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家事支援

挿絵(By みてみん)


寮母の様子から

「他の入寮冒険者と揉めたら(特に相手が寮母お気に入りの男だと)私が一方的に悪いという事にされかねないな…」

という可能性に気がついた。


よって、寮のトイレや台所の使用は諦める事にした。


「ただ寝に帰るだけ」

という事にして、部屋への出入りでさえ他の入寮者に見られないようにした方が良いと思い直したのだ。


(どうせトイレも汚い筈だ…)


排泄は自室でオマルにして、浄化して亜空間収納しておき、郊外に出た時に捨てるようにするに限る。


或いはハートリーには公衆浴場や公衆便所があるので、公衆便所を利用しても良いのかもしれない。


公衆便所の清掃は低ランク冒険者の仕事の定番だ。

週に1回私が引き受けて魔法で綺麗にしてキープハイジェニックしておけば清潔に保てる筈。


(この町でのライフスタイルの目処が立ってきたかも…)

と思いながら、与えられた自室を早速魔法で綺麗にした。



********************



(…台所を使えれば色々作れるのに、変に目立てば婆さんに目を付けられる…)

という事もあって、食事はまたも「ヘルスケア管理」で出てくる栄養補助食品とサプリメントのお世話になる。


アトラクション魔法でホスチアのコピー品を延々出せるのも嬉しい。


ホスチアとオートミールも貴重な穀物だ。

【千本槍】のシェアハウスに居た時に作っていた携行食も原本を保管してるのでアトラクション魔法で延々食べられる。


飢えずに済むだけの食糧には一生困らない。

問題は飽きるという事。


あと、肉や魚などのタンパク質は

「食べたい」

と思った時に料理されてる物を屋台で買って食べた方が気分的に良い。


「ヘルスケア管理」でプロテイン入りのクッキーバーやゼリーが出てくるが、そこに含まれるのは大豆由来の植物性。

私としては

(動物性タンパク質はその時々の気分に応じて摂取したい)

と思うのだった。



******************



冒険者ギルドに出向くと

「マリーさんに清掃・調理の指名依頼が入ってます」

と告げられた。


(…それにしても、早速、清掃・調理の指名依頼か…)

と少し悩む。


家事支援の仕事はどんなに有能に仕事をこなしても依頼主以外の者達には仕事ぶりが見えない。

なので

「依頼主は無能な新人冒険者に仕事を与えてやって家内に引き込み性的奉仕をさせている」

だのといった噂が捏造される事になる。


だが冒険者稼業は何でも屋でもある。


「指名依頼の入浴介助」

「指名依頼のマッサージ」

は実質性的サービスである。

なのでわざわざ別の名目で家に引き込む必要はない。


それでもゲスの勘繰りで他人の評判を引き下げるために、火の無い所に煙を立てる者達もいる。

そのせいで家事支援の仕事も性的サービスの隠れ蓑だと疑われるのである。


(またこっちでも「誑かした」だのと因縁つけられるのかも知れないな…)

と気が重くなる。


嫌がらせして、加害者のくせに被害者を詐称し、冤罪で陥れる。

そういう人間が野放しの場所に入り込めば、何度でも難癖をつけられる。


(この町はどの程度「誣告犯罪」を取り締まってるんだろう?)

という点で未だ何も知らないので信用できない。


とにかく言われた通りに仕事をこなすだけだ。



朝から指名依頼をくれたギルマスの屋敷に出向くとーー


住み込みで働いているという老夫婦が出迎えてくれた。

この老夫婦二人でギルマスの留守を預かっているらしい。


通いで働いている使用人は3名。

女中が2名出入りしていて、掃除や洗濯を行っている。

料理人も通いで働いていて、週に一回休みがある。


「今日は女中一名と料理人が休みなので、女中一名が洗濯をします。なので冒険者さんには清掃と調理を担当してもらいます」

と老女に指示されて、屋根裏部屋、2階、1階、水回りの順番に掃除をする事になった。


老夫婦は腰が悪いとかで使用人としては、ほぼ役立たずに見えるが…

どのくらいの広さの部屋を掃除するのに、どのくらいの時間がかかるか、などといった点では色々目端が効くらしく、時折覗きに来ては満足そうな表情で立ち去っていく。


カネ目のものを露骨に目に付く場所に置いている筈も無いが、それでも何か盗まれる可能性はある。

監視しているのだろう。


(監視するのは当たり前と言えば当たり前だね…)

