治安維持・国防
在住国民になりすました外国人達による在住国民への一方的なヘイトクライム。
侵略者による現地人へのヘイトクライム。
そういうものを仕掛けられた場合にーー
社会的上位者達が
「我が国の国民に成りすましている外国人はそういう手口を使う」
という事実を理解していなければ…
一方的な軍事的ヘイトクライムが私的な怨恨による報復だと捏造される。
被害者に非があって恨まれたのだろう、ならば加害者には情状酌量の余地がある筈だと。
或いは被害者と加害者を入れ替えた嘘塗れの冤罪告発が行われる。
(私がやられたみたいに)
恐ろしい事だ…。
誣告犯罪にしても
「犯罪には必ず動機がある筈だ」
と前提してしまうと
「外国人達が上手に在住国民のフリをしていれば客観的に動機無しに見える」
のだから
「成りすまし外国人達による在住国民へのヘイトクライム」
として陥れが起きても事実が判明しにくくなる。
ホワイト王国の場合はーー
ギルマスを見るに、社会的上位者達は馬鹿では無さそうだ。
社会的上位者達が馬鹿だったり
或いは「自分さえ良ければ」という卑怯者だったり
確信犯の敵が成りすまししてたりすると
敵国人によるヘイトクライムが隠蔽されて
在住国民は狩り放題の狩場の動物のように気まま勝手に虐げられ
その事実さえ隠蔽される…。
(「ターゲットを自殺にまで追い込んで楽しむイジメ蔓延社会」をどんな人達が作り出すのかなんて、陰湿な国際アングラ戦事情を汲み取って分析すれば簡単に判ると思うんだけどね…)
******************
「異邦勢力の抑圧のためには時折『見せしめ』が必要となります」
というのがセルデンの説明だった。
何処の国にも異邦勢力は入り込むし、ゴキブリのように繁殖する。
徹底排除は難しい。
なので時折『見せしめ』の断罪を行い、勢力を削いで抑圧する必要がある。
という事なのだろう。
「長年ずっと気付いてなかったんですけど…。悪い事する人達の中には異常なこじつけで他人に因縁つけて、しかもシツコイ人がいるじゃないですか。
…ああいう人達って、もしかして本当は外国人だったり帰化人だったりしてたんでしょうか?」
私が素朴な疑問を呈すると
セルデンは
「そうですね。外国人や帰化人が多いのは確かですが、ホワイト人の中にもまた、社会を汚し病ませる病源が湧きます」
と答えた。
「…人間は『不正に儲けているのに粛正もされず伸び伸び増長している』ような悪人を見ると『真似すれば得できる筈』と考えてしまいがちです。
要は『どんな手を使っても利益を出そうと思った結果悪事を働く人間』と『悪事を働きながら利益を得ている人間を真似しようとして悪事を働く人間』とが居る訳です。
そして模倣者は『利益を得ている人間を模倣してるのに利益が得られない』となると激昂しやすくなります。
そういった類の連中は『悪事を行って利益を得る』という道にしつこくしがみついて他人を苦しめ続けます。
自発的想像力に欠ける模倣的な人達は『模倣モデル』選びに慎重になるべきなのですが、残念な事に『模倣モデルに悪党を選ぶ』者も少なくありません。
そういう選択をしてる時点で彼らは堕落と破滅が決定していて、大抵の場合、改心できる程の自己客観性を持つ事もなく、命尽きる最期の瞬間まで愚かなまま悪で在り続けます。
ただ、『悪事を働きながら利益を得る』というのは到底個人の力だけで為し得る不正ではありません。
力と金を持つ悪党は社会内で展開されてるコネによる癒着で正当化されています。
こうした道理を理解できない者達は『悪党のまま通用している連中』と『自分』との違いを理解できないので、『何故、俺の場合だけ悪事を為せば断罪されるのだ!差別だ!』と断罪執行者を逆恨みします。
『他にも悪事をやってるヤツらがいるのだから、俺に文句を言うなら先に他のヤツらを全員断罪してから言え』という考え方で『断罪の平等』を望み、執拗かつ粘着に自己正当化しようとするのです。
そういった盲目過ぎて救われない悪党も、自分の国に居る分には『断罪の不平等を恨む』程度の恨みで済みますが…。
他国へ集団で棲みついて組織化した対人関係を築いている悪党ともなると、『悪は断罪される』という当然の報いを『外国人だから差別された』と歪曲・自己美化して捉えます。
彼らは『他国では犯罪し放題であるべきだ』『他国では犯罪の代償に刑罰を振りかけられたら、差別だと見做して逆恨みし、報復には何をしても良い』と思い込む所にまで堕落してしまう傾向があります。
『アウェイをホームに変えよう』という乗っ取り侵略に邁進しながら侵略者である自覚のない者達は特に。
ですが人間に『易きへ流れる』サガがある以上、そういった者達は湧きやすく、根絶やしにする事も難しく、刺激すれば攻撃性を倍化させる厄介な病源でもあります。
