【79話】盗賊退治
1日遅れてすいませんでした。
ある見晴らしの良い場所に、非常に大きく豪華な屋敷があった……
その中の私室の1つに、齢60を過ぎてなお威厳を放つ男が、酒を飲みながら、執事と思われる男性の報告を聞いていた。
「シーム、ライトグラム准男爵はどうなのだ? 」
シームと呼ばれた初老の男は、羊皮紙を見ながら答える。
「はい、ロベルト王子の教師をしながら、順調に盗賊退治の出撃回数を増やしています。このままだと1年と少しで、男爵の位を得るかと思われます」
「そうか、ライトグラム家の名を貰う以前の准男爵の記録はあるのか?」
「はい、そ、それが、間者が調査した所『特務隊』に行き着いたので、ただちに調査は中止させました」
「特務隊!? それは仕方ないな。あれは国王のためならば、誰でも殺す集団だ。首を突っ込みすぎるとこちらが危ない。次回の盗賊討伐は大規模になるだろう、と言った情報があったな。此度の討伐隊司令官はグランデール伯爵だったか」
「はい、そのように聞いております」
「ならば、要らない者共を数名、ライトグラムに付けよ。そして、書簡をグランデール伯爵に送れ。中身はこう書け。『ライトグラム准男爵に、下級騎士を数名つけよ。戦死しても構わないので、活躍の場を与えよ』とな」
「はい、畏まりました。それで刻印は使用されますか?」
「そうだな、こちらの頼みを無視されないよう『寄子』ではなく、私の家紋を使おう」
◇
◇
◇
何回か、盗賊退治の仕事をこなしていくと、大討伐と呼ばれるイベントが発生した。
なんか、ゲームの世界みたいでワクワクする。
今回はちょっと遠くまで行くので、家族達に挨拶をしてから出かける。
「父さん、母さん。遠征に行きますので、子供達を頼みますね」
「「「お願いします」」」
「「「お願いしまぁす」」」
「「「「お願いしますっ」」」」
「「「お願いちます」」」
実は、闇奴隷に堕ちるはずだった子どもを数名増やして、さらに家族が増えていた。
新旧の子ども達も、すっかり僕やロイエン、クラリスになついている。
そう、僕はあの時の奴隷商人を有効活用しているんだ。
少しだけ回想しよう。
~~~~~~
『おい! 奴隷商奴隷』
『ひぁい! 私はカッティ・ドーンでございます』
『これから、死ぬやつに名前なんか要るのか?』
『ひぃ!? ごめんなヒャイ』
『お前の寿命は、マイナス2年だ。だが、子どもを奴隷にしている非合法な奴隷商人を証拠付きで差し出せば、プラス1年。そして子どもを保護したらプラス3ヶ月の寿命をやろう。猶予期間は1年間だ。そして、自分の寿命を勝ち取れたら、ちゃんとした名前で呼ぶことにしよう。カツ・ドンよ』
『あの、カッティ・ドーンですが……』
~~~~~~
そんな訳で、貰った大きな屋敷も、空き部屋は半分くらいになっている。
「セナリース、カツ丼の監視を頼むね」
「任せなボン。しかしな、アイツの名前を聞くと食欲が湧くのは何故だ?」
それは、教えられません。
あと、少ししたら本物のカツ丼を食べさせてあげますから。
僕の感覚だと、遠征が終わる頃には、たぶん……
◇
◇
◇
オステンバーグ公爵の管轄地域のフォーレン領に入った。
250人もの大部隊となる討伐隊で200近くの兵が、騎士と呼ばれる役職だった。
この大部隊を束ねるのは、盗賊退治には定評のあるって聞いた、グランデール伯爵。
そんなグランデール伯爵に、僕は呼び出された。
「ランディ・ライトグラムです!」
「ご苦労、ランディ准男爵。そのイスにかけたまえ」
木製のボロくも頑丈そうな椅子にすわって、グランデール伯爵の話をきいていた。
そして、話は本題にはいる。
「ランディ准男爵は、年齢とは不釣り合いな実力を発揮すると聞いた。それでだ、戦局には関係ない地点にある山小屋に少数の盗賊が潜伏していると情報を入手した。ランディ准男爵には用意した兵、6名をもって、盗賊の殲滅をやって貰う」
「はい! 分かりました」
「うむ、途中までは道案内をつける、戦局に影響なくとも、この任務を成功させれば、名を売る良い機会になるだろう。今夜は本隊の天幕で泊まるとよい」
「はい! ありがとうございます」
「夜まで時間があるな、ランディ准男爵に与える兵を案内しろ」
「はっ!」
天幕の入口で、置物の様に立っていた人が声を発する。
そこい居たのは分かってるんだけど、ビックリしてしまう。
この後、僕が預かる人たちの所まで来て、自己紹介をしたが、みんな若かった。
なんでも『黒尾騎士団』の新人騎士らしい。
しかし、案内人がいなくなった直後、新人騎士に罵られた。
『こんな若僧の下に就くのか』
『青二才の配下なんて命がいくつあってもたりねぇ』
『乳臭い子どもに何が出来るんだ!』
『俺が反対に、クソガキの面倒を見てやる』
と4人ほど食って掛かってきたんで、相手をすることにした。
「おい、僕に暴言を吐いた小坊主、4対1の決闘を申し込む。 僕が勝ったら、謝罪して明日から真面目に働けよ?」
すると4人は、顔を真っ赤にしてヒートアップしていた。
「この、ガキんちょがぁ!」
「ボコボコにして謝らせてやれ!」
「痛い目にあわせて、便穴に突っ込んでやる!」
「実力だけで、のし上がってきた黒尾騎士団をなめるなぁ!」
えっと、実力でのし上がってきたのは、君たちの先輩じゃないの?
