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【投稿】異世界転生なんてろくでもない【停止中】  作者: 理緒
第二章 友と戦い、朋と笑う
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80.一般的ではない考え方

 ルークから離れてアルとアナスタシアの姿を探すと、アナスタシアらしき人影は見つけられなかったがアルと思しき人間を見つけることが出来た。

 名前を呼ぶのでも良いのだが、軽装でフードを被っているというのは非常に珍しいということもなく、人違いという可能性もある。なので正面から近づいて相手の反応を待つことにした。

 すると俺に気づいたその人物は少しだけフードをずらして近くにいる俺にだけ顔が見えるようにした。やはりというか、その人物はアルだった。


「おはよう、アッシュ。時間にはまだ早かったかな?」


「おはよう、アル。時間は丁度良いくらいじゃないか?これから人が増えてくるからその前に合流しておきたかったからな」


「それなら良かった。それで、アナスタシアはまだ来ていないのかい?」


「あぁ、たぶんな。もしかしたら周りの冒険者の様子でも見てるんじゃないか?様子のおかしい奴とか、どの冒険者に盗賊団を押し付ければ楽なのか、とかな」


「周囲の警戒はわかるけど、後者はどうかと思ってしまうね……」


 俺としては前者も後者も非常に必要なことだと思うので、やはりこういうところでアルとは考え方に違いがあるようだ。一応、不審な点として頭に残ってもあまり良くないのでどういう意図でのことか説明しておこう。


「どうにも俺とアナスタシアは同じような考えを持っているみたいだから、その辺りのことで説明でもしておこうか」


「そうだね……アッシュたちと僕ではどうしても考え方に違いがある。だからどういう意図があるのか僕にはわからない。教えてもらえるかな」


「わかった。ただ、話をするにしても隅の方に移動しよう。聞かれて、気分の良い話じゃないからな」


 そう言ってから他の冒険者たちから離れつつ、それでいて北門に集まっている冒険者たちが見える場所まで移動してから話を始めた。


「俺とアナスタシアは基本的に人を信用しない。人を利用することを厭わない。人よりも自分の身が可愛い。人がどうなろうと、結局のところは自分が良ければそれで良い。そういう考え方が根幹にある」


 アナスタシアと接しているうちにわかったことだが、アナスタシアは俺と同じように何においてもまず自身の安全や自身にとっての利益を優先するきらいがある。

 ただ単純に自分本位の人間だから。ということではなく、そういう生き方をしなければならなかったから。という風に思えてしまう。

 何が言いたいのかというと、アナスタシアは俺と同じようにスラム街の出身なのではないか。ということである。王都では見たことがなかったこと、あのケースは王都にはない物であること、などを考えると帝都のスラム街の出身だと思われる。

 まぁ、本当にスラム街の出身なのかどうかは俺の勝手な予想なので断言はできない。単純にそんな気がしてならない、というだけだ。もしかするとスラム街の出身ではなくともそういう考え方に至るような生き方をしてきたのかもしれない。


「…………ごめん、続けてくれるかな」


 やはりというか、俺とアナスタシアにはそういう考えがある。ということを伝えると、いくらアルと言えども不快感や嫌悪感を感じているようだった。その証拠として、アルの表情は少しばかり険しい物へと変わっていた。

 その様子を見て、そうなってしまうのも仕方ないと思いつつアルに促されて言葉を続けた。

 

「だからアルみたいに初対面の相手を信用したり、心から友好的に接しようとは思わない。俺たちはまずは疑ってかかるのが当然のことだ。理由は……いや、俺が言うよりもアルはその理由に見当がつくのか聞いてみたいな」


 そう言うとアルは一瞬だけ虚を突かれたような表情を浮かべたが、すぐにどうして俺とアナスタシアがそういう考えなのか。それを考え始めた。

 思っていた通り、アルは非常に真面目でどうしてなのかを真剣に考えている。だがきっとアルにはその答えが出せない。

 アル本人が今まで歩んできた人生と、俺と仮説でしかないがアナスタシアが歩んできた道は違い過ぎるのだから。そう思っているとアルの中で何らかの答えを出したようで俺を真っ直ぐに見つめてから口を開いた。


「僕の勝手な考えだけど、過去に信じていた人に裏切られるようなことがあったから。かな……?」


 疑問符を浮かべているのは確証がないからだろう。ただ俺は何も言わずに、続けるように目で促すだけだ。


「人を利用してでも自分が安全でいようとしたり、自分にとって利益を得ようと思うのはそうして裏切られたことが心に傷を残してしまっているのかもしれないね。だからこそ人を信じるということが怖くて、まずは疑ってしまう。僕はそう考えたんだけど……」


 アルの考えたことを聞いたが、確かにそれなら人を疑ってしまうのも理解出来る物だった。だが、そういったことがあったから人を疑い、信用しなくなったのではない。

 ちゃんと答え合わせをしなければならないと思い口を開こうとしたとき、近くから声が聞こえた。


「残念ながらそのような理由ではありませんの。どうにもアッシュさんにはわたくしのことをある程度知られたと言うべきか、察しがついているようですのでその辺りも含めてわたくしが話をしてもよろしくて?」


