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【81話】クレリック呪文

 さあ、行きますよ。


「スーパークレリックランディ、奇術士モード」


 僕は身を屈ませて、華麗に茂みの中を進んでいく。


「ランディさんの動き、蜘蛛に似てないか?」

「いや、それより『(ゴキ)』に似ていた気がする」

「あの姿勢で、あの速度……凄いを超えてキモい」


 ……今の、言葉は聞かなかったことにしよう。

 でも、心にグサリときました。


 岩場に近づいてから、2回呪文を使った後、背中に収めてる棍に指をそえて、さらに呪文を唱える。


「第3レベル呪文……ハイディングミネラル。第5レベル呪文……トゥルーサイト。第2レベル呪文……サイレンス」


 これで、鉱物内にもぐって移動が可能になり、僕から半径10メートルが検索範囲になって、この棍から半径5メートルが、無音空間になった。

 この呪文発祥の世界ですら、発動した『サイレンス』の解除は、ディスペルマジックかアンチマジック、ウィッシュまたは『時の早送り』しか方法がない。




 目指すは岩場高台にある見張り台。


 本来『ハイディングミネラル』は壁や岩等の鉱物に隠れるはずの呪文だから、移動にちょっと手こずった。


 高台に登り終ると、意外に広いスペースがあった。

 茂みの中からは見えなかったが、干し肉をクチャクチャかじりながら、暇そうにしている盗賊がいた。


 《フォーゲイ、男性、盗賊 レベル3 HP125 年齢32》


 弱い……が、弱すぎではないか。

 盗賊だって確認出来たし、早速ゲイさんに行動不能になってもらおう。




「…………!? …………! ……」

(急に静かに!? なっ声が出ない! ゴアッ)


 ゲイさんの頭を、限界を超えた角度まで捻って、手足の関節を外してから、喉を潰して完全に落とす。


 ふう、どうも相手が武器を所持してないと、殺意がわかないな。

 今の強さで、この甘さは弱点になりかねない。

 まあいっかぁ、後味悪い殺しをするよりは、ましだよな。


 辺りを見ると、鐘や拡声器とかいった敵を知らせる物がない。

 代わりにあるのは、干し肉、ぬるい安酒に赤と白の旗だけだ。


 いったい何をするつもりだったんだ?


