【77話】王族近衛特務隊
「ランディ君の弱点を見つけたんだ」
「ほう……弱点か、すごいな。オレは八武祭で、あいつを見ていたが、まったく気づかなかったぞ」
王子様は、八武祭で僕を見ていたのか。
でも、僕の弱点をもう分かったの?
僕の弱点は、かなり少ないよ?
「『ダガー』を使う」
「『ダガー』か? 確かに初見で戦うなら、かなり有利だと思うが、その程度でランディを攻略できるか?」
「ああ、弱点さえ突く事ができれば問題ないでしょう。しかし油断してると、弱点を突くまでもなく『ダガー』が勝つでしょう」
あのう、喋ってないで進めてくれませんか?
すると、僕の心を読んだみたいに、1人の男が僕の前にやって来た。
「俺は『王族特務隊、ダークダガー』のマテラ・ラーンだ。武器はこの拳と脚だ」
ほう、素手同士なんて久しぶりです。
楽しませて貰ってもいいですか。
「ランディ・ライトグラムです。はぁっ!」
試合開始の合図を待たずに、攻撃を仕掛けた。
このダガーさんは、油断してなかったけどね。
向こうにいるナイフさんやソードさんも王子様まで、いつ襲われても、反応できるようにしてるんだよな。
かなり実戦なれしてそうだ。
ダガーさんは僕の攻撃を左手で弾く。
その瞬間、左手に若干捻りが加わっていた。
そして右手は、僕の顔面めがけて正拳突き。
お返しとばかりに、ダガーさんより練度の高い腕の捻りで弾く。
だが、ダガーさんは左回し蹴りをぶちこんで来た。
小さい身体を活かして、少し屈むだけで避けると、右肘が飛んできた。
ここ数十年、僕にこんな攻撃をしてきたのは、初めての事だった。
おかげで、顔と膝の間に手を挟んだけど、まともに攻撃を喰らった。
喰らった勢いを利用して、ぼくも踵で回し蹴りをだす。
でも、僕の足が短いせいか、ダガーさんは上体を反らすだけで、ぼくの蹴りを避けた。
ダガーさんに負けじと、連続回し蹴りに移行する。
「おおっ」
「『ダガー』より上手いだと!?」
3回目の回し蹴りの時、ダガーさんの手を捕まえて上体を反らせないようにして、一撃を与えた。
「どうだ?」
だけど、ダガーさんは一瞬驚いた表情をしたが、直ぐに真顔になって、首をコキコキとならすように傾けていた。
まるで『凝りが解れた、ありがとう』と言ってる様にも見えた。
タフそうだな。
「旋風脚どうしの争いは互角か」
「旋風……脚?」
「もう一度行きます!」
もう1回、回し蹴りの応酬をしかけ合った。
今回は3連続回し蹴りを、お互いが避けたところで、僕の逆回し蹴りを『ガツン』とヒットさせた。
でも、平気そうにしている。
ダガーさんは、マジでタフネスさんかも知れない。
「おやおや、ランディ君は化け物ですか? あの体格差で『ダガー』を押してるぞ? でも、これでランディ君の負けは、ほぼ確実ですね」
「あ? 『ソード』何故だ? アイツの弱点なんか見えてこねぇぞ? なぁ『ナイフ』 ん? 『ナイフ』どうした?」
「……何でもない……」
(……旋風脚、カッコいい……)
「ランディ君は、楽しげな戦い方だと、相手に付き合う癖が有るようです」
「あ? だから何でそれが弱点なんだ?」
「『ダガー』の次の戦法は、後出しのカウンター攻撃です。 所謂相討ち狙いですね。 そして、そうなるなら絶対に『ダガー』は、負けない」
「そうかっ! しかし狡いな……体格差と体力差を利用するのか。なにせあの『ダガー』は……」
「そうです。『ダガー』は、レアギフトの中でもさらにレアな『冥王の愛』の持ち主ですからね。その能力はなんと『体力5倍』です。それに加え『肉体強化魔法』はレベル9まで発動可能な化け物です。 ランディ君がどんなギフトを持っていようが『ダガー』と同じ戦いをするなら、絶対に勝てません」
「ああ『ダガー』の勝ちだな。『ソード』の読み通り、殴り合ってんぞ。 だがな、それでもアイツには期待しちまう。 因みにランディのギフトは、正体不明の『暗黒女神の愛』だ」
「な、ん、ですと!?」
「…………」
(……暗黒女神……カッコいい……)
外野がペチャクチャ煩いんですけど。
って言うか、僕ってギフト持ちだったの? いつ調べられたんだ?
