表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/220

ギルマスの自宅

挿絵(By みてみん)


冒険者ギルドハートリー支部のギルドマスター、ラッセル・サックウェル宅の家事支援業務は夕食作りと後片付けまで続く事になっている。


「夕食時にお客様が4名お見えになられる予定ですので、私達夫婦とラッセル様と冒険者さん自身の分を合わせて8人分の料理を作ってください」

と指示された。


女中は住み込みでは無く夕方前(午後3時頃)には帰るので彼女の分は作らなくて良い。


のだが女中は

「…今日は夜までかけて洗濯しようかな…残業したい…夜の賄い料理も食べたい…」

と言い出して私のほうをチラチラ見ている…。


女中は余程私の料理を気に入ったらしく

「冒険者さんのお名前は何て言うんですか?私も指名依頼したら作りに来てもらえますか?指名にかかる依頼料は幾らくらいですか?」

と訊いてきた。


この女中はカメリアという名前で仕事はほぼ洗濯と洗濯場の掃除が専門。

毎日この屋敷に来ているという訳ではなく、数軒の屋敷を日替わりで回っているのだそうだ。


サックウェル伯爵家に雇われていて、サックウェル伯爵家の縁者の家を回っている。


そういった

「サックウェル家内で人手を移動させる派遣人事」

はカメリアだけではないらしく…

この屋敷の料理人も他のサックウェル家の料理人も

「伯爵家で宴会が開かれる場合には呼び出されている」

との事。


「派閥内人事異動で融通が利くから、大派閥は人手を多く必要とする大掛かりなイベントを開催できる」

という事のようだ。


「月に一回くらいの贅沢としてマリーさんを指名依頼してディナーを料理してもらうとか良いですね〜。お金貯めてからになりますが今から楽しみです」

とカメリアは美食に目覚めた様子。


老夫婦も微笑ましそうに見ている。

この老夫婦は執事と侍女という意図付け。

ジンデルとメープル。


ギルドマスターのラッセルは40代くらいの見た目で、ジンデルとメープルは60代くらいの見た目。

乳母とその夫という関係性だったという話も納得だ。


ラッセルとはラッセルの年齢分だけの付き合いがあり、好みも知り尽くしてるとの事なので嫌いな食べ物や食べられないものがないか一応尋ねておく。


「ラッセル様には好き嫌いも食べられない食べ物もありません。ですがラッセル様の甥のレヤード様は食べると蕁麻疹が出る食べ物があります」

だそうだ。


「サックウェル伯爵家からも指名依頼があるかも知れないので、マリーさんもレヤード様が柑橘系の果物を食べられない事を覚えておいても良いかも知れませんね」


そう言われて

(食物アレルギーは地球でも案外昔からあったのだろうな)

と思った。


それとカメリアがサックウェル家を何軒も回ってたり料理人が貸し出されたりする事から、私も同じ扱いがされる可能性があるので

(家事支援に行くかも知れない屋敷の人達の好き嫌いや食物アレルギーを教えてもらえるのは有り難い)

と思い素直に感謝した。


(清掃と調理で身を立てるのもありかも知れない…)


