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【投稿】異世界転生なんてろくでもない【停止中】  作者: 理緒
第二章 友と戦い、朋と笑う
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67.次の約束

 結局シャロはカルルカンを撫で続け、カルルカンはカルルカンでとりあえずは及第点だと撫でられるがままになっていた。シャロもカルルカンもお互いに楽しそうだったので俺はそれを時折見守りながら集まっていたカルルカン全員を撫でることにした。

 そうして撫で続けていたのだがどうにも終わりが見えない。どういうことだろうかと思いながら入れ替わったカルルカンを撫でようとしてふと手を止める。そのままじっと目の前のカルルカンを見る。

 俺の勘違いでなければこのカルルカンは最初に大ブーイングをかましてくれたカルルカンのように見える。

 そのまま撫でずにじっと見ているとカルルカンは早く撫でてくれと鳴いた。


「お前、最初に撫でたよな?」


 これでもカルルカンの見分けは多少つくので、間違いないだろうと思いながらそう言った。するとカルルカンは鳴くのをやめてサッと顔を逸らすというわかりやすい反応を示してくれた。


「撫でたよな?」


 もう一度確信を持って口にすると、そのカルルカンはもにょもにょと小さく鳴きながら弁明を始めた。

 一番最初に撫でられてたのでもう一度撫でられようとチャレンジしてもばれないと思った。というか最初に撫でられてから思ったけど撫でる時間が短かったような気がする。もっと撫でてくれても良いと思う。でも嫌だったらごめんなさい。次からはしないので許してください。

 というようなことを言って、最終的には顔色を窺うような仕草をしていた。周りのカルルカンも俺たちのことを心配そうに見ていたのだが俺はとりあえず何も言わずにそのカルルカンを見つめ続ける。

 シャロと、シャロに撫でられていたカルルカンもそんな俺たちに気づいたようで撫でる手を止めていた。

 徐々に周りのカルルカンから、許してやってくれ、本人も反省してる、ここは冷静にならないと、広い心を持とう、などの言葉をもらった。カルルカンは仲間意識がとても強いので、こうして庇うのも当然のことか。

 俺はそうしたカルルカンたちに色々言われながら、俺の前で未だにもにょもにょ鳴いているカルルカンの頭をガシッと掴む。その瞬間、周囲のカルルカンたちが悲鳴のような鳴き声を上げたがそのまま気にせず力強くわしゃわしゃと乱暴に撫でる。


「別に怒ってはいないけど、そういうずるいことはやめような」


 別にあれくらいでは怒らないので、ちょっと反省してもらうために何も言わずにただ見つめていた。カルルカンもちゃんと反省しているようだったのでそれ以上続けても空気が悪くなるだけだと判断して、撫でながらそう言った。

 そうした瞬間は何をされるのかと怯えているようだったカルルカンも、俺が怒っていないことがわかると嬉しそうに一鳴きしてからぐいぐいと頭を押し付けてきた。

 周囲のカルルカンも安心したようで、ズルはよくない、順番待ちしてる子もいるから順番は守らないと、ちょっと乱暴なのもそれはそれでありだよね、何も起こらなくて良かった。などなど思い思いに言っているというか鳴いている。

 シャロもほっと安心したようにまたカルルカンを撫で始めた。

 そんな俺としてはどうということはないが、カルルカンとシャロが少しばかり緊張する時間を過ごしたりもしながら集まっていたカルルカン全員を撫で終わり、王都へと帰ろうかという話になった。

 その際にシャロに撫でられ続けていたカルルカンが俺の傍まで来ると頭をぐりぐりと押し付けてきた。


「シャロに撫でられて満足したんじゃないのか?」


 ずっとシャロに撫でられていて、楽しそうな鳴き声を漏らしていたので撫でなくても良いかと思っていたがそれとこれとは話が別。ということだった。

 他のカルルカンが撫でられているのに自分が撫でてもらえないのはおかしい。ちゃんと自分も撫でるべき。あの子の撫でスキルはまだまだで、及第点は出すけど満足はしてない。というわけで早く撫でてくれ。


「シャロ」


「な、何でしょうか?」


 カルルカンが俺に撫でるように催促していることと、何かを言っていることからもしかして自分の撫で方に何か問題があったのではない、とでも思ったのだろう。不安そうにしているシャロにとりあえずは問題がことを伝えた。


「及第点らしいぞ。まぁ、満足はしなかったみたいだけどな」


 言いながらぐりぐりと頭を押し付けてくるカルルカンを撫でる。完全に気の抜けた顔で撫でられるがままになっているカルルカンを見てシャロは悔しそうにしていた。


「……及第点だとしても、やっぱり主様みたいにカルルカンさんに満足してもらえるようになりたいです」


「そんなこと言われてもな……たぶん俺のはイシュタリアの加護も関わってると思うからそう簡単にはカルルカンたちが満足するってことはないと思うぞ」


「イシュタリア様の加護があって、カルルカンさんたちと仲良しで、何を言っているのかもわかる……もしや、主様はイシュタリア様の使徒なのでは……!?」


「ほぼカルルカンのことだけでイシュタリアの使徒扱いするなよ。というか、あいつに使徒なんていないぞ。基本的に何かあれば自分が適当に神託を下したり、何か思いついたらこれ以上に素晴らしい考えはないって神託を下したり、何となくこれなら上手く行く、何故なら私が考えたからだってことで神託を下したり、思いついたら即実行の行動力に溢れすぎてる女神だぞ」


