表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/195

【73話】帰路

遅くなりました。

 セナリースの背中に抱き付き、馬で颯爽(さっそう)と駆け抜ける。


 しばらくして馬を休憩させた時、セナリースが申し訳なさそうに謝ってきた。


「ボン、すまねぇ。 タイミングが悪すぎたみてぇだ」


「気にしないで良いよ、セナリース。 一刻をあらそうんでしょ?」


 するとセナリースは、ばつが悪そうにした。

「医者の見立と日数計算で考えると、帰りの日程を考えても10日ほど猶予がある」


 裏を返すと、順調に衰弱してるって事だよね?

 今の医学で、死期の日数計算が分かる病気ってなんだ? それより、間違いなくロイエンと比べて計算能力は高いよね?


「それより、爵位が剥奪されちゃうのを謝らなくちゃ」


「いや、その心配はない」


 セナリースは急に自信ありげに言う。


「えっ? なんで?」


「ロイエンはとっくに爵位を失っていたからさ」


 早いなぁ、僕の最短予想より5年は早いよ。


「何となく分かるけど、聞いていい?」


「ああ、簡単に言うと税を納められなかった。色々あって、農民が夜逃げしたり、害獣がなぜかロイエンの区域にだけ、多くやってきてな……それで、おれとシープレスはまた、出稼ぎに行ったんだ」


 うん、そこまでは何となく解るんだけど、夜逃げと害獣の集中って出来事が、何故かひっかかるね。


「出稼ぎしてから、1年くらいしてよ。 もう終わりだって言われたら、他の貴族の所に行けと言われて問い詰めたら、旦那は爵位を剥奪されていたんだ。理由は借金以外はわからねぇ」

 

「わかった、で、セナリースはどうしたの?」


「もちろん、国のお抱え傭兵は辞めてきたさ。それでロイエンの足取りを追うのに半年も掛かっちまった。で見つけた時はクラリスは、倒れていてな……無理もねぇ、あんな岩だらけの荒れ地を開墾しろだなんて、これを考えた奴は悪魔だ。 なけなしの金で治癒師を雇ったが、判ったのは余命だけだった」


「解ったよ、セナリースありがとう」


 犯人は必ず見つけて、お仕置きしますからね。


 そうして、セナリースとの旅は順調に進んだ。

 不謹慎だけど、セナリースとの道中は楽しかった。


 まあ、セナリースの反応がだけどね。

『ボン!? この、大金はいったい? なにしたんだボン?』

『はぁ!? 八武祭で優勝? 出場するだけですごいってやつだろ?』

『解毒魔法を全種類覚えた!? いくらボンでも無理だろ? 嘘だよな? なっ?」

『はっ? スクット・リッツだと? あの王宮騎士10傑の? そんな有名人がなんで教官に?』


 とかね。

 裏門の外にいたから、リッツ教官との戦いは見せてないんだよな。


 勝った事は、言っても信じてくれそうもないから、言わないでおいた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ボン、この森を抜けたら、あと3日くらいで着く……しかしボンの生活魔法は、化け物級だな」


 はい、クリエイトウォーターを見せてしまいました。


 お陰で、4日分の移動行程を、短縮出来たそうです。

 ただ、その4日の短縮がちょっとした事件と遭遇することになったんだ。



「ボン、変なやつらが居やがる」


 セナリースの背中越しに覗くと、馬車とその周りに傭兵っぽいのか数人見えた。


「この先にまで行くと、あのサイズの馬車は通れないぜ。道に迷ったにしても、一本道だしなぁ」


 このまま近づけば、むこうも(じき)に気づくだろう。

「第3レベル呪文……ディテクトイービルLVⅠ」


 傭兵達が、こっちに気づいたとたん、敵対反応が出た。


 僕達の素性も知らないのに、いきなり殺る気満々ですか、お陰で僕も躊躇なくやれますよ。


 さあ、相手はどんな出方をするのかな?


