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【投稿】異世界転生なんてろくでもない【停止中】  作者: 理緒
第二章 友と戦い、朋と笑う
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61.まずは疑問の解消を

 俺のすぐ隣でシャロとハロルドが楽しく会話をしている。ハロルドは聞き上手ということもあってか、シャロは次々と祭りの期間中の出来事を喋っている。

 現状だんまりを決め込んでいるアルの相手をするよりも、二人の会話に加わりたいような気がして来た。いや、ちゃんと話を聞かないといけないのでそんなわけにはいかないのだが。

 こういう場合はアルが喋り始めるまで待つか、俺から話を振るか。そのどちらかだ。

 とはいえ、アルの様子を見る限りは自分から喋り始めるということはなさそうなので俺から話を振ることにしよう。


「アル」


「な、何かな!?」


「慌てすぎだろ……お前、パレードで俺たちの姿が見えてたよな?」


「え?いや……僕にはアッシュしか見えていなかったけど……本当にシャロも一緒にいたのかい?」


「……俺だけ?」


 それは流石におかしい。いや、霞に煙る我が姿(ミスト・トゥ・ブルー)の効果が発揮されているのに俺が見えていた時点で充分におかしいのだが。

 俺の姿は見えないがシャロの姿が見えた。ということであれば手を放してしまった、という可能性で納得も出来る。勿論、あの時は手を放していなかったのであり得ない話だが仮定の話なのでその可能性を挙げておく。

 それなのに俺の姿だけが見えて、シャロの姿だけが見えなかったというのは一体どういうことだ。


「どうにも視線を感じるな、と思って屋根の上を見上げるとアッシュが立っていて、シャロの姿はなかったね」


「……そうか。いや、まぁ……パレードを見るのに、通りからだと見えにくいと思ってな。それで屋根の上に登ったんだけど……一応、他の人からは見えないようにマジックアイテムも使ったのに……」


「……マジックアイテムを?」


「そうだ。それなのにアルと団長、それから……」


 それから、第三王女。もしかすると、第三王女は俺が屋根の上にいたことを人に話していないのかもしれない。そういう考えが浮かび、第三王女に姿を見られたことをわざわざ口にするべきか悩み、口を噤む。

 ただ、どう考えてももう一人いるという言い方をしてしまった以上、アルはそれを聞きたそうにしていた。聞きたそうにしていたのだが、踏み込んで聞いても良い物か、悩んでいるようでもあった。


「……まぁ、どうにも人に見られたみたいでな。それなのに怪しい人間がいたって話があるかと思えばそんなことはないし……」


「そうだね……そういう話は聞いてない、かな。僕の耳に入っていないというだけじゃなくて、団長もそういった話があったとは言ってなかったからね」


「……あれが何を考えて黙ってるのか、わからないのが不気味だな……」


 第三王女をあれ呼ばわりしている時点で騎士としては見逃せないかもしれないが、名前を挙げていないのできっと大丈夫だろう。

 それに今はそんなことを気にしている場合ではない。現状では何事もとはいえ今後何が起こるかはわからない。


「いや、とりあえずは様子見だな」


 ということで、様子見という名の警戒を続けることにした。

 適当な相手であれば口封じや記憶処理、金を握らせるということも出来るが第三王女相手にそんなことは出来ない。

 どうしても後手に回ってしまうが、最悪シャロだけは絶対に守らなければならない。俺の思い付きの行動によって引き起こされた事態であればそうするのが当然のことだ。

 そう一人で覚悟を決めているとアルがおずおずと疑問を口にした。


「その……差し支えなければで良いんだ。アッシュの姿を見たと言う人物のことを教えてもらえないかな」


「……まぁ、怪しい人間がいたってことをそいつが口にしたら一気に広がって、情報元が誰かなんてすぐにわかるか……」


 本当は言いたくはない。それでも第三王女が言えばすぐにばれる。

 そう考えると隠し続けることは難しいと思えて、人柄は悪くなさそうなアルになら伝えても大丈夫な気がした。どうしてたったそれだけで伝えても大丈夫な気がしたのかは謎だが、きっとアルが善人オーラ全開だったせいだろう。そういうことにしておく。


「第三王女」


「……え?」


「第三王女、シルヴィアだ」


「…………本当に?」


「あぁ、確実に俺たちを見てた」


「そう、か……でもシルヴィア様は何も言っていないはず……」


「何か言ってれば今頃憲兵が忙しく走り回ってるんじゃないか?まぁ、何も言わないのがどうにも不気味だよな」


「アッシュの主観ではそうかもしれないけど……その、シルヴィア様に関することで不気味という表現をするべきではないと思うよ」


「王国騎士としては見過ごせないか?」


 やはり不気味という表現は良くなかったか。まぁ、王国騎士を目の前にして王族に対してこの物言いだ。こうして言われるのは当然のことで、場合によっては何かを言われる程度では済まない。

