【67話】第8試合、緊急開催
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
「だ、ダメだ、勝てない」
1人づつ、確実に相手チームの選手を殻に閉じ込めていく。
午前の対戦相手、ウェステンバーグ高等学院の選手達は、勝てないならと1人でも多くの対戦相手を倒そうと頑張ってくれたが、午後のズューデン高等学院は途中から戦意喪失してしまった。
「勝者、ウエストコート高等学院!」
これで、ほぼ準優勝が確定した。
残るは午後後半の2試合だけど、ここまで全勝のサウスコート学院を除けば、みんな2敗以上しているからだ。
このあと、リッツ教官の命令で最終戦を観戦することになった。
観戦する試合は、サウスコート学院対ノースコート学院。
最後に優勝するチームを見ていけって事かな?
サウスコートの選手と監督はこっち……だと思うが、チラチラみたり、にらんだりしてる。
そして、何かの作戦でも言い渡しているようだ。
なんか引っ掛かるな。
試合開始位置も、後ろ側に集まっているのも変だ。
「サウスコート高等学院VSノースコート高等学院、試合開始」
「「「「ファイヤーボール!」」」」
ファイヤーボールが8発! 両手魔法使い4人の攻撃、なんだけど着弾点が手前過ぎて誰にも当たらない……あっ。
サウスコートの選手全員が場外に向かって走り出した。
それを見た審判も固まり、一呼吸遅れて気づいた対戦相手も、呆然と見守っている。
そして、場外に出た。
「しょ……勝者ノースコート高等学院?」
審判さん、何故疑問形なの?
辺りはドヨドヨとざわめき立っている。
サウスコート学院の選手がこっちに指を差す。
「「「これが俺たちの挑戦状だ!!」」」
「「「これが私たちの挑戦状だ!!」」」
「「これが僕たちの挑戦状だ!!」」
よく見ると、選手と監督の意思疎通がとれている。
そして、監督はリッツ教官を睨んでいた。
さらに、リッツ教官はニヤニヤしている。
まさか、あんた何か仕込んだな?
「リッツ教官、もしかして何かしました?」
「ん? 気づいたか。 今朝方な、向こうの監督とばったり会ったから、ついでに挑発しておいた」
「なるほど」
「実力ナンバー1のサウスコート学院の監督って言ったら、面白いくらいに乗ってきた」
「酷いっ! でも、そうなると優勝はどうなるの?」
リッツ教官に聞いてみた。
「ここのルールなど知らんな。ただ、優勝決定戦をすれば盛り上がるけどな」
……
…………
控え室に戻って、みんなと雑談していたら、八武祭運営係のおじさんがやって来た。
「ウエストコート高等学院の選手に伝えます。 この後、運営側の準備が出来次第、サウスコート高等学院との、優勝決定戦を開催する」
まさか、今年中にリベンジの機会が来るとは思わなかった。
ダナムやモンテ先輩たちも、やり返してやるって意気込んでる。
しかし、サウスコートの選手は、初っぱなから全力で両手魔法を使うだろう。
試合開始地点は距離があるから、きつい戦いになるのは予想できる。
なにか、作戦を考えよう。
出来れば、みんなで勝利を勝ち取りたい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
優勝決定戦のために、急遽第8試合が組み込まれたが、観客は減るどころか、立ち見しないと入れないほどの混雑になっていた。
試合開始前に、布陣を決める。
相手は前衛5人、後衛3人のオーソドックススタイルだ。
こちらは前衛6人、後衛2人だが、前衛を5対1の左右に分けて、布陣した。
そう、僕独り孤立した作戦だ。
しかも後衛は前よりに位置させている。
相手はどう切り返してくるかな?
「サウスコート高等学院VSウエストコート高等学院、試合開始」
ダッシュと同時に、攻撃魔法のかけ声がする。
「「「「「ファイヤーボール!!」」」」」
「ライトニング!」
両手魔法5人だと!? 完全に騙された。
まずい、急げ! この弾数、ジエホウ1人じゃ焼け石に水だ……急げ!!
トクン、トクン、ドクンッ。
突然身体が動かなくなった。
しかも、周りの音が聞こえ難くなったのに、鼓動の音がやけにうるさい。
なんで急に身体が重くなった?
……いや違う、周りの動きがスローに見える、そして自分の動きも鈍い。
ファイヤーボールがゆっくりと進んでいるのが分かる。
こ、これは、まさか『神速』?
なんと、この年齢で『神速』を開眼したのか?
ならば、この水中を歩いてるような感覚に身を任せちゃ駄目だ。
無理矢理にでもこの中を全力で走るようにする。
ファイヤーボール2発は後衛の2人に、もう2発はモンテ先輩が率いる前衛に、残りの6発は僕に向かっている。
この調子なら、真っ直ぐ進んでも2発分は避ける事が出来る。
「ラ~ン~ディ~の~う~ご~き~が~は~や~い~!?」
うわぁ、声も聞き取りづらいなぁ
ド~ゴ~ォ~ン! ド~ゴ~ォ~ン!
ファイヤーボールの爆発音まで、重低音でゆっくり聞こえる。
もう少しで、相手にチームの後衛にたどり着く。
その時『神速』の効果が切れた。
無様にも、つまずいて転んだが、無理矢理自分の身体を一回転させて、その勢いに任せて攻撃した。
さあ、相手は3人……いや、1人下がったから2人だ、そのうち1人は二刀流か、利き腕がないぶん良い装備をしている。
僕は、避ける事に気を使わず、全力で相手を倒す事に集中した。
切れ味の悪い剣と言っても、当たれば切れるが、切断は出来ない程度だ。
肉体強化の使えない攻撃魔法使いは、申し訳ないがザコだ。
だけど、相手の力強いまなざしのせいで、ザコだと思えない。
勝てないと分かってるのに、勝利を確信してるかのように攻撃してくる。
ここで頑張れば、仲間が勝ちをもぎ取ってくれると信じてる目だ。
お陰で瞬殺出来ず、時間がかかってしまった。
僕の身体に10個の切り傷が刻まれた時、相手の2人は殻に被われた。
みんなはどうなっている? 急いで確認する。
不味い、見てるだけで分かる。
モンテ先輩のところは、みんな頑張ってるから若干劣勢程度で収まっている。
ファイヤーボールを、たくさん喰らっていた筈なのに……
問題はジエ君とソイフォンだ、いつ殻に被われてもおかしくない。
僕と彼らの距離は少々ある。
回復魔法は、間に合いそうにない。
もし間に合っても、グランヒーリングの回復時間、3秒を考えると2人とも救うのは無理だ。
その時、肉体強化魔法なしで、僕に挑んだ選手の顔を思い出した。
そうだ、出し惜しみしてる場合じゃない。
出来る事を試す!
「ソイフォン、ジエホウ持ちこたえてくれ! 神速!!」
ドクン!
空気が重い……鼓動がうるさい。
2回目の神速は成功した。
よし、 行くぞ!
ドロリとまとわりつく、空気の中を突き進んだ。
人外四人衆の神速について……
アーサー1日5回、1回10分
ガル 1日3回、1回30分
カーズ 1日3回、1回5秒
ランディ1日?回、1回2~3秒
リッツ教官「俺のターンはまだかぁ!!」