そして、僕を半円で囲むようにしている。
「ふっ、後悔するなよ?」
4対1は失敗だったかも知れない。
だって、隙だらけなんだもんなぁ。
でも、僕は油断しない。
もし、こいつらがそこそこの実力者ならば、侮れない人数差だから。
僕の装備は棍、相手は鞘を付けたままの剣だ。
4人のうちの1人が1歩踏み出した瞬間、相手の顎を狙って最速の一撃を入れた。
ドサァ
相手は簡単に地面に抱きついた。
でも、僅かに反応されたから、意識は刈り取ってはいないと思う。
「何だと!?」
「何!」
「えっ?」
大きく踏み込み2人目の頭部を狙う。
こいつは吹き飛ぶように倒れたけど、少ししたら起きてくるだろう。
3人目も頭を狙ったけど、剣でガードされたので、弧を画くように、足下を薙ぎ払うように叩き込んだ。
その時、4人目が上段から攻撃を仕掛けて来た。
本来なら避けるとこなんだが、2人目と3人目の対処をしなければならないので、戦う時間を短縮させたい。
腕で受けて剣を掴みながら、回し蹴りを浴びせて、3人目の腹を突き入れ、動きの悪くなったところで、2人目の顔面に膝を入れた。
ただ1人立っていた、3人目に10連撃を浴びせて、大地に口づけをさせた。
最後に1人目の所まで、ゆっくりと歩いた。
「君、意識あるよね? 立って戦わないの?」
「……」
「返事がないなら、戦闘続行だね」
「……ま、参った……いや、参りました」
「これで、僕は君たちの隊長でいいよね?」
こうして、僕は一時の配下を手に入れた。
その後、豪華な天幕で一泊して目が覚めた時、僕は第5レベル呪文を開眼していた。
※ランディ 十三歳
※ギフト 暗黒女神の愛
※魔法の種別 回復系
※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』『グランヒーリング』『アルテミットヒーリング』『デトックスA~F』『ニュートラライズポイズン』
※魔力総量 4361
※クレリック呪文 第1レベル 35回
※クレリック呪文 第2レベル 32回
※クレリック呪文 第3レベル 28回
※クレリック呪文 第4レベル 24回
※クレリック呪文 第5レベル 20回
※特技『神速』
◇
◇
◇
私は、ホルスライン。
伯爵であるグランデール様に仕える、グランデール様専属の騎士だ。
今回、盗賊討伐の任務に、意外な追加文書が届けられていた。
それは、とある侯爵様直々の密書だった。
上質な羊皮紙、金を溶かして刻印された家紋。
間違いなく本物の辞令書だったとグランデール様は言っておられた。
グランデール様は辞令書に従い、戦死しても問題の少ない、身分の低い新米騎士を、ライトグラム准男爵につけた。
そして私が、盗賊が5人程度潜伏していると、情報のある地点へと案内する任務を受けた。
驚いた事に、顔合わせ当日、あれだけ反抗的な態度を取っていた黒尾騎士団だったが、移動日には従順になっていた。
いったい何をしたんだ?
移動行程の8割を過ぎた所で、ライトグラム准男爵達と別れ、グランデール様のいる本隊に向かった。
その時、多数の人の気配がしたので、草に埋もれるように身を隠した。
本気で隠れなければ危険だと、本能が訴えていたからだ。
必死に隠れていたから確証は持てないが、あれは盗賊達だと思う。
女性を2人抱えて運んでいたのだから、まともじゃないのだけは理解出来る。
そして、盗賊と思われる集団は、ライトグラム准男爵と同じ方向に向かっていた。
少なくとも、あの集団は10名を軽く超えていた。
『ライトグラム准男爵が危ない』と思ったが、私はグランデール様に確実にこの事を報告しなければならない。
盗賊の出没が、此方の予想外だったからだ。
こんな事が度々起これば、今回の大討伐で多数の盗賊を取り逃がしてしまうかも知れない。
このまま暫く身を隠して、薄暗くなってからグランデール様の元へ走り出した。
ランディ私も頑張ってるんだよ。
ほらっ
※アリサ 十三歳
※ギフト 無し
※魔法の種別 回復系 肉体強化系 生活系
※使用可能魔法『ヒーリング』『エクスヒーリング』『グランヒーリング』
※魔力総量 1572