 それに、思ったより見晴らしが悪い、下を見張るには、不向きな位置だった。


 喉を潰したのは失敗したかな、と思いつつ小屋の攻略に向かう。



 小屋から5メートル離れて、盗賊たちが部屋の中に何人いるか、じっくり歩いて確認する。


 《ブルギック、男性、盗賊 レベル3 HP121 年齢32)》

  《マルナイル、男性、盗賊 レベル4 HP118 年齢35》

 《ガヤリー、男性、盗賊 レベル4 HP137 年齢30》

 《ドルガ、男性、盗賊 レベル5 HP185 年齢29》

 《モーズ、男性、盗賊 レベル6 HP300 年齢38》

 《マイオニー、女性、一般人 レベル1 HP23 年齢24》


 3つの小屋の内、2つは空き家だったが、気になるのは一般女性のマイちゃんだ。


 盗賊男性5人の中に、一般女性が1人なのは、明らかにおかしい。

 しかも、僕の常識内の1レベル一般女性のHPは、25から50だ。

 何らかのダメージを受けている可能性が高い。


 僕は覗きに行くために『無音空間』を発する棍を小屋の範囲外に置いて、盗賊のいる小屋に近づいた。


 部屋の中では、 半裸の女性(マイちゃん)が無理矢理、接待の真似事をさせられていた。


 半裸の女性(マイちゃん)は殴られたようなアザがいくつも見受けられ、その瞳は赤く腫れていた。

 しかも、女性(マイちゃん)には、ロープが『腰』『左手』『右足』にくくりつけられていた。


 盗賊の内3人はそのロープを引っ張り遊んでいた。

 2人は武器を手にしたまま、くつろいでいる。


 ブルギックに酒を注いでいる途中に、ガヤリーがロープを引っ張って転ばせた時に、マルナイルが口を開く。

「酌も満足に出来ないのか、お仕置きだ」


 マイちゃんは、ビクンッとしながら泣いて許しを乞う。


「ひっ! ゆるして、痛いのはもう嫌です、あぁ助けて……」


 僕はこの時、転生後初めてキレた。

『僕』が『俺』になった。


 だからと言って、強くなったり、人格が変わったりはしない。

 遠慮がなくなるだけだ。


 俺は振り返り、棍を上空高く投げた。

 棍が高く上がったため、無音空間がいったん消えた。


「第1レベル呪文……マジックストーン」


 高威力の魔法の石を数個拾うと、地面に棍が突き刺さる。


 拾ったマジックストーンを、小屋の壁に思いきり投げ、穴が開いた壁に棍を投げ入れる。


 盗賊の叫び声は一瞬で消えたことだろう。


「第1レベル呪文……リバース……ダークネス」


 光を灯す魔法の、リバーススペルを使った。


 さあ、無音空間に完全な暗闇……慣れていなければ対処できまい。


 俺にはトゥルーサイトがある。

 だから、盗賊のいる小屋に特攻した。


 トゥルーサイトじゃあ、姿形までは判別出来ないが、位置は特定できる。

 マジックストーンを盗賊目掛けて投げまくる。


 うまく急所に当たらないようで、盗賊のHPがなかなか減らない。



 《ブルギック、レベル3 HP0 》

 《マルナイル、レベル4 HP88》

 《ガヤリー、レベル4 HP0 》

 《ドルガ、レベル5 HP125 》

 《モーズ、レベル6 HP185 》

 《マイオニー、レベル1 HP20》


 思ったよりダメージは与えられなかった。

 それより、危害を加えていないマイちゃんのHPが減ってる。

 この状況でパニクって、転んだと見た。


 盗賊マルナイルと盗賊ドルガが、出口近くに移動している。

 盗賊モーズはマイちゃんに近い場所に動き始めた。


 不味いと思った瞬間、トゥルーサイトの効果が切れた。

 さらにその数秒後には、サイレンスの効果も切れ、悲鳴を上げているマイちゃんの声が響いた。


 呪文を使いながら、マイちゃんの間に入るように移動する。


「第1レベル呪文……ライト、ブッ」


『ダークネス』の効果を『ライト』で打ち消した瞬間、何かに躓き転んだ。



 今の部屋の中の構図は、半裸でパニクるマイちゃんと、武器を持っている盗賊モーズの間に、鼻血を垂れ流している、丸腰の美少年ランディがいる。


 残りの2人は、外に出たようだが、味方もやって来ている。



 盗賊モーズも混乱していたが、俺を見て即座に襲いかかってきた。


「とりあえず、死ねぇ! クソガキィッ」


 盗賊モーズの攻撃を半身をずらして避けながら、呪文を使う。


「第3レベル呪文……リバース……シリアスダメージ」


 回復呪文『シリアスヒール』のリバーススペルだ。

 第2レベル呪文の『ダメージ』でも、殺せそうだったが、確実に死んで貰うため第3レベル呪文を使った。


 血を噴き出して倒れ行く、盗賊モーズ。

 苦しむ時間が短い事を、幸運に思うんだな。



 小屋の外では、戦闘してる音が聞こえる。

 相手は手負いで2人だ、無事に勝てるだろう。


「貴女はもう自由です」

 何か羽織る物を探して、キョロキョロしていたら、半裸のマイちゃんが飛び付くように抱きついてきた。


「うわぁぁぁん!」


  不意を突かれたけど、本来なら避けることは出来た。

 が、揺れ動く2つの丘に、心を奪われ動けなかった。


 ランディの危機回避能力より、男の本能が勝った瞬間だった。


 柔らかな膨らみを堪能しながら『俺』は『僕』に変わった。


 変わったって言っても『悪・即・殺』から『悪者でも無抵抗な奴は殺したくないな』程度の変化だけどね。



 ◇◆◇◆◇


 マイちゃんに適当な服を着せて、回復魔法『ヒーリング』を2回使って見た目だけは、元気にさせた。


 見張り台にいた盗賊ゲイを、少しだけ回復させてから、ネチネチ説教する。


「女性を拐って犯すなんて、知性の欠片もありませんね。あなたは人間ですか? 盗賊になんかならないで、人間やめましょうよ」


「イギッ……う、うるせえ……イデッ」


 僕は説明の節々で、盗賊ゲイの腕をつねる。


「だいたい、古来より女性としたかったら、3択しかないでしょ?」


「えっ? 3択っ何ですか、ボス」


 僕は、いつからボスになったんだ?


「そうですね。まず1つ! 種としての強さを見せます。力でも、頭脳でも構いません。2つ! 金を渡してお願いします。簡単でしょ 3つ! 土下座をしてお願いするんです。もっと簡単でしょ?」


「……」

「……」

「……」

「口説くとかは?」


「それが土下座でしょ?」


「プレゼントして、デートして、楽しく会話して、いい雰囲気になったら、自然に出来るんじゃ?」


「そんなチートなレアスキルを、みんな持っているとでも?」


 そんな、英雄級のスキルの所持者が身近にいるなら、見てみたいもんだ。


 僕が考えこんでいたら、ふと外から異様な気配を感じた。


 しかも、敵意を感じる……それに、近い!

 敵か? もう来る。


「マイちゃん、部屋の隅に行って、騎士団の皆さんは戦闘準備! 敵が来る!」


 僕の慌てた声に、直ちに武器を手に取るみんな。


 だが、ちょっと遅かった。


 戦闘準備が充分な盗賊達が、扉を蹴破って入ってきた。


 何故、いきなり敵だと判ったんだ?


「やっぱり、居眠りじゃなかったか」

「おおい! こっちに敵が居るぞ!」

「いや、この人数差ならカモだ、やっちまえっ」

「何人か生きたまま捕らえて、奴隷にして売れ!」


 しまった。

 高台にいた見張りは、敵を見張るためじゃなくて、味方と連絡を取るためだったのか。

 見晴らしの悪さと、紅白の旗の意味がやっと解った。


 僕1人なら、何とか対処できるが、マイちゃんや騎士団はそうはいかないな。


 僕と黒尾騎士団は、人数不明の盗賊と戦う事になった。




ガル「今回ランディの自分の呼び名がかわりましたが、たくさんある小説ように、強さはかわりませんし、性格もそんなにかわらないんだな」


カーズ「そうなんですよ、私たちはガルと違って、拷問が苦手ですから」


アーサー「でも カーズ ムカつく 地獄 直接 送る」


ガル「あと生きたまま、マジックアイテムの材料にするよな? あれは18禁ものだぜ」


カーズ「毛皮のコートや、本革のバッグを持ってるような物です」


ガル「つうわけで、ランディ『俺』なっても、俺様の次に優しい男って事だな」


アーサー「異議 有り」

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