「セナリース、あいつらの様子が変だから、警戒しといてね」


「ボン? ……ああ、確かにそうかもな。 さすがボンだな、学校で相当揉まれたか」


 近づくと、1人だけ鍛えられていない体脂肪率の高いオヤジが変な微笑みで、話しかけてきた。


「おや? こんなところに親子で珍しい、 旅の姿にも見えませんが?」


 傭兵は、いやもうゴロツキでいいや。

 そのゴロツキどもは、ジリジリと周囲を取り囲むように動く。


「おじさんこそ、この先にどんな用があるの? それにその馬車おっきいね、誰が乗ってるの?」


 脂肪オヤジがしかめっ面をした瞬間、5人のゴロツキが襲ってきた。

 完全に包囲しきる前だったから、数の有利はちょっとしか働かないよ?


 3人が僕に、2人がセナリースに向かってきた。

「セナリース! 手加減抜きっ!」


「ボン! 数が多い。 持ちこたえてくれ! 直ぐに助ける。 はぁぁぁ!」


 セナリースが肉体強化魔法を使ったようだ。


 ゴロツキも、セナリースの強さを感じ取ったのだろう、こんな台詞を吐いた。

 

「親の方は強い! 子供を人質にしろ!」

「まかせろ!」

「オヤジィ! てめえの子供がどうなってガファ!」


 僕はゴロツキどもの強さを見誤った。

 だって、最弱教官のモブやザコはおろか、八武祭に出場している普通の子供達より弱かったからだ。


 2人も一撃で、殺しちゃうとは思わなかった。

「なっ、なっ、グボォ、ゴフェェェ、ボギャン!」


 よし、最後の1人は手加減成功。

 セナリースの応援をして、1分かからずに5人の傭兵を殲滅した。


「なっ? なっに!?」


「ボン!? そんなに強くなってんのか? もう、ダンナと2人がかりでも、勝てねぇかも……」


 セナリースは脂肪オヤジより、ビックリしてるみたいです。

 それより今は、こいつだ。


「おい! 脂肪オヤジ、馬車の中は何だ? 後、僕達を襲った仕返しは、何がいい?」


「ひぃ!? た、助けてくれっ。 中は、中は……そうだ、怪我をした子供達を助けたから、安全な所に運ぼうと思ってたんだ。なぁだから助けてくれ」


 1人だけ生き残ったゴロツキを縛り上げていたセナリースが馬車のホロを開ける。


 そこには、痩せ細った子供達が詰められていた。

 指の本数が足りない子、片目を失ってる子、治らない怪我をしている子がほとんどで、真新しい傷や痣まであった。


「セナリース、解る?」


「ああ、たぶん非合法奴隷だ。うちの国は奴隷制度がしっかりしてるから、逆に水面下でひでぇ事をしやがる奴隷商もいてもおかしくない。たぶん、この森は深いから、棄てに来たんだ」


 僕は、脂肪オヤジを睨む。


 脂肪オヤジは、不味いって顔をした後に、首をブンブンと横に振っている。


 ダメだ殺そう……

 と、一瞬思ったけど思いとどまる。


 ガン!


 あっ、殴っちゃった。

 でも、思いとどまったから、気絶で済んでるはず。


「セナリース、死体とアレの始末をお願いしていいかな?」


 1人だけ生き残ったゴロツキに向かって指を差す。


「分かった、ボンは?」


「僕はこの子達の怪我を、出来るだけ治す」


「分かった、任せな」


 暫くすると、セナリースは視界から消えていく。


 僕は馬車のまで近づいてみた。

 生きる事を諦めた子、怪我の痛みに声を圧し殺して泣いてる子、空腹と怪我でグッタリしてる子、死を目前にして怯えてる子、聞こえないような小さな声で『お母さんお母さん』と連呼してる子。


