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【90話】ムアミレプ王国の怪 後編


 アンジェラ女王様と、その御一行に英雄と感謝されて、はや十数分。


 おかげで、ストライキングスの効果は切れてしまった。

 

 残る『ストライキングス』は、後1回分だ。


 保険を使う事にした。


 問題はどうやって、使うかだが……




「ランディ・ライトグラム殿、ソナタ等は命の恩人じゃ、アルテシアンナからの帰路には是非とも、妾のいる『稀天宮』へ足を運んで欲しいのじゃ、盛大にもてなすのじゃ」


 あっ、足掛かりみっけ。


「女王様、ありがとうございます。 しかしまだ、完全に助けたわけではありません。 『礼』は無事に脱出してからにしましょう。 あとですね、貢ぎ物が通路の一画に放置しているんですが、一緒に通路に行って受け取って貰えないでしょうか?」


 僕の言葉に、従者達が疑問や警戒を深めた。



  「女王様、なりません! この者等、怪しすぎます!」


「ネオハイム……しかし」


 このネオハイム、割とちょろいと見た!


「ネオハイムさんと言いましたか? グランヒーリング」


「なっ。なに!」


「あなたも魔法の武器があれば、ガーゴイルを倒せるくらいの猛者と見ました」


「お、おうその通りだ」


 ぼくは、呪文の効果が切れた木槌を渡す。


「あなたが居れば、女王様は安心でしょう。一緒に取りに行きましょう」


「ま、任せろ。女王様、こやつ若輩ながらも見る目があり、誠実なようです。女王様の御身はこのネオハイムが御守りいたします。行ってみましょう」


 想像以上にちょろすぎた。



 ……

 …………


「この、糞餓鬼! 騙したな? 離せぇ 離せぇ!!」



 ネオハイムは通路の奥で、テスターに羽交い締めされている。


 僕とダナムは、女王様に接近している。

 近くには、動きを封じ込めたガーゴイルが1体転がっている。


「女王様。 貴女の女の象徴を頂きます。ダナム」


「本当にやるのか?」


 ダナムはナイフを取り出す。


「何をするのじゃ、や、止めるのじゃ、お願いじゃ、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 ……

 …………


「女王様『起動』と言ってみて下さい」


「はぁ、はぁ、次は何をするのじゃ? 『起動』」


 ガーゴイルに変化がおきた。


 《言語マースラント語、確認。生体情報、確認。防衛モード、終了。護衛モード、移行》


 予想通り、ガーゴイルが再起動したので、 封じ込めを解く。


 ガーゴイルは、女王様の前に移動して立ち止まる。


 《お帰りなさいませ、主様》


「えっ? えっ? 何? 何なのじゃ?」


「このガーゴイルを、女王様の命令で動くようにしました。本来なら指を数本使うから、髪と血で上手くいってよかったよかった」


「なっ!?」


 女王様は驚いている。


「なあ、ダナム。 ランディは戦闘能力が化け物な回復魔法使いだと、思ってたんだが……」

 

「ランディの学院成績は、礼儀作法と生活常識以外は全てぶっちぎりのトップだ。しかも、まだまだかくし球があるぞ。解毒魔法フルコンプなんて序の口だ。俺様は何が起きても驚かないぞ」


 そう言うダナムも、ランディの行動に退いていた。



 《主様、そこの人間、侵入者ですか? 排除しますか?》


「この、者達は客人だ。ただ、あの少年は軽く殴って欲しいのじゃ」


 《了解、しました》


 何言ってるの?

 やめてぇ、ガーゴイルが襲ってくるぅ。



 ……

 …………


 《主様、任務、不可能でした。お役に立てず、申し訳ありません。自壊します》


「まて、妾が悪かったのじゃ。自害しないでくれっ」


 慌てる女王様と、素手でガーゴイルを止めた僕を、ダナムとテスターが冷ややかな目で見る。


「今のは、わざと殴られてやるのが優しさだと、俺は思うんだが」


「俺様もそう思うが、ランディはそう言った空気が読めない。ランディの両親も苦労していた」


「なるほど」


 なんだ、このアウェイな雰囲気は。


 少しすると、精神浸食でもされているのか、女王様が『ガーディアン、あのガーディアンが妾の命を聞く、あのガーディアンが妾の物に』と妖しい瞳で呟いていた。


 確かに『量産型』にしては高度な作りのガーゴイルだが、興奮しすぎなんじゃないのかな。


 《主様、客人を管理者様、部屋まで、お連れいたしますか? 接待用の飲み物、あります》


「なに、そんな部屋があるのか? 妾の従者たちが奥の部屋で助けを待っているのじゃ、その者たちも連れていけるか?」


 《主様の許可、あれば、問題ありません》


 すると、ガーゴイルはドシドシと進んでいった。

 そう、僕たちが女王様達を助けた部屋に向かって。



 《侵入者発見、排除》


「ひぃっ!? ガーディアンだっ!」

「助けてくれぇ!!」


「待てっ、待つのじゃ。その者達は妾の従者だ」


 《侵入者、客人に変更》


 少し引いた所で見てると、面白いな。



「ふっ、妾はこの者達のおかげで、あのガーディアンを支配下にする事が出来たのじゃ。」


 《主様、休憩出来る、部屋まで、お連れします。飲み物あります》


「さ、さすがはアンジェラ女王様だ」

「アンジェラ女王、バンザイ!!」

「助かった、生きて帰れる」

「やはり、アンジェラ様は正当なる王だったか」

「アンジェラ様、そのお髪はいったい」

「アンジェラ女王、どうすればあのガーディアンを従えさせる事が出来るのですか?」


「それは……」

「はい、ストップ。それは言ってはなりません」


 慌てて、言い出しそうになった女王様を止める。


 そんなのが広まったら大変でしょ?