エアリーマスのギルマスからは

「公爵家で働くように」

と言われていたが、それは

「公爵家が了承したら」

の話だったのだろう。


「ウィングフィールド公爵の庶子など屋敷に入れる気はない」

と拒否される可能性も高い。

このまま屋敷の清掃と調理を転々として回っても暮らしは成り立つ。


Eランク冒険者への指名依頼なので、Gランクだった時の報酬よりずっと多くもらえるのだ。


それに指名依頼の場合は依頼主側が冒険者の仕事ぶりに満足した場合には繰り返し依頼するので、安定した収入に結びつく。


セキュリティーのシッカリした良い宿屋に泊まり続けるとしたら、Eランクで家事支援の仕事をしても生活は結構ギリギリになるが…

私の場合は必要な物をアトラクション魔法やバックオーダー魔法で出せるので、宿代を払える収入程度でやっていける。


というか、いざとなったら金貨や銀貨をアトラクション魔法で増やせる。

コピー品が原本を鏡写しで反転させた姿で出てくるので、コピー品を原本にして更に鏡写しで反転させると元々の本物にソックリになる。


勿論、金貨を量産するのは国内の金貨の流通量を乱す。

経済への悪影響に責任が持てないので極力やらないつもりではある。


ともかく今夜用の料理に何を作るか考えたい。

肉料理が全般的に好きらしいが味付けの濃い物や酒も好きらしい。


麦酒、蜂蜜酒、林檎酒、葡萄酒、蒸留酒。

料理に合わせてその時のお好みで自分でストッカーから出してくれるので、酒の準備はしなくても良いとの事。


料理人のミルワードが

「使って良い」

とメモで書き残してくれてる材料だけでは8人分の夕食分には足りないので、他の材料を買い足しにメープルと一緒に商店街へ行った。


客人の中には先程メープルが柑橘系の果物が食べられないと指摘した「レヤード」も含まれるので、それを考慮した仕入れになった。


ハートリーでもエアリーマス同様に

一見いちげんさんからは余計にカネを取る」

という余所者をカモる洗礼は普通に作用している事が分かった。


メープルと一緒に行って顔を覚えてもらい

「ギルマスの所のお使いだ」

と認識してもらう事でボッタクられる面倒を避けられる。


食材を仕入れて、材料の下拵えに入る。

冷めても美味しい料理は早目に作っておくが基本的に火を通すのはギルマスの帰宅時間に合わせる。


時間が余る分はカメリアが陣取っていた洗濯場の清掃をした。

勝手口から外に出た外壁も随分と汚れているので

(次また指名依頼されたら外壁も庭も清掃範囲に入れよう…)

と思った。


台所に誰も立ち入らないでいてくれるなら、出来たての料理を亜空間保存して、次の料理に火を通すような事も出来るが、そういう事をするには老夫婦は度々私の仕事ぶりを覗きに来る。


出来上がった筈の料理が消えてたら流石に気付くだろうから、出来た料理が冷めるに任せる。


煮る、蒸す、茹でる、焼く。

そうやってギルマスの帰宅予定時間に合わせて仕上げていった。


【魔法】スキルの半透明タブレットに時間が表示されるのは有り難い。


メープルの話ではギルマスは無趣味な男で、仕事が終わればギルド会館から直行で帰ってくるらしい。

「寄り道は基本的になさらないんですよ」

との事。


休日にダンジョンに潜るくらいの事をしているが、普段は剣の腕が鈍らないように庭で素振りをするのが趣味らしい趣味だとか。

外で散財して歩く趣味ではないので、仕事に行ってるかダンジョンに潜ってるか以外では屋敷に居る。


その生活パターンのルーチンワークは今日も発揮されたらしく、ギルマスはメープルの言った時間通りに帰って来たようだ。

玄関先で声がした。


私は台所で待機してるので帰宅した姿を直接目にした訳ではない。

話し声はギルマスだけではなく、ジンデルの言っていた「客」の声も混じっているらしく賑やかだ。


ジンデルとメープルは先に自分達の分の料理を食べている。

「毒味も兼ねているので使用人が主人より先に食べるのがサックウェル流」

なのだそうだ。


「マリーさんの分だけ残して後は運びます。給仕は我々の数少ない仕事ですのでマリーさんも夕食を取ってください。後片付けもありますし」

ジンデルがそう言ってメープルと共に食卓へ料理を運んでいく。


(うん。美味しい)

と素直に自分のスキルの仕事ぶりに感心した。


どういうカラクリなのか、スキルが有る無しで料理の味が変わる。


「自分が食べた事のある味を再現したい」

という思いを具現化するのがスキルの真骨頂なのだとしたら…


美味しいものが溢れていた地球世界の記憶がある私は

「それだけで」

この世界の御当地スキル持ちよりもアドバンテージがある。


(片付けもどこまでさせられるのか分からないし、依頼達成票をギルドに提出するのが随分と遅い時間になるかも知れないな…)

と思ったので

(依頼達成票の提出は明日の朝にすれば良いだろう)

と思い直した。


元冒険者だけあってギルマスは普段は早食いらしいが、客がある時の食事は会話を交えながらゆっくり食べる。約40分。


その後は酒と一緒に乾きモノのツマミを食べるらしいが、それまで待ってから帰ると夜遅くになるのでジンデルが依頼達成票にサインして

「お疲れ様でした」

と送り出してくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