 大声を出した子達は、暴力を振るわれていたのが、容易に想像できる。


「さて、君たち助けに来たよ」


 僕の言葉に理解が追い付いてないようで、一様にきょとんとしている。


 でも、気にしないで狭い馬車の中に入る。


「第2レベル呪文……ライトヒールサークル」


 これで、子供達の古傷と欠損部位以外は完全に治った。


 怪我が治ったのは理解したようだが、今の状況をまだ解ってない子供達。


「もう、痛くないだろ? 怪我も治って体力も回復したから、食事にしよう。 第2レベル呪文クリエイトフード」


 100人前のカロリー○イトを出現させる。

 子供の胃袋なら、軽く200食分はあるな。


 僕は暫く考えた。

「よし、第2レベル呪文……クリエイトフード」


 子供換算で、さらに200食分追加した。


 これでゴロツキどもが持っていた、食料を合わせれば、暫く食べていける。


「君たち、これは簡単に食べれる、便利な食べ物なんだ。食べて見てくれ」


 1人がカロ○ーメイトを手にして、 食べると目を見開いた。

「美味しい……凄く美味しいよ!」


 その言葉で一斉に食いついて来た。


 はじめは『美味しい』『美味い』とかだったが、次第に泣きながら食べるように成っていた。


 この程度で、感極まり泣いてしまうとは、普段どんな酷い目にあっていたのやら。

 さっき考えていた作戦を実行に移す。


 脂肪オヤジの足首を持って、200℃の角度に捻りあげる。


 ゴキリ……


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


「起きた? ねえお前、助かりたいんだよな?」


 涙と鼻水、よだれを滴ながら、首を縦に振り肯定している。


「僕はこれから行く所があるんだ。たぶん14、5日で戻れる。 その時まで子供達の面倒を見ろ。もし1人でも欠けたり、怪我をさせたり、泣かせてみろ……こうだ」


 もう片方の足も捻る。


「ひぎゃぁぁぁ!」


「食料はある。無事に守りきれたら、その足を治して、お前の生き残るプランを考えてやる。いいな?」


「ひゃい!」


 なんて返事をしてるんだ……

 子供達の方を振り向くと、一気に殺気が収まる。


「君達、一応聞くけど、帰る所や帰りたい場所はあるかい?」



 じっくり聞いたところ、子供達に帰る所はなかった。

『お母さんの所に行きたい』

 って、言葉を聞いたけど、それは天国にいるお母さんって意味だったから、それは諦めてもらった。


 子供達は12人もいるが、養う決心をした。


 幸い、馬車の中は暖かく、水気のある実を持った木もある。

 食料も用意した。


「僕らは10日くらい仕事があるから、君達を置いて行かなきゃいけないんだ。きっと迎えに行くから待てるかい? あの太ったおじさんを、死なさないように、逃げないように頑張れたら、お兄さんがプレゼントをするから、頑張って待っててくれ。 あと君と君は顔色が悪いね。気づくのが遅れてごめんね」


「ううん、お兄ちゃんはみんなを助けてくれたんだ。病気は頑張って治すよ」


 やはり具合が悪かったか。

 病気は見た感じ2人だけかな。


 問題は、古傷や欠損のある子か……今回アレは1回しか覚えてないからな。

 僕は、指の足りない子の前でしゃがむ。


「第2レベル呪文……ライトリジェネレイト」


「えっ? あっ……ゆ、指が、指が生えてきたよ、お兄ちゃん! スゴいや、もしかしてお兄ちゃんは神様ですか?」


 いや、褒めすぎですよ。

 まあ、故郷の下級神よりは、無茶出来ますがね。


「いや、回復じゅ……回復魔法が凄く得意なお兄さんです。次は君ね……第2レベル呪文……ライトキュア。 第2レベル呪文……ライトキュア」


「あっ、なんか軽くなった?」

「私も、体が怠くない!」


「これで、この魔法は打ち止めだから、続きはまた今度ね」


 僕はこの子供達に、あっという間になつかれた。



 丁度その時セナリースが、ゴロツキの処理をして戻ってきた。



 セナリースに事情を話して、子供達を一旦置いて行く。



 少々不安だけど、クラリスの事が心配だから仕方ない。



僕とセナリースは、足早に出発した。

次回、学園編最終回に、なるはずです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