 下手をするとその場で斬り捨てられる可能性も零ではないだろう。


「……そうだね。騎士として、仕えるべき王族の方に対してその言い方は見過ごせないよ」


「だろうな」


 まぁ、そういうものだと理解していたので軽く流す。


「……アッシュは、僕が王国騎士だったことに驚かないんだね」


「予想は出来てたからな。ただ……パレードで顔を晒してたのは流石に少し驚いたけど」


「あれは……その、兜があるとどうしても邪魔で……」


「あぁ……そういうタイプか。許されてるなら良いんじゃないか?」


 騎士の中には兜が邪魔になるという理由で被らない騎士も存在する。勿論、上から許可されていない騎士がそうしたことをすると厳重な注意を受けることになるのだが。

 というか、兜が邪魔だからという理由で被らない騎士なんてライゼルくらいだと思っていたが、まさかアルもそういうタイプだとは思わなかった。


「団長から許可は頂いているよ。まぁ……兜を被らない騎士というのは、珍しいとは思うんだ。それでも剣を振るうのにどうしても邪魔になってしまってね」


「剣を振るうのに兜が邪魔、か。わからないでもないけど……いや、そんな話は良いんだ。俺の姿が見られた話も、シルヴィアの話もな」


「……シルヴィア様のことを呼び捨てにする、というのは少し不敬だよ」


「だろうな。でも俺としては王族に気を遣うだの、不敬だの、馬鹿馬鹿しくてやってられない」


 スラム街出身の人間にとって王族を敬う気はなんてものは一切ないはずだ。敬って腹が膨れるわけでも、今日の命が保証されるわけでもないのだから。

 とはいえ、そういった考えを持っているのはスラム街の住人だけであり、一般的には王族の名前には当然のように敬称をつけるのだが。


「そっか……でも、他の騎士や憲兵の近くでは控えた方が良いと思うんだ」


「そうかもしれないな。わかった、気を付けよう」


 困ったようにそんなことを言ってくるので、一応気を付けるとだけ返事をしておく。

 そして、個人的に聞いておかなければならない話を切り出すことにした。


「それで、俺に依頼ってのは何だ?」


 これだ。わざわざ指名されてしまったのだから依頼の内容を確認する必要がある。名指しでの依頼となれば内容を確認してから、自分の力量を考慮して受けるかどうかを決めなければならない。

 もし依頼の内容を確認せずに安請け合いしてしまうと、酷い目に会うことがある。というのは同業者を見ていてわかっているので、そんなことはしない。

 とはいえ、アルが悪質な依頼を持ってくるような人物には見えないのでたぶんその依頼を受けることになるのだろう、とは思っている。


「あ、あぁ……その話か……」


 アルはそこで言葉を切ってから、一度深呼吸をすると、真剣な表情で俺を真っ直ぐに見つめ、言葉を続けた。


「近々、とある盗賊団のアジトに冒険者たちが向かうことになる」


「その話なら聞いてる。それで、それがどうかしたのか?」


「それに僕も参加しようと思うんだ」


「……好きにしたら良いんじゃないか。としか言えないけど……それで?」


 自分も参加する。たったそれだけであるはずがないので続きを促す。


「その……参加しようとは思うんだけど、僕は冒険者ではないから……」


「あぁ……どうにか自分が参加出来るようにして欲しい。ってことか」


「アッシュに頼むようなことじゃないのはわかってるんだ。それでも、どうにかして参加しなければならないんだ」


「どうしてだ?」


 別に参加したいと言うのであれば、そのくらいはどうとでもなる。それでも依頼を受けるかどうかを判断するためには最低限の理由、事情を聴いておかなければならない。

 アルならば、おかしな理由で参加したいと言っているわけではないと思う。思うのだが、どうして王国騎士のアルが冒険者に向けられた依頼に参加したがるのか、見当がつかない。


「……それは、どうしても教えなければならない、かな……?」


「どうしても、ってわけじゃないけど……依頼を受けるかどうかってのを判断するための材料になるからな。なるべくなら教えてもらいたい」


「…………わかった。アッシュになら言っても大丈夫だと、君を信じて言わせてもらうよ」


「そうやって言うほどの理由か……」


 アルの様子を見る限り、とても深刻な理由がありそうだった。

 それなのに俺になら言っても大丈夫だと信じているらしい。その信用がいったい何処からやって来るのかわからないが、理由が聞けるようなのでひとまずは気にしないことにしよう。


「実は団長から僕は実戦経験が少ないと言われてね。それで、盗賊団との戦いでその実戦経験を補いたいんだ」


 どんな深刻な理由かと思ったが、俺にしてみれば大したことはない理由だった。実戦経験なんてものは必死に生きていくうちに勝手に積まれていくものだったのでわざわざそんなことをする必要はないとさえ思っている。

 ただ、本当にそれが参加したがる理由なのだろうか。何といえば良いのか、どうにも違和感がある。アル本人にとっては深刻な理由だったのかもしれないが、一度違和感を覚えてしまうと疑わしく思えてくる。

 どういう反応を返してくるかわからないが、少しだけつついてみよう。


「アル、本当にそれが理由か?」


「そうだけど……」


「……いや、言い方が違うな。他にも理由があるんじゃないか?」


「…………」


 他にも何か理由があるような気がしたのでそう聞いてみるとアルは俺から目を逸らしてバツが悪そうにしていた。どうやら俺の勘は当たっていたようだ。

 本人の性格が善良であるがため、こうして問われれば嘘をつくことや、誤魔化すことが出来ないのだろう。とても分かりやすい反応で、他にも理由があることがわかった。


「教えてくれるか?」


「その……」


「言えないか?」


「……いや、アッシュなら言っても大丈夫だと信じる。と言ったんだ。もう一つの理由、というよりも……こちらが本来の理由なんだ」


 自分で信じると言ってしまった以上は、本当に信じる。ということでおしえてくれるらしい。

 他に理由がないかと聞いたのは俺だが、こういうものは適当にはぐらかしてしまえば良いと思う。どうしても言いたくない、もしくは言うべきではない。ということは当然のようにあり得るのだから。

 まぁ、やはりそこはろくでなしのクソ野郎か、善良な人間か。そういった違いによってどう思うか、どう考えるか、そういったことが変わってくるのだろう。

 何にしろ、本当の理由とやらを教えてもらえるようなので、その理由を聞いてどうするかを考えよう。


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