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異国の港

挿絵(By みてみん)


ほどなくして【海鳥の尾羽号】はマルセル王国の港町バロワンに着いた。


マルセル王国はホワイト王国と違って島国ではない。

大陸にある沢山の国々の一つだ。

陸続きで他の国々と繋がってるせいか、人々の肌の色も服装も多様だ。


初めての外国で私が一番気になるのは

(言葉が通じるかどうか…)

といったところ。


【魔法】スキルのアーツに

「鑑定」

「言語理解」

「亜空間収納」

があったが…


「言語理解」

のアーツの機能がよく分からない。


ホワイト語だと習ってない文字を読み書きできたが、外国語だとどうなるか分からない。


母国語は習わずとも字を目にする機会が沢山あった。

外国語は目にする機会自体無かった。

聞き取れるが話せない、読めるが書けない、という可能性がある。


(どんなものかな…)

と思いながら港町の人達の声に耳を傾けてみると、ちゃんと意味が分かる。

看板の字を見ても、ちゃんと意味が分かる。

文字記号自体はホワイト語でも使われるのと同じものだ。

起源を同じくする単語だと外国語でも発音が似てるし、スペルにも共通点が多い。


地球世界のアルファベットが広く使われるのと似ている。

ともかく聞く読むはできると早速判明した。


宿屋に案内されて名前を記帳するのは普通にホワイト語で良いので、マルセル語が書けるかどうかは試せなかった。


だがマルセル人の従業員に話しかけると自動的にマルセル語が口を付いて出た。

どうやら話す書くもアーツ補正でできるようになってるようだ。


(これなら、いざという時にはホワイト王国を出ることができる。…言葉が通じない所に逃げても悲惨だろうから、ホワイト王国にしがみ付くしかないのかな?って不安だったんだよね…)


商船の船員達が良からぬことを目論んでるのを知って落ち込みそうになってたが、不安要素が一つ減って少し気分が上昇した。


だが宿屋で夕食を摂ろうとして、ふと気付いた。

【千本槍】メンバーが宿屋内に誰もいない…。


(記帳してチェックインしてたし…宿泊はしてる筈なんだよね?…なんで誰もいないんだろう、何処か美味しいレストランがあって皆で外で食べてるとか?)

と疑問に思って宿屋の大将に尋ねてみると


「ん?ああ…。あのガタイの良い兄ちゃん達にお連れさんかぁ。まぁ、男なんだから日が暮れて出掛ける場所なんて聞くまでもないだろう?

たまにはハメを外すのも多めに見てやりなって」

との返事が返ってきた。


(解せぬ…)

私が首を傾げると


若い従業員が

「大将は若い男の客と見れば高級娼館を紹介して、娼館の儲けに貢献してるんだ。あまり気にしない方がいいよ」

とコソッと耳打ちしてきた。


どうやら宿屋のサービスの一環として

「需要のありそうな店を紹介する」

ような紹介制度も存在しているらしい。


「他の場所では手に入らない食材とかある店を知りませんか?」

と訊くと、幾つも候補を上げて教えてくれた…。


そうした情報提供の需要が男どもの場合は娼館だった、というだけの事なのだろう…。

イラッとしないでもないが、納得できないでもない。

たった独りで宿屋の晩飯を食べて、翌日の買い物に向けて計画を練る事にした。


ーー個人的感情はさておき


バロワンに来て私の興味が惹かれたのは

(この町には色んな格好の人がいる!)

という事だった。


斬新なデザインで、地球世界の服にも類似のある使用布面積の少ないフィット感のある服…。


そういうモノも見かけたので

(もしかしたら地球世界の服をシレッと着てても「マルセル王国の港町で買った」という事にすれば案外不審がられずに済むんじゃない?)

