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【投稿】異世界転生なんてろくでもない【停止中】  作者: 理緒
第一章 始まりの出会い、変化の始まり
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43.新たな住処

 シャロによる紅茶の淹れ方講座は不思議なことにとてもわかりやすく、俺のうろ覚えの淹れ方というのは色々と間違っていることがわかった。わかったのだが、何度も繰り返すことで淹れ方を覚える方法を取ったせいもあってか大量の紅茶を淹れることになってしまった。

 それらを捨てるというのは勿体ないので飲めるものは飲んで、とりあえず水筒にでも保管しておこう。という話になった。ということで、飲み物は暫く紅茶になりそうだ。

 ということをシャロとの和解というか、話し合いなどの順を追ってシャロと共にハロルドに報告すると、ハロルドはおかしくて仕方がないというようにくすくすと笑っていた。


「もう、貴方たちってば戻ってこないと思ったらそんなことしてたの?」


「笑い事じゃないんだけどな。というか、ピュアブラッドの価値、ハロルドは知ってたよな?」


「ええ、勿論よ。でもアッシュはあまり気にしてないようだったから黙っておいても良いかなって思ったのよ。まさかシャロが詳しいとは思わなかったけどね」


「紅茶に関しては、お母様の影響で普通の方よりは詳しいと思います。淹れるのにも、自身があります」


 得意げにそう言ったシャロの様子はここ数日よりも楽しそうというか嬉しそうだったので、俺は何も言わずにハロルドに視線を投げかける。

 するとハロルドは俺が何を言いたいのか察したらしく、ウィンクを一つだけ返してくれた。こういうところは非常に助かる。余計な入れ知恵をするところは本当にやめて欲しいのだが。

 とりあえずの解決はしたことをハロルドに報告出来たところで、他に確認しておかなければならないことを聞き出さなければ。


「ところで、灰のことはどうなった?」


「ジゼルは笑いながら色町に問題ないことを伝えるって言ってくれてたわ。あの子たちも早めに貴方たちのところに現れたんじゃないかしら?」


「来たな。ハリティアに記憶の処理も頼めたから俺としては助かった」


「そう。白亜たちは……まぁ、問題ないんじゃないかしら?だって白亜がいるんだもの」


「そう、だな……白亜がいる以上はそう妙なことにはならない、よな……?」


 灰が降っていた間は妙なことになっていないとは思うが、何らかの形で俺に何かありそうな気がするので微妙に歯切れが悪くなってしまった。確信があるわけではないので何とも言えないのだが、どうしてもそう思えてしまった。


「……白亜さんは、もしかしてすごい人なのですか?」


 白亜がいるから。という理由で何やら納得している俺たちが不思議だったのかシャロがそう訊ねてきた。


「私の目には、その……とても変わった人。という風にしか映らなかったもので……」


 俺だったら迷うことなく変態のクソ野郎と言うところをシャロは言葉を濁してとても変わった人と表現していた。まぁ、シャロがそんなことを言うようになるようなことはこの先ないと信じたい。


「そうねぇ……私は白亜が相当強いことと、魔法とは違う妙な何かを使うくらいしか知らないわ。それでも、アッシュが信頼してるってことは、それ以上の何かがあるってことだもの。別に敵になるわけじゃなくて、お互いに別の立ち位置からアッシュを見守る者同士なんだから、それくらいで充分じゃないかしら?」


「おい、何だその俺を見守る者ってのは?」


 何やら不穏というか聞き逃すことの出来ない単語が聞こえてきたのでハロルドにそう言えば、しまった。とでも言うような表情に一瞬だけ変わり、それもすぐに元に戻った。


「あら、何のことかしらね……?」


「おい、吐け」


「あ、そうだ。シャロの住む場所なんだけど……」


「おい!」


「二三候補が見つかったけど、何処が良いかしら?」


「チッ……白亜から聞き出すからな」


「出来るものならやってみなさい?白亜がアッシュにどんなことを言うのかわからないけど、きっと大変よ?」


「…………いや、それでも聞き出すからな」


 完全に私は言いません。という態度になったハロルドに舌打ちをしてから白亜に聞くと言えば、そう返されて確かに何があるかわかったものではない。と思ってしまった。

 それでも聞き逃せないことだったので絶対に聞き出してやろうと決心をしていると、シャロは未だに疑問符を浮かべたままだった。


「あの……それで、白亜さんのことを……」


「あぁ、白亜か。あいつは……変態のクソ野郎で桜花大好きで何故か俺のことも大好きで頭を撫でてやるとだらしなく笑ったり調子に乗ったりする変態のクソ野郎だ」


「アッシュ、変態のクソ野郎って二回言ってるわよ」


「事実だ、事実」


 変態のクソ野郎というのはまごうことなき事実なので俺は悪くない。

 ただこれだとシャロの聞きたいこととは違ってしまうのでちゃんと説明はしておこう。


「ただ、先見の明があるのと、状況把握の能力は高い。あいつについて行けば人並みの生活は保障されるんじゃないか?それに身内だって認めた相手のことはすごく大切にするし、変態とはいえ特定の相手以外にはそこまで酷くないから人によっては気にならないと思うぞ。それから……強さで言えば、たぶん相当頭がおかしいレベルで強いんじゃないかって俺は勝手に思ってる」


