【46話】毒の正体
謎の毒の答えは、恐らく『水』だ。
四年前は普通に使用していたと聞いたから、意識から外れていた。
この国の飲み水は基本的に『生水』だが、小さい子供や、育ちの良い家庭に生まれているところでは、煮沸した水を使用している。
そう、生水を飲んでいた騎士達の約半数が、下痢嘔吐の症状を訴えていた。
しかし品質の悪い水を飲むだけなら、解毒魔法で完全に治るはずだ。
そこで、僕は水自体が悪い訳じゃなく、水の中の何かが悪さをしていると判断した。
その何かが混入した水を大量に飲むと、毒の症状が発症すると予想した。
その何かとは、ズバリ『寄生虫』だ。
その寄生虫自体は大した害ではなく、寄生虫の分泌物または卵が、毒の役割をしてるんじゃないかと思った。
それなら、水浴びをしていた騎士達の脚部や全身の痛みも、説明が出来る。
理由は脚部だけ症状が出ている騎士は、脚しか水に浸かっておらず、全身に症状が出ている騎士は、浴びるように水に浸かっていたからだ。
この国の身体を洗う行為は主に『お湯で身体を拭く』だから、そうしてる王様達の従者は発症していない。
結果、沸かしたお湯で身体を拭いても、煮沸した水を飲んでも問題ない事から、この『寄生虫』は熱に弱いのは間違いない。
後は、どの程度の熱に弱いかだ。
熱に弱いと言っても、限界はあるだろう。
僕の第3クレリック呪文『ライトキュア』で治せるか試してみないと。
今日は『ライトキュア』を四回分しか覚えていない。
これで『ライトキュア』が有効なら、明日からたくさん覚えないとな。
すると、王宮騎士のおっちゃんがやって来た。
「ランディ、すまんがロベルト様がまた発症された急いで来てくれ」
「分かりました。 マキナス教官を連れて急いで行きます」
「マキナス教官? 承知したが……急いでくれよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は今、人前で初めてクレリック呪文を使う事になる。
一応、隠せるなら隠しておきたかったけど、王子様や、たくさんの騎士達を助ける為なら、クレリック呪文を見られても構うことはない。
僕は隠し事はするけど、後でビックリしてもらうために隠し事をしているようなもんだし。
ほらっ、みんなもやるでしょ? 逆手でバドミントンやビリヤードをして、苦戦したら利き手に持ち替えるの。
せっかくだから、マキナスジジィにはタップリ驚いて貰おう。
妃様が、王宮騎士のオッチャンに何やら謝っているようだ。
「ジョーシン、皆が苦しんで入る中、ロベルトにばかり解毒魔法を使ってしまって、ごめんなさいね……でも、あの子の苦しむ姿を見ていると……うっ」
「王妃様、何を仰いますか。 これだけの痛みに今まで耐えられただけでも……遠慮などなさならずに」
と、お互いに気遣っている。
こんな姿を見てしまったから、クレリック呪文を使う気になったんだ。
「王様、これから新しい解毒魔法を使わせて下さい」
「「「なにっ?」」」
王様に言った筈なのに、マキナスジジィも王宮騎士も反応した。
「ランディ、アレは魔力をかなり消費するし、わざわざ……むっ、まさか」
マキナスジジィは、初めはニュートラライズポイズンを想像したようだけど、僕が違う事をしようとしてるのに気づいたかな。
「我が子の痛みを取り除いてくれるなら構わぬ」
よし、言質を取りました。
「お待たせ、ロベルト王子。 行くよ……第3レベル呪文……」
「「「なっ!?」」」
「えっ?」
「ライトキュア!」
「あっ……治った。 痛くない! ありがとうランディ兄ちゃん……でも、また痛くなるんだよね? また痛くなったら直ぐ来てくれる?」
「もちろんだよ、ロベルト王子」
王子様の解毒が成功したのを確認したら、マキナスジジィ、王様、王宮騎士のおっちゃんに取り囲まれた。
「ランディィィィ、貴様はどこまでワシを驚かせるつもりじゃ!」
「ランディ、今の回復魔法はなんだ? 答えろ!」
「ランディよ……王宮の専属治療師にならないか?」
しばらく、三種類の質問・詰問・勧誘が続いた。
◆◇◆◇◆◇◆
僕は何とか適当に誤魔化した。
もちろん、誤魔化し切れていない雰囲気だけど、面倒だから、無理矢理誤魔化した。
ついでに、王宮騎士のオッチャン……たしかジョーシンデ○キだっけか、その人にも『ライトキュア』を掛けた。
そして、通常の解毒魔法なら、再び痛み出す時刻になった。
……
…………
だけど、王子様もジョーシン○ンキも痛みの症状を訴えない。
もちろん、あれから数分遅れて、別の騎士には解毒魔法を使って経過を見ている。
そしてその騎士は今、強烈な痛みが再発しているのを確認した。
それを見ていた王宮騎士のジョーシンデン○がつぶやく。
