【84話】王宮騎士‐ロイヤルナイツ‐
なんか、長くなってしまった
僕は、名前も知らないおっちゃんたちに、連行されている。
完全に敵意を殺して来たから、あっさり捕まってしまった。
手練れだ! だが、名前まで知らないけど、見知った顔だった。
でも、いつ見たんだろう……それが思い出せない。
じっくり見ると、僕を心配しすぎて怒ってるような感じがする。
そう思うと、力業で振りきって
逃げる気にはならない。
大人しく連行されようと思った。
きっと悪い事にはならない。
……
…………
そう思ったのに、どうしてこうなった?
状況に流されるままにしていたら、王宮騎士『十傑』の1人とタイマンをはる事になってしまった。
日頃の行いのせいか?
最近やり過ぎたのは、独りで盗賊を80人始末したくらいだが。
大した事はないんだよ?
本当に狭い通路、荷車がギリギリ通過出来る場所に、ハンマーを持って待機しまして、飛び道具対策での『プロテクションノーマルミサイル』の呪文を使っただけなんだ。
あっ『オグルパワー』も使ったかな。
あの時、黒尾騎士団の2人は『えっ? 竜神の加護?』って不思議そうにしていたな。
力でなぎ倒し、弓矢も効かない、当然ナイフも効かない、2人ほど攻撃魔法使いがいたけど、僕の体力の前では、だだの温風ドライヤーだ。
終いには『殺られるなら、人間に殺られたい!』と言って、反転して騎士団に突っ込んで行ったもんな。
まっ、回想は終わりにして、おっちゃん2人に連れていかれた先は『ロイヤルフォート』と呼ばれる、王宮騎士団の本拠地。
その一角に、十体の豪華な鎧像が飾られている。
足元には名前が付いた立札があって、その中の一体には、なんとリッツ教官の名前があった。
ロイヤルフォート内は、王様も遠征してないせいで、本拠地には多くの王宮騎士がいました。
何人かは、僕を見ると『ギョッ!?』と、している。
僕、何かしました?
~~
ランディは、2年半前に王宮騎士団を、煮込んで笑っていた事は、忘れていた。
おまけに、1年半前の八武祭で、ランディの争奪話があった事は、当然知らない。
~~
なんか、僕にお菓子を出したまま放置して『国王に連絡を』『入隊届にサインをさせよう』『団長に報告しろ!』『その前に部隊長を、探せ』『ジョーシンさんは何処だ?』
あまりにも外野がうるさいから久しぶりに、神経を一点に集中させよう。
そう、お茶菓子に……
旨い……甘みは足りてないが、素材が良いと見た。
そう、戦士で例えるなら『訓練も教育もしていない天才』そんな言い方だろう。
技術と他の材料があれば、もっと上を目指せるのに。
「……ダーナス…………ダーナス!……ランディ・ダーナス!!」
「はい? 今呼びました?」
ドッと皆に笑われてしまった。
どうやら高級菓子に夢中になっていたと思われたっぽい。
間違えてないけど……
僕を大声で呼んでいた人は、やはり見覚えがある。
「ああっ、えっとなんだっけ?」
「私は……」
「待って! 今思い出すから……えっと、えっとぉ」
思い出だせランディ、あの時王様の近くにいた王宮騎士だ。
すごく印象に残った名前だった。
2年以上前とはいえ、これを忘れては僕の名が廃る。
たしか、たしか、そうだ!
某電気屋さんに似ていたんだった。
「えっと、ヤ○ダさん?」
「全然違うわぁ!!」
突然襲いかかろうとした、ヤマ○さん(仮名)に数人が止めに入る。
「分団長、抑えて! こいつはそう言う奴です」
「ジョーシンさん、冷静に」
「ジョーシン、落ち着け!」
あっ思い出した。
八武祭見学に行った時、道中で見つけた『ジョーシン』さんだ。
「あっ、思い出した。ごめんなさい、ジョーシンデン……ジョーシンさん」
ジョーシン○ンキに謝っていたら、他の騎士より少し装飾の豪華なスキンヘッドの人がやって来た。
「ハッ、こんな小僧が、スクット・リッツの弟子だと? ふっあの『戦闘狂』も、落ちぶれたな。知っているぞ、今やあの『戦闘狂』は『居眠り教官』と呼ばれているのを」
う~ん、彼はいったい何年前の話をしているのかね?
