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パーティー解散

挿絵(By みてみん)


ロベリアがシクシク泣く声だけが響くギルド会館ロビー…。


ロビー内にいる全員が注目して成り行きを見守ってる中ーー


テレンスが口を開き

「…こう言っちゃ何だが。チェスター。俺はもうお前とパーティーを組み続けるのは正直もう無理だと思ってる」

と言い出した。


チェスターが戸惑ったような声で

「テリー…?」

と声を掛けるが


テレンスは怒りを抑圧した無表情で

「…結果的にはマリーをこうして無事に連れ帰ってやれたが、お前はその女を身請けする金が足りないって状況でマリーをプレスコットに売ろうとしたよな?しかも非合法に。

あと、こんな人目のある場所でその女に有る事無い事言わせて咎めるでもなし、その女の味方であるかのように抱き寄せてる。

そんな態度だとその女がほざいた虚言がさも真実のように思われちまう。

それを覚悟の上でその態度なんだろうからな…。

俺は無理だよ。お前とも、お前が身請けしたそのアバズレとも一緒にやっていく事はできない。

というか、その女と同じ場所の空気を吸うだけで気持ち悪くなるね」

と言い切った。


次いでランドンが口を開く。


「…チェスター。悪いが、俺もテレンスと同意見だ。お前の女の趣味はお前の勝手だが、その女は、あまりにも思い込みが激しくて独善的過ぎる。俺は生理的に受け付けない。

何が『皆で楽しむ代わりに』だ。だいたい、俺達が誰を拠点に住ませて、誰をポーターに雇うかなんて完全に俺達の勝手だろう?

命かけて危険と向き合って金稼いでるんだから尚更、その金をどう使うかに関して他人がごちゃごちゃ言う権利なんてない。

マリーはお前の女みたいな役立たずじゃない。それを地下訓練場でちゃんと確かめた上で雇ってるんだ。

お前だって目の前でマリーの戦闘力を見てて、家事能力の高さも実感してる筈だ。

なのにその女にそんな虚言を吐かせて諌めもせずに、甘やかして肯定するようじゃ、俺達のリーダーとして失格だ。

お前がパーティーを抜けないんなら俺がパーティーを抜ける。というか、もう解散でも良くないか?」


後に続いて、ためらいがちにクラークが

「…正直、俺は近々結婚するつもりだったから【千本槍】を抜けるつもりだったし、元々辞めるつもりだった俺がどうこう言う資格は無いと思うけど。

チェスターはマリーにちゃんと謝った方が良いと思う。

人買いから逃げてきたマリーを保護するつもりで仮メンバーにしておいて、異国の港町で非合法に売り払って、その金で娼婦を身請けしようとか…人としてどうかと思うよ。

普段のチェスターはそんな人間じゃないから、余程幼馴染みとの再会が衝撃過ぎてマトモに物を考えられない状態になってるだけなんだろうね。

冷静に客観的に自分と、その幼馴染みの女性とを振り返って、非道な事をしてしまってる自覚を持って反省して欲しいと思う」

と意見を述べる。


ランドンとクラークもチェスターを責めるような目で見ている…。


「お前達…」

と小声で呟き、俯いたチェスターに対して


事務員が

「…あの〜…それで、契約更新用書類の作成はいかがなさいますか?」

と尋ねたので


それは私が横から遮るように

「契約更新しませんから、書類作成は無しでお願いします」

と答えた。


「…そうなんですね」

と納得した事務員が引っ込むと


今度は受付嬢が

「マリーさんに指名依頼が入ってます」

と言ってきた。


(…それってもしかして…)

と思うまでもなくブラックウェル商会だった。


(私の個人情報を嗅ぎ回ってたって話だし、ストーカーみたいで気持ち悪いんだけど…)

と躊躇しそうになるが

「依頼内容を聞きます」

と言って受付嬢が取り出した書類に目を通す事にした…。



********************



私の耳に周りのヒソヒソ話が聞こえてくる…。


「冒険者同士の友情なんて呆気ないもんだなぁ…」

「ってか、チェスター、若い子より同年代の娼婦が好きなんだぁ?」

「性病だったとか言ってなかったか?」

「うわぁ〜…。ホント女の趣味悪ぅ〜」

「【千本槍】、女の趣味が合わなくなって解散ってとこか?」

などなど本当に勝手な事ばかり言っている。


(気にしても仕方ないか…)

と思いながら私は指名依頼票をチェック。


別におかしな点はない。

特に労働力が買い叩かれてる訳でも妙に優遇され過ぎてる訳でもない。


(この依頼を受けても変な悪評に結び付ける人はいないだろう…)

という基準で受ける事にした。


ブラックウェル商会の支部長の屋敷で行われる茶話会で出す軽食・菓子を作る手伝い。

冒険者登録事に【清掃】【調理】スキルを記載してないので、私の労働力は価値が低く見積もられている。


スキル有りとスキル無しでは依頼報酬に差が出るように法的に定められている。


登録時は知らなかった事もあり

「冒険者に清掃や調理は関係ないだろう」

と思い、登録事に申告してない。

なので安い金額で雇える事になり、雇う側はお得な状態だ。


逆にスキルも無いのに「有り」で登録すると、依頼主がスキル持ちを資格指定した報酬の良い依頼を受けられるが、仕事ぶりがスキル持ちに相応しい出来じゃないと次からは依頼主から断られる。

虚偽申告が疑われるとスキル授与式を受けた教会へ問い合わせがいくし、スキルを持ってないとバレれば詐欺罪に問われる。


スキルは申告しておけば良いというものでも無いのである。


常識として

「スキルはスキル授与式で誰でも一つ授かれるが、自力でのスキル獲得は難しいので、多くてもせいぜい三つまで」

と思われている。


スキルが五つあるなどと記載するとほぼ確実に嘘つきだと思われる。

なので【投擲】【病気耐性】【毒耐性】の三つも書けば充分だ。


診療室のマードックから聞いた事情では【病気耐性】スキルは医術師の助手として重宝されるスキルである。


【毒耐性】も、毒の匂いや味を記憶させられた後には毒味役として需要がある。

勿論、無味無臭の毒だと毒を識別できない。

なので毒味役は【毒耐性】の有る者と無い者と両方で行う事が多いのだが、【毒耐性】の無い者が行う毒味は命がけとなる。


ウィングフィールド公爵家にも毒味役の執事はいたが、下級使用人だった私は口をきいたこともないので、毒味役という役割の存在自体に思い至らない。


ブラックウェル商会が今回の依頼で確かめようとしているのは私の嗅覚・味覚の鋭敏さに関してなのだろう。

因みにブラックウェル商会のエアリーマス支部長はモーリスではない。


ローズマリーとして長年、粗食で生きてきて…

ローズマリーだった頃には食べ物の好き嫌いすらなかったが…

ウィングフィールド公爵邸を出奔して2ヶ月近い。

その間に味覚も正常化して不味いものは不味いと普通に感じられるようになっている。


(軽食とか、お菓子作りかぁ…。ちょっと楽しみだなぁ〜)

などと思ってしまう。


ブラックウェル家の料理人がどんなものを作る気なのか気になるところである。

仕事日前に打ち合わせが必要らしいので、早速ブラックウェル邸の厨房へ出向く事にしたのだった…。



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