【38話】戦闘教官序列4位
僕が毎日カロリーメ○トで、日銭を稼いで、2年の傭兵コースに入り浸っていたら、長期間見なかったハゲジィに連行された。
……
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「と言うわけで、2年後に『八武祭』に出場して、最低でも、準優勝しなければならないんだが……その前に、来年の『八武祭』で最下位を脱出しなければ、私の首がリアルで飛んでしまう……何とかならないか?」
ハゲジィが、突然僕に助けを求めてきた。
どうやら、長期間いなかったのは『八武祭』と言うお祭りに参加してきたらしい……なんでそんな楽しそうなイベントに僕を誘ってくれないの?
「学院長、僕に頼るより教官に頼った方が良いんじゃ……」
「確かに主任級の戦闘能力なら、そうなんじゃが……なにか我が学院は大事な事を見落としてるかも知れん……一度見てはくれないか?」
「…………」
あのね、ハゲジィ……僕は学びにこの学院に来てるの。
でも、良いこと思い付いた……こればっかりは僕の一存じや出来ないから。
「わかりました……見るだけですよ……それと、戦闘教官を、1人貸して下さい……回復魔法をもっと学びたいんで」
「はあ? ランディの頼みは分かったが、意味が解らんの……誰でもいいのか? 」
「モブ教官と、雑魚教官のどちらかで、お願いします」
今、顔見知りで一番使いやすい大人を思い浮かべた。
「モーブとザーコか、判った……貸しだそう」
……
…………
この学院にきて、回復魔法についてハッキリと解った事がある。
それは、回復量と消費魔力、回復完了までのかかる時間だ。
ヒーリングはHPの10%、消費魔力10、回復完了までに十秒かかる。
エクスヒーリングはHPの25%、消費魔力30、回復完了までに六秒かかる。
グランヒーリングはHPの50%、消費魔力100、回復完了までに三秒かかる。
アルテミットヒーリングは、資料がないので予想になるが、完全回復で、推定消費魔力300、回復完了までに一秒程度だ。
次に、手に触れていなければ回復は出来ないか? って言うのもやってみた。
答えは出た……きっかけは必要だけど最初に触れていれば出来る。
あとは、他人でためすだけだ……ただ僕の実験にクラスメイトを使うのは気が引ける……なんでかなぁ……
僕ってそんなに、あまちゃんだっけかぁ……
さらに無詠唱も試しているけど、どうも上手くいかない……気長に試す事にする。
◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は脂汗を流している、モブキャラ教官を前にして構えている。
実験開始だ。
「モブ教官お願い致します!」
「……私はザーコだ……何をするんだ?」
「僕の訓練です。学院長に頼みました」
明らかに狼狽える雑魚キャラ教官……
「わ、私1人なのか?」
当たり前でしょう……この学校の戦闘教官って十六人しかいないんだから。
「じゃ、始めます……」
「わわっ、待て、話を聞けっ、うわっ、あづ! ぐわっ、ぎゃっ! うぎゃぁぁ!!」
……
…………
………………
「ヒーリング……」
僕は途中で、手を離した。
すると、回復は途中で止まった。
なるほど、自分だと回復は継続するのに他人だと止まるのか……
色々回復魔法を試したら、雑魚キャラ教官が元気になったので、戦闘訓練を再開しよう……あくまで訓練ですからね。
「さあ、もう一度やりましょう」
「まて、まてっ、ギブ……ぎぶぉぉぉぉ! ぼぐぁぁぁぁ!!」
……
…………
「エクスヒーリング……」
僕は、倒れてぐったりしている雑魚キャラ教官に足で回復魔法をかけてみた。
やっぱり成功した……何となく出来るかなって思っていたら、やっぱり出来た。
ただ、自分で回復魔法を使う場合初めの一瞬だけは触れていないと上手くいかない。
理由は解らんが僕が未熟なんだろうな。
そして、調子に乗った僕は1つ失敗をした。
ふざけて、雑魚キャラ教官の股間を踏みつけながら、グランヒーリングをかけていたら、なんか雑魚キャラ教官が恍惚とした表情になっていた。
打撲の痛みに、股間の圧迫感に、回復中の暖かさが、おかしな方に作用したようだ。
まずいぃ……失敗したぁ……どうやら僕は、転生したせいで、精神年齢を下げてしまったみたいだ。
(ただの言い訳です)
『股間踏みつけヒーリング』をねだる雑魚キャラ教官から、僕は走るように逃げた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
今日は2年生の中で、戦闘においてスジの良い生徒達を集めていた。
3年のエリート達が激励を兼ねた合同訓練をするらしい。
僕も混ぜて貰っている……ありがたい事です。
「あっ、兄貴……」
ダナムがポツリと呟いた。
3年生4人組の中には、ダナムの兄さんがいるみたいだ。
3年生達の中に2人『八武祭』に参加してきた生徒がいると、ラディスが教えてくれた。
教官も、3年生担当の主任教官が来ている。
僕たちは、3年生と教官の戦いを見ていた。
かなり、真剣な模擬戦だ……ロイエンとセナリースとの訓練を思い出す……実際受けてみないと判らないが、この教官かなり強い……ロイエンとセナリースと同じくらいだ……さすがは3年生主任教官だ。
教え方も、問題ないと思う……何か足りない事なんてあるのか?
