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【57話】七味鳥の罠

 今までほとんど絡んだ事がない、モンテラード先輩が、突然僕のところに来た。


「ランディ、ランディ君? 」


 なんで疑問系なの? 僕は間違いなくランディですが。

「ランディで、いいですよ。 どうしました? ……あっ」


 モンテラード先輩の視線が、僕をあまり見ていない、何かを気にしている。

 そして、気づいた。

 あれは『七味鳥』じゃん! しかも二羽。

 もしかしてサプライズプレゼント?


「ランディなら、あれを捕まえる事が出来るか」


「去年は一日以上、かかりましたが、今回ならもう少し早く捕まえられるかも」


 モンテラード先輩は悩んでる様子だったが、いまの隊列を崩してでも捕まえに行くと見た。

 だって、涎が溢れてますよ。


「ランディ、捕まえてみよう。 一日以上かかるなら諦めるけど……何とかなりそうなら頼む」


 モンテラード先輩が僕に頭を下げている。

 この先輩ってそんな人だっけか?

 威張ってはいなかったけど『俺は凄いんだぞ』オーラを垂れ流していたのに。


 第5レベル呪文に目覚めるまでは、以前食べたメニューを再現出来ない。

 出来るなら僕も、今日食べたい……


 おっそう言えば、あれなら簡単に捕まるかな。

「よし! モンテラード先輩行きましょう! ちょっと待ってください」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 一人の教官が、ランディ他数名がいないことに気づいた。


「ハベンスキー学院長、スクット・リッツ教官、ランディ他二名の生徒が行方不明です」


「早速問題起きたぁ!!」


「あの小僧(ランディ)に限って、深刻なトラブルはないだろう。 よし、休憩だ」


「あの~、リッツ君…… なんで仕切ってるの? 」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 僕は、ためらうソイフォンを拉致って運んでいる。


「ふう、ここまで一緒に来たら同罪だね」

 

「いやいや、ランディが強引に運んだんだろ?」

「知らない内に、同罪になっただ」


 驚くモンテラード先輩に、半べそのソイフォン。


 ソイフォンを担いで走っても、走る速度を二割しか落としていない僕に、モンテラード先輩が呆れている。


 まあ、そんなことはどうでもいい。


「ソイフォン、あの二羽の鳥を狙って ライトニングを撃ってくれ、出来るか?」


「え? ……あ、あれをだか? 距離があるだな。 出来そうだども、威力はどうするだ?」


「もちろん、威力は最弱で頼むよ、もし生きてても、あと僕が食べ……僕が捕まえる」

 魔法の効果距離を伸ばすと加速度的に消費魔力は増えるけど、ソイフォンなら二、三発くらいなら余裕だろう。


 僕は、魔法攻撃を約一分にモンテラード先輩に指定して、隠密で七味鳥の近くまで移動した。

 あの鳥は気配に敏感で、近づきすぎると逃げちゃうからね。


 ◆◇◆◇◆◇


 七味鳥の気付けない、限界ギリギリまで接近したら、ソイフォンの電撃が放たれた。


 落下する七味鳥……今だ! ダッシュで落下地点に駆け寄る。


 落下した七味鳥の内、一羽は気絶していて、もう一羽はジタバタしていた。


「スゲーなソイフォン。僕が数日かけて捕らえた七味鳥を一発かよ……僕は?」


 僕は、異様な気配を感じて、急いで七味鳥を生け捕りにして、その気配の方に向かって走る。


 そして、その方向には巨大な猫、じゃなくて虎がいる。


「お前じゃない、第1レベル呪文……ライト」


 明りの呪文を虎の眼にかけて、一時的に視力を奪ったが、念のため嗅覚も奪っておこう。


「第2レベル呪文……ストライキング」


 自分の拳に魔法の力を乗せ、虎の鼻先を潰しておく。

「ギャウン!!」


「放置してゴメンね。 後でちゃんと処理して食べるから」


 そう、異様な気配はこいつじゃない。

 虎の視力と嗅覚を潰して、その気配に向かってはしった。




 そしてその先には、鉄の檻に閉じ込められた七味鳥が二羽と、外見があからさまに怪しい、三人の男がいた。


「なんだと!?」

「見つかった」

「こうなったら……」


 三人は僕を見て刃物を取り出した。


 この三人は刃物を取り出しているのに、ピリピリするような殺気は感じない。


 そんな奴は大概、弱いやつなんだけど、七味鳥を二羽も捕まえる程の手練れ、僕の七味鳥を狙っているんだな。


 よし! この鳥を懸けて命の奪い合いだ、行くぞ!



