【82話】続、クレリック呪文
僕と黒尾騎士団の皆さんは、人数が不特定多数の盗賊と戦うはめになった。
騎士団は、人数の差に怯んでいる。
「おい!今はまだ、大した差じゃない! 怯むな!」
幸いな事に、まだ盗賊の大半は、小屋の外に散らばっている。
「ランディさん」
「ボス」
「Gさ、ランディさん」
「ボス」
「兄貴」
「ランディさん」
はい、『兄貴』と言った君、今の僕は君たちより、年下ですからね?
それより、1人だけ失礼なやつがいましたね?
本当に怯んでるの?
「心配するな、僕の肉体強化魔法を重ね掛ける。第3レベル呪文……ゴージャスブレス。 もういっちょ! 第5レベル呪文……ストライキングス。行けぇ! 今の君たちは強い!!」
黒尾騎士団の皆さんは半信半疑で戦いに出た。
ああバカ……ゴージャスブレスでは攻防命中率の上昇は10%だ、そんな生半可な動きじゃ勝てないだろ!
お陰で初撃が命中するまでは、お粗末な攻防を繰りかえしていた。
僕の『ストライキング』の効果に気づいた時には、普段通りの動きに戻って、盗賊を圧倒し始めた。
騎士団が1回攻撃を受けると、2回は攻撃をやり返す。
しかも、与えるダメージは約2倍。
盗賊達が、このまま戦うなら押しきれる。
「貴様ら焦るな! 相手がその程度なら2人がかりで、じっくり攻めろ! こっちは20人で来てんだ! そして隙を見て、女子供を人質にしろ!」
盗賊も、そんなにバカじゃないが、人数を漏らすところがお粗末です。
「第1レベル呪文……マジックストーン」
ゴトゴトゴト……
騎士団の実力では2対1だと、負けそうなので『マジックストーン』で援護する。
「グランヒーリング。エクスヒーリング。僕の魔力総量は2000を超える。安心して行ってこい!」
怪我の酷い者にグランヒーリングをかけ、そうでない者にはエクスヒーリングを使う。
「ボス」
「ボス!」
「ボス……」
「ボ、ボス」
「ボスッ」
「ボス!?」
「勝てる……他人にかける肉体強化魔法に、伝説のギフト魔神の愛。行くぞ!!」
「おお!」
「おお!」
「おおっ!」
「おおっ!」
「おお!!」
勝手にギフトを勘違いされ、いつの間にか『ボス』に統一されてるが、突っ込む余裕はない。
みんなの怪我を治しつつ、マジックストーンで盗賊の連携を崩す。
さらに、マイちゃんを守りながら、指示を出す。
なんか1年以上前の『八武祭』を思い出した。
でも、盗賊も騎士団も『八武祭』で戦った少年たちよりも、確実に弱い。
だが、今は実戦だから、手を抜かずに叩きのめす。
「おい! あのガキはおかしい、4人で押さえろ」
この小集団の頭っぽい男は、いい判断をする。
だけど、騎士団から抜け出して、僕の所まで来たのは2名。
分かりやすい動きで、剣を振ってきた。
盗賊の腕を掴んで軌道を変え、剣先をもう1人の盗賊に向ける。
「ぐあっ」
味方を斬って、動揺したところをたたみかけて、無力化する。
気付くと、盗賊は小数になっていた。
「不味い、こいつらバケモンだ! 逃げろ!」
盗賊は敗北を悟った瞬間、反転して逃げ出した。
ゴッ!
