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【投稿】異世界転生なんてろくでもない【停止中】  作者: 理緒
第二章 友と戦い、朋と笑う
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74.話し合い中の扱いは

 ストレンジに戻り、ハロルドに戻ったことを告げてから店内をざっと眺めたがアナスタシアの姿はなかった。

 依頼人を待たせる。ということにならなかったと安堵しながら、空いているカウンター席にシャロと並んで座るとすぐにハロルドが目の前までやって来た。どうやら他の客の相手をしないで済む状況のようだった。


「どうしたの?もう話は終わったから今日は戻ってこないと思ってたのに」


「悪いな。俺に依頼人が来るはずなんだ」


「依頼人?もしかして、私に依頼を持ってくる前に直接アッシュに接触したってこと?」


「そうなるな。それに初めて見る顔だった」


 本来であれば直接依頼を持って来る。というのはあまり良くない。

 理由としてはそんなことをして依頼内容を偽っていたり、後々面倒なことに巻き込まれる。ということがあるからだ。こういう仕事をしていればそうしたことも少なくないのだが、俺としては一度ハロルドを通した依頼しか受けないようにしていた。

 そうした方が安全、とまではいかないが多少はマシになるから。ということもあるが、俺が依頼人から直接依頼を受けることをハロルドが嫌がるから。という理由もある。

 以前まではどうしてなのだろうか。と思いながらも、ハロルド経由で依頼を受けていたのだが、俺のことを見守っているだとかいうことから多少なりとマシな依頼を受けさせたかったのだろう。

 そんなハロルドに対して、依頼を直接俺に持って来た相手がいる。と教えてしまえば警戒というか、不信感を覚えてしまうのも仕方のないことなのかもしれない。


「アッシュ。その依頼人からの話は私も聞かせてもらうわよ」


「あぁ、ストレンジで話をするってことはそういうことだからな。相手が嫌がるようならこの話はなかったことになるだけだ」


「ええ、勿論よ」


 少しばかり雰囲気がピリピリとしてきたところでふと隣に座るシャロを見ると、雰囲気に当てられたのか真剣な、というか神妙な表情を浮かべていた。


「あー……シャロは気にしなくて良いからな?」


「は、はい……その、主様はそうでもなかったのですが、ハロルドさんが……」


「あぁ、ピリピリしてたよな」


 言ってから、ハロルドに目配せするとハロルドもまずいと思ったのかバツが悪そうにしていた。


「あ、あらあら……私としたことが仕事の話になるとつい、ね……シャロ、ごめんなさいね」


「い、いえ!そんなハロルドさんが謝るようなことではないですから!」


「謝るようなことなのよ。アッシュ、やっぱりこういう場所にシャロを連れてくるべきじゃないかもしれないわ」


「まぁ……仕事の話になるとどうしてもな……」


 俺としてはシャロから目を離すとまた何かあるのではないかと心配なのでついストレンジにまで連れてくるようになっているが、やはり良くないのかもしれない。

 次からはまた白亜と桜花に頼んで宵隠しの狐で待っていてもらうようにした方が良いのではないだろうか。そんなことを考えているとシャロがおずおずと口を開いた。


「あの……私は出来る限り主様のお傍に。と考えているのでストレンジでも主様の傍にいたいと思います。その、主様とハロルドさんにはご迷惑をおかけするとは思いますが……」


「んー……シャロがそう言うなら私としては無理に引き離したくはないわね……でも、さっきみたいな雰囲気になることも少なくないから……」


「だ、大丈夫です!主様のお傍にいるからにはそういうことにも慣れておかないといけないと思いますから!」


 どうにもシャロとしてはこうしてストレンジで仕事の話をする際に宵隠しの狐や家で待つ。ということはしたくないらしい。というか、なるべくなら俺の傍にいたいということだった。

 俺としても同じことを考えていたのでシャロがそれで良いというなら、なるべくシャロには傍にいてもらいたいと思う。あくまでも俺はシャロが心配だから、なのだが。


「まぁ……シャロったら健気ね……わかったわ、シャロがそう思うならアッシュの傍にいると良いわ。なるべく危ない仕事とか怪しい仕事はアッシュに回さないようにして、シャロの負担にならないようにすれば大丈夫よね?」


「あー……どうだろうな。とりあえずもう少し様子見ってことで良いんじゃないか?なるべく傍にいた方が良いとは俺も思うけど、仕事の話になるとそうもいかないことだってあるからな」


「そう、ですよね……わかりました。主様の言うようにもう少し様子見ということにします。それで、大丈夫だと主様とハロルドさんが判断出来たらこの先も一緒にストレンジに来ます。もしそうするのはやめた方が良いとお二人が判断したのであれば、えっと……宵隠しの狐か家で待つようにします」


