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短編

年末のサーファー

作者: kayako
掲載日:2021/12/05

※一応、潔癖症のかたは閲覧注意です。

 その海は汚く、もう2日ほど波が殆どなかった。

 僅かに波立つのは、時たま豪雨が降ってくる時だけ。

 鈍い銀色の空の下、それでも俺たち二人はずっと、波を待っていた。

 年末に来ると言われるビッグウェーブ。その伝説を信じて。


 俺は傍らに立つ友に告げる。

「諦めてもいいぞ。命の保障は出来ない」


 友は笑って答える。

「いや。君がやる限り、僕もやるよ」


 ヘドロの塊が無数に浮く海を眺めながら、俺たちは待ち続けた。

 そして――



 突如、空の向こうから悲鳴にも似た轟音が響いたかと思うと。

 謎の巨大な柱が一本、天からざぶりと海へ突入する。

 あれが噂で聞いた、波を生む神の手というヤツか。

 柱が海底に到達したのか、ごうっと地面が揺れる。と――

 海面が一瞬ごぼりと盛り上がり、大波と化した。



「う、うわぁあっ!? 来た来た来た!!」

「こ、これがあのビッグウェーブ!?」



 俺たちは波に乗るべく、ボードを蹴って海へ飛び込んだ。

 しかし、不規則に荒れ狂う波に揉まれ、何度もボードから落ちかける。

 その眼前で、ごぼごぼと嫌な音を立てながら、柱が上空へゆっくり上がっていく。

 大きく渦を巻く海面。

 俺たちはその濁流に乗り――いつしか柱の方向へ吸い寄せられていた。

 柱の根元、俺たちが引き寄せられる先にあるものは、ひたすらに真っ黒な闇。


「何だ、アレ……あんなものが、何故海底に!?」

「離れちゃ駄目だ! しっかり……」

「お、お前も!!」


 黒い闇はやがて柱により引き上げられ、その正体を現す――

 それは、巨大な籠の形をした塊に、真っ黒なヘドロがびっしりこびりついた、スライムにも似た異形。



 先ほどまでそんな気配はなかったのに、天からは雪が降りそそいでいた。

 これも大波と共に降るという、伝説の粉雪……か……



 友の手を握りしめながら。

 意識を失う刹那、俺が聞いたのは――間違いなく、神の声だった。







「ちょっと、何よこのシンク!?

 排水口が詰まりまくって海になってるじゃない! 年末ぐらい、ちゃんと掃除しなさいよ!!」

「仕方ないだろ、ずっと忙しかったんだから!」

「私がいないとすぐこれだ! ゴミ受けも取り出して掃除しなきゃ。

 あぁ、水がシンクにたまりすぎて、排水口からゴミ受け引き上げるのさえ一苦労……

 嫌だ、何このゴミ受け、真っ黒!!」

「ん?

 この二つの米粒……すごく執念深いな。くっついて離れない。

 キャベツの切れ端に乗って、必死でジタバタしてる。面白~」

「ほら、重曹振りかけるからどいたどいた!!」



 Fin


こうなる前に、台所の排水口掃除は日々ちゃんとやりましょうというお話でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ああ めるへんだあ(*^。^*) どういう状況かな ひょっとして 遠距離の恋人さんかな(*^。^*) そおいえば、大昔、それに近い名称のサ-フポイントにお邪魔したことがあります。
[一言] 重曹w あれ本当に便利ですよね。 たらこも愛用しています。 おコメ粒たちに合掌(-人-)
[良い点] 閲覧注意というから、何かと思ったら……なるほど!! 最近、家事が手抜きなので時々これやっちゃいますねえ。 面白かったです!
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