「あの痛みが、再発しない!? まさか完全に治ったのか? 急いで王に報告しなければ!」
と、飛び跳ねる様に消えてしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
またしても、質問攻めにあってしまったけど、このクレリック呪文は連発出来ないと、強引に説得して納得してもらった。
「それでは、あの不思議な解毒魔法は一日に何度も使えないと言う認識でよいのだな? 」
「はい……ですが、この病の対策方法を思い付きました。 先ずはそれを試させて下さい。 それと、全員に『生水』の使用は禁止させて下さい、何をするにしても沸かして使用するようにと」
「ランディ、原因が解ったのか? なんだったのじゃ?」
マキナスジジィに掴みかかられた。
「マキナス教官落ち着いて、まだ予測の段階なんですから」
ぼくは、王様とジョーシンデ○キにお願いして、下痢嘔吐の症状を出してる人に、熱湯を飲んでもらうように指示を出した。
そして、沸かしたお湯を溜めておける窪みを掘ってもらうよう指示も出した。
そう、小型の露天風呂を作るんだ。
そして、僕は新たにクレリック呪文を取得するために、六時間の休息を取る事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
目覚めて、第3レベル呪文のほとんどを『ライトキュア』にして、王様のところに行ったら、護衛のジョーシ○デンキのオッチャンは居なくて、王様、妃様と王子様しかいなかった。
王様に頭を下げられ、妃様に抱きしめられ、王子様には『僕専属の教師になってよ』と言われた。
その時、僕を抱きしめていた妃様が、急に『あらっ?』ってなって少し離れた。
離れた理由は、僕が以前、暗殺されかかっていたエリザお姉さんを助けた時に、貰ったペンダントが当たってたせいだった。
ペンダントがぶつかって、抱き心地が悪かったのだろう。
「このペンタントは、どこで?」
と王様が質問した。
とりあえずありのままを話したら、王様がどこか遠い目をしていた。
「…………そうか、それは大切に持っているといい……」
なんか、王様が僕を見る瞳が熱い気がする。
やめてぇ、僕はそっちの趣味は有りません。
それから天幕の外に出て、マキナスジジィに話を聞くと、下痢嘔吐の症状はあっさり消えて無くなっていたそうだ。
ふむ、熱湯を飲むと治る程度の寄生虫だったか……
『生水』を飲んだ騎士達の半数が発症していなかったから、もしかしてって思ったんだよな。
次は脚部の痛みを訴えてる騎士達だ。
急造のため不格好ですが、完成しました。
名付けて『騎士鍋』ただ今、騎士達を茹でています。
「グツグツ、グツグツ……」
ああ、ガルがいればネギと鴨を投入してくれただろうに……
僕の言葉に、ジョウシン電○が突っ込みを入れてくる。
「おい、ランディ。 真面目に治療をしてるんだろうな? 」
疑いの眼差しで僕を見ている……
ちゃんと真剣にやってますよ? ちょっと効果音を付けただけです。
熱湯を飲ませる事で治療に成功していたから、これ以上の追求は無かった。
……
…………
でも、『騎士の煮込み』で治せたのは三分の二に留まった。
『騎士鍋作戦』は熱湯を直接飲むより、キツいらしい。
これじゃ、全身に痛みが発症している騎士は治せないか。
結果、四十人近い騎士が僕の作戦で治ったが、後は、僕のクレリック呪文で治す事になった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「皆の者よ……それでは、出発する」
王様の声に、騎士達が『ニャニゴール領』に向かって歩き出す。
しかし、約三十人近い騎士がこの場に残っている。
僕のクレリック呪文にも、回数制限があるからね。
今すぐ死んじゃうわけじゃないから、二日ってとこかな。
マキナスジジィに色々言われるかと思ったけど、クレリック呪文をバラした時以来突っ込んだ質問はない。
しかし、一言だけ言われた事があった。
『ワシの心臓を止めるような事はするなよ?』
だって……まだ使えないけど、死者蘇生呪文『レイズデッド』は見せちゃ不味いね。
僕たちは、二日遅れて『ニャニゴール領』に向かって出発した。
みさなんこんにちは、
毒の正体は『寄生虫』でした。
一応、オリジナルファンタジー寄生虫で、
非常に小さい『線虫』で寄生する場所によっちて、種類の違う分泌物を出します。
たまたま、人間に寄生するすると、毒になるような寄生虫にしました。
ただ熱には非常に弱く、熱湯を飲んだり、熱いお湯で長風呂すれば退治出来るのです。
読者様が教えてくれた『クリプトスポリジウム』が非常に似ていたのに驚きました。
次回は日曜日になるかなぁ……




