリーナはカツラを取っている。学園の客が来た時はかぶっているが、今日は気を使わなかった。腕組みをして顎を上げ、冷めた目で王子を見た。
「どういうことか、説明してもらいましょうか?」
王子は平然としていて、カロリーナの態度を意に介さなかった。王子は説明する。
「婚約破棄の話が出た時、父がお前が変わったことについて、いたく関心を寄せてな。王子がころころ婚約者を変えるのはよくないから表向きそうして、検討することになったんだ。
他にいい相手がいれば、その時正式に破棄され、再婚約してまた破棄される時は、前回は表向きだったと言えばいいということになった。その時はまさか、再婚約になるとは思っていなかった」
(私は誰のルートにも入らなかったから、可能性があったということ? ……盲点だった)
「他の令嬢はどうだったんですか。セレナ嬢とか」
「彼女は、他の者に対して厳しすぎる。一緒にいて息が詰まるだろう。マーカス令嬢はレオと婚約したからな。
お前は、後輩二人の婚約を取りまとめていた。なかなかできることではない。お前は変わってから、人と上手くやっていたから、結局、お前がふさわしいと思ったんだ」
(あら、褒めてくれてるのかしら。それはうれしいわね)
カロリーナは少し頬を染めたが、すぐに表情を変え、キリッとして王子を見据える。
「分かりました。じゃあこれからは、しっかり守ってもらいましょうかね」
「望むところだ」
王子も腕組みをして、顎を上げて不遜な顔でカロリーナを見た。
『ふははは』二人して笑う。
その様子をドアの隙間から、サラと公爵が見ていた。
「あの二人似たもの同士ですよね」
「そうだな」
こうして、終業式断罪イベントではなく、王子ルートの中間?ハッピーエンドを迎えた。