盗賊の最後尾のにマジックストーンを投げて、後頭部に命中させる。
「2人はここで待機、残りは追うぞ!」
外に出ると、逃げ行く盗賊は3人だけだが、速い速い。
バラバラに逃げられたら、さすがに誰かには逃げられるな。
「先に行くから、全力で追いかけろ! 神速」
「えっ!?」
「なっ!?」
「速すぎる」
「まさか、人神の加護?」
僕の神速は、効果時間は短い。
だけど2人の盗賊には追い付き、脚を蹴って転ばせた。
この転倒した2人は、後続の騎士団たちに任せよう。
最後の1人に追い付くのは、時間がかかったが縛られている女性と馬がいて、盗賊と思われる男が視界に入った所で追い付いた。
「おい、早く加勢に来い! このガキはバケモンだ!」
この盗賊の間違った台詞で、僕の勝ちは決まった。
もし『このイケメンは、強すぎる。 逃げろ!』と言っていたら、逃げられたかも知れないのにね。
1人ずつ始末して、女性2人を助けて。
盗賊の拠点に戻った。
◇◆◇◆◇
僕は別の小屋で、尋問の準備をしている。
盗賊たちが残した物品を使ってお湯を沸かしている。
クックックッ、耐えられるかな。
お湯が沸騰したな……さてこれに耐えられる盗賊は何人いるのかな。
縛られた盗賊と、騎士団、囚われていた娘3人が同じ小屋の中にいる。
なぜ分けなかったかと言うと、面倒な上に、そういった空気は読めないからだ。
僕は扉を蹴破り、宣言する
「さあ、尋問開始だ!」
……
…………
「旨い! 旨いっすよ」
「こんな、旨いもの食べた事ない!」
「ボス、俺ボスの下で、働きたいです」
「ちぢれた、極細の食材なのに、食べごたえがあって、ものすごく旨い」
「いや、それよりこの汁が素晴らしい」
「俺、騎士団辞めて、ボスの配下になる」
「もうちょっと自分の仕事に誇りを持とうよ?」
騎士団の1人に突っ込む。
「私は、父も母も殺されてしまいました。他に行くところがありません」
「私、一生懸命働きます。雇ってください」
「ズズズ……ハフハフ、モグモグ、ゴックン」
貴女たちも、先程まで不幸のドン底にいましたよね?
メンタル強くないですか?
「……ゴクリ」
「ゴクッ」
「グウ~」
「ギュルルル」
盗賊たちだけですよ、予想通りの反応してくれたのは。
どうですか? ランディの秘奥義『チキ○ラーメン』の味は?
クリエイトフードフリーで、完成品をいきなり出してしまうと、麺が伸びちゃうから、ビニールパックに収まってる状態で召喚したら、250袋も出てきた。
僕のクリエイトフードフリーは冒険者50人前だから、1人あたり5パックは食べる計算になる。
僕は縛った盗賊の目の前で、チキンラー○ンをすする。
「くう、旨い! 」
久しぶり過ぎて涙が出てきた。
十数年ぶりだからな。
「そ、そんな旨いのか?」
「食べる?」
「うっ……良いのか? だが口は割らんぞ?」
「勿論です、尋問される側にも、食べる権利はあります。どうぞ」
少量だか、盗賊たちにも『チキ○ラーメン』を食べさせた。
……
…………
「さて、君たちの口が堅いのは、解ってるけど、君たちの行く末は、良くて犯罪奴隷、悪くて拷問の後に死刑だと思う」
「……」
「……」
「……」
「くっ……」
「でだ、この際、僕の所で犯罪奴隷になるやつはいるかい?」
「は?」
「?」
「えっ?」
「……?」
「勿論『犯罪奴隷』だから、徹底的に働かせるし、扱いも悪いだろう。しかし食事だけは別だ」
「はっ」
「!」
「なっ!」
「ま、まさか」
「そうだ『チキンラー○ン』級のメシが、定期的に食べれる。そうだな僕が不在な時は無理だが、居る時になら3日に1回は、提供しよう」
「なる、お前……ランディ様の奴隷になる」
「なっ!? それなら、おれだって」
「だけど、お前にそんな権力があるのか?」
「飯の話は魅力だが、信じられん」
「別に信じてくれなくても構いませんが、後で1人ずつ別の小屋で聞き取りをします。でも、僕の爵位だと、2人が限度だから後の2人は普通に処理するから。 あっ汁も飲む?」
……
…………
こうして、僕は盗賊からとんでもない情報を手にした。
裏でこんな繋がりがあったとは。
僕はどっちに動けばいいのだろうか。
……よし! 決めた
「黒尾騎士団よ、君たちの内4人は、盗賊2名と被害者3人を連れて、グランデール伯爵にこの事を報告してくれ。 残りは僕と一緒に別行動だ」
僕はバチバチと両頬を叩き、気合いを入れて出発した。
黒尾騎士団「ボス、あの小屋には何があるんでさひか?」
ランディ「チキン○ーメンを隠してるんだ、盗賊を殲滅し終わったら、取りに戻らなきゃ」
黒尾騎士団「ゴキュ(唾を飲む音)」
ランディ「あっ、運ぶの手伝ってくれたら3つずつあげようか?」
黒尾騎士団「一生付いていきます!」