でも僕の事は兎も角、リッツ教官の悪口は聞いて、いい気分じゃないな。
すると、この人はさらに調子に乗って喋り出していた。
「もう分かった、歴代十傑のリッツはバハムナイヤーと、取り替えるべきだ。連携が取れずに引退して、教官をしても『居眠り』の異名。それから数年、もはや生徒を生意気にさせるほど衰えているのだろう。王宮騎士の名を汚す老いぼれは、もう抹消するべきだ!」
そう言って、脇からナイフを取り出して投げ、十傑像にあるリッツ教官の立札を破壊した。
リッツ教官は僕の運動不足解消と肉体成長の師匠だ。
彼のおかげで、この肉体はバッチリ成長したんだ。
そう思ったら、口が滑ってしまった。
「ねぇオジサン、僕がリッツ教官の戦い方を再現してあげよっか?」
「なんだとっ!?」
「反射速度の完全再現は無理だけど、そこそこ真似は出来るから、リッツ教官がどの程度か見てごらんよ」
「騎士の最高峰『王宮騎士団』の前で、よく言ったな小僧! しかもこの私に向かって!!」
ひえぇぇ、スキンヘッドに血管が浮き出てきた。
しかも、半端ない。
マスクメロンみたいになってる、どれだけ血管を浮き出すのさ、恐ぇよ。
……
…………
練習用の木剣を貰って、数回素振りをした。
力は3割ていど抑えて、その分早く振るように意識を傾け、調整する。
速さ関係の至らないところは、先読みと攻撃時の、予備動作を極力減らせば、対戦相手だけなら騙せるかな。
うん、これならリッツ教官の真似事くらいは、出来そうだ。
もちろん、肉体強化前のリッツ教官だけどな。
準備が出来て、相手を見るとマスクメロンがハネージュメロンになっていた。
浮き出た血管が、すっかり消えたってことね。
で、手甲と胸当てを装備し出した。
あれれ、油断が微塵もないようなんですが?
この人って、大人げない人なの?
僕にも同様の装備を渡してくれたから、装備して構えた。
「お前が強いことは判った。だが、本当にあの男の真似が出来るか見てやる。来い!」
そのまま、スキンヘッド……スキンにするか、スキンに向かって、攻撃を仕掛けた。
リッツ教官とは2000回以上も対戦した。
僕はアーサー達との戦いを禁止してるから、生涯で一番多く戦った相手かも知れない。
リッツ教官の戦いを真似るように腕を振りまくる。
マスクも防戦し続けているが、攻撃が入らない。
手の内を読まれているかんじだ。
対戦相手に手応えがあると、笑って手数を増やす。
もちろん僕も笑って、ギアを上げる。
「あれは……」
「我が国の、正統剣術に手数を割り増しした『人神の加護』持ちの、王宮騎士の戦い方そのものだ」
「しかも、あの癖はリッツさんに似ている、バカな……」
「攻撃が通じないと判って、笑顔になった。あのスクット・リッツにそっくりだ」
はい、楽しむ相手を見つけた時のリッツ教官を再現してみました。
でも、スキンは動揺しながらも、僕と互角に打ち合っている。
「バカな……これは確かにあの人の戦いだ」
リッツ教官の呼び方が、あの男からあの人に変化した。
「これが、今のあの人!? 引退前と同じ? いや僅かに強い!」
スキンも、攻撃に転じた。
速い速い、動きが読めていなかったら追い付けない。
身体能力も剣術もリッツ教官と同じだ。
ただ、違うのは楽しそうじゃないことかな。
スキンは真面目に戦ってる。
「バカな、副長と互角だと!?」
「いや、副長は肉体強化魔法を使っていない」
「まてよ、相手は子供だぞ。子供相手に強化魔法を使ったら、それこそ負けた様なものだ」
外野の声が聞こえるが、戦いに集中集中。