と期待を持った。


明日、詳しくリサーチしてみなければ分からないが…。

ともかく地球製品の服類を使えるのは素直に嬉しい。


(海辺だし、明日はセーラーカラーのワンピースでも着て買い物して回ろう)


「独りになるな」

と言われてるものの放置されてるので、面白くないが…


独りだからこそ好き勝手にできる面もあるのだから、独りにしてくれてる事を実は感謝するべきなのだろう。



********************



独りでブラブラ自由に見て回ることでーー

野菜や果物もエアリーマスとは比較にならないくらいに種類が豊富だと判った。


亜空間収納庫に収納しておけばいつまでも腐らない。

何よりそれを「原本」にして「引き寄せ(アトラクション)」で増やせる。

増やしたものを使用して「原本」はそのまま保存しておけば半永久的に仕入れた食材を使い続けられる。

これは嬉しい。


長持ちする食材なら購入したものをそのまま袋に詰めてエアリーマスまで持ち帰って使っても良さそうだ。

芋やら豆やらは「原本」分だけを亜空間収納して、それ以外の分は一先ず宿屋の部屋に保存。


食材だけでなく服類やら雑貨類もリサーチ。

地球に上位互換品がないような商品でも「取り寄せ(バックオーダー)」で獲得できるのだから(後で詳しくイメージできるくらいにジックリ見ておけばだが)万能魔法のお陰で随分とお金の浪費を抑えられる。


引き寄せ(アトラクション)

取り寄せ(バックオーダー)

は金欠人には実に有り難い魔法だ。


だが

「お金があればちゃんとお金を払って購入するのか?」

と言うと、それは少し怪しい。


私は

「お金を使う事=誰かを儲けさせる事」

という意識が強い。


前世からの持ち越しと言っても良い。

「外国旅行でお金を使ったりしない」

「国内で国産品を購入して、国内の製造業を支える」

といった事を意識したお金の使い方をしていた。


「国内の製造業を支える目的で国産製品を購入する」

ような日本人が日本国内でも少なかったせいで…

少数派として意地になってた面もあるのかも知れない。


別の異世界へ転生した後まで

「自分の使ったお金が誰の懐に入るのか」

を気にしてしまう。

(自分の名前すら覚えてないのに)


「こうした意識の回し方は絶対に間違ってないし、事実を事実として認識する土壌に必要な価値観なのだ」

と、誰に主張するでもなく自分の中に刻まれている。


「私は絶対に間違っていなかった…」

そうした自己確信が


別の異世界へ転生した後まで

心に

魂に

こだまし続ける…。



思わず感慨に耽ってしまったがーー


とりあえず、野菜や果物などの消え物は値段が安い事もあり普通に購入した。

服類や雑貨類は購入はせずに見て回るだけで問題はないだろうと思った。


(変に「金を持ってる」とか思われると狙われるだろうしね…)


後を尾けられているのを感じる。

美少女をストーキングする変態なのか

金目当ての引ったくりや強奪狙いなのか

気配からは伝わってこないが…


サッと物陰に隠れて

不可視インビジブル

回避アヴォイダンス

を使った。


(この際だし、この港町の貧民区を覗いてみるのも良いかも知れない…)


活気があって豊かな人達がいる町には光が陰を濃くするように貧しい人達も集まる。


(貧民区は変な病気とかも蔓延してそうだけど、私には【病気耐性】スキルも有るしね…)


ゲームの中では、ホワイト王国がバールス軍に侵攻を受ける際

「友好国・同盟国の主な港はバールス軍に支配されていて援軍を出せない状態だった」

という話になっていた。


「単に援軍を出したくないから友好国・同盟国が嘘を言っていた」

という可能性もあるが…


もしも本当だったのなら、各国の港町には既にこの頃から

「裏社会の権力がバールス系移民に乗っ取られている」

ような状態にある筈。


ホワイト王国と友好関係・同盟関係にある国のうちマルセル王国が嘘つきなのかどうか…

それを知る機会があるのだ。


見て回らない手はないだろう…。

私は我知らず暗い目で微笑んでいた…。


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