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船上の不具合

挿絵(By みてみん)


モーリスがカレー粉の材料となる香辛料だけは置いていってくれたので、夕食にはまたカレーを作った。


今度はシーフードは入れずにトンカツもあげてカツカレー。

トンカツ大好きな【千本槍】の面々はやっぱり貪るように食べた。


(明後日には船に乗るんだし、明日はもっと軽めの食事が良さそうだよな…)

と翌日のメニューについて少し悩みながら後片付けをした。



********************



茹でた肉を新鮮な生野菜と一緒に食べる食文化がホワイト王国にはないが…

生で食べれる新鮮野菜が手に入りやすい季節ではある。


胡麻なら売ってるし、胡麻ダレを使っても不審には思われない筈。


そう思ってーー

出港前日は携行食作りと胡麻ダレ作りに精を出した。


あと、コッソリ郊外へ出て使用済み生理用品を焼却処分した。

気付かれずに過ごしていたが…生理はちゃんと来ていたのだ。


使用済み生理用品を亜空間収納庫に入れておくのは気分的に良くないので、地球製品のビニール類のゴミと共に出港前に全部処分しておきたかった。



そうしていよいよ出港日となった。


商船は【海鳥の尾羽号】。

船長はチェスターと仲が良いらしい男でピーター・プレスコットという名前だ。


色々思うところはあるものの

(準備は万端、の筈…)

と自分自身の気持ちを奮い立たせながら船に乗り込もうとしたのだが


急にテレンスが

「…言っとくが、船乗りは口も悪いし、手も早い。気を抜かないようにしろよ?

帰りには誰の子かも分からない子供を孕まされてました、とかならないように気をつけるんだぞ?」

と言い出した。


思わず私は

(えっ?)

と固まった…。


船乗りは口が悪くて荒くれ者だとはよく聞くが…

気をつけてないと孕まされるだのと言われれば

(…レイプされる危険があるって事?なのか?…)

と、さすがに気が滅入る。


(そういうリスクの高い環境にもポーターって付いていかなきゃならないものなのかな?…)


「…え〜っと。…私も船に乗る必要って有りますかね?…携行食は作ってるんで、持っていって頂いても良いですよ?私は留守番してますんで…」

と私が逃げ腰になると


「それな、俺もそう提案したんだよ。だけど、どうやらハートリーから護衛してきた商会の連中が、本気でお前を引き抜こうとしてるらしくて、お前独り残していくと絶対ろくな事にならないってクラークが言い出してさ。

結局連れて行った方が良いって話になった。

…クラークは受付嬢と付き合ってるからギルドで職員達が見聞きしてる情報を教えてもらってる。

商会の連中がギルマスと懇意で、お前のスキルの事やフェザーストンでの捜索願の事とかを聞き出してるんだってさ。不気味だろ?」

と言われた。


「…ええ〜っ…」


「…うん。心底嫌そうな顔だな。お前の方は引き抜かれる気はないんだよな?」


「そうですね。…なんか、勝手に嗅ぎ回られるとコワイ…」


(引き抜きを検討するに当たって身元調査とか素行調査とかしてる?という事なのかも知れないけど、なんかドン退きするよなぁ…)


「ともかく、ウチのメンバーの誰かといつも一緒に居るようにしておけ。独りになるなよ?」

と脅されて、コクコクと首を縦に動かし了解の返事とした。



そうこうしているうちに船が動き出しーー

心配していた船酔いは起きなかったので、その点では一先ず安心。


「海の魔物ってどうやって攻撃してくるんですか?」

と気になる事を近くにいたランドンに尋ねると


「そうだな。海の中に落ちてきた人や動物を喰う奴らだから、先ずは船を沈めようとしてくるな。

と言ってもある程度大きな船なら体当たりされてもビクともしないから、精神干渉してくるタイプの魔物も多い。

例えば船酔いなんかも自然に起こるものと魔物の精神干渉で起こるものとがある。

吐き気がすると船から身を乗り出して吐瀉物を吐くだろ?その時に大波が来て船が揺れれば船から落ちる。そういうのを狙ってるんだ。

精神干渉の場合は攻撃されてる者が攻撃されてると気付かない事も多い。

鈍感な奴だと気が付いたら死んでたって事になるだろうな」

との事。


「それは、また…」

(知らぬが仏かも知れない…)


精神干渉というのは本当に分かりにくい。


「海の魔物とはどうやって戦うんですか?」


「海戦は基本的に遠距離戦だな。大砲の砲撃、矢の射出、投げ槍、要は武器の破壊力を敵に届ける事が重要だ」


「弓士が活躍するんですね?」


「そうなるな。クラークは【弓術】スキルと【必中】アーツ持ちだから海戦では最も敵を殺してるんじゃないか?

俺は【弓術】のスキルも【必中】のアーツも持ってないから、せいぜいが人並みしか働けない。

チェスターは槍投げも得意だからそれ専用の短槍も用意してる。

テレンスもああ見えて父親が航海士で船には子供の頃から乗ってた事もあり、砲撃が上手い。めいめい自分のできる事で敵を排除できれば良い」


「投げ槍って、どのくらい飛距離があるものなんですか?」


「結構飛ぶぞ。お前が投げる石と違って細長いからな。上手く飛ばすと矢と同じくらい飛ぶ」


「私も遠距離攻撃したいんですけど…」


「投擲距離も熟練次第で伸びるものらしいから、数年も頑張ってれば矢と同じくらい飛ばせるようになるんじゃないのか?」


ランドンと話しながら不意に

(そう言えば「石弾丸ストーンバレット」魔法もグレーアウト状態ながら「使用可能魔法一覧」に名前が載ってたな…)

と思い出した。


(フォロー魔法を使った投擲の飛距離を伸ばせるとしたら、使用魔力量の出力を上げるか、ストーンバレットを【投擲】スキルのアーツに見せかけるかだろうな…)


冒険者稼業は危険が多いので、私がなりふり構わず魔法を使わなければならなくなる事態も突然降りかかる可能性はある。


不安要素の多い現実の中、私は切実に

(早く「石弾丸ストーンバレット」が解放されないかなぁ…)

と思ったのだった…。



********************



何度となく天候が崩れ、大型の水棲魔物が船に体当たりしてきたが…

船は沈む事なく安定して航海中。


(このまま無事に着いてくれれば良いけど…)

と祈るような気持ちで過ごしていたが、そのささやかな願いは襲撃者によって引き裂かれた。



「海賊船だ!」

という声が聞こえてきて、にわかに船内が騒がしくなる。


大砲の準備と火薬の準備が始まり、船乗り達が怒りとも興奮ともつかない感情に囚われて

「返り討ちに遭わせてやる!」

「ぶっ殺す!」

だのと口汚なく怒鳴り出した。


私も一応投擲で戦闘に参加は可能だが、敵が中距離に来てからの戦力なので、敵が遠距離にいる間は盾を持って並ぶ役に加わる事にする。


誰もが自分の武器を用意して戦闘に備えつつ、それでいて戦闘になる前に港に着けるように内心では祈っていた。


だが敵船の足が速くてドンドン近付いて来るので戦闘は避けられそうにないと思ったタイミングで大砲が飛んできた。

ただの威嚇と宣戦布告を兼ねたものらしく、当然当たりはしないが

「クソが!」

「ムカつく!」

「やる気満々かよ!」

と船乗り達の怒りを煽った。


「無駄玉は撃つな!全弾当てろ!」

と船長が怒鳴り声を響かせた事で応戦決定。


双方が大砲を撃ち合い、海上には雷鳴のような大音響が次々と響き渡った…。


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