「…………主様の話を聞いていると、イシュタリア様のイメージが崩れてしまいそうですね……」


「イメージも何も、あいつはろくでなしの女神だからな?」


「主様がイシュタリア様のどういった姿を知っているのかわかりませんけど、私にとっては幼い頃に神託を授けてくださった慈悲深く美しい女神様ですから……」


 瞳を閉じて神託を授けられた時のことを思い出しているようだったシャロがそう口にしたが俺にとってはそういう女神ではない。

 もしかするとこの世界でイシュタリアのことを一番理解している人間は俺なのかもしれない。と思ってしまったがあながち間違いではないだろう。


「一般的にはそういうことになるかもしれないけど……まぁ、俺の傍にいるならそのうちイシュタリアとも顔を合わせることになると思うから、その時にでもろくでなしだってわかるんじゃないか?」


「本来、イシュタリア様と顔を合わせるというのは、とても恐れ多いことなのですけど……」


「気に入った相手には随分と気さくに話をするような女神だから、そんなに気にしなくても良いと思うけど……まぁ、良いか」


 少し前に話をしたイシュタリアの様子から、シャロのことを気に入っているようだったのたぶん大丈夫だと思う。大丈夫だとは思うが、顔を合わせた際にあれやこれやと加護や祝福を押し付けないか不安な面もある。

 イシュタリアはそういったことに関して歯止めが効かないというか、限度を知らないというか、とにかくやり過ぎてしまうことがあるので、その時は注意しておこう。

 ただ加護と祝福だけならまだ良いのだが、それ以上に厄介になる物を押し付けたりはしないだろうかという不安があったりもする。まぁ、イシュタリアとしてもそう簡単に手放せるものではないと思うので、そういうことはないと思いたい。


「よし、そろそろお前も満足だな?」


 イシュタリアのことで不安になるばかりだが、とりあえずそのことを置いておくとして撫でていたカルルカンの様子を見る。実に満足そうにしていたのでもう大丈夫だろう。

 カルルカンは一鳴き二鳴きしてから俺から離れ、シャロの顔を見上げながら更に一鳴きした。


「えっと……今のは……?」


「もっと精進するように。だとさ」


「ということは……次も撫でさせてもらえるということですか!?」


「そういうことだろうな」


「わかりました!私、もっと頑張ってゆくゆくは撫でマスターである主様に並ぶくらいになってみせます!」


「撫でマスターってのやめろっての」


 そんな会話をしている間に座っていたり、少し離れた場所にいたカルルカンたちが集まり俺たちを見送ろうとしていた。帰ろうかという話をしていたので、それをちゃんと聞いていたのだろう。

 本当に帰ろうかと思っていたところでそうして集まっていたカルルカンのうちの一匹が薬草を咥えてやって来た。どうしたのかと思いながら薬草を受け取ると、そこで一鳴きした。

 怪我をしていたらこの薬草を使うと良い、ということだったので大丈夫そうだと判断してもやはり心配なものは心配だったらしい。


「……そうか、ありがとうな」


 カルルカンは純粋に俺のことを心配してくれていることを察したので、感謝の言葉を口にしてから優しく頭を撫でる。楽しそうに、満足そうに、という鳴き声ではなく、そうした俺の様子から怪我はしていたりすることはなく大丈夫そうだと思ったのか、カルルカンは安心したように鳴いた。

 そうしてカルルカンを撫でてから今度こそシャロと一緒に王都に帰ることにした。当然のようにカルルカンたちからまたおいで、次はもう少し撫でて欲しい、ズルはしません、及第点だったけど次はもっと上手くなってないとダメ、など別れの言葉と要望を伝えてきた。


「はいはい。次の機会にな。シャロ、そろそろ戻ろう」


「はい、わかりました。あ、カルルカンさん……次も、よろしくお願いしますね」


 言われたカルルカンは一鳴きしてから群れの中へと入っていった。嫌そうにしていなかったので、次も撫でさせてもらえるということを察したシャロは嬉しそうにしながら手を振って見送っていた。

 それから二人で王都へと向けて歩き始めたが、背後からはカルルカンたちの見送りの鳴き声が聞こえた。普段はここまでではないが、やはりシャロと手合わせをしていたのがカルルカンたちとしては心配になったのだろう。

 ハロルドや白亜、桜花だけではなくカルルカンにまでこうして心配されるというのは一人で充分生きていける男としてどうなのだろうか。とか思わないでもない。

 それでもカルルカンたちなりの厚意で薬草をくれたり、心配して守ろうとしてくれたりというのは有難いことなので文句など言えるはずもない。勿論、やり過ぎなければ、だ。


「主様主様」


「どうした?」


「カルルカンさんから及第点をもらいましたけど、また撫で方を教えてもらっても良いですか?」


「あぁ、それくらいなら良いぞ。型通りの槍術だけじゃないように、ってのはどうせ草原か丘になるだろうからな。その後になら教えられるぞ」


「本当ですか!約束ですからね!」


 カルルカンの撫で方をまた教えることを承諾するとシャロは非常に嬉しそうに笑顔を浮かべ、弾んだ声でそう言った。

 そんなシャロの様子に小さく笑みを零してから、この先こうしてシャロにあれこれと教えていくというのは悪くないものだな、と思った。

 そして、この先、というのを続けるためにはフランチェスカ家からの依頼を無事に終わらせなければならないということになる。どのような相手になるかわからないが、形見の品を取り返すとなれば危険な依頼になるだろうことはわかっている。

 それをどうにかして切り抜けなければならない。ただ、どうにも嫌な予感がするので、それは簡単な話ではないだろう。


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