 それに、従者達を見ると女王様ほど、髪の長い人はいない。


「女王様、これは我が国のトップシークレットです(嘘)。それに、この中では女王様しか出来ない術でございます(半分嘘)」


「そうか、解ったのじゃ。よくよく考えれば、微妙な妾の立場も、改善されるほどの事なのじゃ」



 ガーディアンは僕達のやり取りは無視して、壁に拳を当てている。


 すると、地下に下る階段が出てきた。



 地下迷宮見たいで、ワクワクするぞオラ。


 しかし残念な事に、進んだ先は簡素な部屋で、シンプルなケースが大量に置いてあるだけの部屋だった。


 ほら、従者の人々も白けて……あれっ?



「ば、バカな……こ、これは」

「この、重厚かつ上品なケースは」

「「4種の秘薬!」」

「あり得ないのじゃ『4種の秘薬』は、年間に2つも発掘されれば、多いと言われるくらい貴重な遺物なのじゃぞ」


 どうやら、僕の予想を大きくはずして、大変貴重な物だったらしい。


 《飲み物、あります。どうぞ》

 ガーゴイルは、事もあろうか、その秘薬を持ち出していた。

 ガーゴイルも、その価値は解らないようだ。


 そう言えば、今まで見てきた遺跡の出土品は『判別器』『測定器』『殻に被われる物』の3つだったが、どれも『太陽の魔力』と言われる物を必要とするタイプだった。


 流石に気になったから、女王様に質問した。


「この『4種の秘薬』は、今現在たったの2国しか発掘されていない、稀少な神器なのじゃ。判別器等と違い、消費するタイプの神器で、ケースの中には秘薬が入っている。その秘薬とは、1つ、怪我を完全に回復する秘薬。2つ、魔力を完全に回復する。3つ、どんな病もたちどころに治してしまう秘薬。4つ、全ての毒を中和する。どうじゃ、聞いているだけでも痺れてくるような神器じゃろ?」


「…………ウン、ソウデスネ」

「確かに、素晴らしい遺物だが、素晴らしい遺物なんだが」


 テスターは僕を見る。


「ランディと一緒にいると『4種の秘薬』の価値が薄れてしまうような」


 そんなことはないぞ、ダナムにテスター。

 僕だって、魔力回復なんて出来ないからな。

 エリクサーだったら僕も欲しい。


「秘薬が欲しいか? 本来なら1国の国王しか手にする事が出来ない代物なのじゃが、そなたらは命の恩人どころか、大量の秘薬をもたらしてくれた大恩がある。3つ持っていくが良い」



 やった。

 価値は詳しくは判別出来ないけど、すごいものらしいから、いざって時に使えるだろう。



「なりません、いくら我々の命を救ったからと言って、国宝の『4種の秘薬』を3つも渡すなど、もっての外です!!」


 《主様に逆らう対象確認、排除》


 ガーゴイルが突然、異論を唱えた従者に切りかかる。

 なんとかその男の服を、掴んで引っ張る。

 このガーゴイルけっこう恐いです。


「ひっ、ひえぇぇ」


「女王様、早く止めないとこいつ死んじゃうよ」


「ガーディアン、止めるのじゃ。そやつは敵ではない! そうじゃよな?」


「ははは、はい、その通りです。先程の失言申し訳ありませんでしたっ!」

 




 こうして『4種の秘薬』を3つも貰って、遺跡を脱出した。


 女王様は、事情を少し装飾して話し、喝采を浴びていた。


 ただ、よからぬ気配を感じるから、ちょっとだけ確認しようと思う。


「第3レベル呪文……ディテクトイービルLVⅠ」


 ここまでは小声で、これからは大声で話す。


「私が、アンジェラ女王様救出作戦を成功させたランディ・ライトグラムです。 今回名誉ある任務を成功させた事を誇りに思います!」


 僕にも、感謝等の叫び声が浴びせられた。

 でも、見ましたよ。


 この瞬間、僕に対して敵対反応を表示した3人を。



 ……

 …………


 女王様一行と別れる時に、この3人に注意するように進言した。


 女王様は、夫の信頼ある人物だからあり得ないと言っていたが『カマをかけてみたら』と言っておいた。

 後は、自己責任だからな。



 こうして、僕達はアルテシアンナに向かって旅を続けた。


 因みに道中、消費するはずのお金は、支援物資の追加と共に増やしてしまった。





【教えてランディ先生】


今日は【遺跡】と言われる場所から出土されるオーパーツの話をしましょう。


今まで、判明してるのは

素質をみる、判別器。

強さを計る、測定器。

体力を失うと殻で被われる、卵

遺跡を守るガーディアンを安全に通過出来る、通行器。

様々なマジックポーションが入っている、4種の秘薬。


そして、裏設定の

『鋭利なメス』

『開墾説明書(米の章)』

『開墾説明書(養殖の章)』

『開墾説明書(樹の章)』


等がありまして、開墾説明書はターベールやアルテシアンナにしか出土していません。


さて、何か素敵なオーパーツがあったらドシドシていあんしてくださいね。


でも【水晶のドクロ】とかは要りません。

m(._.)m




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