 声が聞こえてきた方に顔を向けると、そこにはローブを着込んで、大きな日傘に布を巻いてまるで杖のように偽装しているアナスタシアが立っていた。

 どうにも俺たちの話を聞いていたようで、気配に気づけなかったことに内心で悪態をつきながらもアナスタシアが話をするというので任せることにした。

 それにしても、どうしてアナスタシアの気配に気づけなかったのだろうか。気を抜いていたとか、油断していたとか、そういうことはなかったのに。

 もしかすると何か魔法か、俺が所有しているようなマジックアイテムの類でも使ったのかもしれない。


「では僭越ながらわたくしが話をさせていただきますわ」


 言いながら礼儀として相手から顔が見えるように深く被ったローブのフード部分をずらし、俺とアルにだけ顔が見えるようにした。角度的に他の冒険者には顔が見えていないだろう。


「まずわたくしについてですが……アッシュさんは察しがついているようですので白状させていただきますわね」


 言いながら小さく苦笑を漏らしてからアナスタシアは俺を見てから優美に、そして何処か困ったような笑みに変えてから言葉を続けた。


「アッシュさんと同じように、スラム街の出身になりますわ。とはいえ、王都ではなく他の街ではありますが……アルさんはスラム街育ちという相手に偏見はあまりないようですので白状してしまったということもありますが……」


「あぁ、僕はそういう何処の出身なのか、という話で偏見は持たないようにしているよ。何処の出身なのかよりも、その人がどういう人間なのか。そちらの方が重要だからね」


「それは何よりですわ。あぁ、アッシュさんには聞いておく必要がありますわね。どうしてわたくしがスラム街の出身だと気づいたのかを」


 どうして気づいたのか。と聞かれてしまったが、警戒していればある程度は気づけるだけの情報が出て来ていたと思う。アナスタシアの警戒心が足りなかったのか、俺が警戒し過ぎていたのか。それは判断出来ないが、俺としては前者だと思う。

 アナスタシアは探るように、アルは不思議そうに俺を見ている。俺にとっては普通に警戒して探っていた結果なのだが、二人にとっては何か特別なことをしたように思われているのかもしれない。

 勿論、そんなことはないのでその辺りもやんわりと答えておこう。


「俺が気づけた理由はそう特別なことをしたわけじゃないぞ。アナスタシアのことを警戒して言動に注意してたこと、持ち物が王都の物じゃなかったこと、言葉遣いに反して俺みたいな人間とのやり取りに慣れがある、ってよりも日常的にそうした相手と話をしていたように思えたこと、他にもいくつかあるけどそういったことから俺と同類の可能性が浮かんでた」


「……わたくしが思っていた以上に、アッシュさんはわたくしのことを警戒していたということですわね……もう少し、怪しまれないように、警戒されないようにするべきでしたわ……」


「僕にはまったくわからなかったけど、アッシュには気になる点がいくつもあった。ということだね?」


「そういうことになる。それを元に憶測でしかなかったけど、奇妙な確信みたいなものはあったな」


 俺がそう言うとアルは納得したように頷き、アナスタシアは何処となく悔しそうにしていた。

 隠していたことを見抜かれた。というのがそうして悔しそうにしている原因なのだろう。


「とりあえず、俺はそうやってアナスタシアのことについて予想しただけだ。それよりもアルに答え合わせをしてやるんじゃなかったのか?」


 これ以上追及されたとして、俺としては答えようがないので俺がアルに投げかけた問いの答えを教えるようにアナスタシアを促した。アナスタシアはまだ微妙に納得はしていないようだったが俺の言葉に一つ頷いて返してくれた。

 まぁ、アナスタシアとしては他人に悟られることはないと思っていたのだろうから悔しいと思うのも、納得出来ないのも理解が出来るのでそれに関しては俺は何も言わない。


「これは失礼いたしましたわ。一度話をすると約束したのであればちゃんと話をするべきですわね」


「そんなことを言ってるけど、シャロの質問には答えなかったよな」


「何のことか、わかりませんわね」


 俺のツッコミというか、苦言というか、それをさらりと流したアナスタシアは今更隠す必要はないと思ったのか悪びれた様子はなく、ますます俺と同類のように思えた。

 まぁ、本人が認めているのだから同類であることに違いはない。細かいところでは色々と違ってくるのだろうとは思うのだが。


「そんなことよりもアルさんに答えを示すのが先ですわ。ですので、静かにしていてくださいまし」


「はいはい。なら今度はちゃんと話してやらないとな?」


「わたくしはいつもちゃんと話をしていますわ。何か勘違いをしているのではなくて?」


 こうしたやり取りもスラム街の人間というか、アルヴァロトの人間とは良くしたものだ。アナスタシアがそれについて来ると言うか、平然と合わせてくる辺りアナスタシアとしてもこうしたやり取りの方がやり易いのではないだろうか。とも思った。

 何にしても、戸惑ったようなアルを放っておくわけにはいかないので、そろそろアナスタシアには話をしてもらうとしよう。


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