 やはりシャロはしっかりしている。どうしたら良いのかを考えて自分でその結論に至っているのだから。

 この様子であれば、もしかすると俺とハロルドが過剰に心配しているだけで、ある程度気を付けておくだけでも大丈夫なのかもしれない。


「わかった。それならそうしよう。ただ、話し合いとかで気分の良くないこともあるだろうからそういう時は正直に言ってくれよ?」


「はい!」


「二人が納得してるなら私からは何も言えないわね。言うまでもないと思うけど、ここに二人でいる以上はアッシュがちゃんとシャロのことを気にかけてあげるのよ?」


「当然だ。ただ俺一人だと気づけないこともあるからハロルドも気にかけてくれると助かる」


「ええ、わかったわ」


 今後のことを考えて、二人でシャロのことを気にかける。ということを話し合って一段落。ということになった。俺とシャロは出来る限り傍にいたいとお互いに思っていたので、シャロもある程度はこうした話し合いの場の雰囲気に慣れる必要があるのかもしれない。

 だからこそ俺とハロルドで、ということになったのだがそれでも心配なものは心配だ。場合によっては、シャロの意思に反して宵隠しの狐で待っていてもらう。ということになるかもしれない。

 そんなことを考えながらシャロを見ると、何かを決意したような真剣な表情で、私頑張ります。とでもいうようにぐっと握り拳を胸の前で作っていた。

 その姿は大変微笑ましい物で、ハロルドはほっこりとした表情でそれを眺めていた。きっと俺も同じような表情をしていたのかもしれない。

 だがそれを誰かに指摘されるよりも早く、ストレンジの扉が開いた。もしかすると、と思い視線を向けるとそこにはストレンジへと入ってくるアナスタシアの姿があった。


「ハロルド」


「あの子が依頼人ね?」


「あぁ、頼む」


 たったこれだけの会話で何を頼んでいるのか理解したハロルドは自然な動作でアナスタシアの相手をするために移動を始めた。

 とりあえず、どういう依頼なのか、始めてくるはずなのにどうして俺を指名したのか。その辺りは確実に聞き出してくれるだろう。というか、ハロルド自身が聞き出さなければならないと考えているようなので意地でも聞き出すのではないだろうか。


「主様、アナスタシアさんがいらっしゃいましたよ」


「あぁ、だからハロルドが最初に話をしに行ったんだろ。まぁ、もうしばらくはかかるんじゃないか?」


「そうですね……先ほどの話を聞いている限りだと、ハロルドさんはアナスタシアさんのことを警戒?しているようでしたから……」


 シャロの言うようにハロルドはアナスタシアのことを警戒している。依頼についてハロルドを通さなかったからではなく、以前に依頼を受けたことがある相手というわけでもなく初めて見る顔の相手が俺に直接依頼を持って来たからだ。

 ストレンジに来る依頼人であれば俺のことを知っているのはわかるが、アナスタシアはストレンジに来たことはない。それなのに俺のことを知っていたのだから怪しいと思うのも当然だ。

 まぁ、ストレンジのことを知っていたくらいなのでもしかすると他の依頼人と面識があり、そこで俺のことを聞いた。という可能性もあるのだが。

 

「とりあえずはハロルドが話をして、それから俺が呼ばれるはずだからそれ待ちだな」


「えっと……最初は聞かない方が良いですよね?」


「そうだな。依頼人と話をする時は基本的に一対一か、間にハロルドが入るようにしてるからな……とりあえず、シャロのことをハロルドに頼む予定だからアナスタシアと一対一で話をすることになるんじゃないか?」


「主様、自分のことなのに他人事みたいに言うのはどうかと思いますよ」


「悪かったな。何にしろ、またハロルドの話相手になってやってくれ」


「もう、そういう言い方をするのは良くありませんよ!ハロルドさんや白亜さん、桜花さんなら大丈夫だと思いますけど他の方にそういう言い方をすると気分を害されるかもしれません!」


「大丈夫だって。ちゃんと相手は選んでるからさ」


 俺の性格をある程度理解している人にしかこういう言い方はしない。ちょっとした冗談というものだ。

 それでもシャロは、もし俺がそうした人以外にも同じ言い方をしてしまうのではないか、と心配しているようだった。だからこそこうして苦言を呈しているのだろう。

 これは俺のお世話役だから、というよりもシャロがそういうことを気にして、ちゃんと人に言える性格だから。だと思う。


「むぅ……それなら、良くはありませんけど、良いということにしますけど……」


「シャロは気にしすぎじゃないか?」


「私が気にしすぎるのではなくて、主様が無頓着なような気もします」


 ちょっとだけ唇を尖らせてそう抗議するシャロの姿は拗ねているようにしか見えない。いや、実際に拗ねているのだろう。

 ただそのことを指摘すると更に拗ねるか、単純に気分を害してしまう可能性があるので何も言わないことにする。まぁ、ちょっとからかいたい気持ちもあるのだが。

 そんなくだらないことを考えながら、ハロルドとアナスタシアに視線を向けると未だに二人は話を続けていた。険悪な雰囲気というわけではなく、普段通りの様子で話をしているハロルドは流石としか言えない。

 アナスタシアの様子は何か誤魔化そうとして、それをやんわりと追及されているように思える。具体的に言えば少しだが表情が引き攣っているのでハロルドの追及を躱せてはいないような気がする。

 まぁ、実際にハロルドがあれこれと追及しているのかはわからず、あくまでも俺の推測でしかないのだが。

 そんなことを考えながら、完全に拗ねてしまったシャロに機嫌を直してもらうためにあれこれと言葉を弄するのであった。


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