 九尾の狐が弱いとかあり得ないだろ。と思ってしまうのは元日本人だから仕方ない、はず。狐と鬼と天狗は強い。そんな先入観がこの世界でも抜けていなくて勝手に思ってるだけなのだが。


「な、なるほど……前半だと聞くと、すごい人ですね……」


「…………そこまですごいの?」


「普通に考えてみろよ。ただのバカがあの桜花に惚れられると思うか?」


「ないわね。ええ、ないわ。桜花の人を見る目は確かだもの」


「桜花さんもすごい人ということですか?」


「あぁ、白亜も桜花も実はすごいって感じだろうな。普段はそういうところが見えないからわからないだろうけど」


 こうして考えてみると、この世界でそれなりに付き合いのある相手は素直にすごいと思えるような相手ばかりだ。

 子供ではないので自分だけで生きてきたわけではなく、いつも誰かに助けられていることを理解している。ただ、その助けてくれた相手がハイスペックすぎるような気がしてならない。


「なるほど……確かに、そうは見えませんでしたね……」


「それがわかってるって辺り、アッシュってばあの二人のこと良く見てるのねぇ……」


「当然だろ。あの二人に初めて会ったときは今よりも人を信用しないようにしてたからな」


「堂々と言い切ることじゃないわねぇ……マシになったとはいえ、それが原因でシャロに対してあんな態度だったわけだもの」


「…………それを言うな。それより、さっき言ってたシャロの住む場所についてだけど、候補が見つかったって?」


「逃げたわね」


 うるさい。それにシャロが何処に住むのか、というのは確認しておかなければならないのだからそんなことはどうでも良いだろう。


「住む場所ですか……えっと、出来る限り主様の傍にいたいので、近くだと助かります」


「先に謝っておくわ。ごめんなさいね。今回候補として見つけた場所は何処もアッシュの家からは離れた場所にあるの。それでも治安が良くて安全な場所を見つけてあるわ」


「そう、ですか……」


「ええ、シャロにとっては残念だとは思うけど、アッシュの家の近くでは見つからなかったの。それで……アッシュは何か言いたいことがあるんじゃないかしら?」


 そう言って意味ありげに小さく笑んで俺を見てくるハロルドは、本当に人の考えを察するのが上手というべきか、人の考えを見抜くのが得意というべきか。

 ハロルドの言葉を聞いたシャロは俺が何を言うのかと不思議そうに俺を見てくる。ハロルドに前振りをされたせいで微妙に言いにくいようにも思えてしまうが、シャロに俺の家で物の配置を教えている時点で考えていたことなのでそういうことは気にせずに言おう。


「シャロが良ければだけど、俺の家の空き部屋を使うか?」


「え……本当ですか!?」


「お、おう……どうせ空き部屋はいくつかあるし、世話役として傍にいるならそういうのも有りかと思ってな」


「はいっ!主様にそう言っていただけるなら、一部屋お貸しください!」


「食いつきがすごいな……」


 シャロの様子につい苦笑が漏れてしまうが、ここまで勢いよく食いつかれればそうもなる。元々これはシャロが俺の傍にいたいと言っていたことと、俺もシャロの傍にいたいと少しばかり思うようになったので提案したのだ。

 それにシャロは一度人攫いに攫われてしまったので安全な場所に住んでもらう方が良いに決まっている。俺の家であれば立地だけではなく俺が色々と手を加えているので悪い場所ではない。


「女の子が男の人の家に住む。っていうのはちょっと字面を見ると何かありそうだけど……アッシュなら大丈夫ね」


「私が主様と一緒の場所に住むというのは、何か問題があるのですか?」


「いえ、そう気にしなくても良いのよ。アッシュなら安心だもの。これが他の男の人だったら私は反対するわ」


「妙な信頼を感じるな……」


 まぁ、シャロの名前を呼ばないという酷いことをしてしまった以上は今後はそういうことのないように気を付けるつもりではある。それとシャロが笑っていられるように努めるつもりでもある。

 どういう立場かといえばもはや保護者の立場にいるような気がするが、あまり気にしないでおこう。


「だってアッシュだもの。それじゃ、シャロはアッシュの家に住むってことにして……荷物の移動、しましょうね」


 にっこりと笑って荷物の移動を促すハロルドだが、その真意としては早く出て行けというよりも、二階に置いてある荷物を移動させることでそこが自分の住む場所なのだと少しでも実感させようとしている。といったところだろう。

 変な時間に荷物の移動をさせるよりは早いうちに移動させた方が良いと俺としては思うのでハロルドの提案になっておこう。それに白亜たちにも話をしに行く必要があるのだから、荷物の移動のついでに話をしに行こう。

 そう思って、ハロルドの言葉に頷いてから席を立つ。


「それなら早いうちにやった方が良いだろうな」


 それに綺麗にしてあるとは言っても一応掃除もしておいた方が良いだろう。それを考えるとそれなりに時間が必要になりそうだ。


「はい!」


 シャロの元気な返事を聞いてからハロルドに断りを入れてから二階へと上がることにした。

 使われていない部屋なので小物などもないので、必要になるようであれば揃えなければならない。ただそれは、祭りがある関係上、祭りが終わってからになってしまうかもしれない。

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