「あの人は、真面目に働いてるのか?」
スキンが戦いながら聞いてくる。
リッツ教官の真似をしながら戦ってるから、喋るの大変なんだけど。
「真面目って、言うか戦ってばっかりです。でも、教え方は間違っていません。1度見るべきです」
「『居眠り教官』じゃなかったのか?」
「そんなの3年前の話です」
「あの人は、素でここまでやるのか?」
肉体強化なしって、事かな。
「気持ち強いと思います。話ながらだと再現しきれません」
「あの人の肉体強化は見たか?」
「はい、『8段階』まで強化すると、もう化け物ですね」
「なっ 今の私と同じだと!? ……そうか、あの人は腐っていなかったか……しかも肉体強化をしたあの人と戦ったのか?」
この人も、肉体強化有りですか。
王宮騎士ってスゲー、リッツ教官クラスがゴロゴロしてるよ。
「あの人の強さは、解った。次は君の強さを見せてくれないか? ふん!」
僕を手甲越しに、思いきり殴り飛ばした。
まさか……
「肉体強化魔法を使った。さぁ来なさい」
木剣じゃ、僕の技を充分に見せられないけど、行くよ。
バシッ
「なっ!」
力は乗せてないが、腿に木剣を命中させた。
「は、速い……しかも、巧い」
巧いって僕の戦い方を理解したの?
普通の人は『見えない』って言うのに。
「そんなに速かったか?」
「いや、戦い方を変えてからは、僅かに遅くなったような」
「まさか、副長の意識をずらして戦ってるんじゃ」
「バカな、副長相手にそんな真似が、50年は剣を振り続けていないと出来ないぞ!」
10分も戦い続けてると、徐々に対応されてきた。
僕の動きが読めない時は、速度を生かして後ろに下がって、僕を見るようにしてる。
でも、その距離なら僕に回復魔法を使うタイミングが増える。
「エクスヒーリング」
「しまった! 回復魔法も使うのかっ」
僕とスキンの戦いは一時間以上かかった。
結果は引き分けって事になったけど、やられた感がする。
やはり、このリッツ教官クラスと戦うには、武器を得意な物にするか、呪文を2つくらい併用しないと勝てないのが解った。
その後、副長のスキンさんにリッツ教官の話をしてあげ、王宮騎士になれるようにするって言われた。
「ランディ・ダーナスよ、認めたくはないが『王宮騎士団十傑』にいきなり入れる強さだ。このまま騎士として邁進すれば、来年には王宮騎士団No.2になれる」
そう言えば、さっきから僕のことを『ランディ・ダーナス』って言ってるけど、今の僕を知らないのかな?
「あ、あのう……僕、王宮で、ロベルト王子の家庭教師をしている『ランディ・ダーナス』改め『ランディ・ライトグラム』です。爵位は『男爵』です。よろしくお願いします。だから、王宮騎士団には入れないかも知れないです」
「な、何ぃ!?」
「何だって!?」
「き、聞いてないっ」
「なんだとっ!」
まあ、凄い驚きようだった。
……
…………
その後、国王と特務隊と王宮騎士団で、壮絶な口喧嘩をしていた事件があったのを、僕が『王宮騎士、非常勤訓練官』になってから知りました。
王宮騎士「国王! あの、ランディ・ダーナスを保護しました」
国王「えっ? あ、ああ……そうか」
第2王子「……ちっ、もう見つけたか」
王宮騎士「?? はっ、それで保護ついでに、ランディ・ダーナスを我が王宮騎士団に」
国王「実は……もう彼を引き取って『ランディ・ライトグラム』に、改名したんだ」
第2王子「しかも、就職先は特務隊だ。お引き取り願おう」
王宮騎士「我々に、だまってなんて事だぁ!!」