たっぷりとシゴかれた3年生は、肩で息をしている……
「どうだ? これが貴様らの知らない本物の戦闘だ……まあ、今回は木刀だが……3年からは、磨いではいないが真剣を使うぞ……せっかくの、機会だ……本物を味わってみるか?」
僕はこの教官の言葉に違和感を覚えた……何かがおかしい……なんだろう……
……
…………
やっぱりこの教官は強い……ダナムとラディスが子供扱いだった……まあ、子供なんだけどね……そして僕の番が来た。
「よろしくお願いいたします」
……やっぱり隙が見える……僕って天才? はい左腿!
ガン!
「なっ!?」
「ちっ」
僕と教官が、同時に驚く。
だけど教官の驚きは一瞬で、すぐさま攻撃してきた。
速い……そして重い……でも、この程度ならロイエンとセナリースで存分に戦ったよ。
教官の攻撃を受け流して、その勢いに乗って攻撃に繋げる、僕の攻防一致の攻撃はダメージは少ないが、命中率が高い……教官に打撃を与えた。
3年生達は、驚きで静まり返り。
2年生達は、自分のことの様に喜ぶ。
「そうか、貴様があのラディス・ノートンか……ギフトに頼らない、技術力には驚いたぞ……しかし、本物を味わうのはこれからだ……んっ」
肉体強化? 今まで使ってなかったか……もしかしたらロイエンより強い? だけどね、僕はランディですから……人違いですよ?
「これが肉体強化レベル3だ、しっかり避けろよ……ふん!」
くっ、速い……が、初動とタイミングが丸解りなんだよっ!
教官もだんだんと真剣になってきた……ロイエン達との訓練を思い出す。
やっぱり、力や速さはロイエン達より上だけど、技術、柔軟性、駆け引きが若干劣る。
僕と教官はしばらく、叩きあっていた。
……
…………
すると、一旦距離を取った時に、教官が呟いた。
「貴様は一体何なんだ? いや、それより子供に本気を出すのを謝っておこう」
ゾワリ……
この感覚、転生してから一度だけある……僕を倒す気で戦ったロイエンとの最後一の戦と同じだ。
「死ぬなよ……はっ!」
いきなり、喉を狙ってきた……ヤバイ肌がピリピリする……ならば僕は『肉を斬らせて、骨を断つ』戦法だ。
僕は棍、教官は木刀……急所にさえ当たらなければ戦闘力は簡単に落ちない。
油断すれば死にかねない戦いで、僕は気づいた。この学院に何が足りないのか……ここの訓練は『真剣』だけど『死に物狂い』ではない。
まあ、教官が急所をガンガン狙うのもおかしいけどな。
訓練学校としては、充分厳しいと思う。
だけど、戦時中の軍隊だったら……ぬるいのかも知れない……だけど、ここは将来を担う人材を創る高等学院だ……間違っていない。
でも、他の学院は?
僕はしばらく打ち合いを繰返し、教官と相討ちになって倒れた。
そしてこの戦いを、ある人物が見ていた。
予定では後数話で、一年生編が終わります。




