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【75話】ダーナス家失踪事件

閑話を飛ばした方々へ。


閑話は、とある事件から、武器商人を始末した事により、新型武器の配給と付近の兵士団の編成が非常に遅れる事になった。


とだけ解っていれば、問題ないです。


閑話を読んでくださった方々へ。


作者の自己満足にお付き合い下さりそうありがとうございました。


新章開始です。

 私は、アスターテ・フォン・ウエストコート。


 この私は、数か月前からある失踪事件を調べている。

 もちろんこの国での失踪事件など、私の管轄ではないが、事が私にとって重大な案件だったため、調べていたのだ。


 私が調べている事件は『ダーナス家失踪事件』だった。


 事件の発端は、ランディの母親『クラリス・ダーナス』の病死から始まる。


 八武祭を目前に、母親の危篤を聞きつけて、家に帰ろうとしたランディをメッサー侯爵が、立場的に抹殺したとの報告だ。

 ただし、ランディ失踪に気がついたきっかけは、八武祭初日で、彼の姿を見なかった事だ。

 しかし、失踪と判明したのは八武祭最終日だった。


 私がメッサー侯爵に聞いた時は、知らないと言っていたのだが、国王が眉を吊り上げて聞いていた時は、顔面蒼白で答えていたからな。


 ランディは、国王や王子、王宮騎士どものお気に入りだと、知らなかったのか?


 メッサー侯爵の気持ちも、分からんではないが、他にもやりようがあっただろう?


 病状にも依るだろうが、ランディの母親を直接八武祭会場に向かわせるとか、使い潰すように早馬を使い、対面を済ませてから八武祭会場にに向かわせれば、遅くとも、試合の半分は参加出来たはずだ。


 私なら後者を選ぶぞ。


 この事件がエリザに知れたときは、この私ですら怖じ気づいた。

『メッサーを微塵切りにして!!』と半狂乱だったからな。


 あの時は、ボヤンキーがその身を犠牲にして、エリザをなだめたらしい。


 あの男を、エリザの筆頭護衛にしたのは正解だったな。




 しかし、ランディの生まれ育った土地を調べると、本人はおろか、両親すら消息を絶っていた。

ここで気になったのは、ランディの母親クラリスが助からない病に犯されていたと改めて確認できたが、母親の死亡までは確認できなかった。


 突き詰めて調べさせたところ、プリウス伯爵が暗躍しているのが判明し、メッサー侯爵とは無関係だった。

 しかも、メッサー侯爵も独自でランディを探しているのも分かった。



 報告によると、とある地方の無管轄地帯に、ランディの両親は送られたと言う。

 ここは、軽犯罪を清算するために送られる場所ではないか。


 ここでも、ランディの両親は消息を絶った後で、なんの手がかりもなかった。

 だが、メッサー侯爵絡みの傭兵部隊が来た時と、ランディの両親が消えた時期が、概ね一致していたので、メッサー侯爵を公的に問い詰めるよう、審問会を開くよう、国王に書状を送った。



 だが、国王から返ってきた、書簡には『審問、並びに処罰の必要無し』だった。


 私は書簡ごと火の中に燃やしてしまった。



 そしてメッサー侯爵は、どこか広大な領地を預かったらしい。

 メッサー侯爵は、出世したようなものじゃないかと思ったが、メッサー侯爵自身は、王都のように賑やかな場所が好きらしく、喜んではいないと言う情報を貰った。


 だが、それで私の気が済むわけがない。




 私は、公務で1年の3分の1を王都で暮らしている。


 今は、ここを拠点にランディの足取りを調べて、間者を地方に送っている。

 その頃には、ランディが1年歳を偽って高等学院に在籍していたのが判明した。


 学院長のハベンスキーから、ロベルトを通じて事情を聞くと『八武祭をこれ以上負け続けると、何処かの侯爵様に殺されそうだったから、年齢を偽り前倒しで入学させました』と回答が帰ってきたそうだ。