と納得できるので、そこは割り切って老夫婦がいない間に魔法を使う。


(目も悪そうだから、多分、一瞬だけ魔法を見たりしても気のせいだと思って納得してくれるんじゃないかな…)

と楽観してはいる。


ウィングフィールド公爵家の使用人達も中年ぐらいまでは皆ギラギラしていて、他人の粗探しや監視に熱心だったが…

それよりももっと歳をとると、段々見落としも増えて、批判精神もなりを潜めて丸くなっていった。


老夫婦も20年くらい前までは下級使用人を監視して厳しく躾けていたのだろう。

顔に刻まれた皺が苦悶の表情を作り出していて、それでいて声はか細くて覇気が全く無い。


足音を忍ばせて近付いて監視する、などという事もできないようで、杖をつく音も聞こえるので接近を察知するのも容易だ。


(魔法を使って手抜きできる分は手抜きしまくろう)

と思った。


それというのも

(掃除用の女中がいるにも関わらず掃除が行き届いてなくて家の中が汚い…)

からだ。


こじんまりした屋根裏付き二階建ての屋敷。

そこまで広くない。

女中が朝から夕方まで

「ちゃんと掃除してる」

なら、もっと綺麗な筈…。


老夫婦の目が悪くて、埃が積もってても見えないとか…

家主のギルマスが無頓着だとか、そういう原因がありそうだ。


魔法を使って手抜きしないと清掃と調理の仕事を果たせなさそうだと思ったのだ。


それと不用意に触れると壊してしまうかもと不安な道具も見られる。

天井に「スプリンクラーか?」と思うような魔道具が取り付けてあったり、客間の壁に「監視カメラか?」と思うような魔道具が取り付けてあったりする。


貴族の邸宅と違い、装飾過多な感じはしないし、むしろシンプルな屋敷だと思うが…

その辺の装飾品よりも魔道具の方が高そうだ。

触れずに掃除できるなら、その方が絶対良いに決まってる。


ーーと思っている間にも昼食を作る時間になった。

老夫婦と女中一名の分の昼食を作らなければならないので、清掃は途中で一時中断。


(昼前までに屋根裏部屋と2階の部屋と階段・廊下は清掃を終えておきたい)

と思い、覗きに来られた時だけ手で掃除して、それ以外の時は魔法を使ったところ…


昼前までに家中の清掃が終わってしまった。


「速度は申し分がないようですね」

と老夫婦は納得した様子だが…


これだけ綺麗にするのに

この速度で終わる事は普通なら絶対にあり得ない。


普段から女中が手抜き掃除でサッサと掃除を終えてるのを見てきてるせいで感覚が麻痺してるのだろう。


よく見えてないからーー

手抜き掃除で全然綺麗になってない女中の掃除にも不満を覚えないし

魔法で異常に綺麗にしても全く驚かず感謝もしないという事か。


(やり甲斐は無いけど魔法を使ってもバレない可能性も高いから、別に良いか…)


そう思いながら綺麗にした台所で食材を物色して調理する事にする。


「使って良い食材の種類と量」

が指定されてるので、それは守らなければならない。


ーーにしても。

調味料の瓶が幾つもあるが、ほぼ全て中身が空だ。


(ここの料理人はから瓶を収集しておく趣味があるとか?)

と不審に思ったが、別に口に出す程の事でもない。


味付けに調味料が必要なら亜空間収納庫から出せば良い。

足りない食材もアトラクションやバックオーダーを使えばタダで出せる。

台所さえ使えるなら調理はお手の物だ。


勿論、亜空間収納してる原本の食材は使わずにアトラクション魔法で出したコピー品を使うのだが。


焼きたてパンと野菜スープと焼いた肉。

使用人用の賄い料理としては良い方だ。

ギルマスはウィングフィールド公爵と違ってケチではないのだろう。


ウィングフィールド公爵家では使用人は滅多に肉などもらえなかったので、肉が出ると目を丸くしていたのだが…


ギルマスの屋敷の使用人達は

「「「いつもより美味しい」」」

と感心するだけで、肉に対する物珍しさは感じていない様子。


「なんか、いつの間にか屋敷の中が別次元で綺麗になってるし、冒険者さんには毎日来て欲しいくらいです」

と洗濯専門の女中が目をキラキラさせている。


「ははは」

と私は愛想笑いを返した…。



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