 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 騙された……こんなに弱かったなんて。


 今、僕を騙した三人の男は真っ裸になって、木の枝に吊り下げてられている。


「全く、期待はずれもいいとこです」


「むぐうっ!」

「んむ~、んむ~」

「ん~~、ん~~!」


「なに言ってるか解りませんよ?」


 まあ、猿ぐつわを噛ませて、亀甲縛りで拘束してるからね。

 素晴らしい出来映えだ。

 これが、厳つい男三人組みじゃなかったら、もっとよかったんだけどな。


「脆い材料で作った縄だから、頑張ればじきに脱出できるよ。 じゃあね」

 こうして、唸る男共を背中にこの場を去った。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 ガサガサッ


「ランディ、随分と遅……ひぃ!?」

「ト、トラの化け物が七味鳥を持って来ただ!?」


 えっとですね、虎を背負って鳥を持って歩いてるだけなんだけど。


「酷いです。 ランディですよお! 鳥4羽と獣1匹ゲットしたぞお!」


「なんだランディかって、七味鳥を4羽も?」

「たすか、おらが狙った七味鳥は2羽だったはずだど」


「フフフ、ラッキーボーイランディにかかれば、これくらい良くある事さ。 さあ、血抜きして美味しく食べるための下準備をしよう」


 モンテラード先輩とソイフォンは、血抜きは出来ても、内臓を出すのは苦手なようだ。


 まあ、第1レベル呪文の『ピュリファイフード』を使えば、内臓も問題なく食べられるけどね。



 そうして、戦利品を持って帰ると『褒めたいけど、怒らなきゃ』『怒りたいけど、褒めちぎりたい』『厳しく叱ると、七味鳥を分けてもらえないかも』とは額に書いてあるんじゃないかなってくらい、ハゲジィ達の顔に気持ちが湧き出ていた。


 リッツ教官が罰を一つ考えておくと言った後は、宴会になった。


 しかし、何人かは泣きながら食べてるな、モンテラード先輩なんか鼻水まで垂らしているし……そんな先輩だっけか、まあ楽しそうで何よりだな。


 こうして、八武祭前に楽しい時を過ごした。




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 時間を少し(さかのぼ)り……


「しかし、例の子供を一人戦闘不能にするのに『七味鳥』を四羽も用意するなんて、お偉方は何を考えているんだか……」


「まあ、シナリオじゃ『七味鳥』を追いかけて、落とし穴にはまって、八武祭に間に合わなくなった頃を見計らって、偶然を装い助けるって話だからな」


「第二案は、ベジタリタイガーに襲わせて、危機一髪の所で助けて、遠くに運んで治療させる……か。山賊に見せかけて拐っちまえばいいのによ」


「まあ、お偉方は人為的な事件にしたくないんだろ。 それより、そろそろじゃねぇのか」



 三人男は資料にある少年『モンテラード・トリアス』が罠にかかるように誘導の準備を始めようとしたその時、電撃が七味鳥目掛けて放たれ、七味鳥が落下した。


「な、なんだ今のは」

「ら、落雷!?」

「バカな、空は雲一つ無いぞ」


 三人は話し合い、一つの結論に達した。

「まさか、魔法攻撃なのか?」

「それしか考えられない」

「それが本当なら、急いで報告しなくては……誰だ!」


 三人は、物音がした方を見た。


 そこには、ランディが七味鳥を持って来ていた。



「なんだと!?」

「見つかった」

「こうなったら……」


 三人はランディを見て反射的に刃物を取り出してしまった。


 ランディはキョロキョロしたあとに、納得したように三人向かって襲いかかった。


 三人対一匹なら、ベジタリタイガーに勝てるくらいの手練れであったが、呪文で腕を魔法の武器の様に強化したランディの敵ではなかった。


 三人は2分とかからず、意識を刈り取られ、装備衣類を全て剥がされた。


 三人が気づいた時には、猿ぐつわを嵌められ吊るされていて『ヒーリング』をかけられていた。




「全く、期待はずれもいいとこです」


「むぐうっ!」

(まさか、こいつがもう一人の注意人物!)

「んむ~、んむ~」

(ランディ・ダーナス、強すぎだろ)

「ん~~、ん~~!」

(謎の新魔法に化物ランディ、急いで知らせなくては!)



「なに言ってるか解りませんよ」


 ランディは満足そうに三人を見つめて『七味鳥』を持ち逃げしていった。


「んむっ!? んむぅっ!!」

(えっそのまま放置!? 助けろっ!!)


「う~~、う~~!」

(ここは蛭の生息地、裸はマズイ!)


「ん~~!? ん~~っ!!」

(俺の股間に何かくっついた!? 蛭だぁぁぁぁっ!!)




 数日後、三人は縛っているロープが崩れて助かった。

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