【58話】八武祭開催
無事に開会式を終えて、控え室にいる。
レギュラーメンバーの八名と、補欠二名。
大人は、監督のリッツ教官と、知らない教官の二名。
さらに、戦闘後の回復要員として、どっかのおっちゃんが二名。
ハゲジィは特別閲覧席に連行され、マキナスジジィはアリサを含めた、次回八武祭の有力メンバーを一般席で見学してるって話だ。
控え室で、リッツ教官が真面目な顔で話す。
普段は眠そうな顔か、楽しそうな顔しか見ないから、珍しい。
「それでは、予選が始まる前に、モンテラード、ランディ、ソイフォン三人の罰を言い渡す」
あっ忘れてた……どんな罰なんでしょう。
今の僕に、堪える罰なんてあるかなあ。
「初戦のお前らには制限を課す。 モンテラードは槍を持て、ランディは盾のみ装備だ。 ソイフォンは電撃魔法は封印して、解除に専念しろ。 以上だ」
なんと、僕ら粗相組(七味鳥の為に迷惑かけた三人組)は、制限付きで戦わされるらしい。
教官やら生徒達から、やり過ぎだと抗議が出た。
僕はリッツ教官の意図を探るため、じっと見ている。
「はっきり言っとくが、ランディが本気で戦ったらどうなると思う? 去年の八武祭の七学院と、同程度の実力なら半数の学院はランディ一人に負けちまうぞ」
「「「…………」」」
「それに、この俺が丸一年も鍛えぬいたお前らがいる。 はっきり言って両手魔法の攻略さえすれば、お前らは全勝しちまうだろうな。 そこで先の罰も兼ねて、戦いを面白くしてやろうと思ったんだ。 どうだ楽しそうだろ?」
まあ最悪、六勝一敗なら準優勝は出来るな。
みんなには悪いけど、これはこれで楽しそうだ。
教官達は頭を抱えてる様だが、生徒達は納得した顔になってる。
でも、呪文なし、身体能力は前世の約半分で、連携のとれた相手との八対一じゃ、まだ厳しいんじゃないかな。
コンコン
「ウエストコート学院様、予選の時間です」
毎年変わる予選の内容、今年は何かな?
今年は大ハンマーを使った力比べだった。
代表者が次々と大ハンマーを的にぶっ叩いて、動いたブイの測定をしている。
結果は四位だ。
この順位で、これから始まる対戦相手が決まる。
そして、簡易判別器を使って『魔法使い枠』の三人を確認して、判別器を使って『ギフトなし枠』の生徒を確認した。
なぜみんな判別器を使わないのか聞いたら、判別器をは超希少で一つにつき、二人しか計れないらしい。
そして、再び使うには太陽の魔力を長時間にわたって吸収しなければ、ならないらしい。
でも、それって『ソーラーパネル』なんじゃないかと思うぞ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そこそこ美味い食事をした後、リッツ教官がニヤニヤしながら話し出した。
「お前ら、対戦相手が決まったぞ。 初戦は十年連続優勝を成し遂げている、サウスコート高等学院だ!」
流石にみんなビックリしてんな。
あの両手魔法軍団か……去年を見たかぎりじゃ剣さばきもトップクラスだったんだよな。
初戦は負けかな。
「優勝を狙うなら初戦の戦い方も大事たが、いかにそれ以降の試合を上手く進めるかに、かかっているぞ」
う~ん、リッツ教官は何を考えているんだろう……初戦を負けたら優勝は絶望的じゃん。
その時、リッツ教官が小声で呟いたのを聞き逃さなかった。
「何せあいつらは、そろってプライドが高いからな……」
プライド……プライドか。
僕も何となく解ったぞ。
でも、そんな事ってもう賭けだよね。
「なあ、みんな今回は勝敗抜きにして、観客を驚かすのを楽しまないか?」
「どういう事だ、ランディ?」
「去年は七位だったけど、毎年最下位だったウチが、サウスコートの、やつらを苦しめたら、みんなどれだけ驚くと思う?」
質問してきたダナムに答えをあげる。
「はっきり言って、僕抜きでもあれだけ強くなってるんだ、去年のイメージをもった観客の顔を想像してみようぜ。 さらに、サウスコートの両手魔法を、ソイフォンとジエホウで両手キャンセル魔法を見せたら……楽しくなってこないか」
するとみんなは悪戯っ子の顔に変わっていった。
この世界の子供たちは、日本と比べると大人になるのが早いが、こんな様子をみてるとまだまだ少年だな、と思ってしまう。
「よし、やってやるか」
「ああ、周りの驚く顔が楽しみだな」
「だけど、試合中によそ見をするなよ」
「去年のあいつらは、二人で攻撃魔法を使ってたよな?」
「ならファイヤーボール四発だな、それならソイフォンとジエホウでキャンセル出来る」
「やつらの必勝法を破れる!」
「もしかして……」
みんな、急に元気が出てきたな……だけど去年のサウスコート学院の生徒を見る限半数は両利きだった。
もし、それが全員攻撃魔法を使えたら……
まあ、それは戦ってから考えよう。
それなら、あれが有効に使えるな。
「リッツ教官、僕たち三人は試合が始まるまで持たせて欲しい物があるんですが」
◆◇◆◇◆◇◆◇
八武祭の試合は初日は各学院、一戦するだけで終わる。
試合場は二つしかないため、第一試合、第二試合と別れる。
今回、僕達ウエストコート高等学院は第二試合なのだが、微妙に注目を集め始めた。
理由の一つは、常勝チームサウスコート高等学院が出場するから。
もう一つは、僕、モンテラード先輩とソイフォンが珍しい物を持っていたから。
それは幟だ。
ほら、どう考えても売れない様な辺鄙な土地に『好評分譲中』とか書いてあるの見たことあるよね?
今回はそれを『校則違反をしたため反省中』と書いて、持っているのだ。
「ランディ、これは何の役に立つんだ?」
「恥ずかしいずら」
「うん、役に立たないかも知れないけど、七味鳥食べたじゃん」
「オラ、無理矢理拐われたのに……」
対戦相手のサウスコートも指を指して笑っている。
ちょっと恥ずかしいが、出だしの油断を誘えるかも知れない。
そして、僕らの出番が来た。
僕は大盾と小型の盾を装備した。
観客席からは少々どよめきの声が聞こえたが、対戦相手の反応はない。
珍しいけど、想定内って感じだ。
さあ、そろそろ試合開始だ。
相手がどれだけ油断してるか、試してやる!
「サウスコート高等学院VSウエストコート高等学院、試合開始!!」
次回未定……たぶん土曜かと