 確かにな……私はランディを辺境で見つけたハベンスキーを誉めていた。


 なにせ、そのハベンスキーが高等学院に呼んだおかげで、窮地のエリザと偶然遭遇し、命を救われたのだから。



 ある日、膨大な量の書類にサインしていると、文官の1人から奇妙な話を聞いた。

『最近、国王にお気に入りの新興貴族がいる』との話だった。

 ただ、その貴族は化物級の生活魔法を使うって話だった。


 その話を聞いて、国王も物好きだなと思ったが、その話は、忙しさで忘れてしまう。


 ……

 …………

 ランディの足取りが掴めないまま時が過ぎて、数ヵ月……

 間者を増やし、一部は国外まで広げようとした時、意外なところから情報が手に入った。


 それは、ダーナス家と名前は一致しないが、年齢が13歳にして男爵の地位に就き、頻繁に王宮騎士の集まる宿舎に出入りをしている人物がいるとの話だったと。

 そして、王宮騎士の1人に話を聞いてみると、新米王宮騎士たちのシゴキ役を務めていると聞いたのだと。


 なぜ、名前が一致しない人物を調べたのか疑問に感じたが、話をすべて聞いて納得した。


 化物じみた子供が、そう何人もいるわけがない。


 私は名前を聞いてみると、男はこう答えた。


『ライトグラム男爵家、当主……ランディ・ライトグラム』


 そう、言ったのだった。


「ライトグラム家だと? その家名は、昔の戦争でウェステンバーグ公爵を、その身を犠牲にして護ったと名高い、三家の一柱ではないか。まさかその失われた家名を復活させるとは……まさか、まさか、あのランディなのか?」



 家名を替えるとは、盲点だった。

 よく考えれば、家名を持たない者が、大きな功績を挙げて、家名を(たまわ)るのは、めずらしい事じゃない。


 さっそく、話に出た『ランディ・ライトグラム』が、私の知る『ランディ・ダーナス』か、この目で確める事にした。


 王宮騎士が集まる、場所に向かった。


 しかし『ランディ・ライトグラム』は不在で、住居すら知らないと言う。


 仕方ないので、そのまま近くにある王宮に向かい、彼にこちらに出向くように手続きをしに行った。


 普段より待ち時間が長い事に、苛立ちを感じながら待っていたら、やって来たのは護衛をたった1人しか連れていない、国王だった。


「お、王!何故ここに?」


 だが、国王が直接来たことにより、『ランディ・ライトグラム』は私の知るランディだと解ってしまった。


「ふっ、ここには私とサンジェルマンしかいない。つまらん作法など要らないぞ? しかし、素性を隠してる訳でもないのに、やっと気付きおったか。」


「やはり『ランディ・ライトグラム』は、あのランディなのか」


「ああ、プリウスやメッサーに居場所を追い出され、私のところに来たのだ。あやつらの所業には思うこともあるが、結果的にランディがただで手に入った。はっはっ、感謝しないとな」


 逆に私は、この2人を血祭りに上げたくなった。


 国王と暫く話をしていたら。


 扉をノックする音がした。


「ランディ・ライトグラム、入ります!」


 驚く私に、国王が『してやったり』な表情でニヤつく。

 

 ムカツク国王は無視して、開く扉を凝視する。


 そこには、紛れもないランディの姿があった。


 約1年半ぶりの彼は、未だ子供なれど一回り大きく成長していた。


 ランディは、どこか大人びていた。

 しかし、感傷に浸っていたのは間違いだった。


「あっ、ダンディなおじさん、久しぶりです。 ペコリ」


 (ランディ)は……いや、あの小僧は全く変わっていなかった。





2章に登場した大勢「俺たちの出番は?」


鳴神「ダナムとテスターにシオン兄弟は内定しますが、他は……」


ダナム、テスター「やったぁ!」

シオン兄弟「いえぃ!!」


その他「いやぁぁぁぁぁぁ!」


レジーナ「お坊っちゃまと結婚させないと……呪うわよ」


鳴神「(;・ω・)?……( ; ゜Д゜)!」


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