時折言い逃れもできないように当人達の罪を突きつけて断罪・処罰し、勢力抑圧を振りかけてやれる程度の干渉しかできません」
セルデンの言い方はかなり辛辣だが…
そんな言い方の話で
「彼が何を言わんとしてるのか」
がシッカリ理解できるのだから…
私も相当に辛辣な性格なのだと言える。
だが、ふと思いはする。
(外道な人達を「ただ駆除する」「ただ間引きする」といった「対魔物対策」と同じ事しかできないというのは…人間にとって「人智の敗北」のような屈辱的事態なんじゃないのかな…)
と。
易きに流れて、成長できない、退化する魂。
人類間にはどうしようもなく意識格差があるが…
(本当は居るのかも知れない…)
成長できる、進化できる魂も。
成長できない、退化する魂に紛れて。
人類はずっと
「ゴミと一緒に宝まで捨てている」
のかも知れない…。
この世界では進化できる者も退化する者も識別する術がないけど…
地球世界のネット普及社会では各個人の人間性や動きは識別できた筈だし
有害ゴミを識別してピンポイント摘出・処分する事もできた筈だ。
なのにそれが行われず
有害ゴミのような退化する魂の人々がのさばり続けた…。
それは要するに
「国防・治安維持のために知恵と文明の利器を有効利用する事すら、それをするべき立場の人達ができていなかった」
という事なのだろう…。
(まぁ、日本の場合はスパイ防止法すらない異常な国だったので「処分するべき有害ゴミ」のような工作員を把握・牽制する予算すらなかったのかも知れないが…)
********************
デリック・サックウェルから提案された身の振り方へと移行する為にはエアリーマスを出て、南部領都ハートリーへ拠点移動する必要がある。
「指名依頼を複数受けた事のある需要の高い冒険者なら、ギルド側の裁量で新人でもEランクまでなら上げてやる事が出来る。これでハートリーまで行く馬車の御者補助の依頼を受けられるな」
と言われて
「ありがとうございます」
と頷く。
貴族と関わると拉致監禁されてひたすら搾取されるに違いないと思っていたが…
サックウェル伯爵家は随分と私の思い描いていた貴族のイメージとは違うようだった。
「カネは大事だからな。ちゃんと働き、ちゃんと報酬を受け取り、ちゃんと稼げよ」
とデリックに励まされてエアリーマスを発つ事になった。
ハートリーまで行く馬車の乗客は何故か私と同じ歳の少年少女だらけだった。
御者の話だと
「領都の国立学院の入学試験がある時期なんだよ。同時期に王都でも王立学院の入学試験がある。
その時期には15歳の子達が一斉に大移動するから乗り合い馬車も満員さ」
との事。
エアリーマス近辺の町や村から成績優秀者がエアリーマスへ集まり、ハートリー行きの馬車に乗って受験のために移動するので乗客の数も多い。
それに対して
「入学式前の乗客数は通常時なみ」
というのだから
「いかに多くの受験者が試験で篩い落とされているか」
が判ろうというものだ。
各村・各町の教会が子供達に読み書きを教えている。
その中で優秀だった子達が
「学校へ進学するべきだ」
と勧められて受験しているのだとの事。
受験者は女の子は少なくて男の子が多い。
受験料と馬車乗車賃と領都滞在中の宿代もバカにならない。
「女の子はどうせ嫁に行く。カネを掛けて教育してやっても見返りは期待できない」
と思う親が多いため
「家を継ぐ予定の長男が進学推薦された場合以外では推薦は親の方で無視する」
という傾向があるらしい。
私は受験者達とは同年代とは言え
客ではなく御者の助手。
客とお喋りはできないので、ただ聞き耳を立てて事情を盗み聞きするだけだが、お陰で学業関連の国内事情が随分と分かった。
密かに
(…乗り合い馬車の御者って社会情勢の情報収集とかに向いた仕事なのかも知れないなぁ…)
と思った。
地球世界でも公共の交通機関は最大の情報網だった。
公共の交通機関に付いてる防犯カメラは犯罪者の行動監視や足取りを追うのに役立った。
警察官がちゃんと怠けずに働くなら
「プロ工作員・特殊軍属以外の一般犯罪者なら、どんなヤツでも捕まえる事が可能」
だったろう。
だが敵性因子が内部に潜り込めば
どんなに優秀な情報網からも情報が削除・隠蔽・改竄される。
こういった事情は国防面にも当てはまっていた。
(治安維持・国防は「内部から乗っ取られる危機」を「認識」もできないと、簡単に詰むんだよな…)
技術が進化しても
根本的な部分での人類間生存競争は変わらない。
(この世界は文明も技術もつたないのに、人間自体はマトモなのかも…)
資源枯渇間近の詰んだ地球世界から
未だ資源枯渇の遠い自然豊かなこの世界へ転生した訳だがーー
(…私は「自分以外にも地球世界から転生してきた者達がこの世界に居た」として、仲良しごっこで群れるだろうか?)