それに『冥王の愛』ってギフト持ちか。
それで、僕と打ち合い勝負ですか。
良いですよ、生前の力の50%を継承している僕と勝負です。
それに、こんな殴り合い初めてかも。
体格のせいで不利に見えるけど、タイミングやヒットする場所を考慮すると互角か……
じゃあガチで、HP勝負か。
……
…………
しばらくダガーさんと殴り合ったが、僕はもう限界に近いです。
それに比べて、ダガーさんはアザや血を出しているが、平気そうな表情だ。
ヤバイ、ダガーさんのHP凄すぎ。
底が見えない……まだ半分とは言え体力勝負で負けるなんて。
「なあ、この2人は、手加減して殴ってる訳じゃないよな?」
「そうですね。どうみても本気で殴りあってますね」
「いったい、どんな身体の作りをしてやがんだ。2人とも異常だ」
「だけど、あの体格差と肉体強化魔法を使って、やっとランディ君と互角とか、心底驚きました。でも、ランディ君はそろそろ終わりそうですね」
なんですと? 『肉体強化魔法』を使ってるだって!? 聞いてません。
これくらい手練れだと、いつどこで強化魔法を使ったか解らないです。
でも、それなら僕だって。
相打ちになってよろけた時に、これを使った。
「アルテミットヒーリング」
「なに? アルテ…… なっ!?」
「はい隙アリ」
一発、容赦なく殴る。
「はっはっはっ、どうだ? これがあいつの最強回復魔法『アルテミットヒーリング』だ」
「これが去年、魔法院を騒がせた新魔法か、ウエストコートに権利があるから、詳細は知らぬが、まさかここで見られるとは」
「ああ、これで形勢は決まった。『ダガー』の動きが、急に悪くなった」
「『スピア』貴方まさか、ランディ君に肩入れしていませんか? 我々は特務隊ですよ?」
「ああ、もう手遅れだ。だから『ソード』達には、あいつとは一線引いて、警戒して貰わないとな」
「そうですね。『ナイフ』の面接次第では、総がかりで、ランディ君を始末しないといけませんね」
「15歳に満たない少年に、特務隊の幹部が3人ががりとは、恥ずかしくて外に洩らせねぇな」
「そうですね。 おや、もうすぐ決着がつきそうです」
煩い外野は、ほっといて、拳をダガーさんの身体に何度もめり込ませる。
あくまでも推定だが、ダガーさんのHPは、今の僕やカーズを超えている。
ガルくらいはあるかも知れない。
だが、深傷を負ってからの動きが悪い。
僕たちは、HPが9割以上削られても、動きは落ちないからな。
もう一発殴る……もうダガーさんからの反撃はない。
最後に渾身の気を込めて、掌底突きを入れて倒した。
はぁ、楽しかった。
……で、僕は何しにここに来たんだっけ?
……
…………
「それでは、ランディ・ライトグラム君の、面接を始めます。 私の名前は今は言えませんが、コードネームは『ダークソード』です」
「そして、オレがここじゃ『ダークスピア』っことだな。で、お前にのされて倒れているのは『ダークダガー』」
「……面接官……『ダークナイフ』……」
なんか、秘密結社の入社面接みたいだな。
「戦闘能力は問題ないどころか、ランディ君に勝てそうなのは、ボスか『ダークランス』くらいかも知れません。ですからこの面接さえ通れば、ランディ君は『王族近衛特務隊』の非常勤隊員になります。早速ですが、質問です 」
むっ、3人ともピリッとした空気をまとった。
まるで、いつでも僕を襲いかかれるように。
迂闊な事は言えないな。
「ランディ君は何の目的で、ウィルソン王に近付いたのですか? 正直に答えて下さい」
うおっ! いきなり疑いの眼差しからきた。
王族近衛特務隊、油断できない。
「はい、僕はウエストコート学院で、父親は内政で大きな失敗をしたため、学院や地位、住居を無くしました。約2年前にロベルト王子達の解毒治療を行った縁で『困ったら来い』と言われた事があって、就職しに来ました」
「なるほど」
ソードさんはナイフさんをチラリと見る。
ナイフさんは、少し頷く。
それから4つくらい他愛ない質問をしてきたので、その都度正直に答えた。
「では次の質問です。ランディ君は、今より良い待遇を受けれるなら、ウィルソン王を裏切れますか?」
おかしい、こんな質問に答える回答なんて決まってる。
何故こんな質問を?
しばらく考えた後、僕はこう答えた。
「…………はい、私は条件によっては、ここを離れるでしょう」
キンジ「カーズさぁん、冥王のギフトって反則っすね。加護で3倍、愛で5倍もあるんすから」
カーズ「キンジにも、そんなギフトがあれば、一端の戦士になれますね」
ガル「そうすれば、もう少しだけアーサーにいい訓練が受けられるな」
キンジ「戦士になれる前に、戦死します。しくしく。 ところで作中に触れてなかった『ダークダガー』のHPは、どのくらいなんすかね?」
アーサー「あれは 498×5の2490 カーズ2100 ガル2500 ランディ2800 キンジ230 だけど あれと キンジは 延びしろ ある」
キンジ「アーサーさんは?」
ガル「アーサーは4080だぞ。 因みに闘気を纏った人類の限界は3200だ」
キンジ「既にアーサーさんは、人類こえてるんすね。ひえぇぇぇ」
カーズ「私が肉弾戦が苦手なのはこれで解ったでしょう?」
キンジ「いえ、わからないっす」