(転生者同士で協力・繁栄して共にこの世界の人達を搾取し続けようだのと思うだろうか?)
(地球から人を呼び込んでこの世界の資源を地球人達に啜らせようと思うだろうか?)
私はそう考えてみて
「絶対ない」
と断言できるくらいには
地球世界に対して
「捨てた」
「捨てられた」
という棄民意識を持っている。
地球世界へ期待も未練も無いから
二心なくこの世界の人間として生きていける。
逆にーー
地球世界に期待と未練タラタラで異世界転生してたら
どっち着かずになり、挙げ句の果てには
「地球人同士で共闘して異世界人達を搾取する」
といった外道に転がり落ちてたのかも知れない。
「無害な移民を装いつつ寄生侵略者となる人達」
の外道心理も、それと同じようなものなのだろう。
「捨てた」
「捨てられた」
という棄民意識が
「無いから」
こその二心。
侵略・搾取の手先…。
邪悪で業深い生き方…。
日本では花嫁は白無垢の衣装を着るものだったが…
「婚家の側の色に染まる」
ための白無垢だ。
「実家と婚家の利害関係が対立した場合には婚家の陣営につく」
という婉曲的意思表示でもある。
死者が白い死装束を着るのも同じ。
故人のお茶碗を割って処分するのも。
「次に辿り着いた場所で真新しく人生を始める事ができるように」
との配慮。
「古い環境の垢を新しい環境へ持ち越さずに済むように」
という
「真新しいやり直し」
のための
「縁切り」
の作法…。
「新しい環境に操立てできるように」
との意図を含む排除。
日本では「キツネ」という動物は「虐待」「縁切り」のイメージと結び付いていた。
母キツネが独り立ちできる段階まで育てた子キツネに
「独り立ちを強制する為に自分のテリトリーから追い出すべく攻撃する」
虐待。
人間社会の
「キツネ落とし」
は憑依落としを名目とした迷信傾向の強い集団私刑だった。
そういった
「甘えを許さない、自立強要の虐待」
とキツネのイメージは関連していた。
自立強要の虐待・縁切り。
それが生き物の在り方として正しいのかどうか…
その評価は
「虐待された側が甘えを削ぎ落として自立して、その後子孫を残してゆけたのか?」
に関係する結果論で決まる。
「強くなって生き抜いて欲しい」
という想いがどこかにあれば
その想いが、その後を生き抜く善運として反映したのかも知れず…
「ただ面倒臭く、疎ましい」
という嫌悪しかなかったのなら
その嫌悪のせいで凶運に憑かれ、その胤はついえたのかも知れない…。
そんな結果論次第の不透明な情動の中ーー
想いをもらえずとも
愛してもらえずとも
「もらえない愛なら自分で作れば良い」
と思えた者達だけが
「別の場所で真新しく別の縁を結ぶ」
そんな「やり直し」ができる道へと向かっていけた。
「縁切り」の先にある変化…。
絶望しかない社会で切り捨てられ
「もらえなかった愛を自分で作って自分を救う」
しかなかった者達が、それをできたのは
それを実践した者達が
「既に先にいた」
お陰で道が出来ていたからだ。
道が出来ていたからーー
それを踏襲する事が出来た。
「既に道が作られていた」
という事の中に
「後続の者達に対する先人達の愛がある」
のだ…。
だから
「もらえない愛なら自分で作れば良い」
という
「アイデアが自分の中に入ってきた事」
それ自体が実は
「先人達が遺した愛を受け取っていた」
という事だ。
こうした心的経験を完了する魂の通過儀礼は
「略奪者達の仲良しこよしごっこ」
のような呪われた堕落的癒着とは対極だ。
光無き処に囚われながらも
光を呼び出す
光を召喚する
別次元からーー。
そんな生き方には
そんな心には
確かに
「人間の愛」
があった…。




